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レジェンドシーカーズ  作者: 天野カイリ
第一章
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第二話

「どうしてそんなことを?」

私は思わず聞いた。聞かずにはいられなかった。

質問するとライルはふっと悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「理由は単純さ。ただ一目でいいから見てみたいと思ったからだよ。世界を変える存在──エルフィーネとやらをね。それに正体も気になるし。君も気になるだろう?」

正体が分からないから探すのが困難なのだが。

「まあ、それは確かに気になるけど・・・・。」

「もし僕がエルフィーネを探し当てたら、僕自身も後世に語られるような伝説になるね。」

 彼はクリアブルーの瞳を幼い少年のようにキラキラと輝かせながら語る。

「そんなに簡単には見つからないと思うけど。」

「それはそうかもしれない。だけど、最初から見つからないと思って何もしないより、見つかると思って探した方が楽しいからね。」

「ええ・・・・。」

私は呆れた。そんな軽いノリでエルフィーネを探しているなんて。この少年はどうかしてる。頭のネジが数本外れているのではないだろうか?

「そうだ、良かったら君も一緒に探さない?ここで会ったのも何かの縁だと思うし。」

ライルはふと思いついたように提案した。

「悪いけど、それは遠慮しとくわ。」

私は別にエルフィーネを探す理由はない。ここはきっぱりと断った方がいいだろう。

「えーっ、それは残念だなぁ。エルフィーネを探すなんて、伝説の英雄の末裔である君にこそ相応しいと思うんだけどなぁ。」

ライルはかっくりと肩を落とした。その様子を見て少しだけ罪悪感が湧く。

「ごめんなさいね。だけど、私が伝説の英雄の末裔だからって、エルフィーネを探さなくてはいけない理由なんてないでしょ。」

 そもそも私は伝説の英雄の末裔という立場に強い拘りや使命感を持っているわけでもないし、自分が特別な存在だとも思っていない。

「それもそうだね。まあ、断られた以上は仕方ない。諦めるよ。」

ダメ元で言ってみただけだったのか、それともあっさりとした性格なのか、彼はすんなりと諦めた。

「そろそろ帰らないとまずいかも。日も暮れてきたし。」

 不意にルミエナが耳元で囁いた。彼女の存在を忘れていた私はビクッと肩を動かした。そうだった。早く帰らないといけなかった。部屋の窓からは朱色の光が差し込んでいる。守護者が戻ってくるのも不味いけど、寮の門限を破るのも不味い。早々に話を切り上げることにしよう。

「あの、いきなりだけど私もう帰るね。時間が無いから。あなたみたいな人と会えて良かったよ。それじゃあっ。」

不自然な感じだけど仕方ない。言った勢いでそのまま上った時に使った螺旋階段へと駆けようとする、しかし、ライルの手が私の右手首をしっかりと掴んできた。女の子みたいに華奢なくせに、力はかなり強い。

「ちょっと何のつもりよっ。」

私は勢いよく掴まれた手を揺れ動かし、拘束を解こうとするが彼はそれでも手を離さない。

「待って。このまま帰るのは勿体ないよ。」

「はあ!?どういう意味よそれ。」

諦めて振り向くとようやく手を離した。今ので私の機嫌は非常に悪くなる。しかし傾いた私の機嫌を特に気にする風もなく、彼は背後の石碑に目をやりながら言った。

「せっかくここまで来たんだから、見るだけじゃ勿体ないよ。」

つまり彼は、せめて帰るならあの石碑に触れていけと言っているのだ。私は別に触りたいとは思わないし、むしろあれに触るのは神聖な物を穢してしまうような気がして若干気が引けるのだけど、また腕を掴まれては困るのでやむなく彼に従うことにした。

「それもそうね。でも本当に時間が無いから手短に済ませるわよ。」

 私の返事に彼はまるで母親から許可を貰った時の子供みたいに、嬉しそうな表情をした。

「じゃあ、二人で同時に触れよう。」

 同時に触れることに何の意味があるのか分からないけどまあいいや。突っ込むと長くなるから黙って従おう。

 巨大な石碑の前に並んで立った私とライルはせーのでタイミング良く互いの右の掌を石碑の表面に押しつけるようにつける。

石でできているからか、表面はすべすべしていてなおかつヒンヤリとして気持ちいい。そんなことを思った瞬間───

「きゃああああああああああああっ。」

「うわああああああああああああああ」

石碑から青白く目を覆いたくなるような強烈な光が放たれ、私の意識は白面の世界に飲み込まれた。

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