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妹日記から始まる異世界侵略  作者: 遠野空
第二章 侵攻実験の謎
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成りすまし妹の半裸告白

 上体がふらふらと揺れていて、危なっかしい。というか、二度目の今、よくよく見ると、顔も少し赤いような。

 そのふらついた足取りで近付きつつ、瑠衣はブラウスを完全に脱いで床に落としてしまう。もう全くの下着だけになって、貴樹の眼前に立った。

 貴樹は焦って片手を上げた。


「待て、瑠衣っ。俺達、兄妹だろ!」

 一度同じ展開を経験したのに、貴樹はやはり夢と同じセリフを叫んでいた。

 すると、夢見心地な瑠衣が微笑した……なんだかあまり定まっていない視線をこちらへ向けて。


「……いいえ、瑠衣は貴樹さんの妹じゃありませんわ」


 瑠衣の白い手が、そっと貴樹の肩に置かれる。

 嘘みたいに長い真っ白な右足が持ち上がり、かちんこちんになって椅子に座る貴樹の両膝をまたぐ。なんと、そのまま貴樹と向き合うように座り込んでしまった。

 膝の上に瑠衣の小さなお尻が乗っているわけで、感触としてはとんでもなかった。

 ていうか、こいつの吐く息、少しアルコール臭いっ。え、あんなちびっとのアルコールで酔ったってのか、こいつ。どんだけ酒に弱いのかっ。


 瑠衣の態度に説明はついたものの、現状、さほど役に立たなかった。

 止めるべきだと思うが、「もうちょっとこのまま」と貴樹が望んでいるのも、否定できない。

 しかし、肌に張り付くようなブラとショーツを間近で見ると、刺激が強すぎる。元々の身長が高いのもあるが、十二歳の色香どころではない。


「お、おまえな……限界に挑戦するジュニアアイドルじゃないんだから――」

 ようやく制止しようとしたが、少し視線を落とすと、ぴっちりショーツに目が釘付けになってしまった。微かに縦筋までわかってしまい、脳内が沸騰しそうなほどである。今自分は、本気で弱っているというのに。

「知っていますか、貴樹さん」

 人の気も知らずに、対面座位で座り込んだ瑠衣が囁いた。


「瑠衣は、故郷ではみんなに疎まれているのです……腹違いとはいえ兄もいます……なのに、あの方は瑠衣を見てはくれません。『おまえが早めに死んでくれれば、予は助かる』と、はっきり言われたこともあります。それに、兄の側近に乱暴されかけたことも」


「ええっ!?」

 途方にくれて聞くともなしに聞いていた貴樹は、飛び上がりそうになった。

 瑠衣は哀しい微笑を浮かべつつ、続けた。

「幸い、ドレスを引き裂かれたところで悲鳴を上げたお陰か、王宮の使用人が大勢集まり、瑠衣は助かりました。二年前のことです……まだ十歳だったんですよ、瑠衣は……まだほんの子供なのに、男の人って、みんなあんな野獣みたいな人ばかりなんでしょうか」

「うっ」

 そろそろ育ち始めた胸の谷間に視線を移していた貴樹は、慌てて目を逸らした。

 違う、これは違うんだっ。生理的に仕方ないというか!


「あれから……男の人はみんな怖くなりました。みんなみんな、不潔です。昨晩も知らないおじさま少佐に、嫌な目つきで見られましたし……初対面なのに」

「いやっ、俺はそんなことしないぞ!」

 本音がダダ洩れの酔っ払いに言っても仕方ないだろうが、貴樹は遅ればせながら抗弁した。

 茫洋とした目を合わせ、瑠衣がうふふと笑う。

「ええ、貴樹さんもちょくちょく見るけど、でもまだ遠慮がちですね……我慢しているのなら、もういいんですよ……我慢しなくていいんです……どうせ、瑠衣はそのうち死ぬのだから。まだ生あるうちに、ご迷惑をおかけしたお詫びをしませんと」

「おまえ、まさか自分の運命に薄々気付いて――」

 貴樹の言葉を無視し、はぁああと瑠衣が悩ましいため息をつく。


「一年もの間、貴樹さんを騙してきた謝罪をしたいのですが……瑠衣は自分の身以外、なにも持っていません……それならせめて、貴樹さんの望むことを……」

 いよいよ本格的に抱きついてきて、心ならずも二人で正面から抱き合う形になった。瑠衣の香しい頭が貴樹の肩に乗せられたせいか、花のような香りが充満する。

 あと密着する素肌の体温を感じて、動悸が激しくなってきた。控えめな……しかしちゃんと膨らみ始めている胸が貴樹の胸に押しつけられ、ブラ越しとはいえ、感触が丸わかりである。

 柔らかい膨らみがブラの中で変形して押し潰される感触まで、はっきり伝わってきた。




「こちらへ来て、初めてお外の学校へ通いましたが……少しも楽しくありませんでした……小学校も中学校も」

 人の気も知らず、泥酔妹が言う。

「皆さん、瑠衣のわからない名称を頻繁に口になさいます。お話ししても……境遇が違い過ぎるせいか、お互いに気まずい思いをするだけです。どんな世界に行っても、瑠衣に安らぐ場はないのですね。これまでで一番優しくされた記憶が……他人である貴樹さんだなんて……こんな寂しいことはありません」


「……瑠衣」 


 我慢強い瑠衣が、前に熱を出した時も一言も泣き言を口にしなかったこの子が、今、思いつくままに愚痴っている。ようやく瑠衣を普通の女の子のように感じることができて、貴樹は反射的に自分も瑠衣のか細い身体に手を回した。

 するといよいよ瑠衣のしなやかな身体を全身で感じてしまい、どっとうろたえる始末である。

 いかん、これ以上はもう後戻りできなくなる。

 自制心の限界というヤツだ。


「うふふ……やはり、貴樹さんも男の人ですね……なら、いいんですよ……これは贖罪ですから」

 少しだけ身を離した瑠衣が、空虚な笑みを広げ、唇を寄せてきた。

 貴樹は深呼吸して、ようやくピンク色の妄想を撥ねのけることに成功した。ずっと、瑠衣を抱き上げてベッドに運びたい衝動と戦っていたのである。


「俺は、樽みたいなおっさん少佐や、昔乱暴しようとしたそいつとは違うぞ!」


 気を張って瑠衣の瞳を見返すと、ふっと瑠衣が瞬きした。

「え……あら……貴樹さん……お兄様?」

「おおっ。ようやく正気に戻ったか!」

 貴樹がほっと息を吐いた途端、「る、瑠衣は……瑠衣は……」などと呟いたかと思うと、瑠衣の全身から力が抜け、ずるずると倒れ込みそうになった。

 慌てて抱き直し、痩身を支えてやる。

 いつの間にか、耐えがたいほどの欲望は貴樹から去っていた。


(た、たすかった……いろんな意味で)


 貴樹はどっと疲れが出て、深々と息を吐いた。

 全身、汗まみれだった。


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