表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/159

第57話:残された側

 ――名前が、呼ばれない。

 胸の奥が冷たくなるのを、はっきりと感じた。


「以上。今回の合格者は2名のみとする」


 その瞬間、パールの耳の奥で何かがはじけたような気がした。

 え……ちょっと待ってよ。たった2人? しかもその2人が、ウルスとレグ? いや、2人が合格するのは分かってたけど……あたしとデーネは?


「……え?」


 思わず声が漏れた。

 隣を見ると、デーネは眉ひとつ動かさず前を見ている。でも、それが余計に堪える。

 あたし、こんなに悔しいのに。


(あぁ……こういう時、泣かないんだ、この子は)


 パールは息を吸い込み、震える口元をどうにか持ち上げた。ウルスが不安そうにこっちを見ている。あの顔を見たら、泣くなんてできなかった。


「大丈夫だって。あたしらはまた別の形で強くなるから。……置いてくなよ」


 声が少し震えたのは、気づかれてないと信じたい。



 デーネは冷たい空気の中、自分の鼓動がやけに早いことに気づいていた。

 分かっていた。自分の実力が今のゲーリュ団の基準に届いていないことは。

 でも――やっぱり、悔しい。


(まだ終わったわけじゃない)


 心の中で何度も繰り返す。

 ウルスが、何か言いかけてやめた。その表情は、申し訳なさと喜びが入り混じっているようで、胸が痛んだ。


「私たち、まだ終わったわけじゃないわ。2年後、あなたたちを追い抜くぐらいのつもりでいるから」


 言葉にすると、少しだけ楽になった。

 本当はすぐにでも追いつきたい。でも、それは叶わない。だからこそ、この負けは、きっと糧になる。


 夕陽が、赤く地面を染めていた。

 あたしたちは、その光を背にして歩き出す。振り返らなかった。振り返ったら、きっと涙が零れてしまうから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ