5)悪役令嬢、困惑する
今日は入学式当日ですわ。
私は朝から急いである場所へと向かっていますの。
それは、ヒロインとアレックス殿下が出会う、学園の中庭ですわ。
ゲームでは、入学式当日に学園に来たヒロインが広大な敷地の中で迷ってしまい、講堂に行けずに中庭でオロオロしている所をアレックス殿下に発見され、講堂まで連れて行って貰うというものですわ。
「確かこの中庭だったはずですわ」
中庭に到着した私は、その場を見渡して隠れられそうな場所を探していましたの。
「やあ、アンジー。新入生代表がこの時間にこんなところにいていいのかい?」
ああ、そのお声は…、
「ラクレット殿下、ごきげん麗しゅう。代表の挨拶でしたら問題ございませんわ」
そう、何故だか私が首席入学らしいのですわ。
ゲームだとアレックス殿下が代表として挨拶していましたのに…。
「そう。挨拶の心配はしていないけれど、挨拶をする人は早めに会場入りしていないといけないんだよ」
「え、そうなんですの?」
「うん、だから講堂に急ごう。まだ間に合うから」
「…はい」
ラクレット殿下は私の手をさりげなく取り、講堂までエスコートしてくださったのですわ。
イベントを直接見ることが出来なかったので、せめて確認だけはしておこうと代表挨拶の際に全体を見るのに合わせて、ピンクゴールドの髪を探しましたの。
…残念ながら見つかりませんでしたわ。
クラスに行けば会えるだろうと意気込んでSクラスに急いで向かったのですが、結局自己紹介の時間になっても現れず、ヒロインを見つけることはできませんでしたの。
自己紹介が終わり、解散になった後でアレックス殿下の様子を見に向かいました(何故かアレックス殿下とクラスが別ですの)。
アレックス殿下は学食にいらっしゃいましたわ。
ですが、殿下の隣に座り、腕を絡めている見覚えのない蛍光ピンクの髪の女性は一体どなたですの?
「殿下ぁ。あたしぃ、優しくってかっこいい殿下のことが好きですぅ。婚約者にしてくれるってぇ、ホントですかぁ?」
…?この女性は何を言っているのかしら。
アレックス殿下の婚約者はこれから陛下が決められるはずですわ。
「ああ、そうだ。中庭で一目見た時、ヒロイ―ナ、君こそ僕にふさわしい女性だと思ったんだ。僕には婚約者がいないから、父上に掛け合って婚約者にしてもらうよ」
アレックス殿下も何を勝手に…ああ、そういえばこの方はとんでもなく頭の緩い方でしたわね。
それにしてもヒロイ―ナ、ですか。
少しばかり警戒をしておく必要がありそうですわね。
ゲームのヒロインのアイシャは学園に来ずに一体どこにいるのでしょう。
ヒロインの捜索もせねばなりませんわね。
ああ、入学したばかりなのに忙しくなりそうですわ…。
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