愛の果てに。セブン
1.ワッフルの巣
種族人間ってやつは、どうしてこうも争いたがるんかね?
セブンを頭に据えて武装蜂起した雛もどきたちが翼をバタつかせて戦闘準備を進めている。
争う理由などないのだが、トップクラン【敗残兵】サブマスターの影響力は凄まじいものがあった。セブンが一声掛けるだけでこの有様である。
またか。俺は冷めた目でゴミどもを眺めている。またプレイヤー同士の足の引っ張り合いが始まるのか。
俺に他人をどうこう言う資格がないことは分かっている。モグラっ鼻に選民思想を植え付けたのは俺だし、ウサ耳どもの和平交渉を潰したのも俺だし、談合をやらかしてサトゥ氏を戦争に駆り立てたのも俺だ。プレイヤーを皆殺しにしようとしたこともあったし、実際にクソ虫どもと組んで皆殺しにした。その前にはミュウモールを率いて王国に攻め入ったりもした。
だが、人間一人の力なんてちっぽけなものだ。俺はたまたまゴールを決める位置に居たってだけで、プレイヤーの一人ひとりの選択が大きな流れを作っているのだと思う。言ってみれば俺もまた時代に翻弄された犠牲者の一人なのだ。
今回、俺はノータッチで行くつもりだ。
表立って反戦派に回ると吊るされそうなので、目立たないようひっそりと、のらりくらりとやって行こう。
大体、勝ち目があるとは思えねえんだよな。
猟兵のクラスチェンジ条件はブーンに攫われたパーティーメンバーの救出だ。ブーンに攫われるためには、ブーンとの膠着状態を作ることが一番確実だと言われている。膠着状態を作り出す上で最も重要な役割を果たすのが僧侶と司祭だ。よってブーンに攫われるのは僧侶と司祭が多い。
救出チームの布陣はどうか。当然、狩人が多い。そりゃそうだ。狩人が猟兵になるためのイベントなんだから。そしてブーンの追跡には近接職の協力が不可欠。攫われる側より救出しようとする側のほうが多い。
つまり狩人と近接職の連合軍をヒーラー軍団で迎え撃つという形になる。
いや、無理でしょ。どう考えても勝てねえよ。喧嘩を売る相手を間違ってる。その辺、ヒーラーどもはどう考えているのだろうか。
俺は翼をバタつかせているヒーラー軍団を見渡し、そこに顔見知りの女を見つけた。いつぞやパーティーに混ぜて貰った僧侶っ子だ。バサバサと翼を上下して近寄る。
おい、本気で戦うつもりか?
僧侶っ子は俺を見てびくっとした。
「こ、コタタマ……さん」
えらく他人行儀だな。ああ、いや、そうか。前に会った時は俺、バンシーバージョンだったもんな。普段つるんでるメンバーは変装してもお構いなしに正体を看破してくるから、僧侶っ子の反応は新鮮だった。
しかし、やっぱあれかね。俺が復活したって割とバレてるのかな。まぁいいや。すっとぼけてみるか。
俺はシラを切った。
「コタタマ? ああ、よく似てるって言われるけど別人だよ」
「ほ、本物はひとまず否定すると聞いてます……」
じゃあどうしろってんだよ。
いいから質問に答えてくれ。仲間のクラスチェンジを邪魔しろってセブンは言ってるんだぞ。それでいいのか?
「ええと、ユーザーイベントみたいなものだと思ってます。ヒーラーって前衛もこなせたほうがいいって聞きますし、対人戦の練習になるかなぁって」
そりゃあ前衛に混じれれば最高だろうけどよ……。俺は言葉を濁した。
ヒーラーの理想形を挙げるとすれば、まんまリチェットってことになる。このゲームの魔法は術者を中心に円状に広がるから、術者本人は確実にリジェネ状態になる。
ヒーラーが前衛に混じるってのは、サッカーで言うところのゴールキーパーが攻撃に参加するようなものだ。リスクは高いが、正しく機能したなら強力な戦法になる。
アットムは……司祭にはなれそうもないからな。あいつロリコンであることを誇りに思ってるから。反省文を提出しても受理されないらしい。ついでに言うなら男だ。残念ながら野郎に傷の手当てをされても嬉しくないという非情な現実がネトゲーにはある。
ううむ。仲間と殺し合うことに抵抗はないらしい。前にGMマレが言っていたように命を軽視する風潮が広まっているようだ。
原因は死に慣れ、だろうな。
VRってことで最初は心理的な抵抗があったけど、慣れれば自害は移動手段の一つになっていく。何しろ痛覚がカットされてるし、プレイヤーとキャラクターの人格は必ずしも一致していない。何度も死に戻りしてれば、そりゃあ慣れる。
おっとセブンが演説を始めたぞ。
「儀仗兵と君主! 現在判明している最上級職だ! おそらくは四次職! もしくはそれ以上だろう!」
ヒーラーで考えると分かりやすい。僧侶のトップは法王だ。司祭から一足飛びに法王になるとは考えにくい。最低でも間に司教を挟むというのが検証チームの分析結果だ。
「俺は猟兵のクラスチェンジ条件を見つけたが! ハッキリ言う! ローラー戦術で三次職を見つけ出すのは無理だ!」
無理か。まぁそうだろうな。デサントの例もある。探しても徒労に終わるかもしれない。
セブンは翼をバタつかせて語気を強めた。
「だが最短ルートだ! 戦え! 戦いの中にしか答えはない! 抗え! お前たちはここに居る! たまたまか? いいや、そうではない! ろくにタゲを取らない前衛っ! 後衛はどうだ! 自分が活躍することしか考えていないっ! そうだろう!」
狩人は上級者向けの職業だ。【スライドリード(射撃)】は強力だが、選択肢が多いぶん一歩間違えば大惨事を引き起こす。要は、撃ち放った矢がどう飛んで行くかを知っているのは撃った本人だけなのだ。同士討ちなど日常茶飯事だと聞く。
もっともセブンはそんなミスはしない。ウチのスズキもかなりのものだと思うが、トップ3は次元が違う。どのネトゲーもそうだ。あいつらは何でもできる。
「だがお前らヒーラーは違うッ! どんな時も耐え忍んできた! 俺が認めるのはタンクとヒーラーだけだ! ならば戦え! ならば抗え! お前らを軽んじてきた連中は俺が撃ち殺してやる! 最短ルートだぁーっ!」
最短ルート大好きだな。コイツやっぱり何も変わってねえ。愛じゃ人は変えられねえってことか。
しかしヒーラーのハートはがっちり掴んだらしく、雛もどきたちが大歓声を上げた。そうかい。じゃあ俺も乗っておきましょうかね。
ぴよぴよっ。セブン! セブン! ぴよぴよっ。
2.開戦
観測手の真似事をさせられている。
のこのこと近寄ってきて俺に告げ口されてセブンにヘッドショットされて死に戻りした宰相ちゃんが吠えた。
「セブンーっ! 何考えてるんですか、あんたは〜!」
そりゃ吠えるわな。
ところがセブンはどこ吹く風である。
「遅い遅い! 遅いんだよ! 遅すぎる! 遅いぞっ、メガロッパ! サトゥからお前は何を学んだ!」
いやぁ、やっぱセブンは頼りになるわ。
ワッフルの巣は弓使い有利の地形だ。こちらは常に相手の頭上だから敵の動きがよく見える。籠城戦の強みってのがこれだ。弓矢の有効射程がまったく違う。
救出チームは遮蔽物を利用して接近を試みるが、上から見てると次にどこへ行きたがってるか筒抜けだ。俺が指定したポイントをセブンが正確に撃ち抜いていく。
今もまた、セブンがバラ撒いた棒手裏剣が敵軍の兵を十人ほどまとめて串刺しにした。
猟兵は狩人より魔力が多い。しかし一番の目玉となるのは【スライドリード】の拡大解釈だろう。
本来の用途から離れるほど魔力の消費が大きくなるようだが、ロックマンのラッシーみたいな使い方ができる。空中に固定した矢を足場にしたり、自分で撃った矢に飛び乗って移動したりだ。
もはや猟兵っていうか忍者みたいだな。
……だが敗色濃厚には違いない。セブンがどんなに強くとも多勢に無勢。一度に撃退できる人数には限りがある。
俺はこのまま目立たないよう働き、土壇場で寝返る。そのつもりだ。セブンの首を手土産にするのも悪くないな。くくくっ……。
「…………」
おおっと木陰に身を潜めた赤カブトさんが例のガラス玉みてえな目で俺を見ている〜。
こりゃダメだな。何言っても殺されそうだわ。俺はセブン側につくぜ。
俺は寝返りを諦めた。
仕方ねえ。こうなったら一発デカい花火を打ち上げるしかねえな。向こうの主力をまとめて叩けば突破口が開けるかもしれねえ。
俺はセブンに声を掛けた。
「目を使う。【心身燃焼】をくれ」
「使うとどうなる?」
硬直を誘える。
「標的は?」
全員だ。誰を殺すかはお前に任せる。
セブンの指示で僧侶っ子が俺にヒールをくれた。よし、これで……。
俺には、リジェネ前提の目の使い方ってのがある。回復が追いつかないからしばらくは失明するが。
俺はまぶたを閉じて視力の回復を待ってから、目を見開いた。
セクハラの魔眼……
北斎浮世絵・口寄せ。淫界降臨……。
俺はセクハラ界に住まうセクハラ神の影を召喚した。セクハラの嵐が吹き荒れる。老若男女に等しく降り注ぐセクハラの嵐だ。
俺の両目が潰れ、再生し、また潰れを繰り返す。その間にセブンは矢継ぎ早に棒手裏剣を投擲し、次々と敵軍の兵を葬っていった。
宰相ちゃん、劣化ティナン、赤カブトも死んだ。
一方、俺は男にセクハラした悲しい記憶との戦いに沈んでいく。ついに再生が追いつかなくなった。何も見えない。無明の闇だ。
ダメだ。悲しみの記憶に囚われるな。しかし神の力に頼った代償は大きい。楽しかった思い出がゴツい男の脚に塗り潰されていく。
落ちていく。アットムメスだけが俺に残された唯一の救いであるかのようだった。
俺はうずくまって目の回復を待った。一体どれだけそうしていただろうか。
僧侶っ子の悲鳴が聞こえた。
セブン……? ゆっくりと目を開ける。
セブンが血の海に沈んでいた。
血に濡れた剣を片手に一人の女が佇んでいる。
ポチョさん。
誰も近寄れない。僧侶っ子がガタガタと震えながらうわ言を紡ぐように言った。
「矢を、走っ、た……?」
ポチョが俺を見る。
「【スライドリード(射撃)】の欠点は、矢群の展開がパターン化に陥ることだ。そして、矢と矢を線で結んで行けば確実に射手へと辿り着ける」
……経験値の桁が違う。俺は改めて気付かされた。一体どれだけの地獄を渡り歩けば、これだけの怪物が生まれるんだ。
だが恐れている場合ではない。俺は僧侶っ子に怒鳴った。
「何してる! セブンに回復魔法を!」
僧侶っ子は動かない。動けない。近付けば確実に殺されると分かっているからだ。
ぢょんぢょんぢょんぢょん……
ブーンが鳴いている。
ワッフルは動かない。ゴミとゴミの争いにまったく興味がないようだ。
ワッフルの雛が俺たちをじっと見つめている。
ちゅん。小さく鳴いた。それはセブンの死を悼んでのことなのか。いや、まだだ。まだセブンは死んじゃいない。俺が死なせない。
セブン! 俺はセブンに駆け寄り、首を掴んだ。サトゥ氏がやっていたリジェネの移譲。どうやればいい? こうか?
できた。命の火が俺からセブンへと燃え移っていく。よし、セブンさえ生きていれば。セブンならポチョに対抗できる。
しかしセブンはぴくりとも動こうとしなかった。
俺はセブンの身体を揺する。おい、どうした? 傷は塞がった。目を覚ませよ、おい。
ポチョはきょろきょろとしている。
「ジャム、死んじゃったし……。た、たまには私が殺してもいいよね?」
くそっ、どういうことなんだよ。俺を殺すことで一体何があるんだよ。
俺はセブンの身体を引きずって後ずさりする。セブンっ、何してる! さっさと起きろよ!
僧侶っ子が悲痛な声を上げた。
「こ、コタタマさん。セブンさんはもう……」
だ、黙れ……。
僧侶っ子は黙らなかった。
「わ、私のヒールですから。分かるんです。蘇生魔法じゃないからっ、回復魔法だから……。失われたものは、もう……」
お前に何が分かる!
俺は吠えた。
俺はセブンと勝負をしてたんだ! 勝負してたんだよ! こんなっ、事故死みたいなのは認められねえっ……!
セブン! 何してる! 傷は治った! 目を覚ませよ! 俺は……!
僧侶っ子が怒鳴った。
「コタタマさん! セブンさんは死んだんですよ! 逃げてください! あなただけでも……!」
い、嫌だ。セブンを置いては行けない。勝負を。勝負の続きを……。
「コタタマさん!」
僧侶っ子の悲鳴。
ポチョが俺に迫る。剣を振り上げる。
俺は叫んだ。
「戻れ!」
念のために仕込んでおいた魔槍がポチョの剣を弾いた。いや、魔槍を弾かれたと言うべきか。
オートカウンター。ポチョの特技だ。死角からの攻撃にも対応しやがる。
僧侶っ子が一縷の希望を見出しかのように瞳を輝かせた。
「コタタマさん……!」
俺は僧侶っ子に命じた。
雛どもと一緒に離れてろ。少し派手になるぞ。
セブンは死んだ。俺がやる。
ポチョは嬉しそうだった。何がそんなに嬉しい?
「うふふ。ふふふふふ」
ポチョはころころと笑った。唇を指でなぞり、耳に掛かった長い髪を指先で払う。落ち着きがない。
ポチョは、感情が昂ぶると身体を揺すったり髪をいじったりと、じっとしていることができなくなる癖がある。
「カウンターが得意! 私たちは相性がいい。アットムより私のほうがコタタマの役に立てるよ? ね、コタタマ。ね」
元騎士キャラが何か言っている。俺は無視した。
ポチョ。聞け。
「聞く」
素直だ。
よし、いいだろう。俺は魔石を掲げた。セブンが握りしめていたものだ。セブンは最後まで諦めなかった。
上質の魔石だ。これほどの魔石を目にしたのは初めてだ。セブンは俺に託したんだ。
「ふうっ……!」
俺は粘土をこね、クラフトした魔槍を五本まとめて足元に突き立てた。
ポチョよ。こいつが俺の奥の手だ。クラフト技能の二段階目。ジャムジェムとやり合った時、俺の槍が飛んで行ったのは見たな? あれの強化版だ。
コイツはお前をどこまでも追って行く。お前のカウンターを潜り抜けるには手数を増やすしかねえ。だから五本作った。
コイツがお前の身体に触れた瞬間、お前には強力な逆補正が掛かる。満足に歩けなくなるだろう。
そうなるよう、俺が【戒律】を刻んだ。
どうやら俺は耐久度を削るクラフトが向いているらしくてな。
ハンター×ハンターの制約と誓約って知ってるか?
ポチョはコクリと頷いた。
「知ってる。スズキから借りて読んだ」
そうか。お前ら仲良いな。
そう。あれと同じだ。
メリットとデメリット。マイナスが大きいほど複雑な命令文を入力できる。
例えば、標的のセットには説明を要する、とかな。
そして今、条件を満たした……。
俺とポチョは対峙した。
ポチョはにこにこと笑っている。
「嬉しい。見ててね。私、がんばる」
最後に確認しておきたい。
ポチョよ。お前ががんばると俺は死ぬことになる。当然、スズキは救出失敗でクラスチェンジできない。それに関してはどう思う?
「スズキは別に太ってないと思う」
よし、日本語がんばろうな。
もう一つ聞きたい。いいか?
「うん。いいぞ」
素直だ。その素直さが命取りよ。聞きたいことなどない。俺は叫んだ。
「飛んで刺され!」
全弾迎撃したポチョは首を傾げて俺に質問を促した。
「なぁに?」
おぅ、そうか。なるほど。ち、ちょっと待ってくれ。質問だったな。ええと……。
……ええ? 俺は頭を抱えた。普通に迎撃されたぞ。ポチョのカウンターが凄いってのは知ってたけど、そういうレベルなの? 俺と相性がいいっつーか俺キラーじゃん。どうしたらいいの、これ?
煩悶する俺に、キラーマシーンがトコトコと歩み寄ってくる。
ま、待てよ。俺を殺すのか?
ポチョは頬を赤らめた。
「……ジャムじゃなくてもいい?」
意味が分からない。まったく分からない。俺はどうしたらいい。
考えろ。俺は諦めの悪い男。ドラクエ2のパスワードエラーに何度でも立ち向かった男だ。そう、【め】と【ぬ】の書き間違いを常に疑う男……。ポチョに不意打ちは通用しない。ボスキャラのギミックにも特定の条件下では無敵っていうパターンは割とよく見掛ける。それと同じなんじゃないか。つまりポチョの無敵状態は攻撃している時は解除されるんだ。そうに違いない。よぉし。
あ、無理だ。ポチョさんが溜めに入った。溜め攻撃だ。ポチョさんの溜め攻撃は速すぎて避けられない。ガード不可ってやつだ。
あー。うー。もるっ! どうしようもなくなったので、俺は奇声を上げてポチョに殴り掛かった。
「ふにゃあっ!」
ポチョのカウンターが走る。だが、その矛先は俺ではなく。
雛もどきが歓声を上げた。何を騒いでる? 俺は振り返った。
「いい腕だ」
セブン……。
棒手裏剣を迎撃したポチョを、セブンはつまらなそうに見る。
「先生はお前を保護したのだと思っていたが、それだけじゃないらしいな。ポーション、か」
セブン……お前……。
「よう、崖っぷち。厄介な女に目を付けられたな」
お前な……。俺はボロボロと涙を零した。生きてたなら、さっさと目を覚ませよ!
セブンは鼻を鳴らした。
「ふん……。まぁ誉めてやるよ。よく持ち堪えた。お前にしては上出来だ」
こ、これは勝てるんじゃないか? 完全に勝ちパターンに入ってる。
俺は希望の風が吹いているのを感じた。セブンも同じ思いを抱いているのかもしれない。俺と肩を並べ、ぼそりと呟く。
「同時に仕掛ける。俺に合わせろ」
あるいは俺は性急に過ぎるかもしれない。あるいはセブンも性急に過ぎるかもしれない。だが、二人なら互いに足を引っ張れる。二人なら並べる、もつれ合って転倒できる……!
俺とセブンは同時に仕掛けた。
どこからともなく棒手裏剣が乱れ飛び、ポチョへと襲い掛かる。止め撃ちか……!
でも、それさっき俺がやったよね。そしてダメだった。
俺とセブンはポチョの脇を駆け抜けた。
冷たい刃が首の中を通った感触があった。
生きてる? いや……これは魚の活け造りだ。綺麗に切られると細胞が潰れないから切られてもくっついてるっていうあれだ。
俺とセブンは顔を見合わせた。セブンの眼差しには俺を非難する色が混じっていた。
「アビリティ持ちだと? 聞いてねえぞ……」
聞いてねえっつーか、アビリティ持ちって何だよ。いや、ポチョのオートカウンターのことなんだろうが、アビリティっていう分類があることを今初めて知ったぜ。お前らは隠し事が多すぎるんだよ。死ね。
俺はセブンを罵った。セブンも俺を罵った。
「お前が死ね。俺より早く死ね」
そう、俺とセブンの勝負はまだ終わっちゃいない。
最後の一瞬。最後の一瞬まで意識を保ってたほうが勝ちだ。
首を落とされてからが俺たちの……本当の勝負の始まり……。
ポチョが剣を鞘に収めた。
俺とセブンの首がするりと落ちる。
ころころと転がった生首にワッフルの雛がちょこちょこと寄ってくる。俺とセブンの目玉が気になるようだ。
俺とセブンは目をかっ開いたまま死んだ。勝敗の行方は……。
これは、とあるVRMMOの物語。
同着ゴール。
GunS Guilds Online




