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1話 勇者召喚

評判良ければ更新速度上げようと思います。とりあえず今はまったり更新予定

 急にすさまじい光が発生したかと思うと視界が暗くなり、気がつくと俺は煌びやかな部屋にいた。赤い絨毯が部屋中を敷き詰めて周りには甲冑の銅像や高価そうな装飾品が等間隔で置かれている。見た感じ西洋の王の間といった感じだろうか。


「ってかあんの自称クソ女神、いきなり人をこんなところに連れてきやがって!」


 悪態をつく俺にどこからか視線が集まる。どこからというか周りから


「鏑木君?」


「え?」


 唐突に苗字を呼ばれて振り向くと、そこには俺のクラスメイト27名教師1名、あと知らないおっさんと綺麗な女の子が俺の事を見ていた。


 あぁ、そういえば俺のクラスが選ばれたとかクソ女神が言ってたもんなそら俺一人なわけないよな。ってかなんで異世界転移が逆なんだよ!一人かと思って大声で怒鳴っちゃったじゃないか!


 内心一人ごちるがごちたところで何が変わるわけでもないので気持ちを切り替える

 俺は何事もなかったかのように


「ここは……どこだ……?」


 とりあえず真剣な顔を作って言ってみる。

 うん、仕切りなおしてもだめだな。みんな微妙な顔で俺の事見てるよ

 もう穴があったら入りたいよ


 だが空気を読んでくれたのか、見知らぬおっさんが一つ咳払いして俺たちがどういう状態なのかの説明に入ってくれる。ありがとう名も知らぬおっさん


「うぉっほん!わしはゼーブル6世。このラズブリッダ王国の王じゃ。急な事とは思うが落ち着いて話を聞いて欲しい。おぬし達は我が国で行われた異世界召喚で呼ばれた勇者じゃ」


「「は?」」


 みんなが動揺している。

 あれ?みんなは女神に会ってないのか?

 何で俺の前だけに姿を現したんだ?

 というか俺の事はそっとしといて欲しかった……。


「召喚した我らがいうのも筋違いかもしれぬが、強制的に連れてきてしまって申し訳ない」


 おっさん……王は深々と頭を下げる。

 

 いや、あんたに謝られても……

 たぶん召喚者の人選ってあのクソ女神だろ

 まぁ勇者召喚を行った国も同罪ではあるんだろうが


 そんな事を考えていたら召喚者の一人、教師の米田幸平が声を荒げた


「そんな事を謝られても困ります。私達にも家族がいて生活があるんです。今すぐ返して下さい!」

「そうだそうだ!」

「家に帰りたい!」


 米田に賛同するように他のクラスメイト達も王様に怒鳴る

 反応としては当然の事だが、俺から言わせれば、んな事言ったってどうしようもないんじゃないかと思ってしまう

 俺は結構ラノベやWeb小説などを読んでいるが、こうゆう異世界召喚物の展開ってお約束があるじゃないか。現に


「すまぬが、召喚された者の帰還方法はわからんのじゃ」


 ほらな。

 お約束としては戦争を解決するか魔王をぶちのめすかあるいは神を倒すか、自分らが神か魔王になるかってのがお約束だよな。個人的にはあの女神をぶっとばすっていうのが一番すっきりする異世界帰還方法である。


 「そ……そんな…………」 

 

 米田やクラスメイト達は絶望したような表情になる。普通はそういう反応だろう。

 俺の場合はどうでも良いっていう感じだ。心配事といえば自分のサブのキャラ上げの途中で飛ばされて他のギルド仲間が怒っていないかという事くらいだ。


「勇者達よ、そう悲観しないでくれ。わし等の世界の問題を解決してくれたら国をあげて帰還方法を探しあてる事を約束しよう」


 教師や生徒達の落ち込み具合を見て、王が声をあげる。もともと異世界召喚なんて事しなければこんな事にはなっていなかったのだが、この王様も責任を感じているんだろう。国を任されている者にしては良い人すぎる気もするが

 

 みんなはそれを聞いて少し元気がでたようだ。


「それでこの国での問題とはなんでしょう?」


 米田が代表して王様に尋ねる。

 


「実は今この国は多種族、エルフ、魔族、獣人連合と戦争中なのだ」


「「は?!!??!?」」


 

 今度は俺もみんなと一緒にハモった。

 

 普通は一つの種族と戦争ならわかるが、三国と戦争とかなにその戦国時代。


「待ってください!戦争なんて二つの国同士だけでも下手したら何十年何百年かかるかわからないんですよ?!それを私達一クラスだけで止められる訳ないでしょう!」


 米田の意見はもっともだ。

 さすがに四つの国との戦争なんて俺たちが生きている間に終わるわけがない



「普通ならその意見はもっともだがおぬし達勇者に関してはその事は当てはまらない」


「どういう事ですか?」


「勇者召喚とは文字通り勇者を呼び出す儀式、その勇者は召喚された際に普通の人間よりも強い力に引き上げられ特別な力も得られるのじゃ」


 確かにそうでもしないと一般人をわざわざ召喚して戦争に駆り出しても死体が増えるだけだしな。


「つまり私達にはこの世界の人間よりも強い肉体と特別な力があると?」


「うむ、それは間違いないはずじゃ」


 自信満々に王様が言う。



「レイシア、アレを持ってくるように家臣に伝えるのじゃ」


「わかりました。お父様」


 レイシアと呼ばれた女の子は王の間から出て行くとすぐに家臣二名をつれて戻ってくる。片方の家臣の手には何かが入った袋があり、もう片方は菜箸のような物を持っていた。


 というか箸!?何に使うんだあれ?


 疑問に思っていると、袋を持った家臣が袋を広げ、菜箸のような物を持っている家臣が菜箸で中から何かを取り出す。


中から出てきたのはカードのようなもの。大きさはトレーディングカードのくらいの物だ



「すまんが、一列に並んでステータスカードを受け取ってくれ」


 

 あぁ、やっぱりカードなのね

 名称から言って俺たちのステータスが表示されるカードといったところか


 

 みんなが一列に並ぶ。

 

 俺はクラスメイトと少し距離をとり最後尾に並んでカードを受け取った。


 「このカードは最初に持った者を主と認め、それを手に持つと自分の力や職業などが表示される。確かめてみてくれ」


 なるほど、他の者が触れてはいけないから菜箸?っぽいのを使ったのか


 王様にそう言われ、自分のカードを見つめてみる。

 ただの薄っぺらいカードで特に何も書かれてない。裏返してみても何も書かれていない

 どうやらみんなのカードにも何も書かれていないのか俺と同じくひっくり返したり、凝視したりしている者もいる

 不良品か?と思ったらカードから淡い光がカードから発せられ文字が浮かび上がってくる。


 書いてあった内容


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

カブラギ・イチヤ 16歳

職業:ニート

Lv1

HP:8020

MP:2065

攻撃力:1652

防御力:1355

能力:女神の祝福、創生魔法、物質変換、状態異常回避

    ステータス限界突破

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 職業:ニート!!?

 ニートは職業じゃないだろ!

 それにこのステータス。俺のカードだけバグってんじゃないのか?!

 

 

「ではみなの者、わしと姫にステータスカードを見せてくれ。一応ステータスは見せてもらうが、戦争に参加したくない者に無理強いはしたくない。だが出来るだけステータスが高い者はこの国の為、力を貸してもらえると助かる」


 各々王様と姫様にカードを見せに行く。男子は主に姫にステータスカードを見せに行く。そりゃおっさんよりも可愛い女の子に見せに行きたい気持ちはよくわかる。

 

 俺はどうしたかって?そんなの姫様に見せに行くに決まってるじゃないか。


 姫様もステータスカードを見て苦笑したり喜んだりと様々な反応をする。

 そして俺の番になった時に姫にこのバグったカードを見せる。


「お父様っ!?」


 姫様は目を見開き、驚いたように王様に駆け寄る。

 なんだ?俺のカードがバグっていた事がそんなに大変な事態なのか?

 まさかぶっ壊したのが俺でその責任を取れとかじゃないよな?

 

「ニート:カブラギ・イチヤよ!」


 王様が大声で俺の名を呼ぶ、しかもカードに書かれた職業欄まで読み上げやがった!!

 

 クラスメイトまで俺の方を見る。

 やばい!すげー恥ずかしい!!!


「ニート!ニートのイチヤよ!」


「ニートニート連呼すんなよ!恥ずかしいだろ!!!」


 俺は大声で王様を非難する。

 なぜか王様は興奮が隠しきれない様子で俺に詰め寄ってくる


「おぉ、すまん!年甲斐もなく興奮してしもうた」


 そう言ってステータスカードを俺に返して王様が謝ってくる。だが反省してるような感じでなく注意してもいまだ興奮がさめやらないといった感じだ


「そんな興奮してどうしたんだ。ですか?ってか王様、何歳ですか」


 一応年上で王様な訳だから敬語でいかないと不敬罪とか言って処刑されかねない

 さっきの王様への突っ込み。あれは突っ込みだから良いんだよ

 

 どこの誰にともなく言い訳をしておく



「今年で40になる。というか今はそんな事どうでもよい!」


「はぁ……」


 何でこんなに興奮してるのか意味がわからん。


「ニート?というのはわからんが、お主のステータス!」


「ステータス?あぁ、バグってますよね」


「バグ?ったとはなんじゃ?」


「ぶっ壊れてるって意味です」


「勇者達に配ったこのカードは王国の中にあるステータスカードの中でも特別製なんじゃ壊れるなんてありえん」


「いや……だって普通Lv1でこんなHPやMP、攻撃力、防御力に至るまで高すぎでしょう。普通に考えてこれの10分の1くらいじゃないんですか?」


「普通はな、だからお主は選ばれたんじゃよ、救世主に」


「「え?!」」

 

 王様の一言で俺は驚く。俺以外にもクラスメイト達に動揺が走った。


「なんであいつが?」

「ありえねぇ……」

「あいつが救世主なら俺は神にだってなれるぜ」


 口々に見下すような言葉を発しているのは、俺をいじめていた連中だ。

 上から葉山洋はやま よう谷口秀樹たにぐち ひでき新道武しんどう たけし

 まぁ自分が見下してた奴がいきなり救世主扱いだもんな。そりゃ反感かってもおかしくないわ

 

 ぶっちゃけどうでも良いけど


「ではみなのステータスカードも見せてもらったところでこの国、ひいてはこの世界の人類の為に協力してくれる者は前に出て欲しい。もちろん強制ではない!戦う意思のない者は戦争が終わるまでこの国で責任を持って面倒をみよう!戦ってくれる者にはこちらでも最大限の支援を約束する!どうか力を貸してくれ!」


 王様がそういうと米田とクラスの男子10名、つまり半数以上が前に出る。女子はさすがに戦うと言う事もあって男子の約半分の6名だ


 当然俺はというと


「なぜお主が前に出んのじゃ!?」


 王様は俺に掴みかからん勢いで迫ってくる。

 どうやら王様は俺のステータスを見て当然俺が戦争に参加すると信じきっていたようだ


「いや、さっき王様が言ったんだろ。もちろん強制ではない!戦う意思のない者は戦争が終わるまでこの国で面倒見るって」


「確かにそう言ったが!お主は戦う力があるではないかっ?!」


「力はあっても戦う意思はないですよ?」


「なぜじゃ!?」


「なぜって言われても……俺にメリットがないから?」


 そう俺にはこの世界を救うメリットがないのだ。

 元の世界に戻ったところでニート生活に戻るだけだし、というか戻れる保証なんてどこにもないし

 いくら最大限の支援をするって言ったってそれは戦争の事で支援しなければ国が滅ぶ。

 支援するのは当たり前なのだ。


「それに俺はこの世界の知識がないからそこの米田教師(笑)の言を借りるなら仮に”戦争”が起こってると仮定して”攻められる方”にも何か”怒らせる原因を作った”んじゃないか?」


 それを聞いた米田は青い顔して絶句する。そりゃ単語は違うが俺はそのまま米田に言われた言葉を返したのだ。本人も俺が何を言いたいのかわかるだろう


 クラスの連中も俺がいじめに会っていた事を知ってて見て見ぬふりして、しかも教師までそんな事を言っていたんだ。うつむいて黙る事くらいしか出来ない


 本音を言えばもうどうでもいいと思っている。俺にとってはクラスメイトや教師なんて赤の他人で、いようがいまいが関係ないのだ。ただ戦争がめんどくさかったのとなんで他人の為に自分の命を張らなければならないんだという思いで、過去の遺恨を使わせてもらっただけだ。


「ってわけで俺は元の世界に帰れるんなら帰るし、帰れないんならこの世界で暮らすさ、どっちでも良いから戦争に出る気はありません」


 全員に聞こえるようにきっぱりと宣言する。

 

 これで戦争が終わるまで面倒を見てもらえるだろう

 

 誰もが言葉を発せないと思っていた俺だったがそこに一人の少女が声を発した。


「待ってください!」


「ん?」


 待ったをかけたのは王女様だった。

 姫様は俺に歩み寄るとまっすぐに見つめてくる。


「待って、待ってください。この国にはあなたの力が必要なのです」


「そんな事言ったって、なんで人様の国に命を懸けなきゃいけないんでしょうか?」


 姫様は俺と同じくらいの年だが一応敬語で話す。


「ならあなたがこの戦争で一番功績を納めたら褒賞を差し上げます」


「いや、だから支援するのは当たり前だし、褒章とかさ結局戦争で負けたら相手の国に奪われるわけですよね?勝ったところで、戦後の復興作業で金銭的にきつくなる可能性だってあるのにそんな曖昧な約束応じるわけ――――」


「褒章は私です」


「「な?!」」


 この言葉には王様とクラスメイト達も驚いた。


「それなら相手国に殺されない限りお渡しする事はできます。もちろんあなたに守ってもらう前提の話になってしまいますが、一国の姫を褒章として貰い受けるのです。後はこの世界に残るなら次期国王に、残らないなら帰還方法が見つかるまでの間私を好きにしてください」


「何を言っておるんじゃ!お主はこの国の王女なのだぞ!」


 この提案にはさすがの王様が待ったをかける。当たり前だ。いくら国の為とはいえ自分の体を売ろうとしているのだから

 

「どうでしょう?それなら褒賞としては十分ではないでしょうか?」


「いや、いらないけど?」


 きっぱりと断る。この言葉には姫様をはじめとしたみんなが絶句した……


「姫様を抱いたら、残るにしても次期国王ってめんどくさい役職がつきまとうし、元の世界に帰るまで自由にして良いって言ってもそれで帰ったら後味悪いじゃないですか」


 俺はこれでも女の子とそうゆう関係になったら一生大切にしたいという童貞臭漂う考えの持ち主なのだ

 それに出来ればお互い好きになってからそうゆう関係になりたい

 

 これだから”童貞は”とかいうな!悲しくなるだろ!


「姫様ぁもうそんな奴ほっとけよ」


 声を上げたのは葉山達だった。


「そうそうそんな意気地なしに構ってたところで時間の無駄無駄」


「それよりその報酬って俺達も有効ですよね?」


 谷口が舌舐めずりしながら姫様に聞いてくる。その仕草に若干引き気味になる姫様


「え……えぇ…………国を救っていただけるなら私はこの身を捧げます」


「よっしゃぁぁぁあああああ!」


 男連中 (米田含む)が歓喜の声を上げる

 

 お前ら姫様だけじゃなく女子もかなりドン引きしてるぞ

 しかも米田、お前自分の立場考えろよ


 というか


「お姫様ってビッチじゃん」


 俺の一言に周りのみんなの時が止まったかのように静止した。

 

 やべ!つい思ったことが口から出ちゃった!


 俺は姫様の方に振り返ると黒いオーラが立ち込めていた


「フ……フフフ…………言うに事欠いて一国の王女をビッチ呼ばわりですか」


「いや、あのですね」 

 

 やばい!すごいプレッシャーと感じる!こんなオーラ出せるんなら姫様一人で他の三国滅ぼせるんじゃないか?!

 そんなどうでも良い事を考えていると姫様に腕を掴まれ


「さぁ、行きましょうイチヤ様、あなたにふさわしい、とても良いお部屋をご用意いたしますので」


 そういって俺をずるずると引きずっていく

 

「王様、戦争終結の報酬は帰還までしっかり面倒見る事と、私達を不当に扱わないという確約でお願いします」


「うむ、承った」


 米田がまるで姫という報酬がなかったように王様に提案し王様もその案に乗ることにした。


 俺たちが去ったあとに残ったのはこの微妙な空気と静寂だけだった


職業欄に罪人が追加されました。

 

 カードの項目に一つ不名誉な職業が追加された事にイチヤはまだ知らない。

読んでくれた方感謝です。誤字脱字感想お待ちしています。

1月21日:誤字を修正しました。ご指摘頂きありがとうございます!

2月14日:王様の歳についての指摘があり、修正しました。ご指摘ありがとうございます!

3月11日 誤字報告があり修正しました。報告ありがとうございました。

5月23日 誤字報告があり修正しました。ご報告ありがとうございました。

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