第6話 激突リオンvsアイビー
いつもより、長くなったので、その辺ご了承ください。
まずい.....
今のこの状況とあいつの言っていることから推測するに、まず援軍は期待できないと考えた方が正解かもしれない。
それに、今俺自身まともに動ける時間は限りなく少ない
その間にこいつを片づけなきゃいけないとなると
あれをやるしかないか・・・
問題は王女の部屋はそれなりに広く、奴の後ろに窓がある。
こいつにとっては、時間を稼げば、問題なし。俺はその間にケリをつけることが俺にとっての勝利条件だ。
おそらくこの魔法も何かしらの制限があるのだろう。こいつの魔法は強力みたいだが、こいつ自身がこの部屋から動かないのも、おそらく外の煙が自分にも影響のあるものだからだろう。
もし効かないのならとっととこの部屋から出ればいい話だしな。
しかし、この状況は今の俺にとっては最大の好機であることは事実
バレないように一撃で決める。
俺はあいつに近づき攻撃しようとしたが、まともに動けず、簡単に蹴飛ばされてしまった。
「チッ やっぱりまともに動けねぇ」
「おいおいクソガキ、接近戦しかできねぇみたいだなぁ。この状況でそれをするって事は、接近しなきゃ戦えないって教えてるようなもんだぞ」
「めんどくせぇ ココで解体しちゃうか、人を捌く悲鳴は最高に心地いいからなぁ」
男は相手を見くびるように俺を見下し始めた。
コイツ、自分が有利だと油断するタイプの人間だな。
現に俺の方に少しずつナイフを持ちながら近づいてきた。
俺は倒れながらも相手に人差し指と中指を指し、
「喰らいやがれ、雷光砲」
リオンの差した指から閃光が相手に一直線に向かい腹を貫通した。
そうこれが俺のとっておき
あれから5年俺はあいつを倒すため、いろいろな知識や技術を仕事を通じて学んだ。
武器の扱い方や道具の使い方そして魔法も
特に本来生来の魔法使いではない場合、魔法を行使するのには適性や知識を学ぶ必要があり、習得には非常に時間がかかる。
しかし、本来なら学校とかきちんと理論を学びながら使うのが基本らしいが、国元がなくなった俺の場合は覚えるためにいろんなやつから聴かなければならなかった。
できると出来ないじゃ貰える仕事の量も全然違うからね・・・
そうして独学でやっと覚えた技がこの雷光砲だ。コントロールはイマイチだし、撃つのにも少し時間はかかるが、
威力は折り紙つきの一級品だ。しかも・・・
(クソガァあのガキ、珍しい雷属性の使い手で、耐性があったから効きが悪かったてことか、クソ完全に油断した。しかもこの技、感電効果もありやがる。畜生うまく動かねぇ)
コイツをまともに食らわせれれば、相手をしびれて動けなくすることも出来る。
「任務完了。お前には色々聴かなきゃならないことがあるから覚悟しな」
「甘く見るなよクソガキがぁ」
やつはそう言って、王女に近づこうとし、近づかせまいと素早く追いつき
ガッ
という蹴飛ばした音が室内に響いた。
奴は窓の方に叩きつけられたが、最後の力を振り絞りながら窓の方へと向かい飛び降りた。
追いかけようとしたが、俺の意識はそこで無くなった。
あれから数時間後、意識を取り戻した俺は、ありのままをガザードたちに説明した。
どうやら、彼らは、いきなりあの煙を吸い込んで眠ってしまったらしい。
あの後、俺と戦ったアイツは、窓の下にはおらず、何処にいるのかは不明だが、無事、マーナ王女を守ることができたのである。
「済まない、お前のおかげで、任務を完遂できなかった。オレの失態だ!!殴ってくれても構わない」
「いや別にいいけど」
「殴ってくれよ、さもないとオレは自分を一生許せない気がするんだ!!!」
.....こいつMなのかよ
というか素直にめんどくさい
周りも白い目でガザードを見て、ネストは我関せずを貫き通していた。
「まぁまぁ別にいいじゃないか、それはそれこれはこれとして、とりあえずは、素直に喜ぼうぜ」
「まぁ君がそういうなら仕方がない。しかし・・・アバドンさんにはなんて説明しよう」
「ところで、そのアバドンは一体何をしているんだ?」
ロンディネが聞こうとした時、
「ごめんね君達、僕らが外に出ている間にまさか潜入されていたなんて思いもしなかったよう」
「外に出てたってどういう意味ですか?」
「それがねぇどうやら、城から数日前に変な人の出入りがあると聞いてねぇ、それを調べている最中にこの騒動が起きてねぇ」
「それを調べてる最中に今の出来事が起きたってわけ」
エリーは肩をすくめるように行った。
「でも、いろいろわかった事があるのよ」
エリーはこれまで起きたことを皆に説明し始めた。
それは大きく分けて3つの可能性が出てきた。
まずひとつめはこの国の貴族が、裏ルートで犯罪行為が多発するようになって始末された可能性。前王女はそれの取り締まりを指揮していた立場にあり、それを阻止すべく動いていた為、結果恨みを買い、始末されたという可能性
そして二つめは、金塊である。この町の特産品は農作物であるが、俺の元故郷の町は、山脈が多く、金塊は結構あったそうだ。それを亡国となった今、隣であるネイレス含む数多くの国々で、金塊争奪戦が勃発している為、それの影響をもろに食らった可能性
そして、最後の可能性は、国の秘宝とされている「月宝玉」と呼ばれる代物を狙っている可能性。この代物はネイレスのどこかにあると言われ、それまで見向きもされなかった物が、なぜか急に狙われるようになったからである。
「ところで、ブリッツ君を見ていないかい? なんか急に連絡つかなくて心配なんだよね」
「俺もミリターニャとクリスに連絡を取り合おうとしたのですが、なかなか連絡が来ず、困っているんですよ......」
ミリターニャって確か、白銀の妖精の20歳ぐらいの女性だったよな。そばにいたクリスっていうのはちょっと華奢な女の子って感じの印象を受けたな。
「ったくあいつ....『僕は男だから大丈夫です』とか息巻いてた癖に何してんだか....」
.....訂正彼は男だったらしい
ってそんなふうに思ってる場合じゃなかった。
その時、護衛を代わりに務めていたキャンサーが
「おいお前ら、大変だ、国王が行方不明になった。」
どうやら展開は俺らが思っているよりも早く動き出していたようだ。
「アイビーの奴はとりあえず回収した。コイツ3階から落ちてきたけど良く生きてたな.....」
「いや、大丈夫だろう、コイツ、結構頑丈だし、しかしコイツがいながら失敗とはな」
「ていうかコイツ、なにも聞き出せなかったのかい?」
「すみません..そちらの収穫はどうでした?」
「いや、こちらは良い成果を得たよ。」
「口は割らなかったが、なんとなくの目星はついた。」
「じゃあやはり....」
「あぁ、あの王女様が持ってるというわけだ。」
「俺らもそろそろ動く、アイビーの時と同じように頼んだよ。」
「承りました。西天会所属、美猴王様。」
近くには磔にされた国王が居た。
次回第7話 西天会です。