第百二十八話「銀狼族の手がかり」
「しかし……どうしましょう……仕事がなくなっちゃいました」
落ち込んだようにそう言う少女。
「う~ん、そうよねぇ……クビ、だものね……」
「じゃあ私たちが一緒に探してあげましょうよ!」
ルルネは腕を組んでそう唸り、ミアは元気よくそう提案した。
「えっ!? いいんですか!?」
「もちろん、大丈夫ですよ! ね、ルルネ」
「ええ、私も問題ないわ」
銀狼族の調査もしなければならないのだが、それは少女の仕事を探しながらでも可能だ。
だったら同時にこなしてしまっても良いのではないかというのが、二人の考えだった。
「それで、あの……お二人のお名前は……?」
ルルネたちがそう意気込んでいると、少女から遠慮がちにそう尋ねられた。
そういえば自己紹介がまだだったと、ルルネたちは口を開いた。
「私はルルネ。見たら分かると思うけど、まあ普通のエルフよ」
「私はミアって言います! これでもシスターやってます!」
その二人の自己紹介を聞いた少女は、今度は自分の番だと話し始める。
「私はリア。ええと……黒猫族で……年齢は14歳です……」
それを聞いたルルネたちはにっこりと微笑んで、手を差し出した。
「よろしくね、リアちゃん」
「よろしくお願いします! リアさん!」
そんなあっけらかんとした二人の態度に、リアは虚を突かれたように目を見開いて、その差し出された手を握り返すのだった。
「あの……よろしくお願いします」
***
三人は街をぶらぶらと歩き、何かないかと周囲を見渡しながらも、会話をしていた。
「そういえばリアさんはどうしてこの街に来たんですか?」
「えっと、それは……」
ミアの問いにリアは答えづらそうにする。
「あっ、言いたくないなら言わなくていいですからね!」
その様子を見たミアは、慌てたようにそう付け加えた。
しかしリアは首を横に振って言った。
「いえ、大丈夫です。……私、とある人を探しにこの街に来たんです」
「とある人?」
リアの言葉に首を傾げるミア。
彼女は少し迷ってからこう答えた。
「私たちの村で一緒に暮らしていた幼馴染なんですけど……ネシウスという名前の少年で……急に何処かに行ってしまって、それで噂を辿っていくうちに王都にいるかもしれないということが分かって……」
その説明を聞いたルルネはなるほどと頷いた。
「それで王都で仕事をしながら探し人を探してるのね」
「はい」
「ねえ……それってどんな子なの? もし私たちが見かけたら声をかけておこうと思うんだけど」
「あ、ありがとうございます! ネシウスは銀色の獣耳を持った銀狼族の少年で、歳は同じくらいで、もう半年前にいなくなってしまったんです」
銀狼族。
それを聞いたルルネとミアは、こんな偶然があるものかと思わず顔を見合わせてしまうのだった。