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18話 クラスメイト達

短めです

 扉が開かれ中に入ってきたのはアルと二人の女の子だった。俺はアル以外の二人に見覚えがあったのだが一見しただけでメイド達とトランプを始めようとした。


 他のメイド達が俺とアル達の方を交互に見てどうしたらいいのか戸惑っているが、気にするなと言うように微笑んであげると俺の配ったカードを手に取り見つめている。

 だがやはり気になるらしい。カードを持ちながらもちらちらと視線はアル達の方に向いている。

 

 アルの方はガン無視を決め込んだ俺の様子を見て予想していたのか呆れたように息を吐くと話を切り出した。


「イチヤ、お前さんにお客さんだ」


「用件は~?」


「それはお前さんが直接聞け」


 話す気がなかったからアルに代弁して欲しかったのだが、仕方がない


「こんにちは、勇者様方がこんな牢屋までご足労いただきありがとうございます。それで、勇者様がこんなワタクシめに何か御用でしょうか?」


 俺はカードから視線を外さないまま、まったく知らない人と接するような言葉遣いでここに来た理由を問う。ババ抜きは彼女達の手が止まってしまった為進んでいない。


「あなたにこれを届けに来たの」


 女の子の一人、確かクラス委員長だったか。がステータスカードを俺に渡そうとしてくる。


「ありがとうございます」


 そう言って俺は褒賞を受け取った時に王様に預けていたカードを受け取る。


 王様も届けさせると言っていたが、クラスメイトに届けさせる事ないだろうに

 俺の雰囲気であまりこいつらと関わりたくないというのは伝えたと思うんだがなぁ

 

 伝わってなかったのか、それともあえて接触するように仕向けたのか――――おそらく後者だろう。


 王様や彼女達の目的が何処にあるのかはわからないし興味もないのでそろそろ帰って欲しいのだが、委員長達は黙ったまま牢屋の前に立っているだけだ。

 

 はぁ……仕方ない


「ピア、フィニ」


 俺はトランプを一度回収して獣人メイドの中でも一番年下の女の子(確か七、八歳だったかな?)。鳥人族と犬人族の幼女二人の名前を呼びケースに入れたトランプをピアの小さい手に乗せた後に目線を合わせ両手で彼女達の頭を撫でる。


「ちょっとこの人達とお話があるから他のお姉ちゃん達と一緒に自分の部屋に戻ってるんだ。トランプ貸してあげるから他の子達と喧嘩しないで遊んでなさい。終わったら行くから俺も混ぜてな」


「うん、わかったぁ」


「ごしゅじんさま、またあとであそぼうね」


「おう!次は負けないからな!」


 俺がそう言うと彼女達は牢部屋を出て行く。レイラの話を聞いていた子達も一緒に部屋を後にした。後は年長の子達に任せておけば大丈夫だろう。俺が借りてる階では俺とアル、レイラ以外人族はいないので迫害される事もないし、特に心配はいらない。


「リアネは行かないのか?」


「専属ですから」


 他の子達と同じように一度出て行くかと思ったのだが、彼女はそれだけを言うと俺の後ろに控えるように立っている。


「それで、ステータスカードを渡す以外に何か用件があるんだろ?俺としては早く用件を済ませてあの子達と遊びたいんだけど」


 少し棘のある言い方をして委員長達に話を促す。委員長達は俺がどんな用件か質問したにも関わらず、うつむいたまま黙っているだけだ。


 いつまでもこんな風に突っ立ってられても困るんだがなぁ……


 委員長達が黙ったままなので俺が困っていると助け舟とばかりにアルが口を開いた。


「そんな言い方じゃ嬢ちゃん達だって話しづらいだろうに、もう少し優しくしてやれって」


「だってこいつらに優しくする理由がないぞ?」


 俺の言葉に委員長達はビクッとする。


 やばっ。本音が出てしまった……


「はぁ……イチヤ、せめて棘のある言い方はやめてやれよ。嬢ちゃん達もすまんな」


 アルが俺にじと目を向けた後に委員長達の緊張をほぐそうとおどけた感じで微笑みながら軽く謝っている。まるで俺の保護者のようだ。その甲斐もあったのか緊張していた表情が少しだけだが緩む。


 俺が接するよりもアルに任せた方が話がスムーズに進みそうなので、この場はアルに任せてベットに横になろうと思ったのだが今度は別の方向から俺に声がかかった。


「イチヤ、彼女達は君に用事があるんだ。ちゃんと話を聞いてあげたほうがいいと思うよ」


 レイラが俺を諭すように言ってくる。まさかレイラにまで注意されるとは……完全にアウェー状態だ。普段注意しない彼女が今回注意したという事は大切な事なのだろう。自分でも自覚があるので反省する。彼女が俺の大切な人の一人というのも影響してるんだろうがあまり注意しないレイラの言葉は重みがある。


「少し言い方がきつくてごめん。それでここに来た用件って何かな?」


「こっちこそ急に来てしまってごめんなさい。鏑木君にステータスカードはあなたに会う為の口実で用件が二つあるの」


 やっと重い口を開いた委員長。というか俺に会う為の口実とかってそんな堂々と言っていいのか?普通隠すだろ。その二つの用件があるってだけで良いと思うんだけどな。


「その用件って?」


「一つ目は、ほら恵、これはあなたから言わないと駄目でしょ」


 委員長がそうやって少し後ろでおどおどしてた彼女に自分から言うように促す。彼女はうつむいたまま、それでもちゃんと前に出て俺と視線を合わせる。


「えっと……誰?」


 いや、意地悪とかじゃなくてね。本当に誰なのかわからないんだ。だからアルもレイラもついでに委員長もそんな目で見ないでくれ。


「鏑木君!いくら何でもそれはないんじゃない?」


 案の定、委員長がキレた。本当に知らないもんは知らない。


「いや……クラスメイトなのはわかるんだが……俺、一ヶ月しか高校通ってないのにクラス全員の顔と名前なんて覚えれる訳ないじゃねぇか」


 しかも入学半月後くらいからいじめにあってたんだ。覚える余裕なんてある訳がない


 ん?いじめ?


「もしかしてあの時いじめられてた子?」


 それ以外に俺がクラスメイトの女の子と接点があった出来事などなかったので聞いてみた。彼女は口を開き肯定してくれる。


「鏑木君、あの時はありがとう。それと……ごめんなさい」


 ごめんなさいとは自分の代わりにいじめの対象にされた事を言っているのだろう。彼女は深く腰を曲げ謝って来た。


「気にしてないよ」


「……本当に、ありがとう」


 目じりに涙を浮かべた彼女はそれで肩の荷が下りたようにほっとしているが、勘違いしている。俺は聖人君子ではない。

 許した訳じゃなく”興味”がないという意味で言ったのだが本人達は気付いてないようだ。


 もちろん俺も鬼じゃないので許す期間というものはあったのだが、彼女は全部見逃した。一つは俺がひきこもっていた期間、一度でも尋ねて詫びられたら許していた。二度目はこっちに飛ばされた獣人達と戦うまでの期間、三度目は獣人との戦が終わっての三日間、いずれかに彼女が来ていれば許していたんだが、彼女は今日まで来なかった。今更来て謝られたところで何か裏があるとしか思えない。


 アルとレイラはたぶん俺の心情をおおまかにわかっているんだろうが、何も言わない。俺もわざわざ波風立てて話を長引かせたくなかったので彼女達の解釈に任せる事にした。


「それでもう一つの用事と言うのは?」


 一つ目の用件は終わりとばかりに次の用件を聞いてみる。今度は委員長が口を開いた。


「用件って言うのは他でもないの。鏑木君、私達とパーティを組んでくれないかしら?」


 ん?こいつ何言ってんの?


「すまん。唐突過ぎていっている意味がまったくわからないんだが」


「そうよね。ごめんなさい」


 委員長はそう言って一言謝ると説明してくれる。


 こないだの戦いでクラスメイトに死者一名、重傷者が多数出た事で十五名いた戦争志願者のほとんどが戦意喪失してまだ戦う意思がある者は片手の指で数えられるくらいまで減ったようだ。それでもどうしても元の世界に帰りたい者はまだ戦おうとしているらしいのだが意思と実力が伴わない。それで少しでも強くなりたい委員長達は俺を頼ってここまで来たという事らしい。


「それで王様は何か言ってたか?」


「王様は、イチヤ殿が戦ってくれるなら心強い、もし説得出来たなら彼にわしが出来る事はなんでもしようっておっしゃっていたわ」


 やっぱり王様が一枚噛んでたか……

 こんなやる気のない奴捕まえてどんだけ期待してるんだか


 王様に対して少しばかり呆れの念を抱く。


「とりあえず話はわかった」


 俺は話を聞き終えて納得したような顔をする。


「じゃあ――――」


「だが断る」


 彼女の続く言葉に被せるように言うと期待していた表情が一気に絶望へと変わる。話を聞いたところで俺の返事が変わるわけもない。


「どうして……?」


 どうにか声を振り絞って委員長が俺に問いかける。


「どうしても何もメリットがないじゃん」


「メリット……?」


「そう。俺が戦うメリット」


「それなら元の世界に戻れるわよ、十分メリットでしょ?」


「委員長……」


 俺は呆れた表情をしながら委員長を見ている。委員長の方は自分が何かおかしな事でも言った?みたいに視線を俺に向けてきた。


「それは保証されてない。帰る方法は見つかってないんだから」


「でもこの戦争に勝てば探してくれるって……」


「言い方は悪いがそんなの口約束だろ。確かに王様は探してくれると思う。だけどそれで見つかる保証なんてない」


 俺の予想だけど、見つかってないから帝国に召喚された勇者は帰れずにそのまま帝国の王になったんだろうからな。


「でも少しでも可能性があるなら一緒に頑張りましょうよ!」


 一緒に。か


「アル、レイラ、リアネも――――ごめんな」


 俺は三人に唐突に謝る。俺の態度を見てアルとレイラは呆れた表情でリアネは苦笑いを浮かべている。どうやら俺が何を言うのかをわかったようだ。

 しかし委員長は急に俺が彼等に謝った理由がわからずに困惑の表情を浮かべている。その表情に向けて言ってやった。


「あのな委員長、迷惑だ」


「え……?」

いつも読んでくれてる方、ブックマークしてくれた方、評価してくれた方感謝です。


今日から三日ほど仕事が忙しくなりますので、のんびり待っていただけると助かります。


さてさて、イチヤ君と委員長、これからどうなるんでしょうね


拙い文章ですが楽しんで頂けると嬉しいです。ではまた次回!



10月28日に誤字を修正しました。

指摘してくださったハルさん、ありがとうございます。

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