対立、和解、労働からの解放
1.エッダ海岸
放浪者。
かつて各国サーバーで最強PKerと呼ばれた鎧武者のことだ。
その正体は第一陣のαテスターだった訳だが、その試験運用と言うよりは……ョ%レ氏の言動から推測するに……「散歩させていた」という説が濃厚だ。
あのタコさんウィンナーにとってαテスターは「前作の主人公」という立ち位置になるらしく、それなりに愛着を抱いているらしい。
あんよが上手とばかりに気分良く散歩させていたら、ブサイクが寄ってきてちょっかいを出してくるものだから、カッとなってやった……というのが真相なのではないか。
しかし当時のプレイヤーからするとどう見てもイベントキャラだったので、あまたの腕自慢がお散歩中の前作主人公に挑戦し、あえなく散っていった。
だからデータは揃っている。
望むと望まざるに拘らず戦闘プランはとうに出来ている。
不安要素があるとすれば、それは俺自身だった。
ミスコンを境にプレイヤーとガムジェムの関係は一変した。ガムジェムに宿る意思を感じなくなったし、光らなくなった。死んだんじゃないの〜?(CVコックカワサキ)と思わなくもないが、リリララじゃない人にボコられても俺はロストしなかった。ガムジェムの力は健在だ。
ともあれ、銀騎士の弱点は把握している。
まず……。
俺は海上に避難した。
一定の距離を保てば銀騎士は追って来ない。
俺は安全地帯からパウパウとレーザー光線で攻撃した。逃げ場はないぞ。どう動いても当たる。さぁどうする?
銀騎士はバッと飛び上がり、華麗に側転して全弾回避した。
くそがっ。なんなんだよ、その動きは。無敵時間とかズルすぎんだろ。
早くも計画が瓦解した。ならばと俺は他人に頼る。
ウッディや。どうしたらいいと思う?
(全力で行くか?)
いや、今のジョンにレーザーが当たるとは思えん。でも回避モーションに追い込めるのは大きい。
レーザー耐性なんてものが実装されてるのは、レーザーが強力な武器だからだ。実弾兵器よりも弾速が速く、貫通力が高くて、点ではなく線の攻撃ができるから切断も可能だ。
連携してやって行こうや。火器管制を任せていいか?
(やってみなければ分からないな。私はお前の脳を使って思考している。強引に並列思考することになる)
イケるだろ。人間の脳は普段10%くらいしか使ってないって聞いたことあるぞ。
(それは嘘らしいぞ)
……俺の脳を使って考えてるのに、なんで俺の知らないことを知ってるんだ?
(そう言われてみれば確かに。何故だろうな……)
ウッディにも分からないようだ。
分からないモンは考えても仕方ねえ。やってみよう。俺の脳を半分くらい使ってレーザーで小出しに攻撃してくれ。俺は残り半分くらいの脳を使って触手で攻撃する。
(できるか分からんが、やってみよう)
そういうことになった。
俺は枝分かれした触手を打ち出して銀騎士を攻撃する。銀騎士が刀で触手を切断した。強度が足らんか。しかし刀を抜かせることはできる。
銀騎士の二つ目の弱点。動きがトロい。
膂力は化け物じみてるが、走らない。
ただし……。
追って来ないと言っても、それはノンアクティブということ。攻撃すればヘイトはこちらに向く。
最強PKer。銀騎士がモンスターではなくプレイヤーであると見なされたのは、プレイヤースキルの延長上にあると思しきワザを使うからだ。
銀色の火を撒き散らして銀騎士がフッと消える。俺の頭上で銀火がボボボと燃える。俺は慌てて退避した。収束した銀火が騎士の輪郭を描き切るよりも早く白刃が一閃し、剣圧で冗談のように海面が割れる。
神出鬼没。消えて、現れる。これが厄介……!
ログアウトしたプレイヤーが別地点でログインするようなものだ。
海中に没した銀騎士が再び転移した。砂浜に現れ、俺を無視して黙々と歩いていく。
……俺は最強PKerと実際にヤり合ったことはない。動画やら何やらでその存在は知っていたが、俺がこのゲームを始めた頃には【敗残兵】の廃人三連星が三人掛かりで討伐を終えていた。
しかし、そうか。こういう感じか。
感覚は掴んだ。
ウッディ! やるぞ!
俺とウッディの連携攻撃。レーザー光線は当たらない。その前提で挑む。つまりレーザー光線を撃てば回避モーションを誘発することができる。回避モーションは固定だ。触手を当てるのはそう難しくなかった。
だが、これは……しんどっ。
思ったよりしんどい。なんだか人としてやっちゃいけないことをやってる感じがする。頭がパーになりそう……。
イイのが入った。吹っ飛んだ銀騎士を追う。考えないようにしていたのに、ジョンとの思い出が堰を切ったようにあふれる。涙があふれて止まらない。
ダッドは臆病なレイド級だ。
ヤツにとって重要なのは、種族人間が使えるコマであることよりも、プレイヤーが自分を脅かすことはないという確証だった。
だからジョンは、それを証明してみせた。
身命を賭して、安心していいんだとダッドに訴えた。
俺は知っていた筈だ。トッププレイヤーというのは、そういうことを相談せずに勝手にやる人種なのだと。
こ、この……バカぁ!
俺は触手を束ねて固めた拳をギリギリと引き絞って突進する。ウッディのレーザー光線。側転して回避した銀騎士に肉薄する。繰り出した拳をジョンは避けることができなかった。刀を抜くこともできずに大質量の拳を浴びて地に埋没する。鎧が砕け、脱落していく。俺は泣き喚きながら拳を振りおろす。何度も何度も。
ウウッ……! て、手応えが……おかしい。ヌルリとした感触。なんだこれは……と思うよりも早く、ヌウッと立ち上がった陰法師に圧倒されて後ずさる。
じ、ジョン……。
砂地に落ちた銀騎士の影からジョンのエンドフレームが出現し、俺の前に立ちはだかっていた。
俺は動けなかった。動けば死ぬ。身がすくんだ。ひと目で分かった。これはモノが違う。
(シンイチ! 逃げろ!)
ウッディのレーザー光線。影法師は避けなかった。闇に呑み込まれるようにレーザーが減衰し、影法師の体表に波紋だけ残して……消える。
ジョンのエンドフレームは「最強」という概念そのものだ。
俺は死を覚悟した。
しかしジョンは動かなかった。沈黙……。
俺はジョンの肩をガッと掴んだ。
まだ……そこに居るのか? ジョン……!
ステイシー! 作戦は中止だ! 見ろ! ジョンは生きてる! コイツは生きてるんだ!
希望は残っていた。クソキノコはジョンの身体を乗っ取ったが、エンフレを完全に支配することはできなかった。あるいはジョンの超人じみた技量や精神力が為した奇跡かもしれない。
俺はギクリとした。
林から飛び出したステイシーが砂浜にザンと降り立つ。……人体が為しうる跳躍ではなかった。
……おい。嘘だろ。なんで……カートリッジを使ってる? 待てって。見ろよ。ジョンは俺を斬ろうとしない。残ってるんだよ。生きてるんだ。コイツはまだ……!
ステイシーが刀の鍔を親指で押し上げて抜刀した。言う。
「ありがとう。コタタマ。あなたはジョンの親友だから、もしかしたら足止めできるんじゃないかと思った。あなたは私たちの期待に応えてくれた。本当に……ありがとう。もういいわ。下がって。あとは私たちに任せて」
【BOX】のクランメンバーが彼女のあとに続く。
変身を終えたジュエルキュリが砂浜に降り立った。小柄な身体を銀色の火が帯のように取り巻き、所々に鎧のパーツを身に付けていた。
「……もういいよ。コタタマ。あんたにできることはもう何もない」
銀騎士が前に出る。変わり果てた恋人とステイシーが再会した。キスや抱擁ではなく、噛み合った刀がギチギチとしのぎを削る。
どうしてそんなことをするんだ?
俺は理解できなかった。
説明の仕方が悪かったのか? 伝わってない?
まったく動こうとしない影法師と肩を組んでアピールする。
ほら! 見ろって! ジョンは魂まで売り渡さなかった! ちゃんと抵抗したんだ、コイツは! 戦う必要はないんだよ! 俺に任せとけよ! 得意なんだ、こういうの!
しかしステイシーたちは止まらない。爆発的に膂力を増したジュエルキュリを主軸に銀騎士を追い詰めていく。
俺は鈍感なフリをやめた。
責任だの義務だの……! そんなのは捨てろ! アホらしい! お前らが損するだけじゃねーか!
俺はジョンの味方をすることに決めた。触手をブン回して【BOX】の連中をなぎ倒していく。
砂浜に埋もれているタルの一つからリチェットがひょこっと顔を出した。俺はびくっとした。タルはどこにでもある。中に誰か居るかもしれないなどとは考えもしなかった。いや、疑ったとしても行動に移したかどうか。ドラクエの百倍か千倍くらいタルがあって、当たりを引いたとしても種族人間とエンカウントするだけと言えば分かるだろうか。そんなことに時間を費やすくらいならネットで熱い政治論をぶつけていたほうが幾らかマシだろう。
リチェットがチラッとステイシーたちを見てから、内緒話をするようなジェスチャーをした。
チッ! 分ーったよ! 俺は触手でタルごとリチェットを巻き取ってちょこんと頭に乗せた。
指示をくれ! 俺はどうしたらいい!?
タルから顔だけ出したリチェットがボソボソと言う。
「ジョン・スミスを助けるぞ」
リチェット隊長……!
味方が増えて俺は嬉しかった。
あんたならそう言ってくれると思ってたぜ……!
「……ん? ああ……また事情もよく知らずに頭を突っ込んだのか。オマエはいつもそうだなぁ。困ったヤツだ」
ん?
「カートリッジのことをあっちでは『協力者』と呼ぶ。協力者……サポーターだな。サポーターの製造は『会社』が担う。どこの、とかはない。儲かるからな。そういうジャンルがあるんだ。私はその邪魔をしたい。日本人プレイヤーが使い潰されると戦力が減るからな」
……安価版カートリッジの話をしてる?
「安価版……まぁそうだ。いいか、コタタマ。私が見るに、オマエの最大の弱点は自分がこうだから他人も同じように考えるだろうと思い込むことだ。ネフィリアも嘆いていたぞ。何度指摘しても直らないと」
いや……え? 俺、今お説教されてる? あとにしてくんない?
「まぁ聞け。これはビジネスの話だ。カートリッジ産業は日本人に向いてない。日本はキリスト教圏じゃないからな。同じ人間なんだから似たような考え方をするだろうというのは……とても乱暴な理屈で、やっぱりオマエの弱点だ」
ンなこと言われたって分かんねぇーよ! なに言ってんだタル女! とにかく俺はジョンを! オオッ!?
タル女に気を取られている間に露出ロリに接近を許した。
「邪魔ぁ!」
ギェーッ!
俺の触手が刀でブッタ切られた。一刀両断された訳じゃないが、反射的に避けようとした所為で切られたところに負荷が掛かってへし折れて吹っ飛んでいった。
変身したAI娘のレベルは300を越える。無視できない脅威だ。カートリッジを積んだステイシーたちも露出ロリほどじゃないが結託されるとヤバい。
ボボボと銀火を纏って現れたジョンがジュエルキュリに襲い掛かる。ジュエルキュリの刀が跳ね上がる。噛み合った刀がギチッと嫌な音を立てて離れる。澄み切った金属音が余韻を引いた。
「ははっ!」
ジュエルキュリが笑った。嬉しいんだろう。きっと彼女はジョンに最強のプレイヤーであって欲しかった。銀騎士となったジョンを語る時の彼女の口ぶりはどこか誇らしげで……。もしもジョンがもっと強い種族に生まれていたらと、考えたことは一度や二度ではあるまい。
この瞬間、ジュエルキュリの夢は叶ったのだ。変身し、人間を超えた力を振るう自分にジョンは付いてくる。それどころか追い抜かれそうな勢いだ。
この二人をこのままヤらせておいていいのか? 分からん。分からんが、俺はステイシーたちの邪魔をするので精いっぱいだ。ジュエルキュリの面倒までは見れない。そんな余裕はない。てか普通に狩られそうだ。アンドレ……! このクソ! テメェーだけはブッ殺す!
ジョンが納刀した。抜刀術か?
ステイシーがハッとして叫ぶ。
「シャーリー! そのワザはダメ!」
(牡丹は二度咲く……)
出せば確実に敵を倒せる。
一撃必倒の必殺技は……実在する。
その正体は強制二択だ。
表牡丹と裏牡丹。それら二つは一つの技だ。
無論、出せば倒せる……それほど剣術というものは甘くない。
しかしこれはゲームだ。
プレイヤーの肉体は厳密には人間のそれではなく、ただの人間よりも強く、そして速く動ける。
レベルを上げていけば、少しずつではあるが更に強化されていく。
しかし反射神経や思考速度といったものは大きく変化しない。
それらの乖離が必殺の瞬間を生む。
時間にしてコンマ数秒の世界だろう。
しかしジョン・スミスという男ならば、その瞬間を掴むことができる。
何故なら彼の家系は、人間の「平均値」を追求した一族だからだ。あるいはそれは「冒険家」という家業の副産物だったのかもしれない。
かの一族は技術の継承を才能に依存しない。同じことができるから正確に伝わる。失伝しないということだ。
表牡丹は最速の抜刀術だ。独特な構えから、弧を描かず、直線軌道で放たれる。刀の軌道に敵を置くというのが骨子だろう。そのぶんリーチは短い。が、速い。圧倒的に。
ジュエルキュリはジョンの刀の柄尻を手で押さえた。抜かせたら負けると読んだ、そのセンスはさすがの一言。しかし彼女はすでに詰んでいる。表と裏の強制二択。
ジュエルキュリが吐血した。
……肩、か! 肩を用いた打撃。それが裏牡丹。脇を締め、絞った肩は拳などよりもよほど硬く、しかも体幹と密接している。脚力をそのまま打撃力に変換できる。
ひとたまりもない。
脱力したジュエルキュリがジョンにもたれ掛かり、ずるりと滑り落ちた。
し、死んじゃった……。
良かったのか? 本当にこれで? 俺には何も分からない。でもジュエルキュリは満足げだ。
こ、ここら辺で俺はおいとまさせて貰おうかな……。
ステイシーがジュエルキュリを誉めた。
「シャーリー。良くやったわね。あなたは立派よ」
す、ステイシー?
「みんな! 私をジョンの元へ! 私なら勝てる」
そ、そうなんだ。じゃあもう少し邪魔しようかな……。
「コタタマ! どうして!?」
どうしてって……。
【私が手を貸してあげましょうか?】
あっ、NAi! NAiが出てきた! やっぱりなぁ。俺はお前のこと、やればできる女だと信じてたぞ。
NAiは俺を見てフンと鼻を鳴らすと、スススとステイシーに身を寄せた。
あっ、テメェ! 俺は天使隊の隊員だぞ!
【銀騎士は厄介です。この場で始末します】
ふんだ。いいもんね。そっちがその気なら俺はジョンを連れて逃げる。
おや、NAiがジョンを抱えてふわっと浮いていく。
……んん?
目の錯覚かな? NAiが二人居るような……。
ステイシー側のNAiが吠えた。
「き、キサマはナイツー!」
ナイツー!? ぷ、プルツーみたいな? ZZガンダムね。
NAiが、二人……? そ、そうか。最近のNAiは人が変わったようだと……。別人だったのか……。
ジョン側のNAi……ナイツーは黒髪黒目の美女だった。オリジナルのように気色悪く髪の色が変化したりしない。
【…………】
ジョンを抱えて、糸が切れたタコのように上空に舞い上がっていく。
ナイツーは、かつてチョイ役で出てきた天使版NAiと似ていた。似ている、と言うよりは……見てくれだけは良いNAiが黙って立っていればあんな感じなのだろう。
俺はNAiを見た。
NAiはギリギリと歯を食いしばり、充血した目で射殺さんばかりにナイツーを睨んでいる。
俺はナイツーさんに視線を戻した。
ナイツーさんは感情を表に出すことなく静かに佇んでいる。目に掛かった黒髪を指先で払う仕草に女性らしい繊細さを感じた。
……祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす……。
平家物語の冒頭部を吟じていると、NAiさんがナイツーのネガキャンを始めた。
【彼女はシステムが生み出した化け物! みんな、気を付けて! 私の見た目をコピーしたのはみんなの油断を誘うため! きっと中身はとんでもない怪物なんだから!】
システムが……? そ、そうか。そうだよな。確かにNAiの言う通りだ。髪が黒いのはヤツが天使じゃないから。きっと不完全なコピーなんだ。ョ%レ氏ならそんな半端な仕事をしないだろう。完全なコピーが無理だってんなら、そもそもコピーをしないハズ。このゲームのシステムが生み出した存在なんてマトモであるハズがない。マトモであるハズが……。
…………。
ナイツーの瑞々しい唇は固く引き結ばれており、無表情でありながら潤んだ瞳はどこか憂いを帯びているようにも見えた。
「私はオリジナルだぞーッ!」
オリジナルのNAiさんが屈辱に身を震わせて吠えた。
ああ、そんなダメっぽい叫び声を上げて……。俺は内心はらはらして見守る。
NAiがバッと片手を突き出す。出現した律理の羽が彼女を取り巻く。
「ま、待って! ナイたん!」
マレも出てきた。ナイツーさんを庇うように割り込むと、震える声で彼女の助命を嘆願した。
「か、彼女に罪はない……。彼女に罪はないから……」
ナイツーはガラス玉みたいな目でマレを見ている。何事か少し考えてから、スッとマレの後ろに隠れた。
「えっ」と虚を突かれたようにマレがナイツーを見る。……ナイツーはマレの羽衣を手でちょこんと摘み、じっとマレを見上げていた。
マレは……崇高な愛について、それはどういった形で迎えることが最適なのかを考えるべき時に差し掛かっていた。
視線を正面に戻せば、オリジナルのNAiが地団駄を踏んで悔しがっている。その多彩な表情はナイツーが持たないもの。闊達で、気分が落ち込んでいる時に引き上げてくれる明るさがある。しかし少し騒がしくもあり、ずっと一緒に居ると疲れてしまうかもしれない。
一方、ナイツーは無口で大人しい。部屋で読書をしているのが似合いそうだ。世間知らずな一面もありそうで、可憐ではあるが、一緒に遊んで楽しいのは一号さんのほうだろう。容姿は当然ながら一号さんと同じだ。それなのに表情がこうも違うだけで、まったく違って見える。
マレは「ふう……」と薄く吐息を一つ。よこしまな考えとは一切無縁な少女のように透明な微笑みを浮かべて慈しむように言う。
「ナイ。私の身にもなってください。あなたと同じ面立ちをした女性に、どうして冷たく当たれましょう?」
トゥルーエンドだ……。マレはトゥルーエンドを選択した。
NAiはプレイヤーの心を読む。マレは素早く次弾を装填した。
「口さがないプレイヤーは私を非難するでしょう。けれど、あなたと共に歩むのは私です。彼らではない」
NAi。騙されるな。アイツ、絶対に二種類のナイたんを楽しめて人生勝ち組とか考えてるぞ。
「たとえそうだとしても」
マレが俺たちの考えを読んだ。怖いくらい冴えている。
「それのどこに問題が? 私の喜びは、ナイの喜び。それこそが真実の愛です」
ダメだ! NAi! アイツもう二号さんの正当化に走ってる……!
NAiは……。
「ま、まぁ? 私と同じ顔した女に冷たくできないってのは、分からなくもない、かな〜?」
チョロい……!? こ、コイツ、俺らの心を読めるからって生ぬるいコミュニケーション環境に身を置きすぎたんだ……! 心を読めないマレに対してオモシレー女みたいなフィルターが働いて!?
NAiがブンブンと手を振る。
「ち、違う違う! お前らの言いたいことも分かるけど! じ、実際問題、じゃあどうするのって言われても、ほら……アレじゃん? ここは私が折れてやるしかないかなーって、ほら! それは確かにってお前ら!」
俺は認めねーぞ! ナイツーさんはこっちに寄越せよ! 一人くらい良いだろ!
「キショっ……! あーあ、やっぱヒューマンはダメだわ。その点、マレたんは言ってみればドリアードだからね。樹の精霊ですよ。心がキレイ。お前らみたいなグロい雑食とは違う。水と光なんだな〜」
オメェーほどじゃねーよ! 考えようによっちゃ地上最悪にグロいモン食ってるのお前だかんな!?
NAiはやれやれと肩を竦めた。
「あーはーん?」
ステイシーが「嘘でしょ?」という目でNAiを見つめていた……。
これは、とあるVRMMOの物語
どうやら私は……自由だ。
GunS Guilds Online




