表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/11

プロローグ

「いいか睡蓮(すいれん)、よく聞けよ」


俺の身体を抱えた親友の(みつる)が、神妙な面持ちで口を開いた。雨のせいか朦朧とした意識のせいか、はたまた密着した充の体温が心地いいからか、声が遠くに聞こえる。

俺、どうして倒れてるんだっけ。雨が降ってて、急いで帰ろうと思って……


「お前の上に雷が落ちたんだ。正直死んだと思ったよ……」


あぁ、そうだ。雷だ。眩しいと思った瞬間、身体が重くなって、そんで、すげー熱くて、どうしようもなく痛くて……

そう考えたとき、ズキンと右目に燃えるような痛みが走った。顔をしかめる。


視界にちらついた何かが起き上がる。発した呻き声は低いが芯の高さから女の声だというのがわかる。

充の話よりもそっちに気を取られてしまい、痛む目とは逆の目でそちらを見た。


俺と同じ色の髪。母親に似て色素の薄い俺は、普通のやつよりも幾分か髪色が明るい。その髪がだらりと垂れ、ぬかるんだ地面について泥だらけになっている。


…………?

あれ、なんだこいつ。女なのに学ラン着てる……しかもなんか、見覚えがあるやつだ。

裏地に刺繍された睡蓮の花。俺の名前と同じその花をあしらった洋ランは、確かに俺のもののはずなのに。でも、今着てるこれも、俺の……


「それで、な……お前に雷が落ちた時、お前の身体が裂けたんだよ。 いや、裂けたというよりも……『分裂した』んだ」


分裂?

意味が分からない、充は一体何を言っているんだろうか。

だけど充の声は真剣そのもので、疑う気にはなれなかった。


不意に、女と目が合った。汚れた髪の隙間からこちらを見るその目と視線が交わった瞬間、傷ついて開かないはずの目が激しく痛み出したのだ。

反射的に目をかばう。女も自分の目を手で覆いながら呻き始めるが、痛むのは俺とは逆の目のようだった。


痛い、痛い、痛い。

このまま意識を失えたらどんなに楽だろう。だけどまた朦朧としながらも無意識に踏ん張った俺は、息も絶え絶えに女の腕を掴んだ。


「おい、名前……おまえ、誰……だ」


腕を掴んだ勢いで女の身体が倒れてくる。女は呻くように名乗った。

だがその女の名前は、生まれた時から何度も聞いた名前だった。


「睡蓮……杢葉(もくば)、睡蓮……」


なんだ、それ。それは俺の名前のはずなのに。


「睡蓮? おい、睡蓮!」


まだ聞きたいことがあるのに、身体が急に重くなる。

充が俺の名前を呼ぶ声が遠く感じる。さらに遠くの方からは、甲高い機械的な声を上げるなにかが聞こえてきた。


俺、死ぬのかな。

死ぬんだったら、最後、充……に…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ