間接的な依頼
どうして玲奈ちゃんは自分で処理するだなんて言ったのだろう。今までこんな事はなかったはず。
一つ理由が考えられるとすれば、バイト代か。お金が欲しいのか...。一人で処理して今回の着手金やらなにやらが欲しいんだな。
今日も朝まで遊んでいたようだしなかなか浪費してるんだろう。
彼女も経験を積んできていることだし一度全て任せてみることもアリなのか?
「えぇー、でも考えてくださいよ、福永さんって幾つでしたっけ?」
「え、俺?26だけど」
「今回の宗教娘さんは?」
宗教娘って、他に呼び方があるだろう。
「えーと、メールでは19だね。」
「26のハゲたおじさんが訪ねても、警戒してなんにも話してくれませんよ。比べて私はぴちぴちのハタチなので、そこのところはオーケーです。」
ぴちぴちのハタチ。でもお前酒臭いぞ、と言いたかったがやめておいた。
「なるほどなぁ、百理あるな。ハゲてないけど。」
「そんなぁ、結構ピンチですよ。」
「何が。生え際見ろよ、全然平気だぞ。」
「テッペンが。私立ってるんで見えちゃうんですよ。」
俺に喧嘩を売っているのだろうか。年上を貶すとはいい度胸をしているな、この小娘は。
「はっ、お前はつむじも知らないのか?最近の大学生はとんでもないオツムをした奴ばっかりだな!」
玲奈ちゃん一人に任せるには、やはり一層の教育が必要だ。
「そうそう、覆水盆に返らずとは言いますが、これって髪の毛にも同じ事が言えると思いません?抜毛頭皮に返らず。いかがでしょう。」
口論になると女の子には勝てないと言うことは26年間の人生で痛いほど知っていた。
俺の目がうるっとしていたことに気付いてか、言い過ぎました冗談ですごめんなさい。泣くとは思いませんでした。まだ福永さんは大丈夫です。とハゲましてくれた。
「もういい、今回の依頼は一人で好きにしてくれ。」
俺は玲奈ちゃんに嫌われているから、一緒に外に出たくないから、一人で解決したいだなんて言ったんだ。そうに違いない。
しかも俺の髪の毛はもうキテるという。うわぁ、もう、うわぁ。へこむ、すごく。
「福永さん、徹夜明けの私の5倍くらいひどい顔色してますよ。」
先程の謝罪はなんだったのか、今度はケタケタと笑いながらパシャリと写真を撮られた。
しかも、俺の写真を撮ったそれ、仕事用のタブレットじゃないか。