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96話 獣神決闘 かみ合わないタッグ

「双方よろしいですかな?」

「いつでもいいにゃ」

「あぁ、問題ない」



 獣人族の審判が俺とレイラ、御子二人の顔を見て試合の開始を告げるために確認を取る。

 俺と――――確か分析で確認した名前はラライーナだったか……が、審判に準備が出来ている事を告げ、レイラともう一人の御子、シィナも軽く頷く。

 ラライーナの武器は薙刀っぽい槍で、シィナの武器は二つの短剣のようだ。


 俺達の準備が出来ている事を確認した審判がかなりの距離を取り腕を天に掲げる。



「それでは……獣神決闘最終試合――――始め!」



 審判の合図が響き渡った瞬間、攻撃を仕掛ける。

 


剣の鳴動(ソード・クエイク)!」



 俺が魔法名を唱えると軽い揺れが起こり、御子達がいる方向に向かって地面から剣の切っ先が顔を出すかのようにして突き立つ。

 だが、これだけで終わらせるつもりはない。

 あいつらのステータスとさっき感じた身も凍るような怖気を思うと殺す気でかからなければ絶対負けると俺の勘がそう告げている。



剣の嘆き(ソード・スフィア)!」



 次の魔法名を口にいた瞬間俺の頭上に多数の剣が姿を見せる。

 どれも 銅や鉄の剣といったこの世界ではありきたりな剣なのだが、数だけは豊富だ。

 本当は魔剣や聖剣などが使えれば良いのだが、そんなものを俺が精製出来ようはずもない。


 このソード・クエイクとソード・スフィアは俺がレベル上げの時に思いついたオリジナル魔法。

 ソードクエイクは創生魔法と地魔法の複合魔法で地面から剣が生えるかのように創生され、相手に剣の切っ先が突き出て襲い掛かるというもの。

 ソード・スフィアは風魔法と創生魔法の複合魔法で頭上に剣を精製させ勢い良く相手に放つ魔法だ。


 なぜ俺が他の属性の魔法を使えるのか?

 それはダンジョンでのレベル上げの際にシャティナさんに「イチヤさんの適正属性は火だけじゃなくて光ですね。あと練習次第で他の属性もある程度は使えるので練習して下さい。きっと今後役にたちますから」と言われ練習した結果だ。


 シャティナさんの言葉を信じて練習した結果、こうして複合魔法と言う形で役に立っている。ありがとうございます。シャティナさん。


 手を天に掲げると、俺の意思に従うようにしてソード・スフィアで創生された剣の高度が上がる。



「行け」



 俺の言葉と同時に掲げていた腕を御子二人に向かって振り上げると、ソード・スフィアで生まれた剣達が我先にと御子達に向かって降り注ぐ。

 かなりの高度に上がった剣は重力の影響も受け、かなりの威力になるはずだ。


 (ソード・スフィア)(ソード・クエイク)の攻撃にこれならさすがに傷の一つくらいは負わせる事が出来るだろ。

 正直これで終わってくれるならありがたいんだけどな……ダンジョン中層のモンスターみたいに。

 

 そう思い攻撃対象である二人を注視すると――――二人は平然と立ったまま、まったく気負った様子がない。

 すぐそこまで迫る天と地からの俺の魔法。


 ちょっと!? 身構えるなりしてくれよ! もしそのままでいるなら確実に死ぬぞ! 殺す気じゃないと勝てないと思って放ったんだから!

 確か殺しちゃったらこっちの負けになっちゃうんだよな!?


 さすがに殺す気で相手と対峙してはいるが、決闘という名の試合で相手を殺そうなんて思っていない。


 もし重傷を負わせてもヒール丸薬があるしな。

 だけど即死だったらヒール丸薬も意味ないぞ……どうすんだ!?



「あははは! 凄いねぇシィちゃん! 見た事ない魔法だよ! ねぇねぇ!」



 ラライーナがテンション最高潮といった様子で笑いながらシィナに話しかけていた。

 そんな話しかけられたシィナなのだが、冷めた……いや、蔑んだ目をララに向けている。

 あれ?お前たちって仲間だよな?


 

「……ララうるさい。早く対処して」

「あーし一人で!? 躱すのは簡単だけど、あの二つの魔法を同時に対処なんて無理だよ! 純度の高い魔消石、持ってきてないんだよ!」

「なぜ準備しておかなかった? 感心しない。ララ、反省」

「え~……じゃあシィちゃんは持ってきてるの?」

「持ってきてない」

「え!? なんで持ってきてないのにそんなに偉そうなの!? 反省ってあーしだけ? それは理不尽だよ~よよよ」

「嘘なきしてる暇ない。すぐ来る。しょうがないから私は上。ララは下を対処して」



 傍若無人を絵に描いたような物言いにぶぅ~っと一言鳴いたララがしょうないなぁといった表情に変わる。 

 魔法はすぐそこまで迫っていてもはや躱すのは不可能に思える距離。

 そんな距離でララは地面に槍を突き立てた。



「いくよ~、衝破しょうは!」

 


ラライーナが言葉を発した瞬間に突き立てた槍の先から地面が盛大に膨れ上がり爆発したかと思うような轟音が響く。

 地面から5メートルくらいの地柱が吹き出し、それによって俺のソード・クエイクが地柱に剣を精製したが、それがラライーナに届く事はなかった。



「ララ。派手にやりすぎ。空の剣が見えない」

「上はシィちゃんが担当するって言ったんだからがんばってにゃ」



 地柱のせいで姿をシィナの姿は確認できないが、不満そうな声がこちらに聞こえてくる。

 ララの声は全然心配する様子のない暢気な声で、シィナを応援している様子から俺の魔法はまったく脅威に感じていないようだ。


 カンッカカンッ!っと金属音が御子達のいる場所で響き渡り、地柱が治まる頃にはその音も止んだ。

 少しの間辺りを砂塵が辺りを包み込み、それも止む頃にはシィナが悠然と立っておりこちらを無感情の表情で見つめている。

 シィナの周りにはソード・スフィアで飛ばした銅や鉄の剣が二つに割れていたり、粉々に砕かれた破片等が散乱していた。


 ――――計47本精製して飛ばしたはずなんだが、まさか全部叩きおろされるとは思わなかった……やっぱりあのステータス値なだけの事はあるな……


 思わず敵ながら感心してしまい、シィナを見て気付く……今あの場所に立っているのがシィナしかいないという事実に、やばいと思った時には遅かった。



「英雄候補君、油断し過ぎだにゃ~っと!」



 どうやら派手に地柱を発生させたのは、姿を隠す意味も含まれてたようだ。

 話し方とかシィナとの接し方とかを見ていてこいつ、バカなんじゃないかと思ってたんだがやはり油断ならない相手のようだ。


 ラライーナが俺へと薙刀を振るって来たので、すぐに気持ちを切り替えて持っていた黒鋼の剣で受け止めたのだが、急だった為に足の踏ん張りが聞かなく盛大に吹っ飛ばされる。


 やばい! 追撃されたら確実に終わる! 


 すぐに立ち上がろうと体を起こそうとするが、思ったよりも威力があった為かなりの痛みが体を襲う。


 ヒール丸薬を飲まないとやばいな……


 あらかじめ準備してあったヒール丸薬を腰から取り出して飲もうとしたが、さすがにさっきのガムロデとのやりとりを見ていたラライーナがそれを許すはずもなくこちらへと突っ込んできた。


 ちくしょう。こんな事ならヒール丸薬は決闘が終わった後で渡せばよかったぜ……


 かなりの焦りでどう対処しようか頭を巡らせる。



「正直がっかりだにゃ~、英雄候補だって聞いてたから期待したのに油断してこんなあっさりと倒されるなんて……ホントがっかり……」



 失望を瞳に宿し、俺を見るラライーナ。

 そして体に痛みが走りこんな状態じゃ躱す事も出来ないだろうと向こうもわかっているようで、薙刀で俺の体に切りかかろうとする。

 

 まったくその通りで返す言葉もないわ。自分の魔法をまさかあんな風に返すとは思わなくて試合中だっていうのに驚いてこんな危機に晒されるなんて情けない……


 ――――これが一人だったら終わってたぞ。



「イチヤはまったく……油断しすぎだ」



 そう言ってレイラが俺とラライーナの間に割って入り悠然とレイピアを構えて薙刀とぶつかり合い、ギンっと金属音が爆ぜたのかと思う激しく打ち合う音が響く。

 本来であれば薙刀くらいの獲物でレイピアが打ち合えば壊れると思うのだが、レイラのレイピアにはレイラが武器強化を施している為、ラライーナの薙刀と渡り合えている。

 レイラが身体強化魔法を施したスピードを生かし、薙刀の絶好の間合いにならないようにとうまく立ち回りながら動いている。

 それだけではなく、何かを口ずさみながらもラライーナの攻撃を受け止め、捌き、躱す。


 何かを口ずさんでいたみたいだけどあれはたぶん詠唱だな。


 詠唱が完了したようでレイラが大きく飛び退くと魔法名を唱える。



業火インフェルノ!」



 魔法名が聞こえた瞬間、レイラの手元に半径2メートルくらいの火球が出来上がり、それがラライーナの元へと凄い勢いで飛んで行く。

 レイラの放ったインフェルノはシャティナさんに教わった彼女のとっておきの一つだ。


 さすがラライーナでもアレを食らえばひとたまりもないだろう。

 おそらく躱されるだろうが、時間が出来た。

 痛む体にムチ打って前もって前もって創っていたヒール丸薬を取り出し、口に運ぶ。

 今度はラライーナの姿を見失わないように警戒しながら。もちろんシィナにも気を配る。

 ヒール丸薬を飲むと痛みはすぐにひいた。


 俺がヒール丸薬で回復してる間にラライーナは大きく後退する。

 そう思っていたのだが、自身満々な表情でインフェルノを見ながら口を大きく開ける。



「これくらいシィちゃんなら余裕だよね! シィちゃんやっちゃって!」



 後ろには頼もしい仲間でもいるかのようにそう叫びながら振り向いたラライーナだったが、見つめる先には誰もいない。

 俺もシィナの方に視線を送るが、彼女はさっきの位置からほとんど動いていない状態でラライーナを見ていた。



「がんば」

「シィちゃん!?」



 たぶんラライーナの中ではシィナにこの魔法の対処をまかせてレイラを倒す算段でも考えていたのだろうが、シィナはそんな事考えてなかったようだ。

 もしくは考えていてもラライーナに思うように動かされるのが気に入らなかったか……


 どっちにしてもこいつらどうしてタッグを組んだんだ? これなら他の奴の方が上手く立ち回れたんじゃないのか?


 インフェルノがラライーナの目前まで迫るが、彼女は驚きの表情を浮かべるだけで、動いていない。

 次の瞬間――――インフェルノが直撃し、彼女は空へと吹き飛ばされた。

読んでいただきありがとうございます。

次の更新は4日の予定となっております。


少しでも面白いと思っていただけましたらブクマ、評価、よろしくお願いします。

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