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3話 飯使い

 俺がこの牢屋に来てから一週間が経った。

 ある程度環境にも慣れ、ご近所さん達(アルを含んでいいのかは微妙だが)にも恵まれている。

 

 部屋の広さが元の世界では10畳と結構大きめな部屋だったがこの牢屋は6畳くらいしかないのが少々残念ではあるが許容範囲なので問題ない。

 むしろ誰かがそんな愚痴を聞けばお前は牢屋に何を求めてんだと怒られかねない。


 衣服やベットのシーツについてもアルが見回りの際に汚れた衣類を持っていってそれを王宮に仕えているメイドさんが洗って持ってきてくれる。


 風呂についてはさすがにここにはついてないがこれもアルが水と聖水と香草を搾った液体を混ぜたものを木で出来たタライのような物とタオルを一緒に持ってきてくれて体を拭いた後にタライの入った水で頭を洗えるので清潔だ。洗ったあと体がスースーするのが気持ち良い

 余談ではあるがこれは元々なかった事でアルが牢番になってから女性が体を清潔に保てないのは可哀想だと自発的に始めたことらしい。



「何このイケメン。気持ちわりぃ」


「見回りに来た俺にいきなりなんなんだよ!お前は!!」


「ちょうど良いタイミングでアルが来たので罵倒してみた」


「罵倒される身にもなってみろ!」


「よく考えてみろアル。俺は気持ちわりぃの前にイケメンって付けただろつまり罵倒しただけじゃないんだ」


「イケメンって何だよ?」


「イケメンってのはカッコいいって奴の意味だ」


「お……おう…………」


 イケメンの意味を知ったアルが若干照れる。正直男が照れ顔するとか気持ち悪い。


「だから死ねばいいのに」


「どうしてそうなんだよ! しかもさっきよりもひどくなってんじゃねぇか!」


「よく考えてみろアル、世の中にイケメンがいなくなれば世の独身貴族達(ブサイク)も幸せになれるんだぞ?」


「うん? そういうもんか?」


「あぁ! 間違いない」


 俺ははっきりと断言した。今まで生きてきた人生の中でこれでもかいうほどと力いっぱいに。


「だからアル」


「なんだよ……」


「死ねばいいのに」


「今日のお前はホントうざいな!!!」


 アルが若干怒り半分呆れ半分で叫ぶ。

 一週間が経ってアルとはこういった暴言を吐きつつもかなり親睦を深められている。


 アルは今年で21歳で俺よりも年上なのだがこういう軽口をたたいてもつっこんでくれるので、俺は彼を大事な友達だと思っている。


「大体俺は自分でイケメン?だとは思ってねぇよ」


「いやいや、十分イケメンだろ」


 そう、俺は何もからかうためだけに言っているわけではない。少し赤みがかった短髪に鋭い目つきだがどこか優しげな目元、兵士だからかしっかりと筋肉はついているがムキムキマッチョという印象はなく良い具合に筋肉がついているのだ。本人はあまり外見を気にしないようだが。

 それに本人の性格も気さくで話しやすく、女性に対して当たり前のように優しく出来る。(これはレイラに対しての対応を見て思った)

 内面までイケメンなのだ!これに俺が嫉妬するのも無理ないじゃないか!罵倒したって許されるじゃないか!!


「鈍感系主人公かっ!」


「だからいきなり変な事いうのやめろっての!!」


「いや、今のは言ってみただけ」


「ホント今日のお前は疲れるぞ……」


「暇なんだよ、それくらい察してくれ」


「お前の思考読んで察してやれる奴なんかいるわけないだろ!」


「ひどい奴だなぁ。友達じゃないか」


「はぁ……大体俺をイケメンっていうならお前だって可愛い顔してるじゃねぇか」


「えっ……」


 急に全身に鳥肌が立った

 えっ……アルってそっち系だったの?!

 さっき大事な友達だって思ったけど訂正させてもらって良いでしょうか?


「アル……お前ってホ――――」


「ちげぇよ!!いきなり何言ってんだよ!!!」


「大体俺にはかみさんがいるんだ。確かに他の奴からは女性に優しくしてるように見えるかもしんねぇけど、そこに下心なんてモノは一切ねぇ。それだけは断言する。愛してるのはかみさんだけだ」


「なん……だと……!?」


 アルがもう結婚していただと?!しかも話を聞く分に幸せな家庭を築いてる感じじゃないか


「リア充爆発しろ!!!!!!」


「あぁもうホントお前もう黙れよ……!」


 そんなバカなやりとりをしていると隣の方からクスクスと笑い声が聞こえてくる。

 笑っているのはもう一人のご近所さんのレイラだ。


「お前達の会話はくだらないのに面白いな」


「だろ?俺もそう思う」


「俺は疲れるだけなんだが……」


 レイラの言葉に自信満々に返す俺と、ぐったりとしたアルが答える。

 まぁぐったりした理由は俺のせいなんだが


 あれからレイラの風邪は完治し、寡黙かと思われた彼女も話してくれるようになった。自分から話題を振るような事はないが、こちらが質問したりすると嫌な顔一つせずに答えてくれる。

 

 俺が来るまではアルとはそんなに話をしていなかったらしい。レイラは自分から話しかけるタイプじゃないし、アルも仕事なので顔を合わせはするが、無理にコミュニケーションを取る様な真似はしない。そのせいもあってアルは風邪のレイラに気付かなかったようだ。

 

 後で知った事なのだが俺がレイラの風邪の事をアルに伝えるとどうやら言ってくれれば薬はもらえたらしい。ひどい場合は治癒師と薬剤師を呼んでくれるんだとか。その話をした時、レイラにも気付いてやれなくてすまないと謝っていた。

 風邪の事を伝えた時、次に出てきた話題が俺がその薬をどうやって手に入れレイラに渡したのかという話だった。

 俺はアルに正直に答える。会って数日しか経ってない人間にどうして正直に話す事にしたのか?自分でもおかしいとは思うんだが、たぶん理由は俺が悪意に対して敏感だからなんだと思う。だから罪人になった俺にも侮蔑とかの悪意なく接してくれるアルに嘘は吐きたくなかった。


 だが説明しようにも説明が難しい、一応説明してみたのだがちゃんと伝わってくれなかった。うまく説明出来なかったのでアルの前で実演してみせる。


 その時のアルの反応はこうだ。


 俺は創生魔法で薬の入った瓶を精製する。


「はぁ?!!??」


 まぁその反応は妥当なところだろう。俺だって自分がアルの立場なら同じような反応をしただろう。


「で、こうやって牢を……っと」


 物質変換で牢屋の柵をぐにゃっと曲げて牢から外にでる。


「!?!??!」


 驚いて声がでないらしい。一部始終を見終わったアルはしばらく呆けた顔をしていたが気を持ち直すと


「勇者ってホントすげぇのな。こんな能力初めて見たぞ」


「他の奴らがどんな能力を持ってるか知らないけど異世界転移した奴なら他にとんでも能力持ってるんじゃないか」


 なんせ俺はこっちに飛ばされてきて二時間くらいで牢屋行きだ。

 他の奴等のステータスなんて知らないし興味もない。


「それにしてもそんな能力あるのにどうして脱獄しないんだ?」

 

「いや、めんどうじゃん」


「そんな断言されてもな……それにそんな特殊な能力あるなら戦争に参加しなくてもこんな牢屋じゃなくて普通の部屋を準備してもらってメイドでも付けて貰えば良かったんじゃないか?って姫様をビッチ扱いしたんだったな……」


「そゆこと。それにビッチ扱いがなかったとして普通の部屋でメイドつけてもらってたとしてもどんなメイドがくるかわからないし、勇者って立場だからって戦争に参加しないのに甲斐甲斐しく面倒みてもらうとか精神的に疲れそう。ある程度静かな空間でのんびりできて三食昼寝つきが俺の理想。その点ここは俺の理想にかなり近い!まさにベストプレイス!!」


「はぁ……イチヤはホント変わってるよな。俺にはわからん」


「それにここには気の良い牢番もいるし、ご近所さんも親切だからな」


 そういうとアルとレイラは目を丸くし、プッと噴出す


「イチヤ、断言する。お前さんは変わり者だ」


「あぁ、まったくアルの言うとおりだ」


 二人が朗らかに笑うと、俺も笑みが浮かぶ


 元の世界では高校入学以降こういった気のおける知り合いには出会えなかった。そういう意味では異世界転移して良かったとも思っている。


 もちろんあのクソ女神に感謝なんてしてやらんが……


「でもまさか収監初日に仕方ないとはいえこうも簡単に牢屋を抜け出させるとはなぁ……」


「その事は悪いって思ってる」


「まぁ正直に話してくれたし、ちゃんと戻ってくれたから俺の方から責める事はないんだが、次からはなんかあったらちゃんと言え。俺に対処できる事ならしてやるし、もしも無理なら鍵開けてやっから」


「いいのか?」


「お前さんの性格上出してやっても戻ってくるだろうしな。ただし内緒にしてくれよ。俺にも家庭があるから処罰される訳にはいかん」


「わかった。アル、あんがと」


「礼はいいさ。黙って何かされるよりかはその方が俺の面目も立つ。それにしても王様は何やってんだ?普通の罪人なら能力封じの腕輪をつけてから牢屋に入れられるんだが……これがイチヤじゃなかったら確実に逃げられてるな」


「そういうもんなのか?」


「そういうもんだ。能力を封じなけりゃ魔法なり特殊な技能使って逃げられちまうからな。イチヤみたいな能力を持ってる奴が他にもいるかもしれない」


 確かに。そういう犯罪者が逃げてまた罪を重ねた場合、目も当てられない。


「とりあえずイチヤ。頼むから俺の心労を増やさないでくれ。この歳で禿げたくはない!」


「あぁ……わかった…………」


 どうやらアルにとっては深刻な悩みのようだ。見た感じ良い人で苦労性っぽいからなぁ……

 なるべく迷惑かけないようにしよう


 こんなやりとりをして収監された1、2日はアルも巡回の回数を増やした。当然の処置だ。だがそれはこちらを疑って目を光らせているとかではなく心配性のアルの性分みたいだ。

 

 ホント苦労をかけて申し訳ない……


 

 

 そう思った時期が俺にもありました。


 四日め以降のアルの巡回は一、二日目と回数はかわってないが、巡回という名目で退屈しのぎに話をしに来るようになった。


 どうやら騎士団の牢番とは違い、ここの牢番はとてつもなく暇らしい。収監されてるのが二人しかいないのもあるが、レイラは今まで問題を起こした事はないし、俺の方もアルに注意された初日以降、特に問題を起こしていないのだ。そんな状態が四日も続けば暇にもなるだろう。


 だがそれでいいのか。牢番さんよ……


 俺が薬を飲ませて以降アルとレイラも時々会話をしている。

 人間関係は良好だ。


 そんな事を考えていると部屋のドアが、がちゃりと開いた。


 「し……失礼します」


  白髪でサファイアのような青い瞳、唇は淡いピンクといった感じ。身長は平均よりも少し小さいくらいなのだが、猫背のせいか更に小さく見える。見た感じ中学生くらいの容姿だが出るところは出ているがこれも猫背のせいでより大きく見える。メイド服を着ていて頭にはホワイトブリムではなくヘッドスカーフのような物をつけている女の子が入って来た。


 入って来た少女の名前はリアネ。どうやら俺の食事係りになったらしい飯使いの女の子だ。


 なぜ召使いじゃなく飯使いかって?

 彼女の役目が毎日俺のご飯を運んでくれる女の子だからだ。


 その時間以外は普通に王城で仕事をしているらしい


 そんな女の子が食事をお盆のような物に乗せて運んできてくれた。

 どうやら話しているうちにお昼になっていたようだ。


「お疲れさんリアネ。いつもごくろうさん」


 アルがリアネを労う。


「いえいえ、アルドルさんこそいつもお疲れ様です」


 そういって彼女はアルを含む三人分の食事を部屋の通路にある監視する為の簡素な机に置く。


 部屋には監視する為の机と椅子が置いてあるんだが、アルはまともに使っていない。せいぜい俺達と世間話をする時に使う程度だ。

 これって職務怠慢じゃないのか?機会があったら王様にでもちくってやるか。


 まぁそんな事出来るわけないのだが、思ってみただけだ。


 その食事をアルとリアネが俺とレイラに配ってくれ、アルも自分の机に座ると食事を始めようとする。今日の食事はシチューにパンだ。



「……ちょっと待て」


「なんだよ?」


「何でリアネが立っているのにアルが座って飯を食おうとしてるんだ?」


「俺に立って食えと?」


「椅子は二つあるみたいだがアルは立って食え。そしてリアネは座るといいだろう」


「何でだよ!」


「私の事は気にしないでください!?これもお仕事なので!」


「はぁ……ここには俺達しかいないし気にすんな。使った食器を運ばなけりゃなんない訳だし俺達が食事を終えるまでリアネも少し休んでけ」


「いえ、ですが……」


「頼む。そうしなきゃいつも以上にうざいこいつがさらにうざくなるんでゆっくり食事も出来そうにない」


「で……ではお言葉に甘えまして……」


 そういっておどおどしながら空いている椅子に腰掛けるリアネ。

 俺はそれを見届けると食事を開始する。


 アルとレイラが呆れた視線を向け目が”そんなまわりくどい事しないで自分で言え”と目で訴えてきているが気にしたら負けなので気にしない事にした。もちろん若干頬が熱いのも気にしない。


「それにしても今日もおいしいな」


 そんな感想が口から出た。シチューとパンだけなのだが、本当に絶品なのだ。シチューは食べやすい大きさにカットされているのはもちろんのこと、それぞれの食材を適切な時間、適切な火加減で焼いた後にじっくり煮込み、味付けも若干甘く作られている。パンの方はというと表面はさくっと中はしっとりしていて絶妙な焼き加減だ。それに若干塩を混ぜ込んで作ってあるのかシチューとの相性が抜群に良い。

 

「えへへ、ありがとうございます」


 そういってはにかむリアネ。


「どうしてリアネが嬉しそうなんだ?」


「イチヤ様達のお食事は私が作っていますので」


 その言葉に驚く俺。

 

「何でリアネが作ってるんだ?こうゆうのって王宮お抱えの料理人が作るもんじゃないのか?」


「あの……私の作ったものじゃだめでしょうか……?」


「そんな事はない。リアネが作ってくれて嬉しいよ、ただこういうのって役割分担とかあると思って」


「単純に料理人が足りなくなったから俺達兵士や収容されてるイチヤ達の分はそれぞれ担当してるメイドが作ってるって訳だよ」


 俺とリアネの会話を聞いてたアルが説明してくれる。


 アルの話はこうだ。異世界転移されてきた勇者がこちらが思っていた以上に多く、想定していた料理人の数じゃ全然足りなかったようで、王族と戦争参加組の食事を料理人が優先して作り、残りの人数はメイドさんから担当者を決めて作る事になったそうだ。


「イチヤの場合特殊な勇者だから担当を一人にした。それでその担当になったのがリアネってわけだ」


 なるほど、料理人が何人いるのかはわからないが、準備してなきゃいきなり30人近くの人数を捌けるわけもない。

 捌けたとしても味の質が落ちる。

 しかも急遽新しい料理人を集めようとしたとしてもすぐに集まる保証はない。メイドの中で担当を決めてもらってすぐに取り掛かれる体制を作った方が良かったって事か。


「それにしてもこんな手の込んだ料理つくるの大変じゃないか?他の仕事もあるんだろ?」


「そんなに手が込んでるか?確かに旨いけど普通のシチューとパンだぞ?」


「リアネ。今度からアルの食事はパンと水だけで良い。パン一つに水は重いだろうがバケツに汲んで持ってきて欲しい。奴の腹は膨れれば問題ないだろう」


「はぁ……」


 リアネは困ったような顔で曖昧な返事をする。


「なんでそういう話になるんだよ!」


「アルがこれがどれだけ手間をかけたかわからないからだろ。自業自得だ」


「どういう事だ?」


 俺がふざけて言っているように感じたアルは俺の方を見た。そして俺がいつになく真剣な顔をしているのを目にして真面目な顔で聞いてくる。俺はそんなアルに一から説明してやる


「いいか。まずこの食材、これは俺達が食べやすいように均等に切って角もしっかり丸くしている。次に切った野菜や肉なんだが、一度焼いて煮込む前の下ごしらえもしっかりされているんだ。それも全部一辺に焼かずに時間ごとに一つ一つ丁寧にほどよい焼き加減を見定めて。さらに煮込む。これだけで何時間かかると思ってるんだ!しかも俺達の事を考えてシチューは若干甘いかなっていう匙加減での味付け――――」


「お……おう……」


「更にパン! これにはシチューと組み合わせて食べる為にわざわざちょっとしょっぱいかなって位に塩を塗りこみ焼き加減も絶妙!外はさっくり中はふわっと、この焼き加減を作るのにどれだけの時間パンの前で火加減の調節しなきゃいけないと思ってるんだ!これもシチューとのバランスを考えての塩加減。これを手間がかかってないとかどの口が言ってんだ!!」


 熱弁する俺に若干みんなが引いているが、良いだろう。とりあえず語るべき事を語ったので満足だ。


「……なんかごめんな。手がこんでるか?なんて言っちまって、うん、うめぇわ。元々旨かったんだが手間がかかってると思うと更に旨く感じる。いつもありがとな」


「いえいえ!私なんか!これがお仕事なんですから気にしないでくださいょ!」


 アルの言葉に慌てて返すリアネ。こういう自分の間違いをすぐに正す姿勢はアルの美点の一つだよな。

 

 そんな風に二人のやりとりを見ながら俺は食事を終えた。


 リアネは終始ニコニコと俺達(主に俺)の食事風景を眺めてから全員が食べ終わったのを確認すると片付けの準備をする。

 だが椅子から下りようとしてリアネが少し顔を顰めたのを俺は偶然見てしまった。


「どうした?」


「いえいえいえ!何でもないですっ!!」


 俺は気になって声をかけるとリアネが慌てだす。


 どうにも怪しい

 慌てたりするのはいつもの事だが、今のは何かを隠してるような素振りだ。

 そしてリアネの動きから何を隠してるのか検討がついた。


「右足、どうかしたのか?」


「!?」


 彼女は椅子から下りようとしてた時に、右足が床についた時に顔を顰めた。そしてそれを隠す理由なんて足を怪我した事がバレたらやめさせられる。もしくはいじめに合ってるかの二つしか俺は思いつかない。前者ならドジだなって苦笑して終わりだが、後者だった場合深刻な問題だ。

 俺は経験者だからよくわかる。そしてこの手の勘っていうのはよく当たるもんだ。


「誰にやられた……?」


 自分でも驚くくらい低い声が出た。

 その声にビクッとするリアネ。


「誰にもやられてません!自分で階段でひねっただけです!!」


 そう言って彼女は急いで食器を片付けると部屋から出て行った。


「たくっ……もう少し言い方ってもんがあるだろ?」


「すまん……」


 どうにもいじめにあった経験からか、親しくなった人間が同じ目にあってるかもしれないと思うと、理性が効かなくなるな……

 自分が作った雰囲気とはいえ食後に空気が重くなって軽く胃もたれしそうだ。


「誰にやられたかはわからんが見当はつく……俺が知ってる限りで説明してやるよ」


「頼む」


「まず最初に……彼女は……奴隷メイドだ」


 そう口にするアルは苦々しい顔になりこの世界の奴隷という存在について説明を始めるのだった。

 

次の更新は予定は日曜になるかもしれません。

なるべく早めに更新出来るよう努力しますのでよろしくお願いします。

3月11日 誤字報告があり修正しました。報告ありがとうございました。

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