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第10話




 5時限目が始まる直前――。



「ヒサク?」

 教室の前で、その言葉を悠太は訊き返した。


比作ヒサクってなんだ? 昔の人の名前か?」

 瞬間、圭吾が凍りついたようにも見えたのだが、直ぐに何事もなかったかのように口を開いた。

「つまりさやかに勝つための方法――必殺技を教えてやろうと言っているのさ」

 それを聞いた途端、悠太は困ったように眉を顰める。


「俺、今は金なんか持ってないぞ」

「おい……何でいきなりそこで金の話になるんだよ」


「だって」


「なあ」


 悠太と大輔は互いに顔を見合わせた。

 そして。


「圭吾がタダで教えてくれるワケないだろ」

 二人ともピッタリな呼吸で、見事にハモったのである。


「お前ら、僕を一体何だと思っているんだよ」

 眼鏡の位置を少し直しながら顔を引きつらせる圭吾。二人はキョトンとした表情で、そんな彼を見詰め返した。


「腹黒ムッツリ」


「ドS」


 圭吾の顔が更に引きつっていく。それは端から見ても分かるほどである。


「分かった、もういい。気が変わった。もう教えてやらん」

 二人に背を向けた圭吾はついに拗ねてしまったのか、入り口の扉に手を掛けて中に入ろうとする。


「わーっ、ゴメンごめん、ちょっとふざけただけなんだ」

 ここで悠太は肩を掴み、慌ててそれを阻止した。


 もしあのさやかに勝つ方法――必殺技が本当にあるというのなら、その方法を知りたかった。

 今日はいつもとは違うのである。


 女装がかかっているのだ。

 何が何でも勝ちたかった。今は藁にも縋り付きたい気分である。


「だから頼む! もしさやかに勝つ方法があるんだったら、教えてくれ!!」

 悠太は必死の形相で、圭吾に迫っていた。






「だったら、そろそろ始めましょうか」


 さやかは身構えると悪魔の微笑のように、口端を静かに上げていた。

「さあ、あんたからかかってきなさい。早くしないと時間もなくなるわよ」


 そのままの体勢で彼女は右手の甲を突き出すと、更にこちらを挑発でもしているかのように指を動かしてくる。

 実際、挑発しているのだ。


 悠太は「それが女のやることかよ」と内心呆れてはいたのだが、そのポーズは彼の心に火を付けるには十分だった。

(こうなったらやっぱり、圭吾の言うヒサクとやらで決着をつけるしかないか)


 あまり気の進まない感じはした。

 が、やるしかないと決意し、夢中でその懐へ飛び込んでいったのである。

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