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エピローグ

「あぁバカ、泣きすぎだっての」

充の涙を手で拭ってやろうと頬に手を添えた。

ハタ、と目が合う。充のあの黒曜石みたいな濡れた瞳が、俺だけ映しているのを見て、なんとなく「キスできそうだな」なんて考えが頭をよぎった。

その時、充が俺の頬を両手で挟んで、自分の方に引き寄せた。眼前に充の顔が迫る。

閉じられた瞼をなぞるように並んだ長いまつ毛が濡れている。それが視界いっぱいに広がった時、俺の唇に充の唇も触れた。食むような、吸い付くような、柔らかく湿ったキスだった。

カチ、と前歯同士が触れる。熱い吐息も、ずっと触っていたい甘い感触も、鼻腔を充満させる充のにおいも、前にした時と同じなのに、涙のせいかほんのりしょっぱい気がする。

触れるだけのへたくそな口付けは、俺たちの奇妙な関係みたいでなんだか笑える。

離れた唇がほんの少し寒くて、なんだか名残惜しかった。

「充……お前、先にするなんてズルいぞ」

そう言えば、「俺が先にしたかったからしたんだよ」と悪戯っぽくも満足そうに笑った。

「……これってさ、ファーストキスに入んのかな」

確かに、睡だった時のはカウントしてもいいのだろうか?

「んー、さぁな。 ……でも、ゼロと一はちげえけど、あとは大体一緒だろ」

今度は、俺が充を抱き寄せて口づけた。さっきよりも短いが、同じくらいの充足感がある。目を丸くしている充に「しかえし」と舌を出して笑えば、充は堪らないと言いたそうに抱きついてきた。

ギチギチという音が聞こえてくる上にめちゃくちゃ苦しいんだけど、もしかして絞め落とそうとしてる? でもこれが充の我慢してた分の愛情表現だと、なんだか違う意味で苦しくなってきた。もちろん、嫌な感じのものではない。

「……好きだよ、睡蓮」

「ん、わかってるよ。 俺も好きだから」

背中を撫でて優しく抱き返してやれば、体温や心臓の鼓動が伝わってきて、腹の奥底から満たされていくような感覚がした。なるほど、確かにもっと強く抱きしめたくなる。

「本当に、夢みたいだ……」

身体が痛いのは、落雷のせいか喧嘩のせいか、はたまた充の力がこれまでにないくらい強いせいか。それでもまあ、今は甘んじて受け入れよう。

「やべー……めちゃくちゃ嬉しいな」

俺がそういえば、充も震えた声で「……俺もだよ」と呟いた。

雲が割れ、隙間からは優しい光が差し込んだ。

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