二話 『実力見たい!?』
「ルールの説明に入ります。意識を損失した者の敗北、自分以外の生徒を全員敗北にした者の勝利、バトルロイヤル式の模擬戦です。又、この体育館内では特殊保護フィールドが発生するので相手に大きな怪我をさせる心配もないので全力で構いません」
観戦室からどこかイキイキとルール説明をする俺たちの先生に対してクラスの奴らは……
「なんか面白いことになったな。こうなったら一位取るしか無いだろ」
と、リョウの様に意気込む奴らや……
「あぁ~最悪! なんで学園初日からこんなことになるのよ…………」
と、マキノの様に嫌々な気持ちの奴らとで分かれた。
「ちなみに最後まで残った生徒一名には、特別に各教科の単位を一つずつ上げます」
…………………………ちょっとやる気出た。
「「「「うおっしゃあぁ〜〜ッ!!」」」」
先生の思わぬ言葉にクラス一同が奮い立った。
そしてその原因の先生はホールの客席へと上がりメガホンを持っていた。
「それでは各自『魂合武具』を出し、戦闘準備を」
魂合武具、その者、その魂にあう武器を具現化させた武器。剣、槍、弓、杖など多種多様で所有者の血筋や前世などが大きく関わってくる。いわゆる「斬◯刀」だ。
それぞれが何も無いところから色々な武器を出していく。そんな中俺も武具を出す。
自分の胸元に一丁の黒い銃が現れ、俺はそれを慣れたように右手に取る。
その瞬間、周囲の生徒たちが少しザワつき始めた。そんなもの当たり前だ。現在、魂合武具の種類に現代武器など出した者は居ないからだ。俺以外は––––––
「先生、早く始めようぜー!」
周囲のザワつきに気づき先生に開始を求めるリョウ、こうゆう奴がモテるんだよ。
「涼、サンキューな」
「どういたしまして、なんか奢れよな」
涼に感謝の言葉を言いながら俺は武具を懐にしまう。そして、先生は開始のカウントダウンを始めた。
「3………2………1………始め!」
「先手必勝。【アクア…ストーム】ッ!」
試合開始と同時に誰かが魔法を放った。その魔法は体育館の中心に大きな水柱を出現させ、生徒たちを飲み込んで行く。
水柱が消えた後には30人いたクラスメイトが6人にまで減っていた。体育館の端っこの方まで飛ばされた様だ。俺は流されたけど運良く着地できた。魔法を行使したらしき人物は杖を持って俺たちの中心に居て、他の4人はそれぞれの方法で耐えたようだ。その中には涼や真木野もいる。
「うぉりゃ〜ッ!」
1人の小柄な少女がその体格より大きなハンマーの武具を地面に叩きつける。すると床から岩が槍のように飛び出し少女の近くにいた2人を襲った。襲われた2人はそれぞれ的確に対処し反撃に移る。
「【従魔召喚…魔牙狼】!」
いつのまにか召喚詠唱を終えた真木野が従魔を召喚した。真木野の足元に魔方陣が出現し、狼の姿をした魔獣5匹が出てきた。そしてその内 一匹が俺に襲いかかって来た。
「ガルルルッ………」
「待てッ!お座り!」
俺が右手を前に出してそう言うと魔牙狼は目の前でお座りをした。聞き分けが良いな。
「………お手」
「ワンッ」
そして魔牙狼の前に行き屈んでお手をさせる。
「ちょっと、ふれか!」
「えっ、何?」
「なんで手懐けてんのよ!」
何故か真木野が怒っている。真木野は改めて魔牙狼に「ふれかを倒しなさい!」と命令を出す。すると穏やかな魔牙狼が一変して牙をむき出しにし襲いかかってきた。
「うぉっ!………お〜よしよしよし」
ただ、俺の上に乗って来ただけであった。しかし、体制を倒された事に変わりはないが。
「あぁ〜もう! 何やってんのよ………もういいわ、戻りなさい!」
「何やってんだ?お前たち?」
真木野が呆れて魔牙狼を魔法陣の中に戻すと、いつのまにか涼が近くに居た。涼の背後を見ると残りの3人と魔牙狼4匹が倒されていた。なかなかやる。見た目ガリ勉のくせに武闘派なのだ。
「オラァ!!」
涼は槍の形状をした魂合武具で慣れたように攻撃してくる。それをフレカは手で弾く。
「相変わらず フレカの障壁はかてぇな、おい!」
「じゃあ降参してくんない?」
「やだね!」
「だろうな!」
先程より激しく攻撃を入れてくる涼。その横で真木野が召喚詠唱を始める。真木野の魂合武具は手帳の様な形状で契約した者を召喚し従えることができる。
「『来たれ!汝、古の契約をもとに我が元へ参られん––––【鋼鉄の巨人】!』我が敵を打ち倒せ!」
「ブォォォッ!!–––––」
鋼鉄の体を持つ巨人を召喚しフレカと涼に攻撃を入れる。二人はそれを察知し同時に避ける。
「【戦天…突雷】––––」
「貫け–––––」
涼が5mもあるゴーレムに飛びかかり迎撃をする。その身からは電気が帯びていた。それに加えフレカが懐から先ほどの魂合武具、『黒き銃』を取り出しゴーレムに打つ。
放った弾丸は風を纏っていた。その攻撃はゴーレムの右足に命中し、足を砕いた。二人の攻撃でバランスを崩したゴーレムは後ろに倒れる。
「うぇ、ちょっ!まっ–––––」
ゴーレムの後ろにいた真木野は下敷きにされ、気を失う。
残り二人。
「さて、あとは俺とお前だけだぞ、フレカ」
「…穿て」
「おわっ!?–––」
フレカが涼に向かって打つ。その弾丸は先ほどのとは違い雷を纏っている。涼は反射的に構えるもその攻撃は涼の魂合武具に吸い込まれた。
リョウ「雷属性?」
フレカ「雷獣、雷を身に纏う獣の魔族、だが、涼は元々魔力量が少なく、体外に放出は不可能。纏っていられる時間もごく僅か」
「なんだ、知ってんのか」
「だから魔力をくれてやった。全力で来い」
「ハッ!上等だ、いい加減お前とも決着をつけたかったしな。次の一撃でハッキリつけようじゃねぇか、俺とフレカ、どっちが強えかッ!」
両方、武具を構えて意気込む。
涼「【戦天…雷装】」
フレカ「物理保護障壁、最大」
涼はいつの間にか青白い甲冑の様な防具を着ていた。その防具は雷を纏っている。そして涼は槍に意識を集中する。すると、先ほどの【突雷】より強く激しい雷を槍が放ち始めた。
それに対してフレカは体に貼っていた障壁を可視化できる程まで強化し、自分を中心にドーム状に形成する。完全に涼の攻撃を受け止める様だ。
最初の方にやられた生徒はもう意識を戻し二階で観戦している。そのほとんど…いや、全員が見入っている様子だ。
「【激雷華】ッァァ!!」
そんな中、涼が今現在で使える最大と思われる技を使う。一度フレカから何歩か下がり、助走をつける。そして槍を構えて一瞬で間合いを詰め障壁に一撃を入れる。まさに閃光。目でもギリギリ追えるかおえないかの速度だった。しかし障壁は貫けず涼の攻撃はそこで静止する。
「終わりだな、爆ぜろ」
ふれかが涼に向かって放つ。その弾丸は炎を纏い涼に直撃する寸前で爆ぜる。
「ぐあぁっ!–––」
涼の体は吹き飛び壁にぶち当たる。普通の人ならば即死の勢いだが、魔族は人より頑丈である事を考慮してある。
その通りに涼は壁に埋まっているものの致命傷にはなっていなかった。
「痛ッてぇ〜、あーー口の中切っちまった」
「口の中だけで良かったな」
「うるせぇ、……また負けちまった。ふれかには」