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呪怨殺刀之舞  作者: 鬼宮 鬼羅丸
猟奇殺人事件開幕編
6/9

第一話  鬼ヶ原での変死 了

 これにて一話完結です

 ○○県鬼瓦市鬼ヶ原、そこには紅峰宮と云う大地主の大屋敷があった。大屋敷の奥、たくさんの襖がある「襖の間」の更に奥、古今東西あらゆる蔵書を誇る書斎があった。洋造りで木の床の一部に、血の海が広がり、醜い肉塊がぶち撒けられていた。

 それは、人の精神を、大変不愉快な気持ちにさせるものであった。全身隈なく鎖による痣があり、細切れに斬り刻まれていた。中まで斬られ、腸がぐちゃぐちゃに。まるで、粗挽きされた肉のように散らかるその様は、壮絶でその肉塊の苦痛を彷彿させる。

 それが元は男が女狐と呼んでいた女性とは誰も思うまい。

 

 場面は女狐が死んだ直後に遡る


 書斎に二人の黒いスーツを着た男女が現れた。しかし、紅峰宮家のものではない。にも関わらず日本でもトップレベルの警備をくぐり抜けてきたのだ。只者ではないことが伺える。

 二人共色白く、男は眼鏡を掛け、手には本を持っていた。

 そして二人の目つきは、猛禽類のように鋭かった。

 女性は銀製の小さなハンドベルを取り出し、3回短く鳴らした。甲高い音が辺りに響き渡る。

「トランスさん、人払いが完了しました。急いでください」


 女性はそう言った。トランスと呼ばれた男は、一昔前のフィルムカメラで写真を撮る、現像された写真は生前の女狐であった。

「紅峰宮・真由美、39歳、か。死亡時刻、○月✗日午後2時59分32秒、同時刻に魂未回収者リストに登記されているんだなぁ。実に興味深い、実に興味深い。捜査課の課長であるMe直々の指名に納得だねぇ。回収課にはとてもじゃないけど手に負えないねぇ」

 トランスはそう言いながら小さな金の鈴を何度も何度も鳴らした。小気味良い軽快な金属音が辺りに鳴り響く。

 すると死体から油が滲み出るように、灰色の煙が湧き出してきた。それを見て最初は軽快な声を挙げていた、トランスは次第に渋い顔になる。

「やっぱり人為らざる者の仕業だねぇ。人にこんなことをする術が…、ちっと、まずいな。この色合い、なんてこったい三界外交庁と上に連絡しないといけないなぁ」

 懐から、ガラス製の大きなボールペンのような機械を取り出した。複雑なレバーが沢山付いている。ノックをすると煙が吸い込まれて行く。そして何度もレバーを押し倒すと、カシュ、という甲高い作動音が辺りに響いていゆく。

 しばらくすると内部の煙が渦を巻き、この場所と、とある場所の風景が映し出された。それをトランスは目を見開き、食い入るように見つめた。

「あ、ありえない、ありえない。だってあれは。けど、もし、もしそうなら」

 そう呟くと、

「ミテリア君、未回収者リスト、貸してくんない?」

 ミテリアと呼ばれた女性は懐から黒い冊子を取り出した。トランスはそれを受け取ると捲り初めた。

「これが、事実だとすると、大事、です、よっと。やっぱりか。けど確証が欲しいなぁ。使いガラス使いガラス」

トランスがそう言うと虚空から黒い大きなカラスが、どこからともなく飛んで来た。そしてトランスの肩に止まる。トランスが嘴を優しく撫でるとカラスは嬉しそうに鳴いた。

「人魂管理部署監死課に鬼瓦周辺の天像を送るように伝えてねぇ。大体5日分くらい」

 カラスは、一声、一際大きな声で鳴くと、羽ばたき。どこかへ消えてしまった。それを見届けてからトランスはスマホのような黒い機器を取り出し何やら文字打ち送った。

 今まで黙っていたインテリアは口を開く。

「トランスさん、これは一体、何が!?」

 トランスは少し険しい顔をした。

「これはねぇ。長い間活動していなくてマークから外されていた、とある危険物による犯行?というかまぁ行いだ。しかしこれはすごく厄介だ。きちんと調査したら上ーーッ!?」


 トランスは何かに気づき背後を見た。

 その視線の先には人ならざる者共がいた。

 白い猫や、白いキツネをたくさん率連れる異形が。それは衣服を着た狐の化け物だった。旧日本軍の軍服を着るその姿はなかなかのが威圧がある。

 狐黒服の男女を見ると少し驚いた顔をした。

「冥府の犬は相変わらず鼻が利くようですな。まさか我々が出遅れるとは思いもしませんでしたぞ」

 トランスは慌てて頭を下げる。突然のトランスの態度にミテリアは驚いたが同じ様に頭を下げた。

 そうすべき相手なのだろうと判断したのだ。どう考えても人で無ければ、獣でも無い。

「何故、はるばる伏見からこの地にいらしたのですか?」

 頭を下げたまま、目線を上げ聞いた。

 化け狐や白い狐、白い猫たちは、京都の伏見から来た使いのようなモノなのだ。

「伏見より、この地の異変を調査せよ。と命じられて来た次第ですな」

 今まで死体を調べていた白狐は顔を上げると化け狐を見て口を開く。

「やはりあ奴の力です。残り香の匂いがする。契りを交わしたのでしょう」

 白狐は肉声で誰にでも聴こえる様に言った。

「やはり、どうやら我らの身内の手による異変でしたな。宇迦様に報告しなくては。失礼ですがそこの御二方。少し登記を見せていただきたいのですが、よろしいですかな?未回収者の、特に縁断近辺の」

 その言葉にトランス驚いた。自分の導き出した結論に一瞬にして辿り着くはれると思わなかったのだ。

 しかし蛇の道は蛇という言葉がある。

 トランスはミテリアに目配せをした。するとミテリアはリストを化け狐に手渡した。化け狐を受け取るとページを捲りだした。目当ての名を見つけるとようやく止める。

 そしてそれをようく見つめた。手を握って開くとミチビキの顔が描かれた和紙がたくさん出てきた。

 そしてそれを白狐と白猫たちに手渡した。

「良いか、お主ら。この子は若花紅角・美玲わかべにかど・みれい縁無えにいなし周辺の猫たちに聞き込みをしてください。後はカラス、できれば犬にも聞き込みをしてくださいな。目撃情報はすぐに使えるように」

 その言葉に白猫と白狐は頷くと書斎から姿を消した。

「どうやら、今回は我らの身内による事件のようです。長らく眠っていた神とその使いによるようなものでご迷惑おかけいたしました。我らは伏見に帰るのでお主らはここで引退って上に伝えてくださりませんか?桃幻郷の異変は桃幻郷で解決すると。では、われらはここで」

 そう言うと化け狐は書斎の外へと向かった。死体に近づくと右手首に当たる肉塊を手に取った。

「証拠としてもらいますが、よろしいですな」

 そう言うと、煙が風に巻かれるかの如く消えた。ミテリアはトランスに質問をする。

「一体何者ですか。あの者たちは?」

 トランスは肩を竦める。

「彼らは桃幻郷の警察のような存在でねぇ。その本部の伏見の者で僕たちで云う部署長クラスだろうねぇ。唯の自殺者である僕たちとは違い、彼らは神に仕える者。立場が違うし何より僕たち冥府の者は桃幻郷に干渉してはいけないんだよなぁ」

 トランスは遠くを見るかのような目で呟いた。

「まさか、長い間眠りについていたアレが使いをみつけるとはねぇ、世の中何があるか分からないなぁ。ま、何が何しようが僕たち死神の仕事は変わらないけどね。君は魂を集めること、僕は未回収者の捜査。至ってシンプルだ」

 そう今更ではあるが二人は死神なのだ。

 正式名称は、冥府行政機関・人界管理庁人魂管理部署東方分局所属人魂管理官。つまり、冥府、あの世に勤務する者なのだ。

「さて、僕は取り敢えず冥府に帰るとするよ。じゃあねぇ」

 そう言うとトランスは指を鳴らす。すると、影になり薄れ消え去った。



 ハァハァハァハァハァハァ

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


 ミチビキに連れられ鬼彦と契りを交わした男はこの半年間で豹変した。目は血走り頬は痩せこけ髪は抜け落ち鼻血を流している。そして男の内部からは、肉が裂ける音が聞こえた。

 これが鬼彦の言う代償でもありサプライズである。

 女狐を死に至らしめた呪いより遥かに強力で凶悪な呪いが男の身体を蝕んでいるのだ。

 ゆっくりとだが確実に死に近づいている。 

 内側から斬リ刻まれる、絶大な苦痛と、増えゆく鎖型の痣による皮膚が焼けるかの如く激痛が、同時に男を蝕んでゆく。しかも失神する事が出来ない。

 男はもう狂い理性は崩壊してしまった。


 女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐女狐ェッ

アイツが悪い、あいつさえいなければ、誰が悪い俺かあいつかそいつか

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いあは、あはは、あははははほはははははははははははははははははははははははは

 アレ人がいっぱいいるゾ


 男は無意識の内に人混みに向かっていた。丁度、人の多い逢魔譌時なのだ。

 それは、まるで身計らったかのように唐突に始まった。

 男の身体が一気に斬り裂け、血が吹き出したのだ。

 そして最悪な事に男の血に触れた者も皆、一斉に斬り裂かれ絶命していく。

 それに驚き周囲の人々がパニックになる。

 そしてさらにそれで飛び散る血に触れた者も死んでゆく。阿鼻叫喚まさに、地獄絵図である。

 これがもう一つの呪いの効力なのだ。

 負の渦の中、男は、


 アハ、アハハハハハハハ花火だ、花火だハナビダ。アレ?クラクテナニモミエナイナ。アレ、ナンデ???


 脚が取れて転がったのだ。仕方が無い。

 

 アハハハハナニモミエナイ ケド タノシカッタナ ありがとうお婆ちゃん






 


       最終総死亡者数、132名

 

 

 今回のテーマは家族の絆です。というより絆です。絆と言う名の人と人のつながりそれはとっても大切なものなのです。

 今回、男はそれを蔑ろにして壮絶な死をとげました。回想シーンである下の男の走馬灯で分かる様にお婆ちゃんが生きていた時、男の人生は輝いていました。しかし、遺産という物が絡む事によりそれは崩れます。

 

 実はこの話、作者の実体験を元に書いてます。


 皆さんはこの男のようにならないでくださいね。人は一人では生きていけない、弱い生き物なので。作者も気をつけます。

 では、次回の番外編てお会いしましょう♪


 あともう一つのテーマがあります。これは全話共通の予定です。

 さて、なんでしょう?

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