2)ヒロイン、本を読む
1話に修正を行いました。変更点は前書きに記載してあります。
ほぼヒロインの心情です。
あとがきにヒロインの容姿について記載しています。
街の図書館に到着した。
レンガ造りの建物で、1階に一般向けの書籍、2階に専門的な書物が置いてある。
入館料は1回銅貨2枚だ。
パンが1つ銅貨1枚程だから高いが、得られる知識量から考えると十分元が取れる。
受付で入館料を支払い、早速目的の2階へと歩を進める。
天井まである本棚を横目に、館の中央にある螺旋階段を上りきる。
2階も同様に所狭しと本が並んでいる。
魔法の本を探していた時、1冊光る本を発見した。
手に取ると光は消え、本から伸びた鎖が腕に巻き付いた。
「え、何だこれ…外れない」
鎖は強固に巻き付いており、外れる気配はない。
本のあったところを見てもどこにも隙間はなく、この本は存在していなかったかのようだ。
中を見てみると、そこには魔法の呪文と、使用時の効果が丁寧に書き記されていた。
魔法に関してはこの本で学習することにした。
他の人には見えないようで、図書館から出る際にも何も言われることはなく、そのまま帰宅した。
自室で改めて読み込んでいくと、スルスルと魔法の知識が入ってくる。
ユニークスキルの魔法習得高速化の効果だろう。
母に呼ばれるまで気づかなかったが、集中していたお陰か、本に載っていた魔法はすべて覚えることができた。
覚えた魔法を使えば病気で死んでしまうはずの母を救うことができるが、治す前に母の意見を聞き、望む通りにしようと決意したのだった。
◇◆◇
それから数年が過ぎ、俺ことアイシャは15歳になった。
「お母さん。お母さんの病気が治せるって言ったらどうする?」
昨日突然倒れた母の看病をしながら、質問を投げかけた。
診てくれた医師によると、もってあと数日だそうだ。
俺は母に何も返せていない。
「あら、本当に?…ゲホゲホ」
咳き込む母の背中を摩りながら続きを待つ。
「ありがとう。でもね、お母さんはもう十分生きたわ。大事な貴女とあの人に会えたんですもの。ただ、貴女の結婚までは生きたかったけれどね」
そう言うと、母は少し残念そうに微笑んだ。
それから数日後、母は静かに息を引き取った。。。
◇◆◇
母の通夜が終わり、その1週間後には父親が俺を引き取りに来て、そしてゲームが始まる。
そうならないように、お店は従業員に譲った。
荷物は事前に必要なのを購入して、『無限倉庫』の魔法内に入れている。
15年の思い出が詰まった家を出て。
俺は、冒険者になる。
「育ててくれてありがとう、お母さん。行ってきます」
こうして俺の冒険者人生は幕を開けたのだった。
女ではなく、男としての。
読んでくださりありがとうございます。
ヒロインは母親の前でだけは女の子らしい口調で話します、なのでこれ以降はほぼ言葉遣いは乱暴です。
容姿について:髪はショートで茶色に染めていて、顔の上半分を仮面で覆っています。尚且つフードを目深に被っているので怪しさ満点です。
一度悪役令嬢視点でヒロインの来なかった学園の話を入れます。
攻略対象たちとヒロインを絡ませようとも考えていますのでお楽しみに。