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レジェンドシーカーズ  作者: 天野カイリ
第一章
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第四話

 4匹の怪鳥達は巨大な翼をはためかせ、弾丸のような早さで私達に迫り来る。

不味い。私は咄嗟にしゃがみ、床に両の掌をつける。そしてそこから魔力を放射状に拡散させ、足下から私とライルを囲むようにドーム状の光の障壁を作る。完成した瞬間4体の怪鳥の爪がほぼ同時に障壁に振り下ろされる。

間一髪間に合ったようだ。障壁に怪鳥達の鋭利な爪が触れた途端、その部分が明るく発光し、化け物達を光の力によって勢いよく吹き飛ばす。

怪鳥達はそのまま背中から壁に激突し、床に崩れ落ちる。

相手の攻撃に対し反応し、反撃を加える攻防一体の障壁シールド。学園で習った初歩的な技だ。実践で使うのは初めてだけど何とか上手くいった。

 「へぇ、光のウィカか。いいね。このままこうしているだけで勝てそう。」

ライルは私の技に感心してるようだ。それはいいけどこの少年、こんな状況でもまるで緊張感がない。

「そうだといいけどね。」

敵もそこまで馬鹿じゃないだろう。一応獣並みの知能はあるみたいだし。やられると分かっててわざわざ突っ込んでくるはずはない。一度きりしか通用しないと思った方がいいだろう。私の推測通り、復帰した彼女達は学習したのか光の障壁の周りを警戒しながらグルグル飛び回り始めた。

「同じ手には流石に引っかからないか。となると障壁を解いて戦う他ないね。」

ライルが言った。

「そうね。私が障壁を解いたら二手に分かれましょう。こうして固まってると格好の的だから。奴らも二手に分かれるだろうしそこを各自で撃破しましょう。」

「そうしよう。」

その返事を聞いて私は障壁を解き、その瞬間ライルは右に、そして私は左に走った。

 ここからは各自で何とかするしかない。さあ怪鳥達よ、追ってきなさい。

私は走りながら振り返る。

1、2匹くらいは追ってくると思っていたが怪物達は私に一瞥もくれず、4匹共ライルを追っていった。

「えっ。」

足を止める。これは予想外だった。何故私の方には一匹も来ないの?まさかさっきの光の障壁を警戒して、先にライルの方から潰すことにしたのだろうか?

 ライルは走りながら一瞬背後を向いて4匹共が自分を追ってきていることを確認し、僅かに驚いたような表情を見せたが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。

こんな状況で笑うなんて、余裕なの?

私はつい呆れてしまった。

一人で相手をする自信があるのかそれとも彼のウィカが相当強いのか・・・・・・って、ウィカは!?

よく見ると彼はウィカを呼び出していない。

ウィカを呼び出さなければ当然力は使えない。つまり今の彼は丸腰も同然だった。

「何やってんのよ!!」

「援護した方がよさそうね。」

ルミエナも気付いたのか助言する。

まあ、彼がウィカを呼び出していようがいまいがどのみちこのまま傍観しているつもりはないけど。全くあの少年は何を考えてるんだか。

右の手の平を正面に突き出し手の先に魔力を集中する。

一カ所に集めた方が力を制御しやすい。

集めた魔力を光の力に変換する。後はその力を一直線に飛ばすだけの簡単な攻撃。

ライルはまだ逃げ回っている。だが4匹で追われていればやがて追い詰められるのは必然。怪鳥達に囲まれジリジリと逃げ場を失っていき、ライルはとうとう石碑(モノリス)の前まで追い詰められる。

 せわしなく動き回っていた化け物達の動きが遅くなる。ゆっくり、ゆっくりと獲物を追い詰めるようにライルに迫る。

彼にとってはピンチだが私にとってはこの時が攻撃のチャンスだ。

彼女達は目の前の獲物を追い詰めることに夢中で私には全く注意を払っていない。

背中ががら空きだ。

よしっ、今だっ。

私はライルを取り囲む一体に狙いを定め、力を解放しようとする。

だがその瞬間、ライルが化け物達の間から一目こちらを見て言った。

「動かないでよ。エリシア。」

えっ?動くなですって?何もしないでいいってこと?でもそれじゃライルが───

4匹の怪物は今にも彼をその鋭い爪、或いは牙で引き千切らんと襲いかかる。

だめ、今動かないと間に合わないっ。

だがその時、ライルが動いた。

彼はしなやかな動きで次々とハーピィの攻撃をかわす。その様子はまるで踊りでも踊っているようだった。

そして攻撃をかわし終えると同時に宙を舞っているハーピィ達の周りに半透明な水色の粒子が発生したかと思うと収束し、あっという間に一つのある形を成した。

それは身動きを拘束する漆黒の鎖だった。

!?

鎖を創り出した?あれはまさか創造のウィカの力?でもウィカを呼び出していないのになんで?

いきなり翼と胴体を鎖で雁字搦めにされた怪物達はワケもわからずボトボトと羽虫のように床に落ち、芋虫のように床をのたうち回る。

ライルはこれで終わったとばかりに手をはたき、私の方を向く。

「さて、これで僕の役目は終わり。後は君の力で楽にしてあげるだけだ。」

済ました顔でライルは言った。

「何でよ自分でやればいいじゃない。」

「そういうわけにはいかないな。僕の力では彼女達をひと思いに楽にさせることができないからね。やろうとすれば断末魔が部屋中に響き渡り、君は凄惨な光景を目の当たりにするだろう。」

言いたいことは何となく分かった。創造の力では化け物達を一撃で屠るような殺傷能力の高い武器は現状創れない。故にトドメを刺そうとすれば必然的に酷たらしいやり方になってしまうと。

「仕方ないなあ。じゃあこっちに来て、危ないから。一気に焼き払うわよ。」

 汚れ役だが仕方ない。ここは私がやるしかないのだ。

私は右の手の平に集めておいた魔力に更に残りの魔力全てを上乗せする。これで苦しまずに逝けるはず。

力を解き放つと4条の光が床に這いつくばるハーピィ達を直撃し、不浄なるものを浄化するように一瞬でその体を焼き払った。

後に残ったのは灰だけである。その灰も、割れたステンドグラスから入り込む風によって外の世界へと流れていった。

さっきまでの騒々しさが嘘のように部屋に静寂が訪れる。

「ありがとう。さあ帰ろうか。」

優しい眼差しでライルは言った。

その意見には賛成だ。というか余計なことをせずにここを出ていればこんな目には遭わなかったのだけど。まあいいや。もう終わったことだし。今は無事にここを出られればそれでいい。

私は部屋に一人残される石碑モノリスを一瞥してから部屋を後にした。





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