漫画家・キャメル 〜コタタマと印税どろ沼メタバース殺人事件〜10
15.キャメルの別荘-居間
ひとまずサトゥ氏は殺しておいた。
どんなに強かろうとしょせん人間である。
当然、瞬間移動はできないし肉体強度が劇的に上がることもない。
必殺の人間爆弾に対してヤツは為すすべなく爆死した。ザマァ。俺は勝ち誇った。
剣で打ち負かそうなどとヘタな色気を出すから人間離れした膂力だの何だのと低次元な争いが起きるのだ。そういうことは、せめて時を止められるようになってから言え。
クソ廃人の爆死により、ひとまず全員死んだので俺は満足した。
では本題に移ろう。
鑑賞会だ。
全員を居間に集めて、俺に黙って勝手にコミカライズした作家大先生の作品をみんなで読む。
キャメル先生の作品が読めるのは秋田書店のヤングチャンピオンWebだけ。
タイトルは『ギスギスオンライン』だ。
作者本人が同席していることもあり、俺はさも初めて読んだかのように感想を述べた。
このタイトルはどうなんだろうな? 今流行りの長文タイトルを一端の作家気取りで避けたんだろうが、シンプルすぎて工夫がないと言うか……何がしたいのかよく分からない。
とは言うものの、きっと作家大先生のことだ。俺などでは及びもつかない深謀遠慮あってのことだろう。いかに?
「いや、だって、あんたら、いつも下らないことで殺し合ってるじゃないですか」
……それはそうだけど、別に本気でギスギスしてる訳じゃないぞ。むしろうまくやってるほうなんじゃないか? なぁお前ら?
廃人くんたちがウンウンと頷く。
「殺すとスッキリするしな」
「そこまで行ったらもうそれ以下はないと言うか」
「血がブシャーってなって内臓ボロンって出ちゃったら許しちゃうよね」
グロいモン見せやがってという死者への怒りも昨今ではほとんど感じなくなった。なんなら芸術的ですらある。
ムッとしたキャメルが反論を試みる。
「このゲームのタイトルは縮めて読んだらGsGs……ギスギスに見えるっていうのもあるんです。ダブルミーニングって知ってます? それですよ」
そういうんじゃなくてさぁ、単純にもっとカッコいいタイトルにできなかったんかって。そう言ってんのよ。まぁいいや。今からタイトル変えます!ってワケにゃいかんしな。次行こう次。
今更タイトルに文句を付けても仕方ない。せめて連載が始まる前に俺に相談してくれれば良かったのだが、この作家大先生は俺に何の相談もなく水面下でコミカライズ作業を進めていたからな。
俺はペラリとタイトルをめくった。
ほー。先輩作家の紹介コメントか。ノゲノラ、デンドロ、シャンフロ。どれもアニメ化した作品だ。凄い力の入れようだな。雑誌ならともかく、Web漫画サイトでこういうのはあんまり目にした記憶がない。これは編集部の期待の表れだろう。良かったじゃないか、キャメル。
珍しく素直に祝福してやると、作家大先生は内心喜んでいるのを悟られないように唇を引き結んだ。謙遜して何でもないことのように言う。
「アマチュア時代に色々あったんですよ」
このクズ女は作家デビューする前から俺の記事を俺に無断で面白おかしく書き散らし、広告収入を得ていた前科を持つ。その頃からプロの作家と何らかの繋がりがあったようだ。まぁ精々がSNSで軽く取り上げられたとか、その程度の浅い付き合いだろうが。
そんな具合にネチネチと作家大先生の作品に細かくツッコミを入れていく。
物語は俺がクラン【野良犬】の皆さんをMPKでうっかり皆殺しにしてしまった場面から始まっている。当時、メガロッパやハチはまだこのゲームに手を染めておらず、漫画に登場するにしても随分先の話になる。そのため、すっかり安心気分で好き勝手に言える立場だった。
「コタタマがマトモなフリしてますね。このオトコは暗黒時代のプレイヤーですから、そこからスタートしたほうが良かったのでは?」
「ログインしてキャラメイキングして……って割と定番だもんね」
「ムリ。描けない。あの頃のことは。当時の出来事に私があまり詳しくないのもありますけど……聞いた話でもひどすぎる」
どんなゲームにも人が関わる以上、触れるのも憚れる出来事というのはある。特に漫画はエンタメだからな。
さらに言うなら、俺はゲームを始めてすぐにネフィリアに連れ去られて非道な人体実験みたいなコトされてて、ろくに遊べなかった。その結果、強化された目を手に入れたのだが、なろうで言うチート能力としては随分……その、しょっぱい。モンスターのヘイトコントロールができると言えば聞こえは良いが、別に強化された目がなくても、街中を歩いてそこら辺のゴミをガン見しているだけでナニ見とんじゃワレぇと昭和のヤンキーみたいなノリでゴミが寄ってくる。
漫画の3話から出てくるリチェットは得意げだ。
「この中で私が一番最初に出てるっ。サトゥじゃないんだ〜。へへへ。なんかゴメンな? オマエら」
何から何まで漫画で忠実に再現するのは無理だろう。端折るところ、改変するところも出てくるハズだ。それでも【敗残兵】メンバーで最初にリチェットを抜擢したのは、やはり華があるからだろう。
メニューを通して漫画を可視化したリチェットにしつこく「これ私」と自慢されて、ムッとしたサトゥ氏がキャメルにやんわりと手のひらを見せて言う。
「キャメル。ここの場面は俺でも良かったんじゃないか? 俺はザンヘイのクランマスターだぞ」
「ナニ言ってんですか。あんた、この時は領地戦の指揮をとってなかったでしょ……」
呆れて言うキャメルに、サトゥ氏は不服そうだ。少し考えてから思い付いたことを口にする。
「……いっそのこと俺を女キャラにするというのは?」
「……ナニ? ナニ言ってるの、この人? 怖いよ。助けて、メガロッパ」
コタタマくん殺害の罪をなすりつけ合ったことで二人の間には友情らしきものが芽生えたらしい。なんで? どういう理屈?
俺は何一つ納得できない。しかしそれは二人の共通認識であるらしく、メガロッパがやや砕けた口調で答える。
「サトゥさんはあなたの漫画を広告に使いたいんですよ。女性キャラなら出番を貰えると思ったんじゃない?」
サトゥ氏に関しては、男キャラ使ってる理由も結構ヤベーしな。たぶん漫画じゃ説明できない。時代に逆行してる。
MMORPGでは古くより男女の性別差はグラフィック面にしか表れないことが多い。
その差は、VRMMOにおいてより顕著なものとなった。男が女の顔面を全力でブン殴るのはあまりに見栄えが悪すぎる。人格面に問題があると見なされるのだ。さらにパンチラ殺法という圧倒的なアドバンテージ……。
それでもサトゥ氏が初期から一貫して男キャラを使い続けているのは、指揮官は女よりも男が向いていると考えた結果である。
男女平等が叫ばれる昨今、男女で機会を均等にしようという社会的な動きは、つまり現状そうなっていないということの裏返しでもある。
よってサトゥ氏はこう考えているのだ。
男は女に命令されるのがイヤな生き物なのだと。
Xで呟いたが最後、男女双方から激しく叩かれ炎上する考え方である。
もちろん俺は違う。俺はそんなことを考えていない。なんなら女性に命令されたほうが嬉しいくらいだ。俺以外の男は全員死んでいいとすら思っている。いつだって俺は女性の味方だ。
いずれにせよサトゥ氏は旧時代の遺物であり、この男の考えをそっくりそのまま世にお出しすることはできない。つまり逆説的に……? サトゥ氏を女キャラだったことにするというのはアリだ。
理由が定かでないのなら、男キャラのケツを見ながら遊ぶ理由が分からないというネカマ理論でイケる。俺にとっても悪い話ではない。このクソ廃人はやたらと俺に絡んでくるので、漫画の中でくらい幸せになりたい。
これは……? クソ廃人にしては素敵なアイディアなんじゃないか? そうだ。そうしよう。サトゥ氏。今日からお前は女になれ。俺好みの女にな。
サトゥ氏がキャメルのほうを向いて、目をかっ開いてパチパチと大きく瞬きした。美少女アピールだ。しかし男がやっても気持ち悪いだけだったらしく、キャメルが小さく悲鳴を上げて仰け反る。
「だ、ダメに決まってるでしょ!? 歴史がメチャクチャになりますよ! 私の手間をムダに増やすなっ!」
歴史ぃ? そんな変わらんて。モンスターにブッ叩かれて死ぬのに男も女もねーだろ。
キャメルの絵柄は相変わらず可愛らしい。ムカつくが、可愛いものは可愛い。この絵柄なら血がピューッてなってモツがコンニチハしても多少は許されるだろう。ワートリなんかでも割と頻繁に人体がズンバラリするが、あれは戦闘体だからOKなのだ。同じことやってても絵柄がリアルだからダメという例は漫画業界で珍しくない。
歴史の改変を強く勧める俺とサトゥ氏に対して、キャメルは頑なに首を縦に振らない。主要な登場人物の性別を変えることに強い抵抗を覚えているようだ。そんな拘りは捨てちゃえよ。いっそのこと俺含め全員女キャラにしてきらら系で行くっていう手もアリだと思うぞ。VRMMOモノって結局は茶番だからな。SAOみたいにデスゲームにしないなら、割り切って別路線から攻めてみるのもいいんじゃないか。キャッキャしながら冒険したいよ。
まぁ実際に描いてるのはキャメルだ。彼女本人がムサ苦しい男を描きたいと言うなら止めはしない。好きにするといい。
さて。
俺はニコッと笑って本題に移る。
それでな、キャミー? 俺の報酬についてなんだが……。
俺は椅子をズリズリと引きずって、親愛なる作家大先生のすぐ横に移動した。キャメル先生の肩にガッと腕を回して親密さをアピールする。片手の指をパッと開いて、これから共に漫画界でやって行く相棒の顔面に寄せる。
5:5でどうだ? 物の本によれば作画と原作の報酬は折半と聞く。おかしな話じゃないハズだ。
俺の作家大先生と少し親しくなったからとメガロッパが余計な口出しをしてくる。
「それは漫画家同士が組んだ場合でしょ? コタタマは作画を手伝わないんだから、そういうのとは別だと思うケド……」
チッ……。知ってるよ、そんなこと。俺は内心そう思いつつ、にこやかな笑顔を崩さずに知らなかったフリをした。
そうなのか? 言われてみれば、確かにそうだな。じゃあ3:7ってトコか?
「そもそもコタタマって原作者なの? ちょっと違くない?」
俺はメガロッパの言葉を無視した。
キャミー。俺とお前で『ギスギスオンライン』を熱く燃やしていこう。協力は惜しまないぜ。お前は知らないだろうが、俺はたくさんの面白エピソードを隠し持ってる。単純な話なんだ。無償で良い仕事はできない。責任感は金から生まれるんだ。お前の重しを俺にも分けてくれ。二人三脚でやって行こう。
キャミーは……。
ばしっと俺の手を払いのけた。
「いいえ。コタタマさん。あなたにはやって貰いますよ。私のためにタダ働きをして貰います」
俺はニコッと笑った。言う。
レ氏か? レ氏の言うことを真に受けて、本気でそれが通ると思ってるのか? よく考えろ。キャミー。俺とお前は持ちつ持たれつ。今や運命共同体なんだ。SNSを甘く見てやしないか?
……このクズ女は何か切り札を持っている。俺はそれが何か知りたかった。クソ廃人どもは惜しいところまで行ったように見えたが、ついぞキャメルの口を割らせることはできなかった。ならば、もはや俺がコイツの口を割らせるしかない。
何を考えている? キャミー……。
果たしてキャメルは言った。
「コタタマさん。自分じゃ分からないんですか? あなたは、お金があったらダメになる」
チッ、コイツ……!
俺の視界の端にカメラを構えたネカマ六人衆が映っている。俺は強い焦りを覚えた。
そういうことか……! コイツ、金目当てじゃない! イヤ金目当てかもしれんが……想定以上に先を読んでる……!
これ以上、喋らせるのはマズい。俺はウオオと雄叫びを上げて一歩下がり斧を跳ね上げた。ズイと踏み込んできたキャメルが斧の柄を掴んで止める。
くっ、強い……! コイツ、伊達に前衛は張ってない!
ハチがハッとした。
「そっかぁ……」
俺は素早く計算した。この場で俺の味方をしてくれそうなのは……。
サトゥ氏! コイツを殺せ! コイツの漫画には俺が必要だ! お前なら……!
サトゥ氏なら分かってくれる。ペヨンを尋問していた時に見せたキャメルの立場を慮ったような態度。あれはキャメルの漫画がこのゲームの広告になると考えていたからだ。そういう割り切り方ができるサトゥ氏なら全てを理解した上で俺の味方をしてくれる。
サトゥ氏がスッと席を立つ。剣の柄に手を掛けたサトゥ氏の喉元に、メガロッパがぴたりと刃を突き付ける。サトゥ氏がニィッと笑ってチラリとメガロッパを見る。
「何か掴めたか? 苦労したんだぜ。お前は理論派だからな」
メガロッパがゆっくりと席を立ちながら答える。
「ええ。お陰様で。太い繊維と細い繊維。筋肉でしょう?」
なんの話をしているのか分からない。筋肉? 察するにスラリーの使い方の話だ。サトゥ氏はクランメンバーを自分と同じことができるようにと、彼らを殺害した。自分の剣を体感させるためだ。千の言葉を尽くすよりも有効だと判断したからクランマスターに返り咲いた途端に自分のやり方をメンバーに押し付けた。
だが、そんなこと俺にとってはどうでもいい。
サトゥ氏は今のメガロッパに興味津々だ。今の彼女がどこまでヤれるのか。それしか考えていない。使えない男。いつもそうだ。肝心なところで役に立たない。俺がやるしかない。
俺は重心を落とし、斧を掴む両腕に力を込めた。キャメルと力比べをしながら吠える。
キャメル〜! 考え直せ!
「考え直すとは?」
金だよ! 俺に金を寄越せ! 漫画ってのは金になるからな〜! ま、ヒットすればの話だが! 分かるよなァ!? お前は多少の稼ぎよりも俺を取るべきなんだよ!
キャメルが俺の斧を押し込みながらグッと俺に顔を寄せる。ささやくように言った。
「それで? そのあと、あなたはどうするの?」
キャメル〜! 言うな! それを言ったらオシマイだぞ……!
「コタタマさん。私はあなたをずっと見てきました。だから分かるんです。あなたは社会に不満ばかり。お金があったら……あなたは変わりますよ。じゃあ……変わってしまったあなたは、ジャムのこと、どうするの?」
くそっ!
俺は手元で斧を逸らした。拮抗が崩れて斧がすっぽ抜ける。つんのめって頭を押し付けてくるキャメルを俺は乱暴に押しのけた。苛立ちを隠さずに椅子を引き、ドカッとケツを落として腕を組む。
キャメルも俺のとなりに座った。
俺は指でトントンと自分の腕を叩く。
……金を持った俺が引退すると思ってンのか。
「…………」
キャメルは答えない。
確かなことは言えないし、彼女もまた悩んでいるのだ。
俺が間抜けだった。つまりは、そういうことになる。
漫画は当たれば大きな商売だ。キャメルからしてみれば、むしろ印税よりも俺を取るのは当たり前の話で、俺の協力があったほうが良いに決まっている。金にガメつい女だからこそ、そうするべきだった。ほんの少しでも成功する確率を上げたいなら絶対にそうするべきだった。
何故なら、この女は俺ではない。俺の主観で物語が進むのに、俺以外の人間が俺をうまく扱えるハズがない。
だから……そう。キャメルはその先を考えた。漫画家なら誰だって考えるだろう。鬼滅の刃みたいに大ヒットするかもしれないと。
都合の良い妄想だ。そんなことは分かっている。鳴かず飛ばずで途中で打ち切りを食らう可能性のほうが高い。では打ち切りに備えて次作の準備に取り掛かるのか? 連載中の漫画家が? バカげてる。そんなのは無理だ。できたら苦労はしないし、そんなことをしている余裕があるなら今描いてる作品に力を注ぐだろう。
打ち切られたら打ち切られたで、自分ではどうにもならないのだから、考えても無駄なのだ。
結局は同じこと。
キャメルは俺が煉獄さんのように400億の男になる妄想をしているし、そうありたいと願っている。だから、その先のことまで考えた。
漫画道を俺と共に歩んだ場合、俺の生活は激変するだろう。人も変わる。自分の作品が世に出て、多くの人間に認められるという成功体験は強すぎる。そうなれば、俺は確実に今の自分を保てない。と言うより……ゲームなどやっている暇はなくなる。
ああ、そうですか。そういうことですか。
結局はね? なるほど。やっぱり俺は正しかったんだなと。そういうことですか。
キャミー? では?
ウンウンと頷いてから水を向けると、キャメルはしっかりと正面を見据えていて、ウンと頷いた。
「コタタマさんが、もしもリアルにガチでヤバくなったら私が何とかします。それまで一緒にがんばろう?」
……そのさぁ、リアルガチヤバ保険路線、そろそろ何とかならん? 満期を迎えたいんだけど、こっちとしては。
でも、それはそう。キャメルが正しい。俺がリアルにガチでヤバくなったら、さすがにAI娘がどうこう言ってる場合じゃない。無事に満期を迎え、俺は保険金を手にする。俺は……たまたまコタタマっていうキャラを使ってるというだけで、社会で成功を収めるべきじゃない。だって、俺は今まさに欲で目が眩んでいた。見えていなかった。
ジャムジェム……パールマグナ……俺は、お前らよりも金を取ろうとしてたよ……。
イヤ納得できるかぁ! 俺はびょんと飛び上がって俺の印税を独り占めしようとしているクズ女の胸ぐらを掴んでガクガクと揺さぶった。
俺の印税だぞー! 夢の印税生活を返せー!
キャメルがカッと目を見開いて俺の胸ぐらを掴む。
「オマエ何もやってないだろー! 私の漫画だ! 描いてるのは私だ! ホントに大変なんだぞ! 主人公ごときが偉そうにするなー!」
言ったな! このっ……!
俺とキャメルは掴み合ってごろごろと床を転がった。レベル差でマウントを取ったキャメルの鉄拳が振り下ろされる。俺はすかさずキャメルの片腕を取るが、関節技の知識などないので押さえきれず、ヤケクソになって下から拳を振って応戦する。結果、俺の拳はクズ女に当たらず、俺はボコボコにされた。
カメラマンのイッチたちが慌てて凶暴な作家大先生を取り押さえてくれた。
俺はイッチたちに泣きつく。
ふえーん! イッちゃーん! 俺の印税がっ! 俺の印税が〜!
イッチたちは泣きつく俺をヨシヨシと撫でてくれた。
「いいじゃない。ペタ氏。協力してあげなよ」
「いざって時はぁ、俺らもペタ氏のこと何とかしてあげるからさ」
「リアルガチヤバ保険はペタ氏の貯金みたいなもんだから。ね?」
泣き喚く俺に、クズ女が算盤を弾きながら今後の連載について話を進めてくる。
「とにかく、そういう訳なんで。コタタマさんには5話と6話の監修をお願いしようかと。監修料はコタタマさんのリアルガチヤバ保険にストックしておきます。面倒なだけなんで契約とかはしませんけど、私を信じてください。なんなら税金対策で実際に払いたいくらいですけど、そんな保険は実在しないのでどうしようもないです。いや〜コタタマさんはカッコいいな〜。マグナさんとかツンツンした感じですけど、きっとこの話をしたらデレデレになっちゃいますよ? ヨッ、AI娘殺し! ニクいよ、この!」
そ、そうだな。しかもリアルガチヤバ保険って長い目で見たら俺に損はない訳だしな? つまり俺は実質的に印税をゲットしてるってコト? ただ終身保険だから使えないってだけで?
作家大先生が我が意を得たりとニッと笑い、スッと手を差し出す。
俺は彼女の手をガッと掴んだ。
よろしく頼むぜ相棒!
かくして俺は『ギスギスオンライン』の原作者に着任した。リアルガチヤバ保険とかヘタに突付いて納税しろとか言われたら困るから、表向きクレジットはされないが。
俺はヤケクソ気味に叫んだ。
よーし! がんばるぞー!
これは、とあるVRMMOの物語
積み立て金が増えるよ! やったね!
GunS Guilds Online




