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50話 属性魔法 オド編

「じゃあ次にオドへの干渉方法だね」


「よろしくお願いします」


 なんとなく勉強を教わっているように感じて、レイラへと軽く頭を下げる。

 ここらへんは教える側、教わる側の礼儀だと感じるのは俺が日本人だからだろうか?


「オドの場合はマナでやった時のように今度は胸の中心に意識を集中するみてくれるかな」


「胸の中心?」


「そう。この世界において胸の中心には魂が宿るとされてその魂からオドが全身を巡って体内で循環していると言われているんだ。その流れ出すオドを意識して魔力光を発する事が出来ればオドで属性魔法を行使する事が出来るだけだ」


「ふむふむ……」


 言われたとおりに今度は手ではなく胸に意識を集中する。さっきの要領でやれば言いとレイラが言ってくれているのでその通りに目を閉じてオドを感じる為に他の意識を遮断するように努める。


 トクンッ……トクンッ


 ゆっくりと深呼吸しながら心臓の鼓動を感じる。無音とも呼べる室内で自分の心臓の鼓動だけが音を発しているような錯覚を覚えながらも意識を胸に集中させたままでいると、ふと頭に緑色の線が血液のように流れているイメージが湧いてくる。


 俺はその流れを全身に行き渡らせるようイメージを強化して目を開けると、マナの時に見た淡いライトグリーンの光が全身をぼんやりと包み込んでいる。


「おぉ!成功したか?」


「ちょっと色が薄いように感じるけど、初めてにしては上出来な部類に入ると思うよ」


 全身を見回し、満遍なく全身を包み込んでいる光を楽しげにみていると徐々にその光が弱くなっていくのを感じる。


「やはり少しばかりイメージが弱かったようだね。もっとイメージを強化しないと魔力光を維持するのは厳しいかな。でも初めてやったにしては上出来だ。普通ならマナと同様に魔力光を発する事ができるようになるまで少なくとも半年は必要だからね。これもマナの練習と一緒にやると良いかもしれない」


 これも練習が必要ということか、確かに異世界とはいえそんな簡単に魔法が習得出来るんだったら魔物なんて存在しないだろうし、種族間での争いなんてとっくに終わってこの世界は灰燼と化していそうだ。



 でも、難しいからこそ面白い……



 確かに本に書いてあった基礎の部分にはレイラが言っていたように魔力光を出すには早くて半年、長い人で三年かかる人もいるらしいので、少しずつ魔力光を感じる練習をするのが良いという事が書かれている。


 だが、せっかく異世界に来て、魔法を使う前段階で失敗ではないにせよ、なんとなくもやもやする結果に終わった。だからこそ面白いと感じた。


 創生魔法は確かに魔法なのだが、これはこの世界に来た時に手に入れた力だからなのかは知らないが、まったく苦労せずに使う事が出来た。何の努力もなしにだ……確かに便利だし、創生魔法に助けられた部分もあるから感謝もしている。



 これは俺のわがままになるが、魔法に関しては頑張って頑張って頑張って習得する醍醐味が欲しいとも思っている。


 だってその方がありがたみが増すじゃん!


 あ、でもこんな事を思ってるからって俺から創生魔法を無くすような真似するなよ、女神。


 なんか俺がそう思ったから消しときましたとか平気でやりそうで怖い……



 すっかり忘れていた女神の事を思い出し、心の中で忠告し終えた俺は再び意識を胸に集中させてオドに干渉する練習をする。


 再び淡いライトグリーンの光が全身を淡く照らし先程よりも緑の光が強くなるが、またあっさりと消えていく。


「くそっ!難しい」


「おいおい……初日で魔力光を出す事が出来たんだからほどほどに――――」


「でも面白い!」


「え?」


「どうした?」


「普段面倒臭いが口癖のイチヤが楽しそうに努力する姿がちょっと意外だったものでね」


 レイラの言葉を遮って俺がそんな事を言うと彼女は目を丸くしてこっちを凝視している。どうやら彼女にとって俺の今の台詞は以外だったようだ。


 確かに今までの自分の態度を見ていればそう思うのかもしれないが、魔法に関しては当てはまらない。日本じゃ経験出来ない事が経験出来るんだ。楽しいに決まっている。


 そして再びオドを干渉させる練習の為に目を閉じて意識を集中するのだった。









「はぁ……はぁ……なかなか上手くいかない……ふぅ」


 大きく息を吐き出し体から力を抜くと額からつぅ~っと一筋の汗が流れ落ちる。あれから数時間、何度もオドに干渉する為の練習をしていたのだが、失敗に終わっていて、三十回くらいを過ぎてからは数えるのをやめた。


 意識を集中させての練習で一切体を動かしてないにも関わらず、全身には大量の汗をかき、体には数時間分の疲労が蓄積しているように感じられる。


「マナの時は結構楽に魔力光を持続させられたんだけどなぁ……」


「それはマナの方は魔力光を練るのに結構な時間がかかるが、一度練ってしまえば使い切るか取り込んだ人間が魔力光を放棄するまで大気中のマナが魔力光を維持してくれるからだ」


「ふむ……」


 確かにマナを取り込み魔力光を出すのに結構な時間が必要だったかわりに取り出した後は持続させるのに手間がかからなかった。


「見た感じ少し疲労の色が見えているからそろそろ休憩した方が良いと思うぞ」


 目に見えて疲労しているのだろう。レイラが気遣わしげにそんな事を言ってきている。


 あれからどのくらい時間が経っているのかはわからないのだが、自分でもわかるくらい体というか神経が疲れているのはわかっているのだが、なんとなく後少しで何かが掴めそうだと感じているから、今はやめるのに躊躇してしまう。


 ただレイラに心配かけるのも心苦しいので、あと一回だけという約束をしてもう一度オドを干渉する為に意識を集中した。



 ――――魂から流れるオドを意識する……


 ――――擬似的な血管を作り、オドが流れるように……想像する


 ――――意識しろ……オドが体を流れている事を……


 ――――意識し続けろ……オドは俺の体の一部だ!



 同じ言葉を頭の中で繰り返し繰り返し何度も反芻する。今まで何度も失敗したが、俺もただ失敗していたわけではない。

 

 どう意識すれば持続時間が延びるのかとか、光の強さがどうすれば強くなるのか、試行錯誤した結果が今反芻している言葉だった。


 何度も感じていた全身を何かに包まれる感覚を感じると、俺はゆっくりと目を開けて自分の全身を確かめる。


 最初に出した魔力光よりも遥かに強い光で全身が包まれている為、レイラに薄いと言われることもないだろう。



 後は持続時間か……



 ゆっくりと数を数えると先程まで三十秒くらいで消えていた光が一分経っても消える事はなかったが、俺は流れるイメージを常に意識して魔力光を途切れさせないようにする。


 全身からは汗が噴出し、今すぐにベットに突っ伏したい気持ちにさらされるが、その気持ちをなんとかこらえてると頭の中で数を数える。


 三分……五分……十分……


 十五分くらい持続したのを確認すると俺はゆっくりとオドから意識を中断させる。


「おぉ!」


「成功したみたいだね。おめでとう。本当にイチヤは規格外だよ、たった数時間でオドの干渉を覚えるのはもちろんだけど、ここまで継続して練習出来る人間なんてそうそういない。普通ならあの集中力を一時間も保っていたら倒れるんだがね」


 成功した実績を感じ感嘆の声を漏らすと、レイラから祝いの言葉を贈られ、それに軽く頭を下げて応える事で、彼女への礼とした。


 たぶん成功した理由としては今までずっと練習していた……というのもあるのだろうが、疲労の蓄積によって無駄な力が入っていなかったおかげというのもあるのだろう。


 そのおかげで成功出来たと自己分析したところで、緊張して強張っていた体が急に解放されたかのように膝からがくっと折れて上半身だけがベットに倒れるという形になる。



 出来たのは良いが、正直体が凄く……だるい……真っ先にベットで休もうと思ったのは正解だったかな……じゃなかったら顔面から床に激突してたところだ……



 成功の余韻に浸りながら、そんなどうでも良い事を考えると疲労のせいか睡魔に教われ上半身だけをベットに投げ出したまま……俺は意識を手放した。

読んで頂きありがとうございます。


5月23日 誤字報告があり修正しました。ご報告ありがとうございました。

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