一節目
龍と竜には違いがある。
龍は中国発祥の架空の生き物。そして、竜は日本の架空の生き物。中国の龍を模した物または西洋のドラゴンなどを含むものである。
虹。それは龍のこと。
正確に言うと大蛇が龍に成る際に雨空を突きぬけ、空を晴らす。その軌跡が虹なのだと。
それはそれはとても美しく、その美しさから中国では彩虹と呼ぶそう。
ここでは龍となるべく切磋琢磨する2匹の蛇の話。
「なぁ凛。あの変な色したものってどこから来たのかな?」
「…分かんない。でも母上だったら知ってるかもね。聞いてみよう。」
この2匹の蛇は凛と空。対極的な2人だったが、2人は仲が良かった。
常に落ち着いて行動し、かつそこには力強さもある凛。
空のように全てを包括するがごとくの優しさと大胆さを持つ空。2人はいつも、一緒だった。
「あれは虹というのです。虹は龍が作るもので、雨の後は必ずあるのですよ。」
毎日不思議をみつけ、物知りの母は優しく答えてくれる。
そんな日々だった。
ある日、森に矢の雨が降った。
異変に気づいた空が言う。「母上!!これは一体!?」「これは矢。人間が使うもので、私達を狙って来たのでしょう。2人とも逃げなさい!!」初めて見るような母の剣幕に気圧されつつも2匹は逃げた。母を先頭に2匹は雨を避けつつ、ついて行く。
突然、矢が母の目を穿った。
「「母上!!」」突然の事だった。逃げるので必死だった2人は突然のことに驚いた。
ふたりは立ち止まって母を見た。母が言う。
「凛、空、お逃げなさい!!あなた達だけでも生き残るのです!!!」
空が言う「母上。私は母上を置いて逃げることなどできません。」「私もです。母上を置いて逃げる位なら私は母上と共に居たいです。」
母に一縷の涙が線を作ったが、すぐに失せ、母は言う。
「バカを言うんじゃありません!!母の言うことを聞きなさい。私はもう動くこともできません。おまけに片目はこの状態です。人がそこまで来ています。こうなってしまえば私はもう生きれないでしょう。お願いだから貴方達は生きてください。…母は2人を愛してますよ。」
空が言う。「母上!!母上!!私は嫌です!!」駄々をこねる空とは打って変わり、凛は落ち着いて「分かりました。空。泣いているところ悪いけど、母の言う通りだ。悔しいけど、従うしかない。」
「私は!!まだ母上と一緒に…ッ!!」
2本目の矢が母の喉に刺さる。
母は段々と地面に伏せ、血溜まりを作り、ついには動かなくなってしまった。
空は泣いていた。無力な自分と母を殺した者を忘れない為に泣いていた。
凛は空を見上げ、かと思えば空を連れ逃げた。
凛は泣かなかった。自分の分は空が泣いてくれるからと。
この2匹にとってこの出来事は強いなにかになるだろう。
それに化ける日がいつかくる。それはまた次のお話。