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妹日記から始まる異世界侵略  作者: 遠野空
第七章 ゲーム世界?
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フォースが共にあらんことを!


☆六月六日☆

明日は秋葉原へ


明日はおそらく、お兄様と一緒に秋葉原へ向かうことになるでしょう。

どうやらお兄様は瑠衣の同行を好まないようですけど、こればかりは譲れません。

他のことではともかく、戦いに同行する件については、瑠衣はお留守番するつもりはないのです。だって、そもそも今の現状は、瑠衣に大きな責任があるんですもの。


誰も殺さないと軍部の人に言われたのを真に受け、瑠衣は侵攻実験はそう大した結果にはならないと思っていましたが、それは大きな間違いでした。

もはや瑠衣は、今度のことで本国の兄上と袂を分かつ決心がつきましたが、しかし自分が傍観していたことに対する責任は取らないといけません。

ですから、仮にお兄様に置いて行かれてしまっても、瑠衣は一人でも秋葉原に向かいます。一応、場所も地図で調べましたし……ここから随分と東で、思ったより遠かったですけど。



そして、皆殺し兄妹の片割れさんが新たにテレビに登場して、なんとこの国の住民全てに向けて、真実を暴露していました。

確か侵攻はまだ実験段階のはずで、あの暴露はアレクシア王家――つまりかつての兄上にとっても計算外のことだと思うのですが、あの方は何を考えてらっしゃるのでしょう。

少なくとも、ご本人の言葉通り、兄上の意向などあまり気にしていないように見えます……。


ただ、ミレーヌさんの参戦は、確実にさらなる地獄をもたらすように思います。

予兆は既にありました。

夜も更けた頃にいきなり濃い霧が発生して、屋敷の周囲を覆ってしまったのです。ニュースによれば、どうもこの霧は、都内全域に立ちこめているとのこと。


そして、このお屋敷の監視カメラで霧を眺めていたところ、なぜか一度ならず、巨大な物体が霧の中をよぎるのを見ました。

お兄様も見たと仰ったので、瑠衣の気のせいではありません。

あの大きな黒い影は、一体なんだったのでしょう……深夜になって、遠くで悲鳴も聞こえましたし、気になります。


……暗い話題ばかりなので、少し明るい話を。

お兄様が瑠衣の血を飲んでくださいました! いえ、元々瑠衣が無理を言って飲んで頂いたのですけど。

でも、嬉しいことに瑠衣の血はお兄様のお口に合ったようですっ。

これなら役立たずの瑠衣にも、「お兄様への血の提供」という協力ができます。


お兄様はそんなこと望んでらっしゃらないようですけど、瑠衣はまだ儀式のことも諦めていません。だって、どうしてもお兄様のお気持ちが知りたいのですもの。

瑠衣の血が、少しでもお兄様の活力になると嬉しいです……明日に備えて、今日はもう眠ります。

お休みなさい、お兄様、アリス。







 妹が寝付いたと思われる深夜、貴樹はまだ起きていた。

 いや、一度は眠ろうとしたのだが、瑠衣の血を飲んだことによる興奮状態がまだ続いていて、どうにも眠れなかったのである。


 そこで、また娯楽室に戻ってぼんやりとソファーに座っていたのだが……液晶画面でネットを見つつ、何気なくテーブルの上で手を動かした途端、なぜかぱしっとマグカップが掌に当たった。


「……お?」


 紅茶を入れたカップをしげしげと眺め、貴樹は眉をひそめる。

「今このカップ、勝手に動かなかったか?」

 その時、ロザリーと行った儀式のことが脳裏をよぎった。

 そう言えばロザリー曰く、あの儀式によってお互いがお互いを補完するのだとか……事実、ロザリーが持つヴァンパイアとしての超身体能力や飛行能力は、今や貴樹のものでもある。


 しかし……真祖の末裔たるロザリーの力は、実はそれだけではない。


 他のヴァンパイア一族には見られない、真祖の直系のみが有する特殊能力もあるのだ。

 向こうの世界で、ヴァランタイン家が全てのヴァンパイア達の頂点に立っているのは、なにも祖先の威光だけではないということだ。

 貴樹が見るところ、それはPK、つまりサイコキネシス(念力)としか思えないのだが、とにかく自分が触れずにガンガン物を動かしたり、敵をぶっ飛ばしたりということが出来る。


 博物館でグレンを高所の窓に叩きつけたのも、あの力だ。





「……もしかして、俺も知らないうちに同じことが可能になっている?」


 ふいにドキドキした貴樹は、試しにヨーダのごとく両手を広げ、眉間に皺を寄せて「うぅううううんんんんっ」などとわざとらしく唸ってみた。


 もちろん唸るだけではなく、テーブル上のPCはもちろん、マグカップや自分が座っているソファーなど、全てを対象に動かそうと試みたのである。

 途端に、ふわりと座っていたソファーが浮き上がり、同じくPCやマグカップが宙に浮く。

 予想したより苦労せずに、楽々とこなせてしまった。


「おぉおおおお」


 慌てた貴樹は、全てが天井にぶつかる前に力をコントロールし、なるべくそっと下降させて元の場所に戻した。

「なんと……異能力の基本中の基本……PKがついに俺のものに……」

 まあ、元々はロザリーの力だが、特に彼女が気を悪くすることはないだろう。それにこの分では、どうせ自分の風を操る力も、ロザリーの物になっているはずだ。


「はっはっは! フォースが共にあらんことをっ」


 調子に乗り、貴樹はそんなことを呟いていた。 

 真面目な話……明日は秋葉原へ特攻するつもりでいたが、少し希望が出てきたのではないか?


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