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僕と彼女のセカイ  作者: 巫 夏希
第一章 七不思議の章
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1-3 真相の深層

「『閉鎖空間外操作情報インターフェース』……?」


 志津里は何を言っているのだろう。スマートフォンは、ただのスマートフォンではないと言うことだろうか。


「『閉鎖空間外操作情報インターフェース』……略してOCOⅡ(オーシーオーツー)は簡単に言えばオーバーテクノロジーだなんていうレベルじゃない」


 OCOⅡと略すのか。つまりは、『Out of Closed-space Operate Information Interface』と呼ぶのだろう。なんという直訳。


「オーバーテクノロジーってのは要は人間が創れる技術であるということだろう? しかし、そんなことは出来ない。仕様がないんだ」

「仕様がない、とは?」

「今の技術ですら……いや、おそらく今後も人類が到達し得ない領域にあったんだ。考えても見ろ。……それは何を『操作』するものだと思う?」

「……なんだろうな。何かの機械か?」

「惜しいね。機械というよりかは……機構というものだよ」

「機構?」

「あぁ。……神の力を持つ『箱庭』を操作するものだ」


 ………………………………………………………………は?

 その言葉を聴いて僕は何も言えなかった。なんだろう、話についていけない。『箱庭』? 『神』? 何だ、こいつとうとう中二病に成り下がったのか?


「中二病とか言うな。これが現実で真実だ。真相の深層だよ」

「真実で……真相?」


 韻を踏んでいるのは、あれだ。志津里はかっこ付けると直ぐに韻を踏み出す。気持ちは解らんでもないが、正直似合わない。

 志津里はいったい何を言っているのだろうか。

 そもそも――箱庭とは何なのか。


「箱庭ってものは……なんだろね」

「それを知っているのなら言って欲しいんだが」

「知らない……訳ではない」

「なら言え」

「駄目だ」

「どうして」

「――あんたは『計画』に組み入れられるべき存在ではないから」


 ひどく、冷たい声だった。

 そして、空間に沈黙が生まれた。

 ……志津里とはもう長く(ほかの人間と比べれば)付き合いはあるが、少なくともこんな口調で話したことはなかった。よく言うフレーズを使えば、『まるで人が変わってしまった』という感じだろうか。



 ――まだ、僕の知らない“何か”があるんだろう。



 しかし。

 そんなことはどうでもいい。どうだっていい。――何を言ったって、僕と彼女の日常には、何ら変わりはない。変わることだってないだろう。たぶん。きっと。当分。


「……計画?」

「あんたは何をも聞いていない。聞いちゃいない。覚えてもいない。それでオーケー?」


 急に言われても。


「オーケー?」

「……オ、オーケイ」


 念を押されてしまっては、どうも解決しない。オーケイと言う他に、先に進む道は無さそうだった。


「とりあえず、収穫はあった。帰ろう」


 そう言って、志津里は何かをカメラで撮影して、振り返った。

 いったい、何を撮ったのだろうか。

 そんなことは、僕には解らなかった。教えてくれることも、きっとないだろう。



 ◇◇◇



「……それじゃ」

「……」


 志津里は無言で、別れた。帰り道は全く別だからな。

 日向地区の中心にある日向中学校には日向地区の学生が全員来ることになる。

 すこし、この地区について考えてみることとしよう。

 日向地区は東西南北に一つの橋がそれぞれついている。川に囲まれた島のようになっていて、日向中学校の近辺を中央部(役所等もここにある)と呼び、あとは東西南北にエリアが分断されている。志津里の家は言ったことはないので解らないが、恐らく北エリアだと思う。



 ――僕は東エリアの住宅街にあるアパートの二階に暮らしている、一人暮らしだ。



 僕の親は二人とも早くに死んだ。周りの親戚がやれここに入れ、やれ一緒に暮らせなどと怒鳴ってもいたが僕は独りでよかった。

 結局は誰も彼も金が目当てなのだ。

 日向地区を代表する企業『イミテーション』の代表だった父は資産も莫大な量で、毎年県の高額納税者に認定されるほどであった。

 それだから、お金には困っていない。現にこのアパートは「学校へ通いやすいように」と母がプレゼントしてくれたものだった。母は計画を立てていて、早くからここを借りていたらしい。あの広い家に一人というのも虚しいし、何しろいろいろとやる気も削がれる。だから家にはめったに帰らない。今はこのアパートこそが、僕の家で、僕の世界だからだ。

 扉を開け、電気を付ける。――特に、何一つ変わりない日常だ。

 ……と思っていたのだが。


「お待ちしておりました。……えーと、合っていますね」


 僕の目の前には一人の少女が居た。黒髪ロングの女性だ。上から下まで服装が全て白であるから、その黒がとても目立つ。


「……誰だ?」

「えーとですね。……ちょっと名前は言えないんですが」

「そうか、ならば帰れ。今ならまだ警察は呼ばないでおく」

「呼んでも無駄ですよ。私は『人間』ではありませんから」

「……人間じゃない?」


 そんな訳もないだろう。今見ているのは、どう見ても人間の姿そのものだ。


「……人間と認識させているだけであって、私のオリジナルの形式は人間ではありませんよ」


 オリジナルは人間ではない、とはどういうことだろう。


「現に君は今、日本語を話しているじゃないか」

「認識させている……ということです。今、私は『月宮式つきみやしき』という形式として存在・認識させています」

「月宮、式」

「えぇ。まあ、一応覚えていただければ。また、いつか会う機会もあるでしょうし。……さて、今回は自己紹介もかねて、ということで来たのですが」

「?」

「……明日、あなたの学校に入ることができなくなります。だから、入れない。だけど、あなたは明日も理科室に、いや、地下室に行かねばならない」

「なぜだ?」

「それは……そこに行ってからのお楽しみということで」


 そう言って式は部屋から出ていった。

 明日。

 何があるっていうんだ。


「何があると、いうんだよ」


 声をだした。

 そこには、誰も居ないのに。

 明日。

 明日。

 アシタ?

 ……明日にならなくちゃ、何も解らない。

 逆に考えれば、明日になれば、何かは解るのだろうか。


「……今考えても仕方ないな」


 僕は誰も、何も居ない部屋に呟いて、奥にある寝室へと向かった。


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