表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

第14話

「一瞬どころかいつもより、長引いてないか?」


 大輔は時計を見ながら、圭吾に話し掛けた。


 清掃終了まであと一分余りである。

 いつもの対決では、ほぼ三分以内でさやかの得意技『腕ひしぎ十字固め』が決まり、決着が着くのだ。

 しかし既に五分以上は経過していた。それだけ今回は悠太も、本気モードだということなのだろうか。


「そろそろ悠太が、アレを使う頃だと思うんだけど」

「アレっていうとお前の言っていた、あの必殺技ってやつか?」

「勿論」

 そう答えた圭吾の顔は、心なしかいつもより楽しそうに見える。


「しかしアイツ、本当にアレを使うのかな。

さやかはああ見えても一応……何となく、万が一、多分……だけど、女なんだぜ。

いくら悠太が馬鹿でもみんなが見ている前で、流石にアレをするとは思えないんだけどな」

「いいやアイツなら、絶対にやる!なんなら賭けてもいいよ」

 何故か圭吾は断言した。


「じゃあ圭吾は、悠太が勝つと思っているのか」

「いや、勝つのはさやかだ」

 これもまた即座に、キッパリと断言する。


「……お前一体、どっちの味方なんだよ。

大体最初からさやかが勝つと思っているのに、なんで勝てるなんてことを言ったんだ?

アイツ本気にするぞ、本当に馬鹿だから」

 大輔は顔を顰めていたのだが、一方圭吾のほうは、今にも鼻唄を歌い出しそうな表情を崩してはいなかった。


「だって折角二人とも本気を出すっていうのに、いつものように直ぐに決着が着いてしまったら、詰まらないだろ」

「は?」


「だから演出だよ、演出。イベントに演出は付き物なのさ」

「イベントって…」


「だってほら、いつもより悠太が粘っているお陰で、皆が楽しんでいるわけだし」

 視線の先には、彼らを応援しているクラスメイトたちの姿があった。

「そして最後に悠太がアレを仕掛ければ……きっと盛り上がること間違いなしさ」

 その時のことでも想像しているのか、圭吾はクスクスと一人で愉快そうに笑う。


「でもなあ……アレをやられたら絶対にさやかの奴、滅茶苦茶怒ると思うぜ。悠太なんてきっと、半殺しの目くらいには遭うかも知れないな」


「だったら、尚更好都合さ」

 圭吾は相変わらず嬉々としている。


「本気で怒ったさやかがどんな反応をするのか、ずっと見てみたかったんだよな。

普段から怒りっぽい性格だけどああ見えて、実は今まで本気で怒ったところを見たことがなかったからね。

だから今から凄く、楽しみなんだっ♪」


(まさかコイツ)


 依然として高揚している圭吾を凝視しながら、大輔は思う。

(そのため『だけ』に、こんな対決の場を作ったんじゃ……)




 最初のキッカケは、いつもの些細な喧嘩だった。

 そしてさやかの一言。


 だが、クラス中を巻き込むように仕向けたのは圭吾だ。

 しかも普段から互いに意地の張り合いをしている二人を煽り、その逃げ道を塞いだのも彼である。


 そのことに大輔は、ようやく気付くのだった。



「……圭吾、今更言うことじゃないかもしれないけどさ」

 彼の肩へ手を置くと、何となく疲れたように大輔は溜め息を吐いた。



「お前ってやっぱり、黒いよな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ