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第二十四話「帝都を出立します」

 それから一週間が経ち、俺たちは帝都を発つことになった。

 本当は一週間のつもりで寄ったのだが、結局二週間いることになった。


 王族たちの追放計画は徐々に進行していっているらしい。

 どういう風に進むか分からないが、ハルカさんがアルカイア帝国初の女帝になるとのこと。

 うーん、凄いなぁ。


 ちなみにジジーニャは王城の地下室の一番強固な牢屋に入れられている。

 そこは魔法が使えない特殊な加工が施されていて、一生出ることは出来ないと言っていた。


「アリゼ様、ルルネ様、ミア様。今までありがとうございました」


 ハルカさんは帝都の城壁前で俺たちと向かい合いながら頭を下げた。

 その後ろにはたくさんの住人が野次馬として見に来ている。


「いやいや、こちらこそありがとうだな。パンケーキも美味しかったし、楽しかったよ」

「それなら良かったです。私としても楽しかったので、来てくれて本当に感謝しかありません」


 にこりと笑ってハルカさんは言った。

 ミアはそんな彼女に近づいて、ぎゅっと手を握る。


「ハルカさん、これから頑張ってくださいね!」

「ありがとうございます、ミアさん。私には皆様がいるので、頑張れそうです」


 そんな会話をしていると、ルルネは後ろを向いて素っ気なく言った。


「早く行きましょう。今日中にはこの国を出てニーサリス共和国に入りたいのですから」

「ははっ、そんなこと言いつつ、ルルネも名残惜しいんだろ?」

「……うっ。ま、まあ、名残惜しくないと言えば噓になりますが、急いだほうがいいのは確かです」


 やっぱりルルネは素直じゃない。

 彼女の表情を見ると、泣きそうになっているのが分かる。


「すいません、足止めしてしまって。それじゃあ――さようなら、皆さん」


 微笑みながらハルカさんはそうもう一度頭を下げた。

 後ろの野次馬たちもまた来いよとか、いつでも歓迎するからなとか言っている。

 その温かさにじーんときながら、俺も振り返ってカミアに乗った。


「じゃあ、またいつか会おう」


 そうして俺たちは帝都を離れていき、ニーサリス共和国を目指すのだった。



   ***



 そこは天空城。

 私――アーシャは一人ここに取り残されていた。


 天空城を浮かせるには私たちのうち一人は絶対に残ってないといけない。

 この天空城は私たちの魔力によって浮かんでいるのだから。

 誰もいなくなったらすぐに墜落するというわけではないが、一週間も持たないだろう。


 というわけで、私はじゃんけんで負け、一人でここに残ることになった。

 今頃アカネとニーナは鏡華大心国に出向いてアリゼさんと出会っているのだろう。

 そう思うと悔しい。

 でもじゃんけんに負けてしまったのだから仕方がない。


 はあ……。

 思わずため息が漏れる。


 アリゼさんが間違えてこのニーサリス共和国に来て、天空城に寄ってくれないだろうか。

 そんな淡い期待を胸に、私は英雄としての雑務をこなしていくのだった。



   ***



 私――ニーナは最近ずっとアカネの愚痴に付き合わされていた。

 現在、酒場でアカネは豪快にウィスキーを飲みながらグチグチと喋っていた。


「もう! 全然アリゼさん見当たらないじゃないか! もしかしてミアの奴、嘘をついたのか?」

「……その線が濃厚かも。でも天空城がないから、ニーサリス共和国に戻るのもかなり時間がかかる」

「そうだよなぁ……。はあ……でも、せっかく来たんだからもう少し探しておくか」


 そのアカネの言葉に頷いておく。

 特にここのご飯は珍しいものが多いから観光としても楽しめるし。


「しかしここに居ないとなると、アリゼさんはどこに行ったのだろう?」

「……もしかして、ルルネが要塞都市に残ったのも?」


 私がそう言うとああっとアカネは悲痛な声を上げた。


「それだ! 絶対にそれだ! くそ、ルルネの奴、アリゼさんを独り占めするつもりだったんだ!」

「それだったらニーサリス共和国に行かず、アルカイア帝国に行く?」

「そうだな。てかそれが分かったらここに居る意味もないし、すぐに行こう、今すぐ行こう」


 そう言って彼女は立ち上がるが、酔っ払いすぎてふらりと倒れそうになる。

 お酒に弱いくせによく飲むから困ったものだ。


 私は一つ小さくため息をつくと、ひっそりとこう思うのだった。


 ――当分、アリゼさんとは会えない気がするなぁ、と。

これにて第二章が終わりです!

次回から第三章「世界の王女アーシャ編」が始まります!

これからもどうぞ、よろしくお願いします!

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