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189話 秘匿8

「え、どういう事だ?」



 俺はディーネの言った意味を確かめる為、ユリに視線を向けるが、彼女からの返答はない。

 ただその頬にどこか赤みがさしており、なんとも気まずげだ。



「さすがにこのままではイチヤが誤解したままじゃな。ユリーシャ殿、説明してもよろしいか?」


「……どうぞ」


「うむ。イチヤ、ユリーシャ殿はな、我等に気を使ってくれたのじゃ」


「我等?」


「我とバックスとその部下じゃ。イチヤはダンジョン探索において何が一番危険かわかるかの?」


「そりゃあもちろんダンジョンに出てくる魔物だろ」



 ダンジョンの奥へと進むほど、狡猾で厄介な魔物が現れる。

 魔法や毒等の攻撃を使用してくる魔物もいるので、注意が必要だ。


 その他に危険があるとすると罠の類くらいしか。



「残念ながら違う。ダンジョンで一番危険なもの――――それは仲間同士で不和が生じる事じゃ。ダンジョンの魔物は厄介ではあるが連携が取れれば倒すことも出来よう。もし勝てなくとも協力すれば逃げる事も可能かもしれん」


「けれど、連携が取れなければ、倒す事も逃げる事も出来ない可能性があるという事か。それこそ勝てる相手であっても……」


「その通りじゃ。そして連携するには信頼関係というのは何よりも重要じゃ。だから魔族という不穏分子である我をユリーシャ殿はダンジョン探索から外したかったのじゃろう」


「なるほど、ディーネがいるとバックス達が警戒して、碌に連携が取れなくなる可能性もあるのか」



 前にダンジョンに行った時は、信用のおける二人とだったので、そこまで考えが及ばなかった。


 バックス達がこの街に来て二ヶ月くらいになるが、彼等とディーネとの接点は皆無だ。


 一応ディーネの事はリブ達ゴブリン族を紹介した際に合わせてバックスには紹介した。

 けれどそれ以降、ディーネとバックス達が関わった所を見た事はない。


 ディーネとバックス達の活動範囲が違うから当たり前なのだが。


 下手に民衆の不安を煽らないように、魔族であるディーネの行動は屋敷内だけに制限させてもらっている。

 これはユリからの提案で、ディーネも了承した事だ。


 それに対してバックス達は騎士団の宿舎や訓練場、身回りの為に領の各町村を回っているが、この屋敷に来る事はほぼ皆無。

 来るとしてもユリへの報告の為にバックスが一人で執務室に寄るくらいだ。


 例え俺がディーネを安全だと保証したとしても、ほぼ接点のない、しかも同盟を結んだ訳ではない魔族を、急にダンジョン探索のメンバーとして信用しろというのは無理な話か。



「だからこその我とイチヤの奴隷契約じゃ。奴隷となれば、主に危害を加える事は不可能だし、命令には絶対服従じゃからな。これなら彼等の不安も解消されるというものよ!」



 フンス! と鼻息荒く告げるディーネだが……こいつ、奴隷になる事を全く嫌がっていないな。



「わかったよ……俺としては何の咎もない奴を奴隷になんかしたくないが、それでダンジョンの調査が円滑に進むならその提案に従う。た・だ・し! 終わったら即解放するからな!」


「そうしてもらえると助かる。さすがに我もずっと奴隷の身分なぞ御免被る」



 あまりにも奴隷になる事に躊躇いがなかったから、終わった後も奴隷のままでも構わんとか言われたらどうしようかと思った。

 そうだよな……ずっと奴隷の身分でいたいと思う奴なんていないよな。

 もしいるとしたら相手に束縛されたい変態か、どMくらいだろう。


 一人思い浮かぶが、そいつの事を頭から振り払った。


 一先ず、ディーネについては奴隷と考えず、リアネ達の時のように、雇用主と従業員のような関係だと思っておこう。

 

 ただのダンジョン調査のはずが、面倒な事になったもんだ……。


 内心でため息を吐きつつ、ダンジョン調査でこれ以上の面倒事がやってこない事を祈った。

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