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第百五話「審査前の緊張」

 審査会場である王城の中庭にきた。

 たくさんの人たちが集まっていて、各々最終練習をしていた。


「ううっ……なんだか自信なくしてきました……」


 繊細なジン君は自信なさげな表情で俯いてそう言う。

 そうだよな、いきなり田舎から出てきて、こんなところに来るのは流石に緊張するよな。

 なんて声をかけようかと悩んでいると、アーシャが近づいてきた。


「アリゼさん、ジンさん、調子はどうですか?」

「う~ん、ジン君は結構ギリギリみたいだ」


 アーシャの問いに俺が答えると、彼女はジン君の様子を見る。

 そして、ふむと顎に手を当てて考え込み始めた。


「ジンさん、こういうときのおまじないを教えてあげましょう」

「……おまじないですか?」

「はい。ひとまず失敗して審査に通らなかったときのことを想像してみてください」


 アーシャはどうするのだろう?

 俺は疑問に思いながらも、成り行きを見守ることにした。

 ジン君はアーシャのいうとおりに目を閉じて想像を始めたみたいだ。


「……想像できましたけど、あまりいい状況じゃないですね」

今は(・・)そうですよね。――さて、失敗したジンさんはその後、どうするでしょう?」

「失敗したら……僕はそれでも諦めるつもりはありません。また他の方法を探すと思います」

「それだったら、ジンさんは失敗しても大丈夫じゃないですか? 一度くらいの失敗なら、別に大した傷ではないですよね?」


 アーシャの言葉を聞いたジン君は、ハッとした感じで顔を上げた。

 その表情からは不安は消え、ただただ驚きだけが映し出されていた。


 不安や緊張というのは、失敗したらどうなるか想像できない、もしくはそのときを想像してないから、失敗してはいけないと思い込んで自分を勝手に追い込んでいるときに生まれるものだ。

 アーシャみたいに失敗した後のことを想像するよう誘導して、失敗しても大丈夫、失敗しても死なないから問題ない、と先を見通せるようになれば不安や緊張も消えていく。


 その誘導の仕方も流石はアーシャだと言ったところだった。


 彼女は昔から人の心に器用に入り込んで、解かすのが得意だった。

 世渡り上手で、ルルネたち五人のまとめ役だった。


「ありがとうございます、アーシャさん。おかげで緊張も解れました」

「それなら良かったです。リンネさんのためにも、頑張ってくださいね」

「リンネ様のため……?」


 アーシャの言葉にジン君は首を傾げる。

 しかし彼女は微笑むばかりで答えを言わなかった。


 そして、しばらくしてから、審査が徐々に始まるのだった。

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