表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/196

7話 人族VS獣人族

ドゴオォォォォォオオオオオオオオオオオオオンッ!


 創生魔法の特訓をしていると外から轟音が鳴り響き、王城が揺れた。


「一体なんだっ!?」


 俺は驚き創生魔法を中断し牢屋の窓から外を見るが、ここからじゃ良く見えない。


 一体何があったんだ?

 大体一ヶ月くらいここで暮らしているがこんな事は初めてだ。


 一度様子を見に牢を出るか?


 そう思った時、丁度アルが戻ってきた。


「アル!一体何が――――」


「王都の城壁が破壊された!獣人族が攻めてきてんだよっ!」


「っ!?」


 腹を押さえながらアルが大声で叫ぶ。彼もかなり焦っているようだ。

 とりあえず俺はアルに解毒剤を放り、事情説明を求める。


「それで何でそんな事に?」


 俺は気持ちを落ち着けアルに尋ねる。


「俺も良くわかってねぇんだが、城内が騒然としてて、慌ててる中に同僚見つけたんで捕まえて事情を聞いたらどうやら獣人族がこの国を攻めてきたらしい」


「王都の外を監視している奴はいないのか?」


「見張りはいるんだが、その見張りの報告によれば、”急に”獣人の軍勢が現れたらしい」


 アルは苦虫を噛み潰した顔でそう話した。


「そんな事がありえるのか?」


「俺もよくわからんが、そういう魔道具があっても不思議じゃないだろ」


「この世界のアルでもわからないことがあるのか」


「魔道具に関しては門外漢だ。むしろかみさんの方が良く知ってるよ」


「私の予想なんだが、たぶん光霧コウムの魔石を所持してるんじゃないかと思う」


 俺とアルが話し合っているとレイラが自分の推測を口にする。


「光霧の魔石?」


「そうだ」


 光霧の魔石とは霧を発生させて光を歪めて自分の姿を視認しにくくする石で欠点らしい欠点は近くにいる者には効果が薄い事くらいらしい。

 もしそんなものを大量に所持していれば、敵国に簡単に奇襲をかけられる。


「かなり貴重な品だが、採掘を得意とする獣人族ならば他の種族よりも容易いだろう。確証はないがな」


「いや、そういう物があるってわかっただけでも助かる!」


 そう言って部屋を飛び出そうとするアルに向かい俺は叫ぶ。

 

「待てアル!俺も行く!」


 アルは扉に手をかけた所で動きを止め、驚きながら振り返る。


「いやいやいや!お前転生初日にここに来ただろ。つまりLv1なんじゃないのか?」


「あぁ、そうだ」


 俺が自身満々にそう言うとアルがじと目で俺を見る。


「そんな奴連れてけるわけねぇだろ!」


 アルの意見はもっともだ。

 普通なら連れてったりしないだろう。


「お前はここにいた方が安全だ。あっちは俺達でなんとかするから大人しくしてろ。イチヤに死なれちゃ俺も寝覚めがわりぃんだよ」


「俺が使えないかどうかはこれを見てから判断してくれ」


 そう言って俺は自分のステータスカードをアルの手前に放る。

 

 確証はない……

 だけどあの王様や姫様の驚きようから察するに俺の能力地はスバ抜けているのだろう


 その予想は当たっていたようで、アルが俺のステータスカードを拾いほんの少し目を見開いた後、真剣な顔になる。


「イチヤ……悪いんだが、この国の為に力を貸して欲しい」


 アルは腰を曲げそう願い出た。

 その行動に俺は


「断る」


「お前……こんな時に――――」


「俺が力を貸すのはこの国の為じゃない。アルやレイラ、リアネの為だ」


 俺がそういうと、怒りそうになっていた顔を笑みに変えたアルの姿があった。


「この捻くれ者」


「うっせ。事実だ」


 

 俺は牢屋を開けてもらい今度こそ出ようとするアルに再び待ったをかける。


「アル、すまん。少しだけ待ってくれるか」


「今度はなんだよっ!」


 アルが焦りのせいか若干いらだっている。


 この国の人間なんだから無理もない

 だがここで一応やらなければならない事はしておかないとな


 そういって俺は自分の牢屋とレイラの牢屋に物質変換を施す。これも前まで1つの柵に対して2分くらいかかってたのが特訓の成果か1つの牢屋にを1分位で施せるようになった。


「何をしたんだ?」


「牢屋の硬度を上げた。これでもしここに攻め入られてもそう簡単には破られない」


 俺は作業が終わった事を告げて、今度こそアルと一緒に部屋を出たのだった。



★★


 時を同じくして、町は喧騒に包まれていた。城壁が破られ獣人族が大量に町に侵攻してきたのだ。彼らがこうも容易く侵攻できた理由はレイラの予想どおり光霧の石を装備して進軍してきたからである。


「無抵抗の者は捕らえよ、逆らう者は殺しつくして構わん。我らの怒りを思い知らせろ!」


 そう言って指示を出す男、牛人族の男で、燃えるような赤い髪をし全身の筋肉は盛り上がりいくつもの傷跡がある。その傷が幾戦もの修羅場を潜って来た証といわんばかりに見た者に畏怖を与える役目をしている。彼の名はドルガ・ダルゼン。この獣人の大群を任されている指揮官だ。


「来たか……」


 ドルガが不敵に笑うと、目の前に現れたのは王国の騎士団だった。彼らはしっかりと隊列を組み獣人族の侵攻を食い止めようとする。


「相手は獣人!魔法は使えないだろう!前衛は魔法部隊を守るように陣を敷け!魔法部隊は詠唱準備。終了ものから魔法を放て!これ以上我らの王都を蛮族の好きなようにさせるな!」


 騎士団は指揮官の指示の下、前衛は獣人の戦士達を食い止め、魔法部隊は次々に詠唱を開始。各々魔法を放つ。人数差は後詰の兵も合わせ獣人族三千人に対し人族は千人にも満たない。急襲だった為に地方から兵を集めている時間がなかったのだ。

 だが彼らには負けることなど考えていなかった。確かに獣人族の身体能力は他の種族の中でもずば抜けている。だが獣人族は魔法を使えない。ごく少数使える者はいるが、その存在は稀でほとんどの者は魔法適正がない者なのだ。魔法適正のない者はある者に比べ、ダメージが大きい。

 この世界においてそれは致命的な差だ。獣人以外のほとんどの種族は魔法適正が高い者がいる。だからこそこの戦いも人数差があり、先手を取られたにも関わらず騎士団は負ける事はありえないと確信していた。


 だがその騎士団の自身は魔法部隊が放った魔法の結果を見て絶望へと塗り替えられる


「なっ?!魔法が効かないだと!」


 騎士団に動揺がはしる。当たり前だ。獣人達にあたると思った魔法はその直前に消失し霧散してったのだから。

 獣人族はその隙を突き、騎士団を追い詰め次々と倒していった。


「やはり人族は愚かだな。我等が何の策もなしに仕掛けるような真似をする訳がないだろうに。それにしても凄い効果だ。これさえあれば、他の種族など恐れるに足らんな」


 ドルガは自分の胸元につけた紫色のネックレスを手に取りほくそ笑む。

 

 ドルガが一人そうしている間にも騎士団の人数は瞬く間に減り、どんどん後退していった。

 それを確認したドルガは全軍に告げる。


「この場は後詰の部隊に任せ、皆の者進軍せよ!目指すは王城、王族と共にあの悪魔共を根絶やしにするのだ!」


 ドルガの言葉に獣人達の士気があがる。騎士団に彼らを止める術はもう残っていなかった。


★★



「それで、まず最初に何処に向かうんだ?」


 部屋を出てすぐにアルへと目的地を聞く。俺が城の中を把握してなかったので、アルが先行してくれているが、どこに向かうかは一応把握しておきたかったからだ。


「たぶん王がいる広間は勇者や近衛兵がいる為後回しにする。最初はイチヤの懸念を解消した方が全力で戦ってもらえそうだからいつもメイド達が朝礼などを行う部屋へと向かってる最中だ」


「わかった。さんきゅな」


 どうやらアルは王様よりもリアネを優先してくれるらしい、打算的な事を言っているがアルもリアネの事が心配なのだろう。

 目的にの場所は3階にあるらしい、そこまで階下を一気に駆け下りる。

 するとそこではもう兵と獣人族の戦闘が始まっていた。

 アルは腰の剣を抜き取り目的地の場所まで突っ切ろうとする。俺も後を追いながらロングソードをイメージして精製した。

 二人で獣人を蹴散らしながら突き進む。


「そこを曲がった最初の部屋だ!」


 

 目的の場所まで到着すると中から声が聞こえる。


「私達に抵抗する意思はありません。大人しくしていますので、彼女達に暴力はおやめください」


「ソンナ事は当タリ前ナンダよ、人間風情ガ俺達に意見シテンじゃねぇっ」


「うぁ……」


 少し扉を開けアルと二人で中を覗き込むと、妙齢の女性が獣人の男に片手で首を持ち上げられ呻いていた。

 中にいる獣人は猪のような感じの屈強そうな男が二人。後は隅の方で固まっているメイド服を着た女の子達だ。どの子も顔や体などに傷がありひどく怯えている。


「ちっ、相手は獣人族でも気性の荒い事で有名な猪人族いびとぞくかよ」


「厄介な種族なのか?」


「個人的にはここでは相手にしたくなかったな……」


 猪人族は頭は悪いが腕力と俊敏さを兼ね備えた。その上気性も荒く戦闘を好む生き物らしい。


 俺達が隙を窺っていると一人のメイドが怯えながらも声を荒げた。


「メイド長を放してよ!あんた達の目的はそこの奴隷メイド達でしょ!私達は関係ない。さっさとそいつら好きにしてここから出てってよ!」


 その言って声を荒げたメイドは奴隷メイドが固まっている隅を指差す。

 メイド長を持ち上げてない方の猪人族の男が声を上げたメイドの方に向かい腕を振るい上げる。


「ぁがっ!」


 一人のメイドが殴られ壁の方まで吹き飛ばされた。それを見て獣人族の男はまるでごみを見るような目で吹き飛ばされて口から血を吐いているメイドを口に笑みを浮かべて見ている。その光景にますます怯える他のメイド達。


「ヲ前等は一つ勘違いシテルが、ヲ前等全員等シク奴隷だ。ヲ前等人族もソコノ裏切り者も等しくナ」


「裏切り者……?」


 誰かが小声で呟く、小さな声だったのだが、どうやら猪人族の耳には届いたようで不愉快そうに話し出す。


「ソウダ。ヲ前等人族と同じヨウニ奴隷とナッテ人族ニ尽くシテル獣人ナンテ裏切り者以外ノ何者でもナイダロウ」


 そう言って男はメイド長を放り投げると、先ほどメイドが指差した方向へと歩み寄る。

 

 俺がそちらに目を向けると、目的の人物の姿が見えた。リアネだ。リアネともう一人の女の子が猪人族に背を向け、他の小さい獣人の子達を守るように膝をついて手でかばっている。背中にはいくつも足で踏みつけられたような汚れがあり、他のメイドに比べてひどく傷つけられた後だとわかった。


 ぶちっ――――

 俺の中で何かが切れるような音がした

 沸々と何かが自分を覆っていくような感覚だ

 この感覚を俺は知っている

 リアネが誰かに傷つけられたとわかった時の感覚と同じだ

 しかしあの時よりも強い感覚だが俺はそれに身を任せる事にした

 たぶんもう自分でも止められない事がわかったからだ


 猪人族がリアネを踏みつけようとしたまさにその時――――


 バンッ!っとドアを勢いよく開け放ち、俺は駆け出した。リアネの方に……正確にはリアネを踏みつけようとしていた猪人族の方に。

 俺はドアの音でこちらを向いた猪人族の顔面を思いっきり殴りつける。


「グブァっ」 

 

 変な声を上げ、ぐしゃっという嫌な音と一緒に殴られた猪人族は思いっきりぶっ飛び壁にめり込んだ。その光景をこの部屋にいる全員が驚きの表情で見ている。全員口をあけているような感じになっているが誰一人言葉を発する者はいなかった。


 あたりを静寂が包み込む。


「イチヤ……様……?」


 そんな中リアネが俺の姿を確認し、か細い声で俺の名を紡ぐ。


「遅くなって悪かった」


 リアネにそれだけ告げると背中を向ける。顔を見られないようにする為だ。たぶん今の俺は怖い顔になっているので、あの時のようにリアネを怖がらせてしまうだろう。


俺はそのまま先ほどメイドを殴り飛ばした方の猪人族の方へと歩いて行く。俺がゆっくりと歩いてくる姿を見て、ようやく我に返った猪人族の男は斧を持ち、仲間がやられた事に激昂した。


「貴様ァ!何者ダ!よくも仲間を!」


「何者かって?そんなの答える必要が何処にある。それに最初に手を出したのは貴様等の方だろう」


「ソモソモ貴様等ガ戦争を始めなケレバ、コウヤッテ攻め入られるヨウナ事はナカッタ!」


「お前は何を勘違いしているんだ?」


「何?」


 この猪人族の男は勘違いしている。彼は獣人族がこの戦争で人族を殺した事に憤っていると思っているのだ。だがイチヤにとってそれを親切に教えてやる義理もない為答える事はない。


 男もこれ以上の問答は無駄だとわかったのか、斧を持つ手に力を込める。筋肉が盛り上がり血管が浮かぶ。


「ヲ前ハ不気味だ。俺ノ感覚がソウ言っテル。ヲ前ガ誰かナンテ関係ナイ。死ね!!」


「その意見には同感だ。俺もお前が誰かなんて関係ない!」


 その言葉を皮切りに猪人族の男が動く。男は瞬く間にイチヤへと肉薄し、腕を振り上げその凶刃をイチヤへ向かって振り下ろす。誰もがイチヤの体が真っ二つに両断される事を疑わず、二人から目を逸らした。

 だが皆の予想は覆されることになる。少年の絶叫は轟かず、当たりに響き渡ったのは金属同士のぶつかりあう音だけだった。

 メイド達は恐る恐る目を開け、事の結果を見る。そして誰もがその光景をみて唖然とする。少年は平然とした様子でロングソードで斧を受け止めていたのだ。それも片手で。


「その程度か?」


「グゥゥ」


 男は更に力を込めた様だが、俺にはそんなに差があるようには感じられなかった。俺が平然としているのを見て焦った男は後ろへ飛んで距離を取ろうとする。だが俺はそれを許さない。今度はこちらが距離を取った相手の懐に飛び込み剣で斧を弾き飛ばす。


「なっ?!」


「これで終わりだ」


 俺がそう言って猪人族の男の腰に回し蹴りをぶち込むと、相手が勢いよく先ほどの男と同じように壁にめり込む。白目を向きごふっと血を吐く男の姿を確認し。もう戦う事は出来ないだろう事を確認した俺は軽く域を吐き体から力を抜いた。


 まぁリアネに与えられた痛みを考えればもう少し痛めつけてやりたかったが、相手が気絶したんだからこれくらいで勘弁してやるか


 そんな事を内心で考えるが、第三者から見れば過剰な仕返しに思われるだろう

 だが自分の大切な仲間が傷つけられたんだ。過剰と言われ様が関係ない


 みんなが畏怖するような眼差し手で俺を見てくる中、俺の纏う雰囲気が戻ったのに気付いたリアネが駆け寄ってくる。


「イチヤ様!大丈夫ですか?」


「いやいや、俺よりもリアネの方がひどい有様じゃないか」


 リアネの体にはいくつもの擦り傷やあざが出来ている。

 たぶんあっちにいるまだ幼い少女達を必死で庇っていたのだろう。


「これくらいなら私は大丈夫です。それよりも助けに来てくれてありがとうございました。あの……嬉しかったです」


 そう言いながら少し顔を赤くし、はにかむリアネ。俺はその頭を思わず撫でてしまった。

 

「ヒール丸薬はまだ残ってるか?」


 俺はリアネの頭を撫でながら問いかける。


「はい、まだ昨日頂いた分がたくさん残ってます」


「じゃあ飲んどけ、それとリアネと一緒に小さい子庇ってた子にも飲ませてやれ。あと傷ついた獣人の子達にもな」


「はい!」


 俺が笑いながらそういうと獣人達が固まっているところに元気よく走っていく。


 出来れば飲んでから言って欲しかったんだけどなぁ……


 気持ちを切り替え俺は踵を返すと今度は人族のメイドが固まっている方へと向かう。


「おい」


「は、はい。何でしょう?」


「これ飲ませとけ、血はどうにもならないが怪我くらいなら少し立てば回復する薬だ」


 そういって前にリアネに渡した皮袋と同じものをまだ元気なメイドの手にぽんと置く。目には俺への恐れがあり一瞬固まっていたメイドだがメイド長とさっき殴られて重症のメイドの事もありすぐに中から丸薬を取り出すと、メイド長、メイドの順に飲ませていく。


 それを見届け俺は立ち上がり、リアネに用件を済ませようと彼女のところへ向かおうとすると声がかかる。


「ま、まちなさいよっ!」


「あ?」


 声のした方に振り向くと先ほど丸薬を渡したメイドとは違うメイドが俺を睨みつけている。


「何か用か?」


「何で私達よりもそっちの奴隷メイド達を優先してるのよ!同じ人族!ましてやあなた異世界転移してきた勇者でしょ!」


 どうやら俺がリアネ達の方を優先したのが気に入らないらしい。


「それに何か問題があるか?」


「あるに決まってるでしょ!相手は今回攻めて来た獣人族、あいつらと同じ種族なのよ、だったら最初に心配して薬を渡すのは私達にじゃない!それにそこの奴隷メイドが傷つけられそうになった時にタイミング良く出てきたわよね?つまりやろうと思えばもっと前に助けられたって事じゃない!そうしてればメイド長やベラがこんな目に合わなかったのに!!」


 どうやら彼女は先程殴られたメイドの友達だったようだ。



 完全に逆上してるな。こうゆう女には何を言っても無駄だと思うので俺は無視する事に決める


「待ちなさいって言ってるでしょ!」


「っるせぇなぁ……」


「ひっ……」


 無視しようとしたけど、ちょっと限界でした


 俺は青筋を浮かべ、きゃんきゃんうるさく吼えるメイドに底冷えするような侮蔑の目を向ける。


「はっきり言っとくぞ、俺は人族だろうが獣人族だろうがどうなろうがしったこっちゃねぇんだよ。俺はリアネがここにいるから助けに来た、いつもおいしい飯を作ってくれてた恩もあるし、何より大切な仲間だからな。お前等を助けたのはそのついでだ。そこを履き違えてんじゃねぇよ、次きゃんきゃん吼えるようならそこの獣人と同じ目に合わすぞ」


「……」


 俺の言葉に人族のメイド全員が黙り込む。


 やべっ!ここまでするつもりじゃなかったのに場の空気は最悪だな


 やっちまったなと思っていると今度は後ろから思いっきりはたかれた。振り返るとアルが苦笑いを浮かべている。


「お前は何でもかんでもやりすぎなんだよ」


「来るのが遅せぇよ」


「一人目倒すの確認して大丈夫そうだから通路を見張ってたんだよ」


 どうやら俺が派手にやらかすと思い他に敵が来ないか確認。杞憂に終わったようなのでこっちに来たそうだ。

 

「すまんな。悪い奴じゃないんだがこいつちょっと変わっててよ」


「痛てぇ……」


 俺の頭をぽんぽんと叩きながらそう告げるアル。若干痛いが我慢することにする。


「とりあえずここで悠長に話してても仕方ないから逃げようぜ。またいつ敵が来るかもわからん俺達は上から来たんだが上の階から来たんだが上の方は安全だ。俺達も先を急ぐが階段までは送るからその後はどこかの部屋に隠れててくれ」


「アル、すまんが俺の牢屋の鍵をくれ」


「あいよ」


 俺が何をしようとしたのか察したアルが素直に鍵をくれる。それをもらうとリアネの方に行き鍵を渡しリアネの耳に口を近づけ小声で話す。


「ここなら俺の能力で強化してあるから安全だ。その子達と一緒に終わるまでそこにいろ」


「人族の方はいいのですか?」


「構わん」


 俺がそう言うと、リアネは頷く。アルが牢屋の事を説明しなかったのも先程の猪人族とメイドのやりとりを見て何か思うことがあったからだろう。


「じゃあ俺とイチヤで先行するから付いて来てくれ」


 アルの一言でメイド長と重症を負ったメイドは肩を借り、リアネ達も小さい子がはぐれないような形を取る。

 

 猪人族の男達を縛り上げ、部屋を出ようとして俺はやり残した事を思い出したので扉の前で顔だけを人族のメイド達に向き直る。


「お前達に会ったら言おうと思ってた事あったから、この際だから言っておく。次にリアネ達にひどい事してみろ……全員血祭りにあげてやる……」


 俺がにこっと笑いそう言うと思い当たったメイド達は顔を青ざめさせ、それを聞いたアルは通路の方を向いているが、掌を顔に当てこの馬鹿という顔をした。


「はぁぁぁぁ……」


 

 アルが苦い物を食べたような渋い顔をして盛大にため息をつく。

 反対に俺は三週間くらい心の内にあったもやもやが解消されてすっきりした顔をしていた。

誤字脱字不明な点などあれば感想かメッセージで送っていただけたら。直せる部分は直しますのでよろしくお願いします。


読んでくださる方、ブックマークしてくださった方いつもありがとうございます。


5月19日 誤字報告があり修正しました。ご報告ありがとうございました。


仕事の都合上月曜まで更新が遅れる場合がございます。そこのところは大目に見ていただけたら助かります……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ