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第183話:相部屋は誰だ?

 光殿を出ると、地下都市の昼が、さっきよりちょっとだけまぶしく見えた。


 いや、多分、光はさっきと同じなんだろうけど。


 中で人の手が入ってる光を見てきたせいで、今までよりも、この明るさに誰かの顔がくっついて見える。


 タキム。

 ロゼル。

 ジル。

 サーディ。

 グラフ。

 ミーナ。


 名前が、光と一緒に頭の中をぐるぐる回ってた。


「ふぅーーーっっ」


 隣でパールが、思い切り伸びをした。


「やっと終わったー!光殿ってさ、歩いてるだけで頭使わされるから疲れる!」

「歩いてるだけで疲れてるのはパールだけだと思うけど」

「ひどい!心の疲れもちゃんとカウントして!メンタルデリケートなんだから!」


 自分でデリケートって言う人、初めて見た。


 レグがあくびをしながら、後ろからついてくる。


「ま、確かに腹減ったな。昼ちゃんと食ってねぇし」

「レグの腹はいつも減ってるでしょ」

「そうだな。だから腹減ってる」

「開き直り方の問題だよねそれ」


 ノウは周りを警戒しながら、ちらっとこっちを見る。


「……騒ぎすぎんなよ」

「またそれ」


 パールが唇を尖らせた。


「ねぇノウ、さっきから騒ぐなって何回言った?」

「お前がさっきからうるさいって何回言われたか数えろ」

「ぐっ……!」


 言い返せなくて悔しそうにしてるパールを見て、思わず笑ってしまった。


 その笑いを見て、ノウがほんの少しだけ視線を逸らす。


 ああ、これ、照れてるな。


 ノウの優しさの理由がめんどくささなのは間違ってないけど、それだけじゃないって、僕はもう知ってる。


 あの人は、自分より先に、周りの音を聞いちゃう人だ。

 だから、僕たちがちょっとでも危なっかしく見えると、すぐ口が出る。


「とりあえず、一回中庭まで戻ろうか」


 ロゼルが前を歩きながら言う。


「今日はもう、光殿でやれることはないし。グラフたちに顔出してから、宿の手配もしないと」

「宿!」


 パールの目が一気に輝いた。


「ねぇねぇ、部屋別?相部屋?ベッド?布団?ごはん付き!?」

「一気に聞くな」


 ジルが苦笑する。


「基本は中庭の来訪者用の宿舎だよ。二人部屋がいくつかあるから、そこで」

「二人部屋……」


 その言葉に、パールがゆっくりこっちを振り向いた。


「ねぇウルス」

「嫌な予感しかしない」

「一緒の部屋にしよ」

「やっぱりそう来た」


 レグが噛みつくように言う。


「なんでだよ。ウルスは俺とだろ」

「なんでレグが当然みたいに主張してんの?」

「修行だ」

「どこから出てきた理屈?」


 デーネがメモ帳を閉じながら、ちょっと咳払いした。


「はい。まとめます」

「まとめるんだこれ」


「ウルスを巡って、今“同室希望者”が二名出ています」

「言い方やめて!?」

「パールとレグ。どちらも騒がしい側の人材です」

「人材扱い!?」


 ノウがごく自然に言った。


「どっちも却下でいいんじゃねぇか」

「ノウの切り捨て方きれいすぎない?」


 ライネルが、肩を竦めて笑う。


「……まぁ、分からなくはないけどな。ウルス、夜くらい静かに寝かせてやりたい」

「ライネルまで!」


 なんか僕、守られすぎでは?


 ロゼルが振り返って、軽く手を上げる。


「はいはい、はいストップ。部屋割りは中庭の宿舎のおばちゃんに最終決定権があるから」

「第三者いた!」


「その人、だいたい一秒で“こいつら組ませたらうるさいな”って見抜くからね」

「それはそれで怖い!」


 でも、そうやってわちゃわちゃしてる空気が、さっき光殿で感じた重さをちょっとだけ溶かしてくれていた。


 こういうどうでもいいことで騒げるって、やっぱり大事だ。


ーーーー


 中庭に戻ると、さっきより少しだけ人が増えていた。


 洗濯物を干してる人。

 子どもたちが走り回ってる。

 ベンチでは、おじいさんたちが小声で世間話をしていた。


 この街の普通の夕方。


 その真ん中で、ミーナが手を振ってきた。


「おかえりなさい」

「ただいま、って言っていいのかな、こういうの」


 思わず返すと、ミーナは少しだけ目を細めた。


「言ってくれると、ちょっと嬉しいです」


 そう言う顔は、さっき診療場で見た“医師の顔”じゃなくて、中庭の住人の顔だった。


「無音の時間、どうだった?」


 ミーナの問いに、レグが顔をしかめる。


「やっぱあれ、好きになれねぇな」

「わたしも」


 パールが即答する。


「なんか、“はい今から落ち込んでください”って言われてるみたいでやだ」

「それな」


 デーネが指を鳴らした。


「“休め”じゃなくて、“黙れ”に感じるんだよ」


 ミーナは、少しだけ視線を落とした。


「……あの時間に、わたし、患者さんのところ回ってるんですよ」

「え?」


 意外だった。


「無音中って、診療場も静かなんじゃ?」

「静かですよ。でも静かだからこそ、声が出せない顔がよく見える。怖くても、“大丈夫です”って言わなきゃいけない顔」


 ミーナは、ちょっとだけ苦笑いした。


「だから、みんなが嫌ってくれてると、逆に安心します。おかしいって感じてくれてる間は、まだ戻れるかもしれないから」


 その言い方に、胸の奥がちくっとした。


 クロカ王国の祈りの時間。

 僕らは、どれくらいおかしいって感じられてただろう。


「グラフは?」


 ライネルが周りを見回す。


「あの人も、ここにいるのか?」

「医師長なら――」


 ミーナが指さした先。

 中庭の隅のベンチで、グラフさんが腕を組んで座っていた。


 遠くの子どもたちをじっと見ている。

 その横顔は疲れてるのに、目の奥だけが妙に冴えていた。


「行ってきます」


 僕がそう言うと、みんなもついてくる。


 グラフさんは僕たちに気づくと、軽く顎をしゃくった。


「戻ったか」

「ただいまです」


 何となく、自然にその言葉が出た。


「ふむ。顔つきは――」


 グラフさんは一人ずつ、視線を滑らせていく。


 パール。

 レグ。

 デーネ。

 ノウ。

 ライネル。


 順番に見てから、最後に僕で止まった。


「そこまでひどくないな」

「ひどくなさそうな評価の言い方!?」


 パールが即座にツッコむ。


 グラフさんは少しだけ口の端を上げた。


「光殿に一日いた後の顔じゃない、という意味だ。あそこで丸一日過ごすと、“真面目な人間”から死んでいく」

「物騒な表現出た」


 ジルが肩を竦める。


「だから途中で外に出したんだよ。あそこにずっと置いてたら、この子ら、いい意味で真面目になっちゃうから」

「良くないの?」


 デーネが首をかしげる。


「いい意味なのに?」

「デーネ、お前はこれ以上真面目にならなくていい」


 レグが即答した。


「今ですら真面目すぎる担当なんだから」

「そんな担当ないけど!?」

「ある。俺の中である」


 デーネがむっとして、レグを睨む。


「じゃあレグは、脳筋担当ってことで」

「おう、任せろ」

「誇るな」


 そのやりとりを見て、グラフさんは肩の力を少しだけ抜いた。


「……こうしていると、病の話をしているようには見えんな」

「してないですからね今」

「だが、こういう空気が必要なのも確かだ」


 グラフさんの視線が、僕に向く。


「ウルス」

「はい」


「サーディから聞いた。“記録庫に入れるよう手配する”と」

「……はい」


 さっきジルが言ってた準備ってやつだ。

 “見せたくないものを減らす相談”をしてるのかもしれないけど、それでも扉は開く。


「明日、お前とデーネを連れていく。俺も同行する。医師の目と、お前たちの目、両方で見る必要がある」


 デーネが、ぐっとノートを握りしめた。


「ありがとうございます」

「礼はいい。その代わり、記録の読み方くらいは学べ」


 グラフさんがデーネを見る目は、患者を見る時ともまた違っていた。


 勉強を教える教師。

 相手が子どもだからって遠慮しない、あの目。


「デーネ。お前は“数字”や“文字”を信じる方だろう」

「……はい」

「信じるなとは言わん。ただ、“数字を書いた人間”を忘れるな」

「……」


 デーネが、一瞬言葉に詰まる。


「サイク病の記録も、光の記録も。誰かが怖がりながら書いた数字かもしれんし、“上に怒られないように加工した数字”かもしれん」


 その言葉に、デーネの目がわずかに揺れた。


 たぶん、図書館育ちの彼女にとって、「記録を疑う」って、すごく勇気のいることだ。


 僕はそっと横から口を挟んだ。


「……一緒に見よ」


 デーネが、はっとこちらを見る。


「数字とか難しいのは分かんないけど、違和感気づく係なら、僕もやれるから」

「巻き込まれ隊長から、係が増えた」


 パールがくすっと笑う。


「巻き込まれ違和感係」

「ひどい肩書きつけるな」


 でも、デーネは小さく笑って、うなずいた。


「うん。ウルスが一緒なら、あたしも人間の方を忘れずに済みそう」

「おーい」


 レグが片手を上げる。


「それなら俺も、怒り担当で入れてくんね?」

「何その係」

「なんかムカつく数字とか、ムカつく文章あったら、は?って言う係」

「それ大事かもしれない」


 ノウが珍しく同意した。


「は?って言っていい場面で、誰も言わなくなると、病は悪化する」


 ライネルも静かに頷く。


「だから、記録庫には入らなくても、ここで待ってる間、怒っていいかどうかの話は聞かせてくれ」

「……心強い」


 本当に。

 僕は一人で記録庫に行くわけじゃない。

 扉の外に、頼れる待機組がいる。


「パールは?」


 僕が聞くと、パールは胸をどんと叩いた。


「わたしは、笑わせ担当で待ってる」

「担当だらけだな今日」

「だってさ」


 パールは、少しだけ真面目な顔になる。


「ウルスとデーネがしんどい顔で出てきた時に、なんか食べよ!って言える人、必要でしょ」

「……」


 それを聞いた瞬間、胸のどこかがきゅっと締め付けられた。


 この子はいつも、一番よく笑うのに。

 一番よく、誰かの笑ってない顔を見てる。


「だから二人とも、ちゃんと戻ってきてよね」

「当たり前でしょ」


 デーネが即答する。


「戻ってきて、聞いてよパールって愚痴るとこまでが仕事」

「愚痴係も兼任してるのわたし!?」

「得意でしょ」

「否定できない!!」


 パールの頭を、レグがぽんと軽く叩いた。


「ま、心配すんな」

「誰に言ってるの」

「全員」


 レグは少しだけ真面目な顔をする。


「ウルスもデーネも、変な顔で出てきたら、俺がは?って言うし」

「怒り担当、もう働いてる」

「ノウもライネルもジルもロゼルもいる。大丈夫だ」


 ……そうやって、当たり前みたいに全員を含めてくれるのが、レグの一番ずるいところだ。


 グラフさんは、そんな僕らのやりとりを黙って見ていた。


 やがて、短く息を吐く。


「……よく騒ぐ」


 そう言いながらも、声は少しだけ柔らかかった。


「だが、そういうやつらの方が、病の根っこに気づきやすい」

「褒められてるのかなこれ」

「褒めている」


 きっぱり言われて、逆に照れた。


「宿の準備は、ロゼルに任せる。明日は朝から光殿だ。よく食べて、よく寝ろ。……“無音の時間”以外でな」


 そう言ってグラフさんは立ち上がり、また診療場の方へ歩いていった。


 背中が、少しだけ軽くなったように見えたのは……気のせいじゃないと思う。


ーーーーーー


 中庭の奥にある宿舎は、思ったよりも賑やかだった。


 廊下を走る足音。

 部屋から聞こえる笑い声。

 誰かが喧嘩して、すぐ仲直りしてる気配。


 ロゼルが言う。


「ここはね、長く滞在する人が多い場所。病気の家族を見てる人とか、地上から降りてきた技師とか」

「長い旅人の宿、みたいな」


 僕が言うと、ロゼルは少しだけ笑った。


「そうかもね。……じゃ、部屋割りの結果発表していい?」

「きた」


 パールがごくりと唾を飲み込んだ。


「えー、まずは女子部屋。パールとデーネ、二人部屋ね」


 デーネは「まぁそうだよね」と苦笑した。


「で、男子組」


 ロゼルが続ける。


「ウルスとノウ、二人部屋」

「え」


 思わず声が出た。

 ノウも「は?」と小さく言った。


 パールが即挙手する。


「異議あり!」

「弁護士みたいな入り方しないで」


「なんでノウなの!? そこはレグかライネルでしょ!!」


 ロゼルは、パールの抗議をさらっと無視した。


「レグとライネルが二人部屋」

「おう」


 レグはまあ納得してる顔。

 ライネルは少しだけ複雑そうに眉を寄せた。


「俺とウルス、か」


 ノウがぽつっと言う。


「……なんでだ」

「うん、気になる」


 僕も聞いた。


「どういう基準?」

「静か組と静か組を分けると、全体的にうるさくなるからだよ」


 ロゼルがとんでもないことを言った。


「ノウとウルスは“静か寄り組”。レグとパールは“うるさい寄り組”。ライネルはどっちも見れるから、レグの制御役。ジルは大人なのでどこでも寝る」

「最後だけ分類雑!」

「あとね」


 ロゼルは、少しだけ真面目な顔になった。


「ウルスの隣には、外を知ってて、中も見てる人を置いた方がいいと思ったの」

「それ、ノウ?」

「ノウはさ、最初からここがおかしいって顔でこの街見てるでしょ」

「……否定はしねぇ」

「でも、そのおかしいをちゃんと言葉にしようとするタイプでもある。だから、明日記録庫に行くウルスの夜の話し相手としては、ノウが一番良いと思った」


 ノウが少しだけ目を見開いた。


「勝手に役割決めてんな」

「嫌?」

「別に」


 即答だった。

 ただ、その別にの中身が、前より少し柔らかいのも分かる。


「……よろしくな」


 ノウがぼそっと言う。


「うん。よろしく」


 なんだろう。

 さっきまで“部屋誰とだよ”で騒いでたのに、急に胸の中が温かくなった。


 僕はこの街では“よそ者”だ。

 でも、そのよそ者の隣に座るのが、“この街の中の外側にいる人”だってのは、なんか安心する。


 でもこのノウが静か組?ノウをタイフの地下から解放した時は、レグ以上にうるさかった気がしたんだけど……うるさくなるのは戦闘になった時だけなのか。


「じゃ、とりあえず荷物置いてこよっか」


 ロゼルが鍵を配り始める。


「夕食は一階の広間で。一緒に食べた方が話しやすいこともあるからね」


ーーーーーー


 僕とノウの部屋は、思ったより普通だった。


 簡素なベッドが二つ。

 壁に小さな棚。

 机と椅子。

 角に、ランプ。


 豪華じゃないけど、寝るには十分だ。


「……」


 部屋に入った瞬間、二人とも無言になった。


 なんかこう――どっちから何話すかの空気読み合い、みたいなのがある。


 ノウが、先に動いた。


 荷物をどさっとベッドに置いて、短く言う。


「こっち、窓側もらう」

「いいよ」


 僕は反対側のベッドに座る。

 軋む音が、やけに大きく聞こえた。


 沈黙。

 数秒。


 ……耐えられなくなって、僕の方から口を開いた。


「ノウ」

「ん」


「さっき、“星の病は下から上がってくることもある”って言ってたよね」

「ああ」

「それって……どこで覚えたの?」


 ノウは少しだけ眉をひそめて、それから天井を見た。


「覚えたっていうか――昔、そう聞いたことがある」

「誰から?」

「……兄貴」

「スサ?」

「あぁ、だからよ、ウルスが“下から音がした”って言った時、嫌な感じがした」

「嫌な感じ?」

「“またか”っていう感じ」

「……」


 僕はバングルを握りしめる。


「ねぇ、ノウ」

「なんだ」

「怖くないの?」


 自分でも、けっこうずるい聞き方だなと思う。

 でも聞きたかった。


「下から何か来てる気がしてて。光も揺れてて。サイク病もあって。それでもこの街にいること」


 ノウは少しだけ黙って、それから短く笑った。


「怖ぇよ」


 即答だった。


「俺は兄貴ほど度胸はねぇからよ」

「……そっか」

「お前は?」


 今度は逆に聞かれる。


「怖くねぇのか、記録庫」

「怖いよ。めちゃくちゃ」


 即答だった。


「でも、見なかったことにする方が、もっと怖い」


 自分でも、よくそんなことを言えるなと思う。

 ほんの数ヶ月前まで、壁の中から出るのすら怖がってたくせに。


「父さんが見てたもの、知らないままでいるのが一番嫌だ」


 バングルが、そっと熱を返してきた。


「だから、怖いけど行く。……で、帰ってきてから多分、めちゃくちゃ喋る」

「だろうな」


 ノウがくすっと笑った。


「そのために同室にされたんだろ。聞いてやるよ、全部」


 その一言で、急に肩の力が抜けた。


「ありがと」

「礼は、うるさくなかった時だけ言え」

「無理だな」


 そんなやりとりをしているうちに、廊下の方からパールの声が聞こえてきた。


「ウルスー! ごはん! ごはんだってー!」

「もう呼びに来た」


 ノウが顔をしかめる。


「早ぇなあいつ」

「おなかで時間測ってるからね」


 ドアを開けると、案の定、パールとデーネが二人で立っていた。


「ねぇウルス」

「なに」

「今日一日で、この街のことより人間の方が面倒くさいなって思った回数いくつ?」

「数えきれないね!」


 デーネがくすっと笑う。


「でも、人間が面倒くさいのは、世界がまだ人間の世界って証拠でもあるから」

「それ、どういう意味?」

「サイク病がもっと進んだらさ、面倒くさいって感情すら減っていくかもしれないじゃん」


 その言葉に、背筋が少し冷えた。


 パールが顔をしかめる。


「やだよそれ。わたし、ウルスのこと面倒くさいって言えなくなる世界とか、絶対嫌」

「今、それいる?」


 でも――


 そうやって言ってくれるパールがいて。

 今のをサッと書き留めてるデーネがいて。

 黙って聞いて、先に歩き出すノウがいて。

 何も分かってないけど、とにかく強いレグがいて。

 少し後ろから、全体を見てるライネルがいて。

 ちょっと離れたところで、大人組のロゼルとジルが僕らを待ってる。


 このメンバーで、この街の“光”と“影”を見る。


 それなら、たぶん。

 怖くても、ちゃんと前に進める。


「行こっか」


 僕は言った。


「今日はちゃんと食べて、ちゃんと笑って、ちゃんと寝る。明日、記録庫を見るために」

「はい、巻き込まれ隊長のありがたいお言葉入りましたー」


 パールがちゃかす。


「お前が一番巻き込ませてくる側だろ」


 ノウがぼそっと突っ込んで、デーネが笑って、ライネルが肩をすくめる。


 わいわい言い合いながら、僕たちは宿舎の広間へ向かった。


 地下都市の昼は、まだ続いている。


 その真ん中を歩く僕らの関係だけは――

 光殿の光なんかより、よっぽどあったかかった。

読んでいただきありがとうございました。

面白かった、続きが気になると思ったら評価、ブックマークよろしくお願いします。

筆者がものすごく喜ぶと同時に、作品を作るモチベーションにも繋がります。


次回もよろしくお願いします!

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