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179話 創生魔法の真価 後編

「な……なぜ……」



 思わずそんな言葉が口をついて出る。


 目の前にあるのは先程食べたいと思っていたおにぎり、たまごかけご飯、カツ丼だった。

 まさか創生魔法にこんな可能性が秘められていたとは!

 もしかして、創生魔法を使えば元の世界の物が手にはいる??


 試しに俺は創生魔法を使い、箸を作り出した。



「出来た!」



 今まで武器防具とか、ヒール丸薬といったファンタジーっぽいものしか作れないと思っていたけど……そうか、普通に元の世界にあった物も普通に作れたのか。

 こんな重要な事に数ヶ月も気付かなかったなんてなんだか存した気分だ。


 いや、今は考えるのは後回しだ。

 今俺がする事は一つしかない。



「ま……まずは一口」



 箸をしっかりと手に持ち、目の前の食べ物へと向ける。


 やばい……突然降ってわいた幸運に手が震えてる。



「落ち着け! 落ち着くんだ俺!!!! 一先ず深呼吸だ!」



 昂ぶる気持ちを抑える為に深呼吸を一つ。

 よし!手の震えが治まってきた。



「じゃ……じゃあ改めて一口」



 そう言って一番最初に卵かけご飯へと箸をつける。



「う……うまい……!」



 卵かけご飯の旨みが口に広がる。

 しょっぱくもなく、薄すぎもせず、醤油が素材である卵を引き立て、味のバランスが良くとれている。

 おにぎりとカツ丼があるにも関わらず、卵かけご飯を夢中でかきこんだ。


 あっという間に食べ終え、ほぅっと息を吐き出す。



「旨かった……」

 


 久しぶりの米に思わず呟きがもれた。


 パン食が嫌いという訳じゃない。

 だけどやっぱり日本に生まれた以上、どうしても米が食いたくなる。


 今日それが叶ったのは僥倖だ。

 しかも創生魔法でいつでも食べれるようになったのは幸運とよぶ他ない。

 創生魔法の検証でまさかこんな成果が得られるとは思っていなかったが、色々と収穫の多い時間だった。


 後は目の前にあるおにぎりとカツ丼を片付けるだけ、なのだが。



「これ以上食うと夕飯に影響が出るなぁ」



 さすがに卵かけご飯、しかも茶碗一杯分の量では育ち盛りの俺の腹を満腹にする事は出来ない。

 だから食おうと思えば食えるんだけど、もうすぐ夕飯の時間だ。

 せっかくリアネ達が作ってくれたのにそれを無駄にする事は出来ない。


 そうなるとこれをどう処理するかなんだけど……いくら創生魔法でいつでも創れるからといって捨てるのは勿体無い。



「う~ん……冷めてしまうけど、夜食にでも回すか」



 この世界には電子レンジなんて存在しない。

 例え創れても使用する為の電気もない。


 とりあえず、創生魔法を使いラップを創り出すと、残った食べ物を覆う。


 おにぎり等を作り出した事で、創生魔法について少しだけわかった事がある。


 たぶんだが、この魔法は俺の想像力によって作り出せる物や質が変わるのだ。


 どうしてそれがわかったかというと、卵かけご飯の味がいつも俺の食べていた味と全く同じなのだ。

 卵かけご飯なのだから同じでも不思議じゃないだろ。と思うだろうが、俺が良く食べていた卵かけご飯は普通とは違い、マヨネーズが少量混ぜられている。


 創生魔法で創った卵かけご飯にもマヨネーズが混ざっていたという事は俺の想像力に影響されていた事になる。

 つまりこの魔法、俺が理解しているものなら何でも創れるという事で、逆に俺の理解が足りない物は創れないのだ。


 ……まさか食べ物でそんな事がわかるとは思わなかった……けどまぁ収穫は収穫なので良しとしよう。


 とりあえずは残った物にラップもかけたしこれで大丈夫だろう。

 おにぎりはさめても上手いし、カツ丼も冷めたからといって食えない事もないしな。


 夜食にしてはおにぎりとカツ丼の二つはちょっと重い気がするけど良いだろう。

 ちょっと太ってしまうのは心配だが……



「イチヤ様、夕食が出来ましたので呼びに参りました」



 自分のお腹事情を気にしていた所、扉を開け、リアネが夕飯の報せを伝えに来た。



「おや、それはなんでしょうか?」


「これは俺の元いた世界の食べ物だよ。創生魔法について検証していた時に偶然出来たんだ」


「イチヤ様の世界の料理ですか」



 お? リアネが気になるみたいで俺の手元にある料理に目を向けてるな。



「なんだったら食べてみるか?」 

 

「いえ、興味はあるのですが、これから夕食ですので……」



 ですよね~……さすがに今誘うのは間違ってた。


 眉尻を下げて申し訳なさそうにするリアネ。

 その姿を見て、俺も申し訳ない気持ちが沸いてくる。



「さすがに夕食の直前にする提案じゃなかったよな。ごめん」


「いえ、イチヤ様が謝る事では。あ! でしたらみんなで頂くのはどうでしょう?」



 俺の謝罪を聞いたリアネが再び申し訳なさそうに俺を見ていたが、急に思いついたようでそう提案してきた。

 確かに冷めた物を食うよりかは、みんなに食べてもらった方が料理だって幸せだよな!


 そういう訳で、夕食におにぎりとカツ丼を追加してもらった。


 作ってもらった夕食があるので、追加で俺が料理を出すと食べきれなくなるので、味見という形でおにぎりとカツ丼の好きな方をみんなに一口分ずつ食べてもらう。


 食べたことがない料理という事もあり、食べた反応は様々。


 合う子にはもの凄く合ったようで、本当においしそうに食べてくれたし、合わなかった子についてもまずかったという訳ではなく、単に歯応えがなかったからというものだ。

 カツ丼のカツは好評だったので、今度他の料理も試してみようと思う。


 とにもかくにも日本食は大多数のメイド達に好評だったのは良かった。

 やっぱり自分の住んでいた世界の食べ物を評価してもらえるのは嬉しいものだね。

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