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第百三話「人族の経営する宿」

「アーシャは王城に泊めてもらってるって言ってたけど、どういう経緯でそうなったんだ?」


 俺は近くのカフェでひと休憩しながら、アーシャにそう尋ねた。

 宿はアーシャが紹介してくれるというので、あまり急がなくてもよくなったのだ。


「う~ん、とくに面白い話でもないんですけど、リンネさんが移動中に魔物に襲われているところを助けたら仲良くなりまして。魔族って実力主義の社会で、強ければ基本なんでもいいってスタンスだから、すぐに他のみんなにも受け入れられて、王城に誘われたって感じですね」


 なるほどなぁ。

 他大陸に行っても人助けとは、流石はアーシャだ。

 アカネも人助けしようとしていたし、俺がベアから受け継いだ意志はちゃんと伝わっているみたいだな。


「リンネ様に認められるほどの実力って凄いですね……。そんなにお強いのですか?」

「ええと、私よりもアリゼさんの方が強いですよ。アリゼさんに比べたら私なんてまだまだです」

「そうなんですか? そういえばアリゼさんの実力ってちゃんと見たことないかも」


 アーシャにそう言われ、俺は照れて誤魔化すように口を開く。


「別にそんな強くないぞ。てか今ではもうアーシャの方が強いんじゃないか?」

「そんなことありませんよ。まだ転移して一年しか経ってませんし」


 いやいやアーシャの方が、いやいやアリゼさんの方が、みたいに互いに謙遜し合う。

 それを見ていたジン君がボソッと。


「どっちも強いでいいじゃないですか」


 呆れたような声だ。

 確かにこの歳にもなって謙遜のし合いなんてみっともないか。

 俺は思わず苦笑いを浮かべてアーシャの方を見ると、彼女も苦笑いを浮かべていた。


「そうですよね。強いかはさておいて、比べるものじゃないですよね」

「そうだな。ジン君の言うとおりだ」


 そんな会話をこなしつつ、俺たちはカフェでの待ったりした時間を過ごす。

 それからしばらくして、カフェを出ると、俺たちはアーシャに宿まで案内してもらった。


「この宿は安くて人も少なくて、ご飯もおいしいので、おすすめですよ」

「おお、ありがとう。それじゃあまたリンネさんの誕生日会で会えるといいな」

「そうですね。そのためには是非ともジン君に頑張ってもらわないとですね」


 にこりとジン君のほうに微笑みかけてアーシャは言った。

 それにジン君は胸の前で拳を握ると、意気込んだ。


「はい! 頑張りますね!」

「ふふっ、応援してますよ」


 そしてアーシャは王城の方に歩いていった。

 その背中を眺めると、俺たちは宿に入った。


「いらっしゃいませ!」


 宿に入ると、15、6歳くらいの少女が店番をしていた。

 しかも魔族じゃなくて人族である。


「……って、同類のお客さんだ! 凄い、こんな短期間に人族のお客さんが二人も!」

「二人?」

「はい! この間は銀髪の凄い美人さんが泊まってったんですよ!」


 ああ、アーシャのことかと納得する。

 俺とアーシャ以外にも人族がいたのかと一瞬びっくりしたが、そんなことはなかった。


「それで、お二人様ですか!?」

「ああ。とりあえず一週間で頼む」


 俺が言うと少女は畏まりましたと言って鍵を渡してきた。

 それから少し説明を聞き、部屋に行く。


「203号室になりますね! あの階段を上がって二階になります!」


 そして俺たちが部屋に辿り着いて中を見てみると、なかなか広々とした部屋で、きれいに掃除もされていた。


「なかなかよさげな宿ですね」

「そうだな。流石はアーシャだ。センスがいい」


 そうして俺とジン君は宿を褒め、いろいろ準備を整えた後、疲れからか昼寝をしてしまうのだった。

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