漫画家・キャメル 〜コタタマと印税どろ沼メタバース殺人事件〜1
1.【学級新聞】クランハウス-居間
某所。
一人の女性がロッキングチェアに揺られながら軽食をつまみ、ワインを嗜んでいる。
優雅な暮らしぶりだ。
ロッキングチェアの傍らに小さなテーブル。手を伸ばせば届くそこでは、器に盛った氷にワインのボトルが漬けてある。
安心しきった様子でくつろぐ女性は、酒精を嗜むにはまだ幼く見える。
人種は判然としない。
サングラスの奥で細められた目は瞳が青く、背もたれに挟まないよう胸に垂らした髪の色は茶とも金とも付かない。
それらは西洋人に見られる特徴であったが、顔立ちは東洋の血を思わせる。鼻梁がなだらかな小ぶりな鼻と、柔らかな弧を描く眉。
容貌は整っているが、どこか未成熟で、よく言えばリラックスして見えた。
西洋人と東洋人の特徴を合わせ持ち……ハーフと言うには両極端で、どちらの人種から見ても「奇妙な」という印象に落ち着くであろう。
彼女の名前はキャメル。
その名は、キャラメル色の髪に由来する。
今、キャメルは韓国サーバーに居た。
現在の韓国サーバーは空前のハウジングブーム。自宅を持ち、家具や家電製品を配置し、好みの内装を施す……そうした家造りが一種のステイタスとなっていた。
ここ韓国サーバーは極めて特殊な歴史を持つ。
現地民のティナンと対立し、軍事力の組織化を許容しなかった。それゆえにGMマレとの対決に敗れ、【女神の加護】と呼ばれる強力なパッシブスキルを剥奪されている。
ティナンの後ろ盾を持たない彼らは、長らく拠点を築くことができなかった。
が、そうした状況に変化が見られた。
ティナンが暮らす街、要塞都市との和睦が結ばれたのである。
ティナンの傘下に降るということ。それは強大なる魔物の王、その一角たるニャンダムの眷属と見なされる。
これにより、韓国サーバーのプレイヤーは一定の権威を得た。正体不明の侵略者という認識が正され、あまり腹の足しにならない常備食へと劇的な昇格を遂げたのである。
自らの手で保管庫を建て、自らの足で保管庫に集まっていく常備食に対して魔物たちは寛容であった。
つまり……自宅を持てるようになったのだ。
期せずして訪れた空前のハウジングブーム。
これにあやかり、キャメルは韓国サーバーにて別荘を設けた。
対外的には、彼女が所属する【学級新聞】のクランハウスということになろうか。
キャメルは日本人プレイヤーだ。
日本のゲーム市場は世界三位。アメリカや中国には及ばないものの、ゲーム人口の多さから世界上位の兵力を持つ。が、ゆえに慌ただしく、いささか性急な面もある。それはキャメルの気風に合わなかったのであろう。
室内で日光浴に興じる彼女はのびのびとしていて、全ての心配事から解放されたかのような気安さがあった。
韓国はいい。
ここではゆったりした時間が流れる。
苦労した甲斐はあった。
家を建てるのは簡単なことではない。クラフトと呼ばれるスキルでだいぶ簡略化されるが、プラモデルのようには行かない。建築の知識が要る。
文化の違いから来るささいな食い違いをなくすために、キャメルはまず日本人プレイヤーの建築技師を探さねばならなかった。建築技師と言っても本職ではないから、資材はこちらで用意せねばならない。日程を調整し、人足を集め、人知れず国内を脱出する。全ては秘密裏に行われた。
巨人が闊歩し、魔族が跋扈する人外魔境を離れて、ようやくキャメルは本来の自分自身と出会えたような心持ちだ。
最高だな。韓国。いっそ、この国に骨を埋めてしまおうか……。
少し酔いが回ってきた。キャメルは心地良い酩酊感に身を浸しながら、ロッキングチェアの上で大きく伸びをして身体を丸める。
今頃、向こうじゃろくでもないことになってるんだろうな……。
地球で回収された律理の羽。
その所有権をめぐって日本サーバーは真っ二つに分かれて激しい争いを繰り広げた。
戦乱のドサクサに紛れて【羽】は行方不明となり……。悪名轟く詐欺師が所持しているという説や、悪徳プレイヤー代表の手に渡ったという説。はたまた【敗残兵】と【目抜き梟】の共謀説など。様々な流言がまことしやかに囁かれている。人知れず世界の命運を賭けたファイナルバトルがあったなどというアホらしい説まで飛び出す始末だ。
一方、韓国サーバーは平和そのものだ。いや、平和ってことはない。どこのマップに行っても少し深入りするだけで上位個体とエンカウントする。数が増えるとレイド級が間引きするのでギリギリ何とかなっているというのが現状で、マールマールなどは上位個体と眷属を全員まとめて圧殺し、極限まで凝縮した肉塊を食べるといった暴虐の限りを尽くす。彼らレイド級にとっての眷属とは、勝手に増えて勝手に育つエサでしかない。種族の限界を越えたことで、種の繁栄という生物としての本能が壊れてしまっているのだ。
だが、キャメルにとってそれらはしょせん他人事だ。外縁部なら安全という訳でもないが、危なくなったら逃げればいい。
落ちてくるまぶたを揉みほぐして、キャメルはぼんやりと天井を見上げた。
「仕事、するか〜……」
そう独りごちて、億劫そうにロッキングチェアから降りる。ふら付く足で居間を出ると、赤の他人が廊下にずらっと並んでいた。中には見知った顔も居る。
キャメルはパタンとドアを閉めて居間に戻った。床に二つ並ぶ自分の素足を見つめてポツリと言う。
「……夢なの?」
彼女は現実逃避した。VRMMO自体そういう側面があるので、二重の現実逃避はいっそ現実味を帯びて、足を生やした悪夢が信じ難い臨場感を以て肩を叩いてくる。
逃げ場など最初からないのだ。
彼女の背後で夢と現実を隔てるドアが開き、悪夢の住人がぞろぞろと居間に入ってくる。
彼らは一分の隙もなくキャメルを完全に包囲し、息の合った連携で手に持つクラッカーを一斉に鳴らした。
「作家デビューおめでとー!」
寸分の狂いもない唱和は弛みない訓練によるものだった。
紙クズを全身に浴びたキャメルは、あまりの感動に声も出ない様子だ。血の気の引いた顔面は蒼白で、自律神経に異常をきたしたように唇が震えている。
「なんっ……」
それだけ言って黙りこくる彼女に、悪夢の住人たちは判を押したようにニコニコしている。やはり訓練された動きで拍手喝采と共に口々に祝福の言葉を浴びせた。
「言えよな! 水臭いゾ〜!」
「俺たちとお前の仲じゃないか!」
「恥ずかしがんなって!」
「よっ、作家先生!」
「パーティーやろうぜ!」
そう言って彼らは、まるであらかじめ現場の下見を終えているかのように居間を飾り付けしていく。キャメルの隠れ家がパーティー会場に劇的な変貌を遂げるまで五分を要さなかった。
高飛びしてすっかり安心気分で居たキャメルは己の身に降り掛かった事態を飲み込めず、大して親しくもない女性キャラクターに肩を押されて特に逆らうことなくストンとお誕生日席に着席した。
「なんっ……」
なんっとしか鳴けなくなった家主に許可なく持ち込まれたパーティーグッズの数々を悪夢の住人……【敗残兵】クランメンバーが装着していく。
古式ゆかしいひげメガネを装着したリチェットが人数分のドリンクが行き渡ったのを確認して音頭を取る。
「キャメルの作家人生に! かんぱーい!」
ザッと掲げられる杯。機械のように正確で、一切のバラつきのなさが軍隊の敬礼を思わせた。
キャメルは口をパクパクしている。言葉もないようだ。停止していた脳みそが活動を再開したようで、ネカマ六人衆のカメラが自分の顔面に向いていることに気が付いて慌てて顔を隠す。
「か、カメラはダメ! 撮るな! コラ! 撮るなと……! ま、まさか生放送じゃないですよね!?」
ははははははは。
【敗残兵】メンバーは朗らかに笑った。
「笑うな! 答えろ!」
料理の数々が続々と運ばれてくる。
キャメルのツッコミが冴え渡る。
「出来立て!? 嘘でしょ!? 作ったのか……! ここで……! 私、キッチンに何度か出入りしたろ……! 不法侵入なんてレベルじゃない! 住まれてるッ!」
彼女が所属する【学級新聞】は報道をメインに活動するクランだ。フットワークの軽さがウリなのでクランメンバーは近接職が多い。キャメルもその一人だ。が、レベルはそれほど高くない。
廃人ともなればキャメルくらいのプレイヤーの死角に潜り込むことは容易い。スライドリードを応用して天井や壁に張り付くこともできる。
宴が始まる。
味のしない料理を口に運びながら、キャメルは気のない相槌を打ち続ける。
能面のような無表情とは裏腹に、頭の中では激しく思考が行き来していた。
何故だ……? 何故ここがバレた? いや、何故バレたかは問題ではない。問題はコイツらの目的だ。一体何をしに来た?
確かに……キャメルは持ち前の絵心で連載を勝ち取った。漫画のタイトルは「ギスギスオンライン」。とあるプレイヤーの日常を面白おかしく綴ったものだ。運営には許可を取ってある。取ってあると言うか……あのタコさんは権利がどうこう言うキャメルを「売れてから言え」の一言で切って捨てた。
契約書を書面で送っても無駄だろう。たぶん見もしない。運営と契約が結べない以上、このゲームを題材にした漫画を世に出すことはできない。そのハズだったが……なんか行けた。宇宙的な技術だろうか……?
このゲームにまつわる厄介ごとは、ほぼ全てが宇宙人のやったことで済まされる。自家用UFOに乗ったタコが当たり前のような顔をしてチェーン店の駐車場に着陸し、駐車券をタコ足で巻き取って堂々と店内で飲み食いし、食事を終えたあとに会計し、お客さん用の割引き券で格安になった駐車料金を支払って自家用UFOでゲートを通って帰っていく。エッジの利いた光景だろうに、誰も何も気にしない。そういうものだ。仕方ない。心ないユーザーによって通報され、政府に捕獲依頼は出されているハズだが、未だに街中を歩いているとたまに特徴的な自家用UFOが上空を飛んでいるのを見掛ける。
そういうものだと割り切った今となっては、YouTubeで地球外知的生命体の有無を議論している動画を見て、いつか会えたりするのかな〜とか考えたりする。そして、ふとした時に気付くのだ。もう会ってる!と……。
かくして無事にキャメルは漫画家デビューを果たすこととなった。
しかしタコはともかく。タコはともかくである。面白おかしく描かれたプレイヤーのほうは黙っていまい。キャメルの危惧はそこにあった。
とはいえ……【敗残兵】。コイツらなら何とかなるか?
【敗残兵】はゲーム廃人の巣窟であり、廃人とはリアルを捨ててゲームに人生を賭けている人種だ。多少、自分たちのことを悪し様に描かれても広告の一環として受け入れてくれるかもしれない。
そう考えると……むしろ自分は当たりを引いたのかもしれない。
キャメルは、このゲームを題材にして漫画を描いている。デビュー作が決まったからと、あとは用なし、ログアウトしてハイサヨナラとは行かない。ログインして取材を続ける必要がある。ならば、日本サーバー最強の戦闘集団【敗残兵】を味方に付けるべきだ。彼らの後ろ盾を得られるのは大きい。
小賢しい計算を終えたキャメルがニコッと笑う。椅子に落としたケツをこねくり回すようにくねくねと身をよじり、
「え〜? 恥ずかしいから黙ってたのにぃ〜。なんで私がここに居るって分かったんですかぁ?」
【敗残兵】きっての廃人、サトゥが答える。床に座禅を組んで瞑目して何やら怪しいイメージトレーニングをしながら、
「そりゃ分かるさ。くっ……セブンやるな。だが……。ブログで告知してるじゃないか。俺はお前らのこと結構気にしてるんだぜ」
……それは何故連載を知ったかの答えであって、キャメルの居場所が分かった答えにはなっていない。
サトゥは油断ならない男だ。何千、何万ものプレイヤーが競い合うオンラインゲームにおいてトップクラスの成績を残すには、一にログイン時間、二にログイン時間、三四がなくて五にその他だ。キャメルはサトゥの「その他」を警戒している。実際に今、ナメック星行きの宇宙船でクリリンと悟飯がやっていたイメトレ法をやっている。それが一体どういう仕組みになっているのかさえキャメルには分からないし、祝いの席でやることでもない。
得体の知れない男。意図的にはぐらかしている?
キャメルは標的を変えて、リチェットに探りを入れることにした。リチェットは【敗残兵】の現クランマスターだ。同性ということもあり接しやすい。
「リチェットさん! こんなふうに祝って貰えて感激です! 皆さんはエンフレに乗ってきたんですか? だとしたら、ちょっと申し訳ないんですけど……」
何度も同じことを聞くと警戒心を悟られる。交通手段から話を広げて目的の情報に辿り着くというプランだ。
わざとらしくならないよう演技を交えたのだが、それが仇となった。
リチェットは鼻をスンと鳴らし、
「気にするな! オマエの夢が叶って、私は嬉しい。それに……わ、私もオマエの漫画に出るのかな? なんだか変な気分だ。嬉しいような、恥ずかしいような……」
表向きの感情だけを拾われてキャメルの計画は頓挫した。そればかりか、リチェットに影響されて自分まで嬉しくなる有様だ。リチェットという女にはそういう資質があった。直情的で、裏表がない。大抵の人間はそういった人物に信を置く。
キャメルは懐疑心が強く、簡単に絆される女ではないが、この時ばかりは様子が違った。逃げ隠れるように国外逃亡したものの、きっと本心ではこんなふうに祝って欲しかったのだ。【敗残兵】を味方に付けるという小賢しい計算も後押しして、キャメルは追求の手をゆるめた。
作家という人種は、自己顕示欲なくして成立しない。リチェットは欲しい言葉をくれる女だ。話していて気持ち良くなれるから、彼女は自分の味方なんだと、心が勝手に騙される準備を始める。そうなって来ると、今度は味方を疑ったことに罪悪感を覚える。
キャメルは内心を吐露し始めた。正直に話せば、リチェットは許してくれると知っているからだ。それはたぶん無意識から来る甘えで、自然と満点の演技となる。しゅんと肩を落とし、
「でも、私、ホントは不安なんです。たまたま私だけうまく行って。みんなに嫌われちゃうんじゃないかって……」
リチェットがあっけらかんとして言う。
「そうか? 漫画を描くのって大変なんだろ? 私はやったことないから分かんないけど、ネットで聞いた話だけでも漫画家になりたいとはあんまり思わないぞ」
思え。夢のある職業だ。鬼滅の刃の作者は実は自分だった妄想くらいしろ。
ちょっとしんみりとしたが、宴は続く。
キャメルは嬉しそうだった。
2.逃げるもの、追うもの
リチェットらの祝福の言葉はキャメルのプロ意識に火を付けた。
プロの漫画家としてやっていくのだという強い思い。
自分はまだスタートラインに立っただけ。走り出すのはこれからだ。
走り出すには少々先行き不安な千鳥足で仕事場に向かう。
キャメルの別荘には執筆用の部屋がある。
執筆と言っても原稿を描く訳ではない。それはリアルでやらなければ意味がない。ネームも然りだ。
しかしプロットを進めるだけならば、ゲーム内で済ませてスクショを撮れば良い。アイディアは水物だ。思い立ったが吉日、である。
「むむむーっ」と変な唸り声を上げながら壁に手を付いてふらふらと廊下を進む。相当飲んだようだ。それは【敗残兵】のメンバーも同様で、パーティー会場の居間ではドンチャン騒ぎが続いていた。
アルコール耐性はキャラクターによってまちまちだ。体質に至るまで細かく設定していると言うよりも、どうでもいいことは「人それぞれ」という当たり前の仕組みを作ったほうが負担は少ないらしい。
VRMMOとは乱暴に言えばリアルの再現だ。リアルという手本があるのに、わざわざ別の言語で遠回しに表現するのは手間が掛かるだけという理屈だろう。プレイヤーに「できること」を作っていくのが地球のゲームなら、このゲームは「できないこと」を作っている。たぶん上から数えるのが早いか、下から数えたほうが早いかの違いだ。
そうした手抜きの仕様により、酒を飲むと飲まれるプレイヤーが居る。
メガロッパなどはその典型で、イメージトレーニングで死亡したセブンに「勝負しようよ! ねえ!」と声を荒げていた。
その傍らではハチがお姫様のように眠っており、可憐な酔い方に嫉妬したリチェットが「ハーッチ!」と可憐キャラ争奪戦を挑まんとして初手敗退していた。
一人、喧騒を離れたキャメルは頭が冷めてきたらしく、足取りがだんだん重くなっていく。
【敗残兵】がどうやってここを突き止めたのか。その問題が解決していないことを思い出したのだろう。
隠れ家の建設は万全の注意を払って秘密裏に進めていた。そのつもりだった。しかし関係者への口止めは本当に万全だったろうか? 渡航の際には顔も名前も変えていた。普段は意識していない歩き方の癖や何気ない仕草にも気を遣い、別人を装った。さらにダミーまで用意した。所属する【学級新聞】のメンバーにお願いして影武者になって貰った。……しかし考えてみれば余計なことだったかもしれない。さすがに自分の癖を真似ろとは言えない。なんのためにそこまでやるのか、という話になってしまう。資材の搬入はどうか? 物流を警戒して現地で調達したのだが、逆にこちらでは目立ったかもしれない。日本人が何かやってるぞ、と。それは日本サーバーでやってはマズいのだと、そういう判断材料になりはすまいか……?
疑えばキリがない。
隠ぺい工作というものは、どこかしらボロが出る。動けば痕跡が残り、痕跡を消すためには動かねばならない。人の口に戸は立てられず、動けば動くほど不確定要素が積み重なっていく。
揺らいだ自信が、自然とキャメルの動作を慎重なものにした。
足音を立てないよう執筆室のドアに近付き、振り返って床や天井に隈なく目を配る。追跡者は……居ない。いくら何でも怯えすぎだ。キャメルの肩から力が抜ける。安堵の溜息を漏らし、ドアノブに手を掛ける。ドアをゆっくりと開きながら、自分に言い聞かせるように独りごちる。
「まさか……そんなね?」
そのまさかだ。
執筆室には先客が居た。
キャメルは国外逃亡の発覚を恐れるあまり、この別荘の至るところに課金アイテムの防犯カメラを設置した。
そして、もっとも長居するだろう執筆室を兼モニタールームとしたのだ。
それら防犯カメラの映像を、革張りの椅子に腰掛けた人物が眺めている。くるりと椅子が回り、息を呑んだキャメルが目を見開く。その目が何故、と問うていた。
椅子に座る人物が口を開く。
「お前の想像したことは何一つ間違っていないよ。全てが答えであり、全てが正解だ」
そう……。
俺である。
飛ぶ鳥跡を濁さず。
しかし濁るのだ。飛べば、濁る。
俺は言った。
「会いたかったよ、キャミー。いや、こう呼ぶべきか。キャメル先生……」
これは、とあるVRMMOの物語
印税をめぐる世にも醜い争いが幕を開ける……。
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