14話 褒賞1
書いてたら長くなったので分割しました
獣人達との戦いから三日が経過した。町や城壁の被害などが大きい為復興作業などは三日ではほとんど進んでないのと一緒らしいが、それでも少しずつ進んではいるらしい。何でらしいかというとアルから聞いた話だからだ。
一応、騒動の後のみんなはというと、アルとレイラはいつも通りの生活をしている。レイラはともかくアルは町の復興を手伝わなくていいのかと聞くと町の復興作業は土木作業専門の職人と魔法士が行うそうだ。 騎士達はと言うと結構な死者が出た為に王国内の町や村に派遣されていた騎士や兵を再編するそうだが、アルには配置変えの通知はなかったらしい。冒険者時代の功績があり、一般兵という分類ではあるが少々特殊な立場のようだ。
個人的にはアルが牢番として残ってくれたのは嬉しいと感じている
最後にリアネなんだが、獣人騒動の後から人族のメイドから酷い扱いを一切受けなくなったらしい。さっき昼食を届けてくれた時も嬉しそうに会話していて陰りのある様子がなかったので隠してもいないようだ。どうやら俺の忠告が聞いたようで良かった。
みんなの事はこれくらいにして、俺の方はというと
「あ~……働きたくないでござる」
そう言いながらベットの上をごろごろっと転がる。そのままごろごろごろごろ……ガンっ!
「つぅ~……」
ベットの角に頭をぶつけた……
涙目で頭を抱えながら頭を押さえうずくまっていると扉が開く。
「……何やってんだ?」
「ベットの角に頭ぶつけた……」
「お前なぁ」
入ってきたアルは呆れた目を向けている。レイラの牢屋の方に目がいくと彼女は何も言わないがアルと同じような目を向けていた。心配して欲しいが、そんな事言えるわけもなく。これってダメージ的なものはどうなってるんだろうとどうでもいい事が頭の隅を過ぎる。
「獣人との戦いが終わってからお前さん前以上にだらけすぎてんじゃねぇか?」
徐々に痛みが和らいでいく中アルがふとそんな事を言ってきた。
「そんな事いわれたって牢屋でする事なんて食っちゃ寝が基本だろ?一応丸薬作りとか武器精製とかやってるじゃねぇか。これでも錬度は上がってる……はず」
そう言って右手にロングソード、左手に短剣を一瞬で精製して見せる。食っちゃ寝しつつも気が向いた時に練習していたのだが、コツを掴んできたので自分がすぐにイメージ出来る物なら瞬時に精製出来るようになったのだ。
「本来ならそんな希少な能力持ってんだったらこんなとこにいないで国の為に使えってなるんだろうが、イチヤだしなぁ」
「仮にそんな事言われたって断固拒否するぞ、めんどくせぇもん」
「だろうな。俺だってイチヤに能力使わせろって命令されても断るな。出来そうにねぇし」
「わかってるじゃないか疾走する全裸男」
「おいおいおい!変な二つ名つけてんじゃねぇよ!そんなのが広まったら俺は命と賭してでもお前さんを排除してやる!」
「冗談だからそんな熱くならんでくれ。暑苦しい」
「お前がそうさせたんだろっ!」
やはり触れられたくない過去のようだ。これ以上は本気の怒りを向けられそうなのでやめておく。一応アルの怒りのボーダーラインは見極めてる。
俺とアルの無駄なやりとりが行われている中一人の女騎士が遠慮がちに入ってきた。
「すまないがそろそろ良いだろうか?」
「おっと、すまん。イチヤ、お前さんにお客さんだ」
「俺に?」
俺に用事ってこの女騎士の顔見た覚えないぞ
もしかしたら獣人との戦いで会ってたのかもしれないがまったく記憶にございません
特に思い当たる事がなく俺が首をかしげていると女騎士の方が用件を伝えてくれた。
「イチヤ様、突然の訪問真に申し訳ありません。陛下がイチヤ様に至急玉座の間に来るようにとの事でしたので失礼ながらお迎えにあがらせて頂きました」
なんでこの人俺なんかにここまで畏まった言葉遣いなの?
俺罪人よ?
しかも様って……様って、そんな風に今まで一度も呼ばれたことない
「いや、まったく聞いてないんですけど」
「アル殿には今朝伝えるよう命じられていたはずなのですが……」
「すまん。すっかり忘れてたわ」
「おい牢番仕事しろ!」
アルが悪びれずにそう言ってきた。女騎士の人はかなり困った様子で申し訳なさそうにしている。
悪いのはこのアホ牢番なのにな
そんな事を思いながらも、正直めんどくさい。昼食が済んでまだ三十分くらいだからもう少しベットで横になってたい。
「悪いんですけど、キャンセルで」
俺が騎士さんにそういうと顔を青ざめさせ狼狽しだした。
「そ……それは困りますよっ!命令一つ満足にこなせなかったとなったら私辞めさせられてしまいますぅ!」
涙ぐみながらも鬼気迫る表情で牢の柵を握っている。正直怖い。
「そんな大袈裟な」
「必ず連れてくるように申し付かってますのでどうか、どうかお願いします!」
この態度からして俺が行かないと本気で辞めさせられるのかもしれない。
「仕方ないですね。わかりました。行く事にします」
「ありがとうございますぅ。本当にありがとうございますぅ」
彼女は俺が行くと告げると涙と鼻水を流しながらお礼を言ってくる。本当に騎士なんだろうかと少し疑問に思いながらも牢屋から出て彼女について行く部屋を出る。出る間際にアルが暢気な感じで「いってら~」と手を振って見送っていたのでしびれ針を精製して投げつけた。
ちっ……避けられたか……
最近アルに俺の行動が読まれるようになってきている。次の手を考えなければ。
女騎士に連れられ玉座の間に到着すると、彼女は自分の用事が済んだ様で一礼して去っていった。
そういえば名前を聞いてなかったな
今度また会う機会があったら名前くらい聞いておくか
それまでは女騎士(仮)でいいだろう
「よくぞお出でくださいましたイチヤ様、陛下がお待ちですのでどうぞ中へ」
俺がどうでもいい事を考えていると、扉の前に控えていた騎士が扉を開けてくれた。
言われたとおり中に入ると、王様と姫様、身なりのいい爺さんとがたいの良い渋い感じの中年の騎士。四、五人の近衛騎士が王の側に控えていた。
こう一斉に見られてると緊張するんでやめて欲しいんだけど……
来たばかりなのにもう帰りたくなってきた
「イチヤ殿。わざわざ来てもらってすまんな」
「いえ、それより用件というのは?」
俺の考えなどもちろんわかるはずもなく王様が話を切り出した。
「今回来てもらったのは他でもない。貴殿の戦での活躍に対する褒賞を与えようと思っての」
「褒賞ですか」
特に考えてなかったな
まぁもらえる物はもらっておくか
「それでなんじゃがな……」
王様が若干苦い顔をして言い淀んでいる。
「どうかしました?」
「いや、褒賞を与えようと思っておるのだが獣人との戦いでいろいろ被害が出ての。金銭で報奨を与えるのは難しいんじゃよ……」
「それなら別になくても構わないですよ」
もらえるならと思っているがそういう事情もあるなら絶対欲しいという訳でもないので断ろうと思い、王様にそう提案する。
それよりも早く帰して欲しい
「ならん!命まで救ってもらった恩人であるイチヤ殿に何も返さなかったとあればこの国を築き上げてきた王族達に顔向けできん!それにそんな事が世に知られれば王族は良い笑い者だ。王族の威信に関わる」
今はいろいろ立て込んでるだろうから気にしなくて良いのに
ついでに俺の事も気にしないでもらえると助かるのに
「そこでじゃ、金銭以外での褒賞にはしてもらえんじゃろうか?」
王様がそう提案してくる。王様にとってそれが譲歩案と言う事だろう。俺にとっては何でも構わないので了承する。
「わかりました。それで納得してもらえるなら俺は全然構いません」
若干不敬な言い方になってるような気もするが、王様は俺の言い方など気にしていないように話を続ける。
「それでどのような物が欲しい?わしで叶えられるような物ならどんな物でもよいぞ」
王様に言われしばし考える。急に欲しいものといわれても正直何も思いつかないんだが……
俺はうんうん唸りながら考える。と一つ思いついた事があったので王様にいくつか質問することにした。
「王様、質問いいですか?」
「なんじゃ?言ってみるが良い」
「褒賞っていくつまでもらえますか?」
「貴様っ!いくらなんでも無礼ではないのか、先程から聞いていれば陛下に向かってその態度――――」
「よいのだジェルド、わしが許可しておる。良いから下がっておれ」
俺の態度が気に入らなかったのかジェルドと呼ばれた騎士が一歩前に出るが、その行動を王様がやんわりと止めて下がらせる。
「して、いくつまでと言ったか……そうじゃな。無理難題でなければいくつでも良い……と言いたい所じゃが流石に数十個叶えろと言われても無茶じゃぞ」
「四つ」
「ふむ」
俺は指を四本王様に向かって突き出すように見せると王様は顎鬚を撫でながら少し考える。多かっただろうか?と俺が内心で心配していると。
「とりあえず言ってみてくれるか?それで判断しよう」
どうやら内容次第でもらえるらしい。俺は王様の言葉に一つ断りを入れてから内容を話した。
「その前に、物じゃなくても叶えられる”もの”なら良いですか?」
「構わん、いいから言ってみるが良い」
俺がもったいぶるようにいつまでも言わないので王様は若干焦れている。機嫌を悪くさせる前に早く言ってしまおう。
「では一つ目。メイドが欲しいです」
「メイド?」
「はい」
俺の言葉に一瞬何を言われたのかわからなかった王様が聞き返してきたので、俺は短く返事をする。すると王様は近衛騎士を近くに呼び寄せ、耳打ちするとその近衛兵は部屋を出て行く。しばらく待っているとさっきの騎士がメイドをぞろぞろと連れて戻ってきた。その数四十名くらい。
「陛下、遅くなってすみません。城に仕えているメイドを全て連れてきました」
「ごくろう、下がるがよい」
王様がそう言うと短い返事をして下がっていった。
「して、どのメイドを専属にしたいのじゃ?世話係としてイチヤ殿につけようではないか」
王様の言葉に俺はメイド達を見回す。俺と目が合ったメイド達は若干気まずそうにしながらも俺の視線を受け止める。そうして俺は目的の人物”達”を見つけると王様に目的のメイドを指名しようとする。だが俺が言う前に一人のメイドが一歩前に出てきた。
「陛下、失礼を承知で発言の許可を頂きたいのですが……」
「よい。許可しよう」
王様が許可すると、恭しく一礼したメイドは俺に微笑を浮かべて話し出す。
「私を専属にして頂けないでしょうか?」
「は?」
この場にそぐわない間抜けな声が出てしまった。
このメイド何て言った?
俺の専属にして欲しい?
この間の俺の態度忘れて……ってこいつよく見たら猪人族に重傷を負わされたあの性悪メイドじゃねぇか!
確かあの時気絶してたから俺の発言とか聞いてなかったのか
どうにも下心がありそうなんだがそれがなんなのかわからないしどうでも良い
俺がそんな事を考えてるとは知らずにメイドは尚も発言していく。
「私ならきちんとした礼儀作法も身に付けていますので奴隷メイドのような不躾な態度を取る事はありません。いかがでしょう」
にっこりと笑みを浮かべているクソメイド。お前、少しは空気読んだらどうだ?後ろの連中顔面蒼白にしてるぞ。それと今の発言だけでキレそうになっている俺の顔が見えないんでしょうか?
俺は話しているメイドを無視して我慢しながらも他のメイド……目的のメイドと目を合わせる。しばし見つめあった後で俺が頷くと彼女は勇気を振り絞って前に出た。
「あ……あの!私も発言の許可を頂いてもよろしいですか?」
「ほぅ……言ってみるがよい」
そう言って前に出てきたのは奴隷メイドのリアネだった。 王様は厳しい目をして彼女を見据えているが口元が若干笑っている。
「私もイチヤ様の専属に立候補したいと思います」
力強く発言するリアネに俺は思わず微笑んでしまう。
だが当然その光景を面白くないと思う者もいる。
「奴隷風情が……立場をわきまえなさい」
俺はお前がわきまえろと言いたかったがぐっと堪えた。クソメイドの方も涼しい顔を懸命に作っているようだが内心腸が煮えくり返りそうになっている事だろう。王様の方を見てみると、どうしたものかと俺を見返してくる王様に俺が発言する。
「すみません。聞くのを忘れていましたがメイドの人数って一人しか駄目でしょうか?」
「あまりに多いと困るのじゃが、二人とも専属にするのか?」
「いいえ」
俺の発言に王様が訝しむ。他の皆も意味がわからないと俺を見ていたので俺は話を続ける事にした。
「十二名」
「なに?」
「俺が欲しいメイド、この場にいる獣人メイド全員を俺の専属にしたいと考えています」
訝しんでいた王様が今度は驚きに目を丸くする。一部を除いて周りもざわつき出しているが俺はそれを無視して王様の答えをじっと待つ事にした。しばしのざわめきと王様の驚きが治まっていくと王様が俺を真剣な表情で疑問を口にする。
「あまりに多いと困ると言った筈だがなぜ十二人も専属が必要なのだ?一人いれば十分ではないのか?」
当然の疑問が王様の口から紡がれる。俺はその質問に対して考えていた事を正直に告げる事にした。
「理由なんですが、最初はそこの獣人のメイド。俺の食事係をしているリアネなんですが、彼女だけを専属にしていただけるならと考えました。彼女の食事はおいしいし食事の際の気配りもしっかりしている。文句のつけようもない」
「だったら彼女だけで良いではないか」
「そう。俺が”ある事”を知らなければそれで話は終わっていたでしょう」
「ある事?」
王様が何かあるのかと言う風に首をかしげる。俺の発言に人族のメイド達が顔を青ざめさせる。もちろんさっき俺の専属になりたいと言ってきたメイドも同じように顔を青ざめさせていた。俺はその光景を無視して発言を続ける。
「えぇ、彼女達獣人のメイドが奴隷メイドだからと他のメイド達に迫害を受けています」
「何?それは真か?」
「嘘です!そこの勇者様はでたらめを言っています!私達はそんな事していません」
訂正するのもめんどうなのでそのままにしておくけど、俺は勇者ではないんだが……
立候補した者とは違う確か前に俺に食ってかかって来たメイドがここがどこなのか忘れてるかのように声を荒げる。
「では獣人である彼女達に聞こう。今の話は真実か?」
王様に見られた獣人メイド達はおどおどしているばかりで誰も発言しない。みんな怯えた目をしている。どうやら不敬を働いて罰を受けるかもしれないと思っているのだろう。そんな中リアネと同じ年長者のディアッタがおずおずと一歩前に出た。
「あ……あの、勇者様の言っている事は本当です。迫害と呼べるかはわかりませんが、たまに暴力をふるわれたりはしていました」
ディアッタの発言にメイド達は何も言わないが敵意を向けているのが見ているだけでわかる。余計な事をいうなと目だけで語っているのだ。
「本当だとすると問題だな」
王様はそう言ってメイド達の方を順繰りに見ている。
「それは勇者様と獣人が口裏を合わせているだけです。私達はやっていません」
見苦しいほどのいい訳だが、王様とて一方の言う事を信じるわけにもいかないのだろう。どうしたものかと考えている。そこで近衛騎士達、第三者の意見を聞く事にした。
「お主達、そういった光景を見たものはこの場での発言を許可する。嘘や黙秘は当然許さん。一応調査はしてみるが、後でわかった場合は嘘をついていた者、黙っていた者も処罰の対象とする」
王様のその言葉で何人かの近衛騎士が挙手している。どうやら思い当たる出来事があるようだ。
「私は廊下を巡回中の際に幼い奴隷メイドの掃除中、邪魔と言いながら蹴り飛ばして踏みつけにしている姿を見ました……」
「大部屋の拭き掃除をしている姿を見かけたのですが、奴隷メイドが働く中監視するように見ているだけで何もしていないメイドが遅いと言って頬を張っている姿が見えました」
「昨日の事なのですがそこの一番小さい獣人の子にまだ拭き残しがあるでしょうと言って髪をひっぱり膝をついたところで何度も蹴っている姿をみかけました。あまりに酷かったので一応止めには入りましたが……」
おいおい、俺が考えてたよりもずいぶん酷い扱いをしていたようだな
というか前に俺の言った事を守ってなかったたのかあのクソ共血祭りにあげるって脅したはずだけどな
俺は同じ目に合わせてやりたい気持ちをどうにか静めて状況を見守る事にした。
「して、どの獣人がどのメイドにそのような事をされていた」
王様が厳しい目を向け騎士とメイド達を交互に見やる。心当たりのあるメイドは髪で顔を隠してうつむく。発言した騎士達もためらった様子を見せた後、それを行っていた者とやられていた者を告げる。やられていた獣人は一人一人違っていたが実行していた人物は三つの件のうち二つがかぶっていて一つは別の者だった。
そのかぶっていた人物とは先程まで俺がでたらめを言っている。獣人族と口裏を合わせているなどと言っていたメイドだった。メイドは歯を食いしばりながら黙っている。もう言い訳が思いつかないようだ。
「何か言い訳があるなら聞くがどうだ?」
「……獣人なんて人じゃないんですからどう扱っても良いではありませんか」
「わしは奴隷メイドを雇用する際、人として扱い迫害するなと厳命したはずじゃが、よもや王命に背くとはな。処分はおって伝える。部屋で待機しておれ!」
「お待ちください!」
これでこの件は終わるだろうと思っていたが、別のところから声が上がる。メイド長が迫害していたメイドを抱き寄せ庇っている。
「突然の非礼、申し訳ありません。ですが全ての責任は私にあります。そう言った光景を見掛け、厳しく注意していたのですが、改善させる事ができませんでした。これは私の落ち度です。どうか処分するなら私を処分しこの娘達は見逃してあげてはもらえないでしょうか」
「しかし、それでは他の者に示しがつかんではないか。それにそなたは優秀だと聞く、その者を処罰する事などできんよ」
「お願いします!どうかご慈悲をお与えください」
メイド長はさらにきつくメイドを抱きしめる。抱きしめられたメイドは声を押し殺し涙を流している。俺はメイド長はともかく、あのメイドとさきほど騎士が言っていたもう一人のメイドは自業自得だと思い冷めた目を向けて傍観していた。
そんな中先ほど最後の騎士が発言し、被害を受けた獣人の女の子がメイド長を庇うように両手を広げて守るように前に出てきた。
「おうさま。メイドちょうはあたしたちにきびしかったけど、できたらほめてくれました。あたしがかぜをひいたときもくすりをくれました。かんびょぅしてくれました。おねがいですからメイドちょうにひどいことはしないでください」
まだ幼く言葉遣いも拙い少女が懸命にメイド長を庇っている。こんな良い子をけりつけるとかあのメイドには俺が処罰してやりたい気持ちに駆られてしまう。
「どうしたものか……」
困惑している王様がちらっと俺の方を見ている。どうやら妥協案が欲しいようだ。
「獣人との戦いで死人もたくさん出た。その恐怖で獣人のメイドにやつあたりしたんだろう。俺としてはそれを許すつもりはないし今すぐに制裁を加えてやりたい気持ちを我慢しているが、今回だけ、俺に獣人メイド全員を専属で付けるって事で今回の件は折れる事にする。悪いんだが、獣人のメイド達にも今までの事が今回明るみになった件、思う事はあるだろうが、我慢してもらいたい」
そういって俺はリアネ達の方を向き頭を下げる。それを見た彼女達は頷いてくれた。
「ふむ……自分のメイドにして迫害されないようにするという事か。よかろう。イチヤ殿や奴隷メイド達がそういうなら今回の件はそれで不問とする」
「ただし俺のメイドにするんだ。前は手を出したら血祭りにすると言っておいたが、その言葉を無視したんだ。次はない。わかった時点で俺はやった奴を殺す。これは絶対だ」
俺は迫害した奴やうまく隠蔽しているだろうメイド達に向かって冷酷な視線を向ける。
今回は彼女達の寛大な措置で許したが次はない
そう心に決めてこの件を終わらせた。これで無事に解決したと思っていたのだが、一人納得しきれない者が声を発した。
いつも読んでくれてる方、ブックマークしてくれた方ありがとうございます。
本当は一話でさくっと終わらせようと思ったんですが、思いの他、人族のメイドが邪魔してきて長くなってしまいました。後半も少し邪魔されますが楽しんでいただけたら幸いです。