表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

未来予知

私の友達に未来予知ができる子がいたんですよ。小学校の友達の女の子なんですけどね。

私、地元が和歌山のド田舎で、小学校の同じ学年が20人いないようなとこやったんですよ。全校で100人いないようなとこやったんで、みんな顔見知りでしたね。今は廃校というか、平成の大合併の時に小学校も統合されてなくなっちゃいましたけど。

その子は保育園も一緒やったんです。私は覚えてないんですけど、母が弟がお腹の中にいる時に「男の子やね~。ゆみちゃんは妹欲しがってたから残念やね~」って言われたらしくね。その時まだ妊娠2か月とかで父以外誰にも言ってなかったから驚いたって言ってましたわ。親たちの間ではちょっとだけ話題になってたみたいなんです。まだ本人も妊娠に気付いてない段階で「赤ちゃんいるんやね~」って言われる人が数人いたみたいで。まあ、いい意味で田舎だったんで、子供やからそういう子もいるんやな~くらいで周りもあんまり気にしてなかったみたいで。

私がその力を初めて見たのは小1の時やったんです。プールの授業の前にその子が「●●くん赤い台から出て溺れんで」って言ったんです。担任の先生もそれを聞いていて「何言うてんねん」って言ってましたわ。プールの赤い台って分かります?プールの中に台沈めてちょっと高さを出して浅くするっていう台ですね。一年生は基本、その赤い台の中でしか遊んじゃいけないんです。深さ1ⅿくらいあるプールで一年生なんて身長1ⅿちょっとしかないですからね。足着いたらおでこがちょっと出るくらいですよ。そこの赤い台で顔を水につける練習とかちょっとした水遊び程度ですよね、一年生のプールの授業なんて。んで、本当にその予言されてた男の子が赤い台から出て溺れたんですよ。ちょっとお調子者みたいな男の子でしたから、ほんの出来心だったんでしょうね。まあ、先生がすぐにその子のこと引き上げたから特に何もなかったんですけど。

それからこういうことがちょいちょいありまして、「●●ちゃん三時間目におじいちゃん迎えに来んで」言ったら、その言われた子の母方のおじいちゃんが死んだとかで急遽新幹線に乗って東京行かなあかんからって一緒に住んでるおじいちゃんが軽トラで迎えに来たり。もうその子の言うことは本当になるっていうのが周りも当たり前に思ってて。別に気持ち悪いとかイジメみたいなことには全く発展しなかったんですよね。みんな普通に受け入れてたんです。あの子が言うんだから、そうなんだろうって。少なくても同じ学年の子は「怪我すんで」って言われたら体育休むとか遊ぶのやめるとかしてたんです。実際そうすると怪我はしなかったし。担任の先生も多分その子のこと信じてたんでしょうね、体育休むって言っても怒ったりしませんでしたよ。まあ、そんなに頻度が多いわけじゃなかったから許してたんでしょうね。

校庭に犬が入ってくるっていうビッグイベントも言い当てたんですよ。「白いでっかいふわふわした犬ってこの辺で飼ってる家ある?学校に入ってくるやけど」って。そしたら給食の時間にほんまに校庭に入ってきたんですよ。サモエドですかね?結構おっきい犬種の犬。あん時はめちゃくちゃ興奮しましたよ。

うちの小学校で縄跳び大会っていうのがあって、縄跳びの飛んだ回数を競うっていうやつなんですけど、「●●先生足怪我する。バチンって」ってあの子が言ったんです。その先生は別の学年の先生やったんですけど、色んな子が「先生足怪我するから休んどったほうがええで?●●ちゃんが言ってたで」って言ったんやけど、全然信じてくれへんくて。「失礼やろ。何言うとんねん」ってちょっと怒られたりして。もう同じ学年の子はビクビクしてるんです。あの先生絶対怪我するって。準備体操が終わって、みんなで前飛びの練習をしてた時「バツンッ!!!」って体育館中に響いたんです。周りが縄跳びで飛んでるのにそんな音をかき消すぐらいの音が体育館中に反響したんです。みんな飛ぶのをやめてその音の出どころを探したんです。そしたら、その先生が倒れてたんです。もう周りの先生も大騒ぎで。歩けんってんでタンカーで保健室に運ばれてって、救急車まで来て。その日はもう縄跳び大会は中止ってことになって、教室で魔女の宅急便見たの覚えてます。足怪我した先生なんですけど、アキレス腱切れててそれから結構な間松葉杖でしたね。アキレス腱切れる音あんなんでかい音なんやって子供ながらにビビりましたわ。


中学に上がった時に誰が言ったのかあの子は未来予知ができるってちょっと有名になったんです。他の小学校の子が「私の結婚相手誰?」とか「●●君の好きな子誰?」とか色々聞きに来たんです。でも、その子は「そういうのは分からんわ」「本人に聞けばええやん」って返してたんです。そしたら「嘘つきやん」「不思議ちゃんアピール」とか色々言われるようになったんです。その子が言うには見ようと思って見えるわけじゃなくて勝手に頭の中に映像が一瞬映るだけで、どうしてそうなったのかの原因も分かんなく結果だけが分かることが多いらしくて。あと、大体一日二日後までのことしか見えなくて、その先の未来とかは全く分かんないらしいんです。本人も別に見たくて見てるわけやないから、見たくないものも見えてしまうときもあるから不便らしい。「テストの内容とかは見えんの?」って聞いたら「そういうのは一回も見たことないな。見えても一瞬でテストの内容覚える自信ないわ」って言ってて、じゃあ特に羨ましい能力やないなって思いましたね。

ある時、今でいうヒエラルキートップのバスケ部の女の子たちが「私の好きな人当ててみてや」「●●先生って彼女いるか見てみてや」って絡んでて、その子は「知らんし」で通してたんですね。バスケ部の子らも「やっぱ嘘やん」ってその子の近くから散っていったんです。私はなんやコイツらって思ってましたけど、その子もその子でまあまあ強く言い返せる子やったんで気にしてなかったんです。

その日の掃除の時間にその子に「帰りの会終わった時に一緒に●●さんのところに来てほしい」って頼まれたんです。●●さんっていうのは絡んできたバスケ部の子の一人で、見た感じそのグループの中心みたいな気の強い子でしたね。馬鹿にすんなって呼び出すんやなってちょっとワクワクしたんです。それと同時にケンカなんかしたことないんで、少し怖かったですね。

私も一緒に「●●さん、部活の前にちょっといい?」と呼び出し、人がいない視聴覚室に三人で入ったんです。●●さんは終始「一年は早く部活行って練習の準備せなあかんねん」「はよ話終わらせてえや」ってグチグチ文句を言ってましたね。その子「お母さんは知ってるん?」って突然言い出すんです。私も●●さんも「は?」「急に何言ってるん?」ってなってるんです。そしたら「お腹見せてえや」って言うんです。「見せられるわけないやん!はずいやん!」って●●さんも否定してて。もう全く話の中身が分からなくて。「こういうのはよう分からんから大人の人に言おうや。担任の先生が嫌なら保健室の先生に言おうや。女の人やし」ってその子が言ったら、●●さんが急に泣き出して。もうこちとら何が起こったのか分かんなくてあたふたしてたんです。ヒクヒク泣きながら「ママは知らんねん」って絞り出すように言ったんです。そうして泣いてる●●さんを支えるように保健室に連れてったんです。泣いてる●●さんをベッドに座らせて、困惑してる保健室の先生にその子が「●●さん、お父さんに暴行されてます」って言ったんです。私も保健室の先生も「えっ」って驚愕して動きが止まってしまって。「お腹見てみてください。殴られた跡があります」ってその子が言うと先生はベッドのカーテンを閉めてん。カーテンの外で気まずそうに私とその子で待ってたら「いつからなん?」「お母さんは知らへんの?」「お父さんってお母さんの再婚相手なん?」って色々聞いててん。ガラッと少しだけカーテンが開いて「ごめんね、教えてくれてありがとう。あとはこっちで話聞くから。この子の部活の先輩か顧問の先生に今日は部活行かれへんってだけ伝えといてくれる?」って言われて保健室から帰されたんです。

それから●●さんは学校に来んくなって。夏休み中に転校したみたいで。これはその子に聞いたんやけど、転校してから一回家に●●さんから電話来たみたいでお母さんがお父さんと離婚して大阪に引っ越したこととかバスケは好きじゃなかったけど一番忙しくて家におらんくてもいい部活だから選んだこと、その能力みたいなの嘘やんって馬鹿にしてごめんって謝られたって。

その事件があったあとの9月か10月くらいの時に急にその子があの変な能力使えんくなったって言ってきたんです。女の子特有のアレっていうか、まあ生理が始まったら一切そういうのが見えなくなったって言うんです。それもまた驚愕でしたわ。「ゆみちゃんが危ない目に遭いそうになってももう助言できへんから」って笑って言われましたわ。


その子今結婚して東京に住んでるんです。特に連絡は取りあってなくてインスタで近況を見るみたいな間柄で「赤ちゃん生まれたんやな~」「他人の子供は成長が早いわ~」みたいなコメントをするだけの仲になんですけど、こないだ「法事で和歌山に帰ってきてるから土曜に数時間だけでも会わへん?大阪から新幹線乗るからその前の時間で」ってDM来て、会ってきたんです。「旦那と子供が遊び場みたいなのに二時間行ってるからその間だけで申し訳ないけどお茶しようや」って。もう懐かしくて昔の色んな話をしまして、もちろんあの未来予知的な能力の話にもなって。そしたらその子の娘が「おおばあばバイバイね~」って言ったと思ったら祖母が亡くなったっていう連絡来て、それで和歌山に戻ってきてたことを聞いて。明らかに受け継がれてるやん、その能力が娘ちゃんに。

新幹線乗る前にその子の旦那さんと娘ちゃんにも挨拶したんですよ。娘ちゃん本当に2歳児なん?ってくらいお喋りが上手で、私に「お姉ちゃん可愛いね」ってお世辞まで言えるんですよ。娘ちゃんが「お姉ちゃんあんまり走っちゃダメだよ。赤ちゃんビックリするよ」って言ってきたんです。もうその場はすごい雰囲気になっちゃって。その子もその旦那さんも「何言ってるの~」って焦っちゃって。そんなドタバタで別れたんです。

で、念のため妊娠検査薬でその日中に調べたら見事に二本線が入ってまして。妊娠してたんですよ~!

あっ、だから私今日ホットウーロン茶なんです!当分はお酒飲めないんですよね。それでもバーには来ても大丈夫ですかね?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ