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第二十六話「おっさん、Sランクへの申請をする」

 俺たちはそれから一緒のベッドで眠り、快眠とは言えない夜を過ごした。

 まあルルネとミアは安心しきったように眠っていたから、それはそれで良かったのかもしれない。


 次の日になり、俺たちはこの観光都市ヴァーチャリアを出ることにした。

 もともとの目的は天空城であり、他の英雄たちと再会することだからな。

 その前に一度ニーサリス共和国の王都に寄る予定だが、早くみんなとも会いたいし。


 というわけで俺たちは再びカミアに乗って草原を駆けていた。


「うごごごご、やっぱりカミアの背中は何度乗ってもなれないな……」


 王都のすぐ近くの森まで来ると、カミアから降りながら俺は言った。

 やっぱりルルネもミアも顔色が青い。


「それで……王都には何しに行くのですか?」


 ミアに尋ねられ、俺は以前に帝都のギルド長であるバランさんから貰った推薦状を取り出す。


「以前にSランク冒険者になれるように推薦状を書いて貰ったんだ。それなら一度申請してみてもいいかなって」


 するとルルネは納得したように頷いて言った。


「確かにアリゼさんがまだAランクなのはおかしいですもんね。早くSランクになるべきです」

「いやぁ……そんな器じゃないと思うけどな。でも、せっかく書いて貰ったんだから、やらないと申し訳ないだろ?」


 言うとミアとルルネは呆れたようにため息をついた。


「本当にアリゼさんって昔から自己評価が低いですよね……」

「そうですね、それにはミアに同意です。もっと自信を持ってください」


 そんなこと言われてもなぁ。

 自分には自信を持っているつもりだが、まだ足りないらしい。


「ともかく、王都の冒険者ギルド本部に少し寄ってもいいか?」

「もちろんです。むしろそうするべきです!」


 ミアの言葉にルルネも頷いていたから、俺たちは王都に入ることにしたのだった。



   ***



 王都にも城壁はなかったが、道の入り口に立っていた兵士に身分証の提出を求められた。

 平和だからと言って流石に誰でも出入りできるわけではないらしい。


「ええと、名前は……ミア様!? ルルネ様も!?」


 二人の身分証を見て目を見開いている兵士。

 そして慌てたように俺の身分証を確認する。


「そしてそちらのおじさまがアリゼ様なのですか!?」

「おいこら、誰がおじさまやねん、誰が」

「し、失礼いたしましたっ! ついうっかり口が滑ってしまいまして……」


 うっかり口を滑らすなよ……。

 それに『さま』をつければ何でも許されると思うなよ?


「と、とりあえず街に入ることは許可しますが……少々お待ちください」


 そう言ってその兵士は走ってどこかに行ってしまった。

 また上層部に話を聞きに行ったのだろう。

 しかし今回は帝都ほど待たされることはなく、十分ほどで戻ってきた。


「今日は第一王女様の誕生日ですので王城はそのパーティーの準備で忙しく、迎えを寄こすのに時間がかかってしまうとのことですが、いかがいたしますか?」


 なるほど、それだったら逆に都合がいい。

 あんまり目立ちたくないからな、ひっそりと入らせて貰おう。


「それだったら迎えはいいよ、別に。ひっそりと入らせてもらう」

「りょ、了解しました……。それではどうぞニーサリス共和国の王都をお楽しみください」


 そしてすんなりと王都に入ることが出来た。

 王都は王女様の誕生日ということもあり、かなり浮かれていそうだ。

 出店もいっぱい出ているし、人々も楽しそうにしている。


「良かったですね! 静かに入れて!」

「そうだな。あんまり注目されるのは得意じゃないからな」


 ミアに言われ、俺は頷きながら答えた。

 ルルネが先を先導しながら、振り返って言った。


「それで、冒険者ギルド本部に行くんですよね?」

「ああ、Sランク申請をしたいからな」

「了解です。それなら私が場所を覚えているので行きましょう」


 そして俺たちはルルネの後に続くようにして歩く。

 もちろん今回もフードを被っているから、俺たちが英雄であることはバレていない。

 それにみんな浮かれ気分だから、フードをとっても気づかれないかもな。


 十分ほど歩き、俺たちは巨大な建物の前に居た。

 赤レンガ造りの立派な建物で、冒険者ギルドのマークがデカデカと掲げられている。


「ここです、冒険者ギルド本部は」

「ありがとう、ルルネ」


 そして俺たちは扉をカラカラと開けて中に入った。

 流石ギルド本部ということもあり、凄く混みあっていた。

 高そうな鎧を纏った冒険者から、真新しい鎧に身を纏った冒険者まで。

 多種多様がうごめいている。


「凄い活気だな……。これが本部か」

「そうですね。かなり有名な人もたくさん混じってますね」

「へー、冒険者とか知らないから分からんな」


 でもどれが有名な冒険者なのかはぱっと見で分かった。

 装備とか立ち振る舞いに出てきてしまっている。


 俺たちはめちゃくちゃ並んでいる受付の列に並び、順番が来るのを待つ。

 二十分ほどかかりようやく俺たちの順番が来た。


「こちら冒険者ギルド本部です。ご用件は何でしょうか?」


 受付嬢に言われて、俺は推薦状とともにギルドカードを出した。


「ええと……Sランク冒険者への申請をしたいんだけど……」


 言うと彼女は一瞬目を見開き、すぐに推薦状を手に取って言った。


「確認してもよろしいでしょうか?」

「ああ、構わないぞ」

「それでは確認させていただきます」


 そしてバランさんに書いて貰った推薦状を読み始める彼女。

 一通り読み終わると、頷いて言った。


「確かにアルカイア帝国帝都のギルド長、バラン様からの推薦状であることを確認しました」

「それじゃあ、申請のほうを――」


 しかし俺の言葉をさえぎって、申し訳なさそうに受付嬢は言葉を続ける。


「しかしですね、Sランクへの申請はAランクより上位の冒険者『二名』からの推薦が必要なのです」


 ええと、聞いてないんですけど。

 バランさん、どういうことですかね、これは。


 俺が困惑していると、何故かルルネとミアが納得したように頷いて前に出てきた。

 そしてカウンターに同時に自分の冒険者カードをスッと置きながら言った。


「私たちが推薦します。これで大丈夫でしょう?」


 その冒険者カードを見た受付嬢は今度こそ声を上げて驚いてしまう。


「ルルネ様!? そしてミア様も!? もしかして、アリゼ様というのは……?」


 その問いに何故かミアが胸を張って言うのだった。


「そう! 彼は私たちの師匠であり父のような存在である、英雄の探し人アリゼさんなのです!」

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