獅子舞の四姉妹
よんしまい!
祭りの賑わいのなかを
唐草模様のドレスで着飾った
鬣をもつ女傑ライオンが舞う
女歌舞伎のように振り乱す
妖しくも美しい四頭の姉妹は
来して去る 四つの季節を思わせる
黒髪の長女ライオンは冬
液体窒素のクールビュティ
敵の傷には柚子胡椒を塗りこんでやるほど冷酷で
プリンは必ず凍らせてから食べるけど
雪で建てた かまくらのなかは
意外とあったかいように
その内に ちゃんとやさしさも秘めているはずだ
きっと たぶん おそらく ひょっとすると
青髪の次女ライオンは春
柔軟剤の香る 癒しの給水所
半日 煮こんで料理したカレーに
ソースやお醤油をかけて食べられても
べつに気にしないおおらかさだけど
いつもは微笑みを湛えながら
細めている両目をひらかせてはいけない
温厚なキャラほど怒らせると怖いもので
神の憤りに匹敵する乙女の怒りが
その両目を開眼させたとき
あたりは屍の山と化すだろう
赤髪の三女ライオンは夏
フラメンコの情熱と 盆踊りの根明さを
もちあわせているのに
その反面 打たれ弱くて
すぐに べこってへこむけど
また ぼこって音を鳴らしてもどる
立ち直りの早さがとりえ
白髪の四女ライオンは秋
おもてに出す感情が薄くて
継ぎ足さないまま終盤をむかえた
しゃぶしゃぶのゴマだれのごとし
ところが 本性は極度のシスコンで
大好きなお姉ちゃんたちのためなら
手段は選ばず 犠牲も厭わず
策をめぐらせて 裏でことをはこぶ
いわば影の女帝だから
なまいきなコムスメめ「わからせ」てやる
だなんて
うかつにちょっかいをかけたやつは ぎゃくに
後悔とゆうことばの意味を 辞書一冊ぶん
思い知らされることになるだろう
こんな四頭のライオン姉妹は
タイプは ばらばらなのに
なんだかんだでうまくやっていて
ゆりゆりこそしてないものの
強い姉妹愛で結ばれている
そのぶん すれ違いやけんかも多いけど
そのたびに 仲直りのしかただって
だんだんうまくなってきてる気さえしないでもない
きょうはそんな四頭のライオン姉妹がそろって
唐草模様のドレスと鬣を
女歌舞伎のように振り乱して
妖しくも美しく舞っているのに
指を咥えて見てるだけの阿呆どもめ
こんな日こそ
踊る阿呆にならなきゃあ 損するぞ
とびっきりの笑顔も しみったれの笑顔も
どっちも祭りの賑わいのうちと
まぜっかえして まぎれこんだら
あとは身をまかせればいい
四姉妹の獅子舞も
四頭四様のリアクションで
迎え入れてくれることだろうよ
隠れシスコンの妹は、必須かと!