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51話 属性魔法 発動編

本日二度目の更新となります。

 属性魔法の基本となるマナの取り込みオドへの干渉を練習している最中、マナの取り込みは上手く言っていたのだが、オドの干渉が思ったよりもてこずってしまい、結構な時間を費やしてしまった。


 なんとかオドの方も魔力光を維持出来るようになったのだが、長時間集中していた為か精神疲労と肉体的疲労の両方が一気に来て俺は倒れるように意識を失う。


 

 



 少しずつ意識が覚醒していくのを感じ、俺はゆっくりと瞼を開けるとベットから降りて伸びを一つしてから立ち上がり周りを見渡す。寝た時の体勢が悪かったのか、どうも節々が痛いが、まぁ仕方ないと割り切って軽くストレッチをしてみる。


 練習していた時には明るかった牢屋は、夕日に照らされ部屋を茜色へと変貌させていた。


「俺は一体どのくらい眠っていたんだ……?」


 睡魔に襲われ眠った事は覚えているんだが、よほど疲れていたのか、夢など見る暇もなくぐっすり眠っていたと思う。


「どうやら起きたようだね」


 俺の呟きが聞こえたのだろう。レイラはベットに座りながら俺に話しかけてきて、どこか俺の体をきにしているように見える。


「おはよう」


「もう夕刻だがね」


「何時間くらい眠ってた?」


「うーん……この牢屋に時計がないからわからないので、私の体感予想になるが、ほんの二、三時間といったところだろうか」



 なんか頭のすっきり具合から六時間から八時間を予想していたんだが、思ったよりも短かったようだ



「ありがと。いやぁ、まさか魔法の練習がこんなに大変だとは思わなかった」


 寝る前の最後の記憶――オドへの干渉が上手くいった事思い出し、思わず顔がにやける。


「それと……君が倒れている間に、リアネ達が様子を見に来たんだが……大騒ぎだったぞ」


「へ?」



 何でたかだか魔法の練習で疲れて眠っただけで、大騒ぎになっているんだ?意味がわからない……



「そういえばイチヤは魔法の知識がほとんどなかったね」


「まぁ俺の住んでた世界には魔法なんて空想の産物だったからな」


「まず最初にその事を失念していた事を詫びたい」


「え?」


 レイラはそう言うと真剣な顔をして、深く頭を下げる。

 その行動に俺は驚き何故謝られてるのかわからないまま、彼女の次の言葉を待つように彼女から視線を外さずに困惑した表情を浮かべる。


「オドの干渉を練習する際に言っておけばよかったんだが、マナのように体外から取り組むのと違いオドは魂から発生する余剰分に干渉して属性魔法を行使するのだが、余剰分を魔力光に変換し、余剰分を超過して過剰に魔力を使おうとすると残った方法は魂にある分を使うしかないんだ」


「……余剰分がなくなって何処から搾取するかって言ったら後は残っているところからしかないな」


 余剰分のオドが時間が経たないとまた使えないとなると残っているところから求めるしかない。それで残された部分というのが魂という事か。


「その魂の分なんだが……魂の分まで使い切ってしまうと……死ぬ」


「死ぬ!?」


「文字通り魂だから、それがなくなると死ぬ……魂というエネルギーが空っぽになったら死ぬ事からオドを発生させているエネルギーを魂と定義してるんだよ」


「初耳なんですけど!?」


「今、初めて言ったからね」


 そう言ってレイラは苦笑いを浮かべているのだが、その話を聞いた俺は、ゾッと背筋に悪寒がした。。



 じゃあなんですか!?もしあの時成功してなくて頑なに練習を続けていたら……俺死んでたの?!


 いや……レイラもあの時休んだ方が良いと忠告してくれたから死ぬ事はなかったし、結構精神的にも肉体的にも疲れてたんで死ぬ事はなかっただろ――


 待て……精神的にも肉体的にも疲れてた……あれ?これって死ぬ兆候だったんじゃないか!??!



「じゃああの疲れってのはもしかして……俺死ぬところだったの?」


「いや、あれは本当に精神的、肉体的な疲労だよ。その辺は安心して欲しい。私が見誤っていなければの話だが……」


 レイラは安心させるように精一杯の笑顔でそう言ってくれているが……最後の方聞こえてるからな、そういうのは心の中に留めてくれよぼそっと言ってるけど聞こえちゃってるよ!全然安心できねぇよ!


 彼女にジト目を向けると俺から視線をサッと逸らし話を続けるようで俺は表情を変えないまま彼女の話に耳を傾ける。


「一応君の寝ている姿を見て魔力枯渇による魔力欠乏の症状ではなかったので私もホッとしていたんだよ、もし魔力欠乏症だった場合はアルを呼んで対処してもらっていた。すぐに対処すれば大丈夫だからね。だから本当に安心して欲しい」


 先程自分で言った呟きを俺が聞いてしまった事がわかったのだろう……今度は安心して欲しいを強調して言ってくれるがそれだけで俺のジト目が止むはずもなく無言の圧力でレイラを見ていると、彼女頬から一筋汗が滴り落ちる。


 

 まぁ、わざと隠していた訳じゃないし、悪気があるとも思えないからこの辺にしておくか。死にそうになっても助ける方法もあるみたいだし、もしもあれ以上練習していたら本当にレイラだったら止めてくれていただろう。


「とりあえず、使いすぎるなって事を体で理解した」


「本当にすまなかった……」


「助かったんだしもう良いよ、たぶんレイラに教えてもらわずに本だけで練習してたらもしかしたら死んでた……ってそういや本にそんな事書いてあったか?」


 一応レイラの説明と本を確認して練習していたのだが、本にそのような注意書きを見た覚えがなかった俺は、オドの干渉の記述を本に穴があくほど凝視して、注意書きの記述を探す。ぱらぱらと本をめくるとようやく注意書きの記述を見つけた。


「あった……」


 レイラの言った記述は確かに書いてあった。のだが――


「何で巻末に注意事項一覧みたいに羅列に書かれてるんだよ!?」


 書いてあったのは本の最後ら辺のページに注意するべき危険な点が箇条書きで書かれていたのだ。



 絶対この著者、注意する気ないだろう?!



 確かにこの本『属性魔法の初歩の初歩』というだけあって魔法初心者にわかりやすく書かれているとは思う……思うのだが、この著者が意地が悪いのは確定だ。もし生きていて会う機会があるなら一発殴ってやろうと心に誓った。





「それで話をリアネ達の事に戻すんだが……そういった経緯を事細かに話したらずいぶん取り乱してね……」


 レイラの話を聞くと俺が寝ている間にやってきたのはリアネ、クルエ、レーシャ、アルの四人で話を聞いて取り乱したのはリアネとクルエだったそうだ。


 二人は俺の牢まで入ってくると肩を強く揺すったり口付けをしようとしたりとその慌てぶりは相当のものだったようで宥めるのに苦労したとレイラは苦笑する。


「口付けしようとしたって何で!?」


「それほどまでに慌てていたんだろうね……ただ私に言えるのは慌てた時の二人の行動はまったく同じで不謹慎だと思いつつもついつい笑いがこみ上げてきたよ」



 どこか微笑ましそうな表情を浮かべているが全然笑い話ではない!危うく俺の初めてが意識がないまま終わるところだった。えっ?初めてはクルエとしたんじゃないかって?あれは人命救助であってノーカンですよ。ノーカン。



「それで二人は?」


「私の説得と君の安らかな眠りを見てようやく安心したのか、リアネは君が目覚めるちょっと前までいたんだが、心配そうな顔をしつつもイチヤが目覚めた時の為に食事の準備に戻って行ったよ。クルエは……我に返ったと同時に顔を真っ赤にしながらこの部屋から出て行ったね」



 なんか安らかな眠りって聞くとまるで俺が死んだように感じて悲しくなるのだが……まぁ死にかけたようなものなんだがね!

 

 あとクルエ……なんかすまん……



 我に返ったクルエを思い、俺は心の中で謝罪の言葉を口にした。



「一応姫様とアルについても聞いておくかい?」


「う~ん……まぁ一応聞いておく」


 取り乱していなかった二人の事だから大丈夫そうだが、どんな反応をしたか少し気になったので聞くことにした。


「アルに関しては最初面食らったような表情をしていたんだが……私の説明を聞き終えると、呆れたような表情をして牢屋から出てったよ」


 命の危機がない現状確かにそういった反応になるだろうなと思い、次にレーシャの反応について話の続きを促す。


「姫様は最初に過度な魔法の練習をしたと聞いた時には慌ててイチヤの牢の扉を開けて中に入ったが、私の説明を最後まで聞くと君の脈などを測って異常がない事を確認すると君をベットに寝かせてから静かに牢屋を出てったよ、姫様には次に会ったら感謝の言葉を言った方が良いんじゃないかな」


「そうする」



 起きた時ベットに寝かされていたんだが、まさかレーシャがやってくれたのか……もしあのままの状態で眠っていたらもっと節々が痛かったろう……今度ちゃんとお礼を言わなきゃな





「でもオドの使いすぎで魔力欠乏症?になっちゃうんだったら、オドを使わずにマナで魔法使った方が良いんじゃないのか?危険性はないんだろ?」


「危険性はないんだが……そもそもイチヤはなぜマナとオドという二つのやり方で魔力光を練り上げると思う?」


 質問を質問で返されたのだが、とりあえずレイラの質問について考えてみる事にする。


「マナの方が取り込んで魔力光を練り上げるのにオドよりも時間がかかったように感じるが、それくらいだろ?それだったらわざわざ危険を冒してまでオドで魔力光を練り上げる必要性を感じないんだが」


「そう。マナは体外、つまり世界から自分の体にあるマナを取り込む性質上遥かに魔力光の練り上げが遅いんだ。それに比べオドは体内にあるものを魔力光に変換するから魔力光の練り上げが早い」


「遅いというデメリットだけだったらマナの方が――」


「その遅いというのは属性魔法にとっては致命的な場合もあるんだよ」


 俺の言葉にかぶせるようにレイラが問題点を挙げる。


「属性魔法というのは一般的には攻撃魔法と言われ戦闘を想定した魔法が全てだ。つまり戦闘に用いられる。すなわち一分一秒で勝敗が決まる場合においてマナで魔力光を練り上げる作業というのは死と直結する場合もあるんだよ」


「……」


「まぁイチヤはこの世界に来るまでは平和な世界に住んでいたようだからそういった魔法戦闘の知識がないのも仕方ないのと思うよ。獣人族の襲撃の際も相手は魔法適正のない獣人族だったからね」


「……じゃあ今度は逆にマナを取り込んでの魔力光の練り上げが必要ないって事にならないか?時間かかるのが欠点って言うならさ」


 まるで戦闘をした事のない平和ボケした奴と言われたように感じ、少しふてくされた感じにそう言うと、申し訳なさそうに苦笑するレイラ。

 確かに今まで戦争などとは無縁の生活を送っていて、初めて戦争を経験したのもこの世界に来てからで、レイラの言いたい事もわからないではなかったから非難の言葉は口にはしなかった。


 気を取り直しレイラの言葉に耳を傾ける。

 

「確かに一分一秒を争う魔法戦ならそうだけど、大規模な戦争……今やってる他種族同士の戦争なんかでは、マナを取り込んでの魔力光の練り上げも有用になってくるんだよ」


「どういう事だ?」


「わかりやすく言うと、オドでの魔力光を練り上げは少数戦、マナでの魔力光の練り上げは大規模戦と思ってくれるかな。大人数で戦う場合、前衛に守られる為時間が作れる。その場合だったら魔力欠乏などを心配する必要はないマナの方が有用だろう」


 その説明を聞き俺は頭の中自分にわかりやすいように解釈する事にした。そして一番最初に思い浮かんだのがネトゲでの大規模戦闘。そう考えると非常にわかりやすかった。



 なるほど、前衛の壁役が敵のタゲをとっている間に後衛の魔法職が魔法を行使する為の準備をするって事か



「それにマナの場合、オドの時よりも大きな魔力光を練る事ができる。魔力光は大きければ大きいほど長時間魔法を行使できるし、大きな魔法を使う事も出来るんだ」


 説明を聞いてようやく理解する事が出来た。確かにマナもオドも両方にメリットがありデメリットがある。要は使い方という事だろう。


「とりあえず私の説明は以上だ。何か聞きたい事があれば聞くけどどうかな?」


「いや、マナとオドの使い分けについては特にないかな。わかりやすかったよ、ありがとう」


 俺は一言お礼を言った後に本に目を移して属性魔法の発動というページに目を通す。レイラの説明を聞いて属性魔法がどういうものなのか理解して、実際使ってみたくなったのだ。



 後は俺の適正属性か



「なぁレイラ、自分の属性ってどうすればわかるんだ?」


 一つの話題が終わったら今度は別の話題の質問をする。正直呆れられていないか心配になったが、レイラが特に気分を害していないようだ。


「感応石っていう自分のオドで練り上げた魔力光でその石に触れさせるという手段があるんだが……残念ながらここにはないね」


「王様に言ったら手配してくれそうだが、自分の属性を知る為に今から行くのもな……他に方法はないか?」


「あるにはあるが……正直オドでの魔力光の練り上げで疲れているイチヤにはあまりお勧めしない……」


 少し言い淀みながら心配そうにこちらに視線を送っているレイラにいいから教えてくれという目線を送ると、彼女は深い溜息をついてから口を開く。


「初歩の初歩って書いてあるって事は各属性の初級魔法の詠唱呪文も載っているね?」


 レイラに言われ本を確認すると確かに初級魔法の詠唱呪文が載っていた。


「それを一つずつ試してみると良いよ、出来れば明日にしてくれると私としても安心なんだけどね。マナでやろうにも今のイチヤでは時間がかかりすぎる。もう少しで夕飯の時間になるからリアネもやってくるだろう……今イチヤがやろうとしてる事を見られたらどんな状況になるか想像するのも怖い」


 涙目になって俺に説教するリアネが容易に想像できる。その場合レイラも同罪と言わんばかりに一緒に説教をされる事だろう。


「やるならオドを使えって事か……」


「そういう事だ」


 はっきりと告げるレイラに頷き、オドで魔力光を練り上げ詠唱呪文の書かれたページに目を向ける。


「不測の事態が起きては問題だから外の壁に向かって打つ事をお勧めする。この壁には魔力防御がほどこされてるからちょっとやそっとじゃ傷つかないようになっているからね」


「了解」



 まずは火の初級呪文からだ



「火の司る精霊よ、この身に宿る魔力光の力を使い、我にその力の一端を貸し与えん――火炎球ファイアボール!」


 詠唱し終えると魔力光が壁へとかざした手に集まる感覚と、何かが吸われるような感覚の両方を感じ、ライトグリーンの魔力光が徐々に赤色へと変換されていくのがわかる。


 そして変換された魔力光はバレーボールくらいの火の玉を形成し俺がかざした手の少し前くらいにふわふわ浮かび上がると、俺がかざした壁の方向に向かって飛び出した。


 ドガァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


「「……」」


 勢い良く壁へと向かっていったバレーボール大の火球は壁にぶつかると盛大な音をたてて爆散し、そこにあった壁を跡形もなく消し去ると同時に役目は果たしたとばかりに消え去ってしまった。


 パラパラッ……


 そんな音をさせている残った壁を呆然と見つめる俺とレイラ……


「……俺は初級魔法を使ったはずなんだが」


「……それはイチヤの詠唱を聞いてわかってるよ」


「じゃあ何でこんなアホみたいな威力で壁が粉砕されてるんだ……?」


「さぁ……」


「確かこの壁って魔力防御が施されてるんだよな?」


「そのはずなんだがね……」


「……じゃあ何で普通にぶっ壊れてるんだよ!」


「私が知るわけないだろう!」


 そんな問答を繰り返した後再び壁を確認する。



 うん……やっぱり綺麗さっぱりなくなってる


 

 俺とレイラは軽く現実逃避をしながら呆然と壁があった場所を見続けたのであった……

読んでいただきありがとうございます。


5月23日 誤字報告があり修正しました。ご報告ありがとうございました。

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