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146話 魔物が出る村14

「何もないようだな。だったら――――俺が助けてやる」



その言葉に目を丸くして驚く長老。暗い表情を浮かべていた他のゴブリン族達も顔を上げ、同じ表情をしていた。


 やはりというかなんというか、予想通りに驚いてるなぁ。


 長老達の反応は俺も思っていた通りの反応だった。


 ――――自分達は人助けをするのに、自分達が助けられるとは微塵も思っていないという反応。


 魔物相手に助けるという事を口にするのだから驚くのはまぁ普通の反応なのだが、ゴブリン族の驚きようはどうにも普通だとは思えない。


 普通なら驚きつつも、若干の疑念のこもった視線を向けるか、「助けてくれるのか?!」と言ったようにすぐさま食いついてくるものだと思う。


 しかし、ゴブリン族の反応は違った。


 驚きに固まり、誰一人、時が止まったかのように全く反応を示さない。どうにか読み取れる表情からはまるで自分達が助けられると思っていないように思える。


 おそらく彼等はゴブリン族であるが故に、今まで他種族から助けられた事がないのだろう。


 だからこそ、俺が助けると言った時の反応に普通ではありえないくらいに思考が停止した。ゴブリン族が誰かに助けられるという事が頭の隅にすらないので、理解が追いついていないのだ。


 助けるという意味を知っているのに、助けられるという事が頭から抜けているなんて可哀想な話だ。



「……助けてもらえるのはありがたい。しかし、ワシ等には返せる物が何もないぞ……?」



 いち早く復活した長老は開口一番そんな事を言ってくる。



「おいおい、失礼だな。俺は別に対価なんて望んでないぞ」


「いや、人族というのはこういう場面で対価を求める者だと聞いたのでな……失礼な事を言ってしまい申し訳ない」



 長老が言わんとしている事はわかる。普通こんな絶望的な状況だったら、対価を求める人間がいても不思議ではない。

 でも村が襲われ、どうにか逃げてきた相手に何を要求しろって言うんだ? 間違いなく金品なんて持ってないだろうし、奴隷になれなんて以ての外だ。俺はそこまで外道ではないつもりだ。


 それに彼等は実感は湧かないけど、俺の領民に危険を報せて助けようとしてくれた。だったらその行為に報いなければいけないだろう。元々魔物の討伐で来たわけだし、そのついでにゴブリン族を助けるのも悪くない。


 なによりもリブはピアとフィニの友達だしな。ここでゴブリン族を見捨てるような真似をしては、屋敷に帰った時に、あの子達にあわせる顔がない。



 さて、方針も決まったところで、さっさと魔物の主とやらをりにいきますか。



「長老さん。その魔物の主の大まかな場所ってわかるか?」


「うむ」



 倒すのは吝かではないが、魔物の主とかいうのがどこにいるのかわからないんじゃどうしようもない。

 なので長老に場所を聞いてみると、死んだゴブリンの中に斥候が出来る者がいたようで詳しい場所を教えてもらえた。











 長老から魔物の主の情報を聞き、すぐに向かう。


 長老に魔物の主がどんな魔物なのか訪ねたが、大きな魔物としかわからないらしく、それだけじゃ、どんな魔物なのか検討がつかなかった。

 主の情報が不足しているので、本当はレイラを連れてきたかったが、生憎、ゴブリンの集落で消火活動をしてもらう為に置いてきた。



「一度戻って合流するのも手なのかもしれないけど、その間にゴブリン達に何かあっては事だしな……」



 いつまたゴブリン族に向けて、魔物の主が魔物をけしかけてくるかわからない。

 この状況でのんびりなどしていられない。

 ゴブリンの集落にいるリアネやレイラも心配だしな。



「一応、長老達がいる洞窟を創生魔法と物質変化で強固にしてきたから、早々何か起こる事もないだろう」



 そう独り言をつぶやきながらも歩く速度を緩めない。むしろ速度を上げた。


 ……自分で言っておいてなんだが、何かフラグっぽくて不吉だ。


 さすがに台詞一つで運命なんて変わらないだろうけど、嫌な予感を感じてそれが当たるなんて事はざらにある。


 嫌な予感が当たらないようにと祈りながら、俺は魔物の主がいる場所へと駆け出した。










 20分ほど全力で走り、魔物の主がいるという小高い丘へと到着する。

 先程まで木や雑草が鬱蒼と茂っていた森をずっといたのだが、ここは少し開けた場所で平原のようになっていた。

 そこそこだが見晴らしも良い。


 この場所なら急に敵が現れても、どうとでも対処できるだろう。

 魔物の主とやらが本能でこの場所を選んだなら別だが、もしも考えてこの場所に留まっているのなら少しは知能があるんじゃないだろうか。



「どんな魔物かわからない以上、考えても仕方ないけどな。それよりも長老の話ではここに魔物の主とやらがいるはずなんだが……あれか?」


 警戒しつつ、森を抜ける直前の木の影から身を隠すようにして平原を見渡す。

 するとすぐに見つかった。


 まだ遠くにいるから正確な大きさはわからないが、6メートルくらいある紫色をした熊のような魔物だ。

 ツキノワグマを想像してもらえばわかるだろうか。

 あれを紫色にして2、3倍の大きさにするとあんな感じだ。


 たぶんあれが魔物の主とやらだろう。

 他にも魔物がいないかこの辺りの気配を探ってみたが、感じられる気配は一つしかない。

 しかも他の魔物よりも圧倒的にヤバイ感じが伝わってくる。

 おそらくだが間違いない。



「ダンジョンに潜った時の上層にいる魔物と同じくらいか?」



 強さ的にはそのくらいだろう。

 ただ確実性を持たせるために、魔物の主に向かい分析を使用する。


 分析には少し時間がかかるが、魔物の主は動く気配がないので大丈夫だと思う。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

グドゥー 魔獣

Lv42

HP:12100

MP:5197

攻撃力:3400

防御力:4010

STR: 5899

VIT: 7016

DEX: 8023

AGI: 1025

INT: 3111

能力:狂獣化、毒爪、豪腕、魔法効果上昇

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 調べてみた結果、そこそこやばい事が判明した。


 なんであのレベルで、あんなにステータスが高いんだ?

 レベルアップでの上昇率が俺並にあるな。

 獣人が初めて襲撃してきた当初だったら、間違いなく殺されてるくらいには高い。


 それに気になるのが――――。



「魔獣……」



 確か、前に召喚された勇者達がほとんど全滅して、ようやく討伐できたんだったか?

 魔物と違い、魔獣は知能があり、狡猾だとかなんとかアルが言ってような気がする。


 ステータス的には勝てそうな気がするけど、あれがこれ以上レベルが上がると対処出来ない可能性も出てくるな。

 間違いなく、今倒しておいた方が良い相手だ。


 相手のステータスを確認し終えた俺は、気を引き締める。


 ステータス的には自分よりも低いが、この辺りに生息している生物としては破格だ。

 決して油断して良い相手ではない。


 平原には出ずに、魔獣グドゥーに一番近づける位置へと足音を殺しながらゆっくりと進む。


 さすがにさっき倒した魔物達にやったように、真正面から突っ込むような真似はしたくない。

 魔獣が魔物とは違うとは聞いている。

 けど、それがどう違うのかがわからない。

 ステータス以外の何かがある可能性だってある。

 警戒に警戒を重ねて事に当たった方が良いだろう。


 ここは相手に悟られず、奇襲して一気に殺した方が良いだろう。


 卑怯かもしれないが、所詮相手は害獣だし。

 手間どって他の魔物を呼ばれても面倒だし。


 いや、今の状況自体、面倒臭い事に変わりはないんですけどね。

2018年3月21日 誤字報告があり修正しました。報告ありがとうございました。

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