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第48話:実技試験開演

 試験当日の朝。


 僕は緊張で胃がひっくり返りそうになりながら、グラウンドの入口に立っていた。


 今日は普段の授業とは違い、校舎の外まで生徒たちのざわめきが響いている。

 試験官の教師たちが並び、厳しい視線で受験者を見下ろしていた。


「うっわ……みんなピリピリしてるわね」


 パールが肩をすくめる。

 白銀の長い髪をひとまとめにして、いつもより動きやすそうな格好だ。

 その目は、わずかに興奮の色を帯びている。


「僕はピリピリどころか、もう吐きそうだ……」

「ウルス、始まる前に吐くなよ」


 レグが笑いながら背中を叩いてきた。

 紫色の神力が、すでに彼の体を包んでいる。


「準備早すぎだろ……」


ーーーーーー


 試験のルールはシンプルだ。


 ――時間内に相手を戦闘不能にするか、相手より多くポイントを稼ぐこと。


 戦場は円形のアリーナ。

 観覧席には他の生徒たちが詰めかけ、歓声とヤジが飛び交う。


「第一試合、ウルス・アークト 対 ジーク・バルマン!」


 呼び出しの声に背中を押され、僕はアリーナへと足を踏み入れた。


 相手は背の高い上級生で、腕には青色のオーラが揺れている。


 ……怖がってる場合じゃない。


 深呼吸し、青色の神力を纏う。

 瞬間、視界の色が少し濃くなったように感じた。

 心臓の鼓動が、全身を駆け巡る。


ーーーーーー


「始め!」


 合図と同時に、相手は一気に距離を詰めてきた。

 速い――!


 防御に集中しなきゃ。


 拳を受け止め、滑るように横へ回り込む。


「へぇ、受けきったか」


 ジークが口元を吊り上げ、再び突っ込んでくる。


 僕は必死に足を動かし、守りを崩さないようにする。


 ――だけど、守るだけじゃ勝てない。


 攻めるんだ、攻めろ……!


 パールの声が脳裏をよぎった。


 一瞬、踏み込み、相手の腕を弾く。


 体が勝手に動き、足をひねり、肘で突く――


「ぐっ!」


 わずかだが、ジークの体勢が崩れた。


 ……初めて、僕の攻撃が通った。


 そこからは必死だった。


 攻めと守りを切り替えながら、何とか時間まで耐え切る。


 結果は――僅差で僕の勝ち。


「やったじゃない!」


 観覧席からパールが手を振っている。


「おぉぉ、やるじゃねえかウルス!」


 レグも大声で叫んでいる。


 デーネは……無表情で拍手していたけど、目だけは笑っていた。


ーーーーーー


 試合が終わり控え席に戻ると、パールがにやりと笑った。


「ほらね、やればできるじゃない」

「……まだ緊張で足が震えてる」

「次はもっと派手に倒しなさいよ」

「無茶言うな……」


 その後も試験は続き、仲間たちも順番にアリーナへ向かっていった。


 レグは予想通り圧勝。

 パールも素早い動きで相手を翻弄し、あっという間にポイントを稼いだ。

 デーネは回復と防御を駆使して粘り勝ち。


 ――気づけば、僕たち四人全員が勝ち残っていた。


 夕焼けに染まるグラウンドで、僕たちは円を組み、手を合わせる。


「次も、全員で勝ち抜こう」


 誰が言い出したわけでもなく、その言葉が自然と口から出ていた。


 試験はまだ続く。


 でも、この仲間となら、きっと乗り越えられる――そう思えた。


ーーーーーー


 試験一日目の夕暮れ。


 薄暗くなった空の下でも、アリーナの中心は熱気でむせ返っていた。

 観覧席の生徒たちは、もう何試合も見ているはずなのに、声援とヤジの勢いは衰えていない。


「第二回戦、第一試合――ウルス・アークト 対 ガロ・ベルク!」


 名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねる。


 ガロは僕よりも二回りは大きい体格で、腕や首には分厚い筋肉が浮き出ている。


 肩越しに見える神力の色は、青と紫が混ざったような淡い色――僕より一段上の練度だ。


 ……怖い、でも逃げられない。


 深く息を吸い込み、青色のオーラを体に纏う。

 足先からじんわりと熱が広がり、全身が軽くなる感覚。

 それでも、向かい合う巨体の圧迫感は消えない。


ーーーーーー


「始め!」


 試験官の合図と同時に、ガロが一歩踏み込んだ。

 地面が揺れるほどの衝撃。


 視界が彼の拳でいっぱいになった瞬間、僕は反射的に横へ飛んだ。


「……っと!」


 避けたつもりが、拳がかすめただけで耳がジンとする。


 重い。あれをまともに受けたら一撃で終わる。


 ガロは間合いを詰めながら、容赦なく連打を叩き込んでくる。


 拳、肘、膝――すべてが力任せじゃない、しっかり狙ってくる。


 近づかれたら負ける。距離を取らないと!


 僕は足の神力を強め、円を描くように走る。

 靴底が砂を巻き上げ、呼吸が荒くなる。


 だけど、逃げているだけじゃ……。


 観覧席からパールの声が飛んできた。


「ウルス! 足止めろ、そっから!」


 足を止める? こんな巨体相手に?


 ……でも、彼女はいつも無茶を言って、なぜか的を射ている。


 意を決して、足を踏み込み――逆方向へ急旋回。


 ガロの腕が振り抜かれる瞬間、僕はその懐に飛び込んだ。


 腰をひねり、肩で押し返す。


「ぐっ……!」


 巨体がわずかに揺れた。


 その一瞬を逃さず、僕は全力で距離を取った。


***


 残り時間はわずか。


 息は荒く、汗で視界がにじむ。

 ガロも呼吸が重くなってきていた。


 ――今なら、互角にやれるかもしれない。


 僕は青いオーラをさらに濃くし、低い姿勢から突っ込んだ。


 ガロが防御に回った瞬間、足をすくい、肩で押し倒す。


 砂煙の中で、試験官の笛が響いた。


「勝者――ウルス・アークト!」


ーーーーーー


 観覧席がどっと沸き、パールが両手を振って叫んでいる。


 レグは腕を組み、「おぉ、やるじゃねえか」とにやりと笑った。


 デーネは控えめに拍手しながらも、何か考え込んでいるようだった。


 控え席に戻ると、レグが僕の頭をわしわしと掻き回した。


「次は俺と当たるかもな。そん時は容赦しねえぞ」

「……いや、容赦してくれよ」


 僕が苦笑すると、パールが肩を叩いてきた。


「この調子で決勝まで行くわよ」

「え、決勝……って、まだ先じゃないの?」

「ええ、でも言ったほうがやる気出るでしょ?」


 その軽口に、僕は少しだけ肩の力を抜いた。


 試験はまだ終わらない。


 でも、この仲間たちとなら――どこまででも行けそうな気がした。

読んでいただきありがとうございました。

面白かった、続きが気になると思ったら評価、ブックマークよろしくお願いします。

筆者がものすごく喜ぶと同時に、作品を作るモチベーションにも繋がります。


次回もよろしくお願いします!

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