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第百十七話「ニーナたちの現状」

 一方その頃、ニーナとアカネも獣人の国ビーミト王国に入っていた。

 ビーミト王国の端にあるヒムへリン辺境伯領でルルネたちの情報を聞き込みしているところだった。


「ありがとうございました。助かりました」

「いえいえ。何の力にもなれなくてごめんなさいね~」


 ニーナは道を歩いていた猫の獣人のおばさんに聞き込みをしてみたが、やはりエルフや人間の情報は全く手に入らない。

 もしかしたら獣人の国にはおらず、アリゼたちが先に合流しているのかもしれないと思い始めていた。


「おおい、ニーナ! そっちはどう?」


 猫の獣人のおばさんと別れた後、別々に聞き込みをしていたアカネと合流した。

 ニーナは首を横に振りながら言う。


「ううん、全然駄目。これっぽちも情報がない」

「う~む、やはりか……。もちろん、こっちも駄目だった」


 どうしたものかと途方に暮れる二人。

 そんな二人に声を掛けてくる少女がいた。

 銀色の大きな耳が特徴的な狼の獣人の少女だった。


「あの……お聞きしたいことがあるんですけど、この耳と同じような耳をした少年を見たことありませんでしょうか?」


 そう言って少女は自分の耳を指さした。

 ニーナはアカネと顔を見合わせる。

 それから首を横に振ってその少女に言った。


「いや、見たことない」

「そうですか……。ありがとうございました」


 そう言って立ち去ろうとする少女の背中にアカネが声を掛けた。


「ねえ、君!」

「……はい? なんでしょうか?」

「君も人を探しているのか?」


 アカネの言葉に少女は首を傾げる。


「君も……ってことは、貴女たちもですか?」


 少女の問いにアカネは頷いて答えた。


「そうなんだ。私たちもエルフ一人と人間二人を探している」


 アカネの言葉に続くように、ニーナが口を開いた。


「貴女も、人を探してるんだよね?」

「……はい、そうですね」

「じゃあ、一緒に探さない? 多分、そっちのほうが効率がいいから」


 ニーナの言葉に少女は小さく目を見開いた。


「いいんですか?」

「もちろん。駄目な理由なんてない」

「ありがとうございます! 一人で探し回るのに、かなり疲れてきていて……一緒に探してくれるのは、精神的にとても助かります」


 そう頭を下げる少女に、ニーナは右手を差し出しながらこう言った。


「私は、ニーナ。で、こっちがアカネ。よろしく」

「はい、よろしくお願いします! 私はエリス、銀狼種の獣人です!」



   ***



「すみません、わざわざ宿代まで払っていただいて……」

「いや、それくらいは構わない。それよりも、兄の行方の、手がかりのようなものはあるの?」


 お礼を言うエリスにニーナは首を振って言った。

 それからニーナの問いに、エリスは落ち込むように視線を下げた。


「いえ、一切ないんです。兄ネシウスとは小さな銀狼種が住む村で一緒に暮らしていたんですが、何も言わずに突然消えてしまって……」

「……なるほど。それは探し出すのに時間がかかりそう」

「そうなんですよ……。何か、事件に巻き込まれていないといいんですけど……」


 心配そうなエリスに、アカネがこう提案した。


「とりあえず、私たちは情報や人が多く集まりそうな王都に向かいながら情報を探っているところなんだが、エリスも王都までついてくるか?」

「いいんですか?」

「もちろん。エリス一人で王都までの道を歩くのもなかなか危険だろうしな」


 エリスの問いに頷いて答えるアカネ。

 その横でニーナは鞄から獣人の国ビーミト王国の地図を広げた。


「今、私たちがいるのがここ。で、ここが王都。おそらく王都まで数週間はかかると思う」

「そうですね。以前、幼い頃に一度だけ王都まで行ったことがありますが、そのくらいはかかりました」

「だから、とりあえず各街には三日ほどの滞在で聞き込みをして、早めに王都に向かう方が良さそう」


 ニーナは元々、もう少しゆっくりと歩みを進めるつもりだった。

 ルルネたちを探すだけなら、観光しながらでも問題ないと思っていたからだ。

 しかしエリスの兄ネシウスが妹に何も言わずに消えたと聞いて、早めに情報を集めた方がいいと判断した。

 もちろん、各街での聞き込みをおろそかにするわけにもいかない。

 そこで、この街で情報屋を探し、情報屋から他の街の情報屋を紹介してもらう形で、効率的に探していくつもりだった。


「というわけで、明日はこの街の情報屋を探してみることにする」

「分かりました。私のためにそこまで考えていただいて……本当に助かります」

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