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181話 ダンジョン?

「ダンジョン?」



 ユリの呟いた単語を反芻する。


 ダンジョンと言えば一度アルやシャティナさんと行った場所だ。


 この世界のダンジョンはRPGなどで出てくるものと一緒、で塔や洞窟、森林自体がフィールドと化したものが存在する。


 俺が行ったダンジョンは洞窟の形をしており、地下へと続いていくというもの。

 ダンジョン内には宝箱や罠も存在していて、ダンジョンとしてはごくありふれたものだった。


 そう、ごくありふれたものだった……魔物以外は……


 アルに連れられ、俺が初めて入ったダンジョンは、魔物が桁違いに強かった。

 しかも初めての魔物討伐という事で、全く勝手がわからない状況の俺。


 後でアルから聞いたのだが、そのダンジョンはこの世界でも上位に入る難関ダンジョンだったそうだ。

 入る前に国が管理するダンジョンはかなり難易度が高いとは聞いていたまさかそんなダンジョンに連れて行かれるとは思っていなかった。


 それを後から暴露され、アルに恨めし気な視線を向けたが一向に気にしていなかったのをよく覚えている。

 まぁ特訓(レべリング)も十分に出来たし結果的には良かった。

 あれがなかったら獣神決闘で負けていた可能性もある。

 安全マージンを確保してたらしいので、この事でアルを恨んだりもしていない。


 その後、獣神決闘の開催位置を間違ってた事で、シャティナさんに罰を与えられて溜飲も下げたしな。


 そんな過去もあったが、今重要なのは現在だ。


 ユリ曰く、この領地にダンジョンがあったらしい。

 言い方からしてここ最近見つかったものだろう。



「そっか、ダンジョンがあったのか。それでそれがどうかしたのか?」


「どうかしたって……ダンジョンが発見されたんですよ? 一大事ではないですか」


「一大事ってそんな大袈裟な……」



 なんて事を言ったら、ユリが目を見開き驚いた表情を浮かべている。


 別に変な事を言った覚えはないんだけど、どうしてそんなに驚いているのだろうか。


 たかだかダンジョンが一つ発見されただけだろ。

 この世界にはいくつもダンジョンがあるのに、大袈裟にだと言っている意味がわからない。


 ダンジョンがあるというならレべリングもし易いし、原理はわからないが、宝箱も発生するので、もしかしたら何か良い物が手に入るかもしれないのに。


 この世界のダンジョンは魔物を倒せば死体がダンジョンに取り込まれるまでしばらく間があるので、素材として解体して素材として手に入れる事も出来、その素材を使ったりして武器防具や薬の材料にしたり換金して金銭を入手する事も可能、良い事尽くめである。 


 現にダンジョンの恩恵で栄えている街もあるくらいだ。


 なのに、なぜかユリは驚いた表情から一転、深刻そうな表情に変わり、盛大にため息を吐いている。

 別に変な事を言った覚えはないのに実に不思議だ。



「イチヤさん、ダンジョンがあるという事はそれだけ領内が危険に晒されるんです」



 そんな俺の感情を読み取ったのか、レーシャが口を開いた。



「イチヤさんのように力を持っている人達ならダンジョンから魔物が出てきても対処出来るでしょうが、大半の人間は魔物を相手にするほど力を持っていません。ですからダンジョンを発見した場合、十分警戒が必要なのです」


「あ~……戦えない人からすればダンジョンなんて危険以外のなにものでもないか。ごめん、レベリングとかの事しか頭になかった」


「確かにダンジョンは危険と同時にそういった利益もあります。ですがそれはきちんとダンジョンの調査をして、管理、運営する者をつけ終わった後です」


「なるほど。だったらさっさとダンジョンを調査して、管理してくれるように王様に頼まないと」


「それは……」



 なぜか深刻そうにレーシャが言葉をつまらせる。


 一体どうしたというんだろうか?


 疑問に思ったところで、レーシャの言葉を引き継ぐようにユリが口を開く。



「出来るのであれば、その方法が最善でしょう。ですけど、今のこの国の状況では少々……いえ、かなり難しいと言えます」


「どうしてだ?」


「一番の問題は調査に出せる人員がいないんです。まだ獣人族に襲撃されてから一年も経っていませんので、騎士団の編成も済んでいません。冒険者ギルドから冒険者を雇って調査を行うという手もありますが、すぐに優秀な冒険者が来てくれるかもわかりません……」


「詰んでんな……」


「詰んでます……」



 俺やレーシャだけでなく、この場にいる全員が落胆の表情を浮かべる。


 この国の人材不足は本当に深刻だ。

 気に入らないが、やはり帝国との同盟が切れたのが痛い。

 今までは物資などを提供する代わりに、向こうからは兵を借りていたのだが、同盟破棄によってそれがなくなった。

 加えて獣人族の襲撃によって多数の兵が亡くなり今の状況に陥っている。

 本当に不幸に不幸が重なった。

 いや、同盟の破棄については獣人の襲撃を受けた後の見計らったような同盟破棄なので、おそらく狙ってやったんだろう。

 他国を追い落とすという意味では効果的だが、そのやり方は気に入らない。

 そしてそれ以上に人を見下したような態度を取っていた皇帝自体が嫌いだ。

 今帝国がどうのこうの言っても始まらないのだが、思い出したら少し腹が立ってきた。




「それで結局バックスは何をやらかしてこんな事になってるんだ? 縛られた挙句にこんな所に転がされて……ご丁寧に猿轡までされるなんてよっぽどの事をしたんだよな?」



 帝国についてなるべく考えたくないのと、ダンジョンについては良い改憲案が思い浮かばないので、一時保留にして話題を変えてみる。

 話題についてはさっき気付かずに踏みつけたバックスについてだ。


 気になってはいたんだけど、呼ばれた理由の方が大事だったので後回しにしてたんだが、もう聞いても良いだろう。


 これ以上の放置はさすがに可哀想だしな。

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