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第1話:神力に目覚めた。どうやら僕は神の血筋らしい

 神力が目覚めた――らしい。


 なんか昨日、くしゃみしたら近くの木の柵が吹っ飛んだんだけど、

 村の神官がそれを見て「これは神力だ!」って言い出して、

 その日のうちに「ラプラス神力学校」から手紙が届いた。


 で、気づいたら制服が届いて、母さんが泣いて、僕は弁当を持たされて、今ここにいる。


 


「ウルス、今日からあんたは神の子なのよ!立派になってね!」


 母さんはそう言って、僕に焼き魚の形をしたおにぎりを手渡してきた。


 ――中身、魚じゃなくて梅だった。


 


 王都なんて来たこともなかった僕は、門の前で既に限界だった。


 制服の襟は固いし、靴はキツいし、周りの人間が全員自分より偉そうに見えるし。

 あれ? 神の子って、もっとこう……特別扱いとかされないの?


 門の前で突っ立ってると、後ろから明るい声がした。


「うわー、まだいた!像かと思った!」


「えっ、あ、い、今動きます!僕は像じゃないです!ごめんなさい!」


 反射的に謝ってしまった。

 自分でも意味が分からない。


 


 声の主は、白銀の長い髪をポニーテールにした女の子だった。

 マントが風に揺れてて、何かの主人公みたいな見た目をしている。


「わたし、パール・アジメーク。あなた転入生?よろしくね……って、え? もしかしてあんたウルス?」


「ぼ、僕……はい……アークトです……」


「うっそ、あの“石塀爆砕くしゃみ事件”の張本人!?まじで!?」


 そ、そんなタイトルついてたの!?

 やばい、国中の噂になってたの!?


「でさ、聞きたいんだけど、神力の色って何色だったの?」


「……あ、青、だそうです……たぶん……」


「ちょ、緑飛ばして青って何者!?生まれ変わり!?神獣の親戚!?やっぱ神の子!?」


「ち、違いますぅうぅぅ!!」


 パールは大笑いしてるけど、僕は全力で否定した。

 神の子ってなんだよ、神に子供っているの!? 


 それより、お願いだからこれ以上周囲に注目されないでほしい!

 僕はこのまま静かに、目立たずに、誰とも関わらず卒業したいんだ!


 


 校舎は思ったより普通だった。

 村の小学校よりちょっと広いくらい。

 床は木で、ギシギシいうし、廊下には謎の「エビの殻禁止」って貼り紙がしてある。


「ふつう、だね……」


「うん。でもそのエビの貼り紙、去年ひとり爆発したんだって!」


「エビで爆発って何!?この学校危ないの!?」


 


 そして教室。

 僕が入ると、全員がこっちを見る。


 先生がにこやかに紹介する。


「新入生です。特例編入で、神力は“青”。ウルスくんです」


 ざわ……ざわざわ……。


 わあああああああああああああ注目されてるぅううううう!!


 やめてえええええ僕のHPが1しかないのにぃいいい!!


 


 しかも席に着いた瞬間、前の席の男子が言った。


「おまえが青か……俺なんて緑にもなれねぇのに……」


「え、そ、そんな、たまたまで……!くしゃみですし……」


「くしゃみで!?じゃあ次は咳で紫いくの!?」


「違う違う違う違う違う違う!!」


 なんかもう、勝手に超人扱いされてる……


 


 その後、授業は普通に始まった。

 自己紹介、校則説明、神力についての基礎理論。


 「神力はオーラのようなものです。身体に纏えば力が増します。感じ取れば敵の位置も分かります。物も動かせます」


 ――うん、それ全部、僕は苦手です。


 僕が得意なのは、「纏う」だけ。

 感知とか操作とか、繊細なやつは全部ダメ。

 神官には「脳筋タイプだな」と言われた。


 脳筋て……神の子扱いからの脳筋……上下差がひどい。


 


 そんな感じで、なんとか1日が終わるかと思ったそのとき――


 ゴゴ……ゴゴゴ……ッ


 床の下から、小さな地響きのような音がした。


 木の机がかすかに震えて、天井の梁が一瞬だけ軋む。


「今の、地震……?」


「神力暴発じゃね?ウルスくん?」


「ちがっ!!僕じゃない!!くしゃみしてない!!」


 


 こうして、

 僕の**“神の子疑惑”ライフ**が、始まった。


 


 なお、次の日には「ウルス、咳で雷を呼ぶ説」が流れ始めた。


 本当やめてください

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