ポチョvsスズキ
1.エッダ海岸
ざざん…
砂浜に打ち寄せる波。
青い空と白い雲。
歩兵ちゃんがカニ歩きして横切って行く。
俺は言った。
「さすがに水着のチャンネーは居ねえなぁ……」
「カットぉー!」
『ギスギスオンライン』1巻発売を祝してPVを撮影している。
メガホンを手のひらにボンボンと打ち付けながら作家大先生がざんざんと砂を踏んで早足でこちらへ歩み寄ってくる。
「ちょっとちょっと! そうじゃないでしょ! セリフっ! 真面目にやってくださいよ!」
俺はコンビニ前でタムロするヤンキーのようにうんこ座りした。肩を怒らせているキャメル監督を見あげてウダウダと言い訳する。
俺は納得してねんだよ。こんなのは時間の無駄だ。キャミーよぅ……。PVを撮る。それはいい。ウチのスタッフを出すって言ってンじゃねぇか。なんだって俺だよ? 俺ぁ〜オメェー……ハッキリ言ってネカマだぜ? オマケになんだこの衣装? キャバ嬢じゃねんだからさぁ。
俺は自分の貧弱な手足を見てハァと溜息を吐いた。
やたらと肌の露出が多く、ラメが入った黒いドレス。こんなカッコして海水浴もあるめぇよ。
俺のバンシーモードはウチのちんちくりん一号ことスズキを参考にしている。それは……なんていうか照れだ。イチから女キャラを組み上げて理想の女になりきるのは楽しいっちゃ楽しいが、その姿を知り合いに見られるのは精神的にかなりクるものがある。コタタマくんって、そうなんだ、へー……みたいなね。それはキツいので、身近に居る女を参考にしたという言い訳を用意した。とはいえ、さすがにまんまコピーはマズい。スズキにしたって自分と同じ顔面をした女に迫られるのはイヤだろう。そういう可能性を加味して目鼻立ちに関しては特に寄せることはしなかった。どちらかと言えばネフィリアに似ているかもしれない。だからといってキャバ嬢みたいな服装が似合うかと言えば答えはノーだ。いっそ貧相さが目立ってガッカリ感が増しているように思える。
しかしキャメル監督は己の手腕に絶対の自信を持っているようだった。呪術廻戦の日下部先生よろしく俺の認識の甘さを嘆くように顔面を両手で覆って、
「ハァ……? 待て待て。なんも分かってないじゃん……」
お前、作家デビューしてチョット調子に乗ってるな。チャンピオン系列なんだからそういうのはやめとけよ。あと隙あらば俺にタメ口を利くのヤメロ。ちょいちょい俺を呼び捨てにしてるだろ。バレてないとでも思ってるのか?
クズ女は作家らしい小賢しさで開き直った。
「タメ口はダメなの? ですます付けるのは時間の無駄とか言ってるのに。人によって態度変えるのやめてくんない? イラつくんで」
お前……。いや、分かった。それでいいよ。ただし広めんなよ。お前はトクベツだ。人によって態度変えるのは当たり前だ。強い信念を持ってるからってヤクザに強く出るのは単に頭悪いだけだろ。
「あ、ふーん……。トクベツね。そうやって女をオトすんだ? 言っとくけど私をそういう目で見るのはやめてね?」
殺すぞ。もういい。お前が物事を考えながら生きてるのは分かったよ。アホ扱いして悪かった。で? なんだってお前は俺をメス扱いする?
「恥ずかしがんなって。いつもみたいに無自覚エロで行きましょうよ。コタタマはそういうキャラでしょ。無自覚スケベ炸裂させてこ?」
ハイそうですかって納得するとでも思ってンのか? 言葉を選べ。あのなぁ。それについてはお前の思い込みだぞ。俺はよくホモだホモだと言うが、別に本気でそう思ってる訳じゃない。大半の男はフツーに女が好きだよ。中の人が男でもいいってことはない。これは確実だ。そう、コーラを飲んだらゲップが出るくらいな。
俺はジョジョの台詞をパクった。キャメルにパクるならチャンピオン系列にしておけと言っておいて何だが、ここに居る俺の歴史は漫画化したらワンピースに匹敵するほど長い。今更になって気遣っても大して違いはないという思いがあった。
俺のバンシーモードが男どもにそれなりウケているのは知っている。しかしそれはしょせんファッションホモなのだ。……そうだよね?
人間という生き物は大なり小なり構ってちゃんだ。俺の推論は作家大先生をしてそれなりに腑に落ちるものだったらしい。
「なるほど……。その衣装は攻めすぎですかね? 解釈違いだったりする?」
おお、そうな。
俺は改めて自分の平らな胸を見下ろした。
平らと言っても胸筋はあるから微かな膨らみはある。元々偽装を目的とした姿だから少しは盛ってるかもしれない。あまりよく覚えてない。整形チケットを使うたびに細かく調整するのは面倒だから座標を決めて打ち込んでいるのだ。
男性時と比べて手足は細く頼りないが、それで特に不便に感じることはない。このゲームは男女でステータスが劇的に変化することはない。リーチの短さをシステム側で自動的にステータスを調整して補う仕組みになっている。足が短くなるぶん走力は落ちるが、腕力はむしろ上がっているかもしれない。筋力は筋組織の表面積で決まるが、それを言ったらティナンはどうなる? たぶん肉体の素材からして人間とは違う。ならば、その素材を一部位に適用すれば体格差をある程度は補える。そんなところだろう。
人間にとって大事なのは見た目だ。女性は男性と比べて皮下脂肪が厚いため、色白で、柔らかく、筋張って見えない。それは今の俺に関しても同様だった。
キャメル監督が未練がましく俺をじっと見る。
「カワイイと思うけどなー……」
俺もお前を応援したいのは山々だけどな、あんまりあからさまなのは逆効果だと思うぜ?
俺はそう言いながらスタッフから上着を受け取った。オーバーサイズのパーカーを羽織って続ける。
俺よかウチの子たちを使おうぜ。キャミー。お前は女キャラを描くのがうまい。
そう言って俺は波打ち際でキャッキャしているウチの子たちを見た。
正直なところ俺は人目にウチの子たちを晒すのはイヤだが、ポチョとスズキに関してはもう漫画に出ているので今更だった。
俺はオーイと手を振ってウチの子たちを呼び寄せた。
砂浜にしゃがみ込んで、全員で打ち合わせをする。その辺に落ちていた枝っきれで砂を引っ掻いて図示していく。
メインはポチョとスズキだ。ジャムとマグナはまだ漫画に出てきてないからお預けだな。お色気で客を釣るのが正しいのは分かるが……スマンが水着はNGだ。ここは譲れない。スズキは……ぶっちゃけ顔出しNGとかあるか?
スズキは人前で目立つのを嫌う。しかし難儀な女で、自分のビジュアルに自信がないとかではないらしい。低身長をイジるとキレるものの、あとに尾を引くことはない。とはいえ気遣いのできる女ではあるから、平気なフリをしているだけかもしれない。
以前のスズキとは違う。
彼女は成長した。ポチョという共通の趣味を持つ友人を得て、人生観に大きな変化があったようだ。
スズキはあっけらかんとしたものだ。
「ポチョと一緒なら別にいいよ〜。……水着はダメなんだ?」
俺をからかう余裕もある。
イタズラっぽく微笑みを向けられて、俺はサッと赤面してコホンと咳払いをした。誤魔化すように言う。
ポチョはどうだ?
暖かくなってきたこともあり、ポチョとスズキは薄着だ。海水浴気分でラフな格好をしている。
体育座りしているポチョは強く吹く浜風に長い髪を手で押さえながら、
「スズキを殺せばいいの?」
いや……。
何故そうなるのか。
俺が何か言う前に、ムッとしたスズキが反駁する。
「あっさり殺せるみたいに言うじゃん」
ポチョが不思議そうに首を傾げる。
「なんで? 私のほうが強いよ。スズキは後衛だモンね。私のこと、たまに後ろから撃ち殺すけど、一対一なら私は絶対に負けない」
「そう? じゃあ、やってみる?」
「いいよ」
マグちゃんが「あーあ」と呆れたように言って、キャメル監督に目を向ける。
「いいんじゃない? 撮っちゃいなよ。あの二人はチョットしたモンだよ。ジャムじゃ全然勝負になんないモンね?」
赤カブトがムッとして言い返す。
「家の中じゃ【全身強打】しか使えないんだモン。家の外なら私だって二人まとめて殺せるよ。私、結構【四ツ落下】使うの上手いんだからねっ」
αテスター時代を含めたら赤カブトさんの戦闘経験は相当なものだ。ともすれば廃人を上回るかもしれない。魔法剣士という器用貧乏になりがちなスタイルに彼女が適応したのはそうした背景もあるのだろう。
αテスターの記憶は必要に応じて開放される。それが俺の下した結論だった。
生意気に言い返した赤カブトにマグちゃんが「ホントか〜?」とダル絡みする一方、サッと立ち上がったポチョとスズキが砂を踏んで波打ち際に歩いていく。
あ、こらっ! 俺はとっさに止めようとしたが、キャメル監督に腕を掴まれて座らされる。
「いい画が撮れるかも」
お前な……。
俺は文句を言い掛けるも、We.TVのスタッフたちも乗り気だった。
「社長はどっちが勝つと思います?」
そりゃ……ポチョだろ。遮蔽物がない。あいつはそこら辺のゴミとはモノが違う。矢に当たりゃしないよ。
妥当な予想のハズだった。スズキが弱いとは思っていない。弓矢とは兵器だ。おそらく銃器が戦史に登場する以前、人間を最も多く殺した武器は弓矢だろう。武士が弓取りと言われたように、武芸において弓矢の占める比重は大きかった。剣や槍よりも攻撃力が低いなんてのはゲームで植え付けられた認識だ。
弓矢は兵器だ。本来、剣や槍で対抗できるものではない。鎧で防げるのは味方に当たらないよう放物線を描くように放たれた矢の場合であって、水平に放たれた矢は薄い鉄板を貫通するほどの威力がある。
だが、それはリアルの話。
これはゲームだから、プレイヤーに武芸百般を要求しない。ログイン時間が限られたプレイヤーに複雑なことはできない。だから近接職に弓矢に対抗できる力が与えられている。
スライドリードというスキルがそうだ。
しかしスタッフは異なる見解を持っていた。
「社長はスズキさんを甘く見てますよ」
「ノーマルモードのモンスターだって彼女なら狩れる」
「ポチョさんも強いですけど……。パリメンだから全部知ってると考えてるなら……危ういです」
……お前ら本気で言ってるのか?
こうまで言われても俺は半信半疑だった。
We.TVはほとんど俺の手を離れた事業だ。俺は社長だが、社長の決裁がないと立ち行かないような組織の作り方を俺はしない。俺の知らないところで色々あったのだろう。だが、それでも俺はポチョの優位を疑わない。
ポチョのアビリティは知ってるだろ? オートアビリティ。最速最短の反撃ってのが何を意味するか分かってるか? ポチョは……。
俺が言い掛けたところで、二人のPvPが始まった。開戦の合図などというものはなかった。二人の間で公式ルールのようなものがあるのだろう。
2.ポチョvsスズキ
距離にして15メートル前後。
おそらく敵意の有無を判定しうる距離を基準としている。
前衛vs後衛の図式は単純だ。前衛が近付けるか否か。だが、スズキはおそらく前に出る。近接戦をこなせることもあるが……何よりポチョを崩すには短期決戦しかない。それがずっとポチョを見てきた俺の結論だった。俺なんかにも分かることがスズキに分からないハズがない。
スズキ……。お前はたぶん分かってるよな? ポチョは……ポチョの剣は……。
俺はスズキが不利だと思っている。だから心情的にはスズキ寄りだった。俺は持たざるもので、弱いほうを応援したくなる。
スズキはチームポチョの後衛だ。ずっと身近でポチョを見つめてきた。だからスズキの戦闘技術は、その多くがポチョに勝つにはどうすれば良いか……その一点に絞られてきたハズだ。何故ならスズキの知る最高の近接職がポチョだからだ。
俺は胸が締め付けられるような思いで二人を見つめる。
ポチョが砂を蹴って前に出る。腰の剣を抜いて、一直線に突進していく。身体を左右に振って的を絞らせないという戦法はスズキには通用しない。人間の身体は放たれた矢ほど素早く動けないし、スズキの射撃は恐ろしく正確だ。精密さで言えばセブンを上回るかもしれない。
15メートルあれば、弓職は一方的に近接職を撃ち殺せる。つるの反動で撃ち込まれた矢の速度は人間の反応速度をやすやすと越える。長弓であれば時速200キロ。プロ野球の速球派投手のストレートが時速160キロであることを考えれば、矢を避けるというのがどれだけ至難なことか分かるだろう。
まして矢というのは殺傷を目的としたものだ。始速と終速の差はボールよりも小さく、まさに目に止まらぬ速さで目標に到達する。気付けば死んでいた……誇張でも何でもなく、そうなって当たり前なのである。
だが、スズキはポチョに対して遠くから矢を射ることをしなかった。ポチョには当たらないと知っている。弓に矢をつがえて留め打ちする。
そうだ。それでいい。俺は爪を噛んで頷く。
無詠唱のスラリー(射撃)。射手のスズキだけが矢がどのタイミングで加速するか知っている。
スズキが矢継ぎ早に留め打ちを設置していく。
留め打ちは魔力を消費する。問題はポチョが付き合ってくれるかどうか。回り込んで攻めればスズキが仕掛けたトラップは意味を為さなくなる。その場合、スズキは引き撃ちに徹するしかない。
ポチョの唇が優美な弧を描く。笑ッた。ちょっと日本語が怪しいというだけで、こと戦闘に関して彼女は妥協しない。ざんざんと砂を踏んで構わず進んでいく。駆け足だが、全力疾走ではない。上体を起こし、いつでも剣を振れる体勢を維持したままスズキへと駆けていく。抜き身の刀身が強い日差しを浴びて光芒を放つ。
彼我の距離がぐんぐん縮まる。
スズキが弓を放り捨てた。鍔のない剣を抜いて前に出る。ナイフと言うには長く、剣と言うには短い。脇差しに近い。遠近両用のスラリーを使える弓職の上位職は近接用の武器を持つ。それは携帯性を重視したもので、近接職と正面切って打ち合うには分が悪い。
弓矢は兵器だ。近接職と打ち合う前提で大振りの武器を持つのは選択としてほぼあり得ない。人間の体力には限界があり、疲弊した筋肉は気合や根性では回復しない。
スズキが留め打ちした矢の射線を意識してやや蛇行する。そこまでは付き合えないとポチョがスズキの進路に身体を寄せる。スズキの口元が綻ぶ。凹凸が少ない目鼻立ち。幼なげな容貌が油断ならざる強敵を前にして妖艶さすら帯びる。
スズキの後方で矢が弾ける。ふんだんに練られた魔力に後押しされた矢は、俺の目を以てしても霞んで見えるほどの高速で日に熱された大気を切り裂いた。ポチョは反応できない。人体が対処できる域にはない。そうと分かっているからポチョは射線に身を置かない。
牽制の一射と共にスズキが仕掛ける。留め打ちした矢は残り二本。15メートルという距離ではそれが限界だった。低い姿勢から鍔のない短刀を振り上げる。
アビリティはとうに発動している。
スズキのアビリティは【日傘】。効果は隠密性の向上。それは近接戦において対戦者の意識の焦点をズラすような効果を発揮する。
対するポチョのアビリティは【星】。自動反撃の固有スキルだ。
スキルの別名は司法術。裁きの場で正邪を判定するように戒律が衝突し、可視化した陳述が黒い呪詛となって砂浜に焼き付く。
スズキのアビリティはポチョの剣撃の精度を幾らか削いだろう。それでもポチョの斬撃はスズキのそれを凌駕した。
白い糸を引くような剣閃。
ポチョのアビリティ……オートカウンターはジョンの剣術を模倣できる。人体が成しうる最短最速の斬撃というのは、そういうことだ。
スズキは鎖骨を絶たれた。服ごと切られたハズなのに胸チラしないのは特別な所有権が成した奇跡か。だらりと垂れた手から短刀が滑り落ちる。ポチョの斬撃は浅くない。致命傷だ。スズキが血を吐きながらポチョに組み付く。ポチョが目を見開く。アビリティを停止して身をひねる。オートカウンターに身を任せていたら負けていた。スズキの第二射と第三射が時間差で走る。第三射は大きく外れた。第二射がポチョの肩をかすめる。モンスターの巨躯を押し込むほどの威力だ。衝撃にポチョが剣を取り落とす。スズキがポチョの片足を取る。とっさに転倒を免れようとしたポチョが砂浜に手を付く。スズキの身体は軽い。体格の差をステータスの調整で埋める仕様は打撃戦までカバーできない。スズキの小さな身体は的が小さく、それゆえに即死を免れたが、それゆえに詰めを誤った。地に手を付けたポチョがスズキの身体を振り回して短刀から遠ざける。
スズキがポチョの身体を這い上がって、彼女の両頬を手のひらで挟んだ。胸の傷は深い。口腔からあふれた血がポチョの顔に垂れて、頬を滑り、砂地に赤い染みを作っていく。
ポチョの顔を見つめて、何事か呟いたスズキがフッと脱力した。
覆い被さってきた彼女の小柄な身体を、ポチョがはっしと抱き留める。
す、スズキ……。
スズキは絶命していた。
彼女の遺体をポチョが強く抱きしめる。
ポチョの青い瞳がみるみる潤んでいき、ぽろりと大粒の涙が零れた。
……PvPだ。残機を一つ失った。その程度の出来事に過ぎない。
それでも人の死はこんなにも心を揺さぶる。
ポチョは何も言わずに、掻き抱いたスズキの頭を撫でた。
ぐすっと洟をすする音がして、振り返ると、目尻に涙を浮かべたマグちゃんがサッと顔を逸らした。
彼女はもごもごと口ごもってから、
「な、なんかさぁ……。私らって、いつまで、こんなふうにしてられんのかな……?」
そのとなりで、赤カブトさんはひどく透き通った表情をしていた。
いつぞやのサトゥ氏を思い起こさせるような、超然とした眼差しをしていた。
「……いいな」
ぽつりと呟いた言葉に、マグちゃんがエッと言うように赤カブトさんのほうを振り向いて、すぐに目を逸らした。ややあって、おそるおそる俺のほうを見る。
俺の顔面は真っ黒に塗り潰されていた。
分かるのだ。俺の戒律が激しく活性化して蠢いている。
勝敗を超越し、生死さえ分かつことができないスズキとポチョの姿は一枚の絵画のように美しかった。
そこには永遠の輝きがあった。
戒律は生物的な死に強い意味を認めるルールだ。
それは、何もかもがあいまいなこの世の中で、唯一の絶対的な「価値」だ。
もしもそれが手に入るなら、他に何も要らないと思えるほどの。
ああ、そうか。
俺は唐突に気が付いた。
誰もが欲する魔石。天使の卵。死へと向かう戒律。全てが一本の線で繋がった気がした。
最高の魔石とは律理の羽のことだ。
ョ%レ氏は律理の羽を量産しようとしている。
量産して、どうする?
律理の羽は悪魔特攻の特性を持ち、後から生まれたほうが強いという妙なルールがある。
多くの羽を従える最高の律理の羽が誕生したなら……どうなる?
たぶん、それは神と呼ばれるものに限りなく近い。
そうなったら……。
NAi。お前はどうするつもりなんだ?
これは、とあるVRMMOの物語
退職代行かな……。
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