簡単な呪い
今は普通に警察署に勤務してますけど、その前はサイバー課に勤務してたんですよ。サイバー課ってかっこよない?ドラマでようエンターキーカーンッ鳴らしてはるし、ホワイトハッカーが「よーし、いい子だ」とか言いながらセキュリティ突破してくみたいなイメージあるやん?合コンでもサイバー課に勤めてるって言うとほんまウケ良かったんよ。でも、実際はそんなことしてはる人なんてほんの一部の転勤ない専門の人だけで、俺みたいな色んなところに飛ばされまくる奴なんていわゆるネットの詐欺みたいなのを地味に捜査するだけで、エンターキーカーンッ鳴らすことも一回もありませんでしたわ。
これ京都府警だけかもしれへんから、他の警視庁やら県警は違うかもしれへんけど、警察に入った時に言われることがあんねん。
「呪殺は逮捕することができません」
って。おかしい話よな?まるで呪殺が当たり前に存在するかのような口ぶりやん?京都って陰陽師やら妖怪やらの漫画とかアニメの舞台にようなるし、それ言ってはる警察学校の先生がノリで言ってたんかな?くらいであんまり気にしてなかったんや。
でも、呪殺はあんで。これって意外と誰でもできるかもしれへんな。病院以外で死ぬと一応警察官が行かなあかんねん。まあ、大体がただの病死で処理されるんよ。急死やっても心臓発作やったり、脳の病気のことが多いし。病院で検査の結果、病死で処理されたらもう警察の出番は終わりなんやけど、たまにおんねん。家族なり恋人なり、死んだ人の近しい人が「この人は呪い殺されたんや」って言うこと。普通に考えたら大切な人が死んで混乱してるか、最初からちょっと香ばしい人かのどっちかよな。香ばしい人ならあしらえば済む話なんやけど、そうやない人もいはるんよ。しかも、呪ってきた人も分かるって言いはるんです。
これは俺がちょっとだけ調べた人なんですけど、呪うって言っても別に丑三つ時に藁人形に釘刺して~みたいなやつやないで?なんならみんな知らず知らずのうちにやってはるかもしれへんな。
心配すんねん。ただただ心配すんねん。ええことやん?って思うやん。でも、それって呪いになんねん。これを意識してやってはる人がおるんよな。
最初は「なんか顔色悪ない?無理せんほうがええよ」って言うねん。全然体調悪なくても、そう言われたら寝不足やし、とかもしかしたら熱っぽいんかな?とか思うようになるんや。これを何回も続けんねん。手を変え品を変え。駅から走って汗ダラダラで出勤してきた人に「汗ヤバいで?走ってきてもそんな汗出んよ。どっか悪いんちゃう?」って言われたら怖なるやん。もしかしたら病気かもしれへんって。そうなると「あんまり残業せんほうがええんちゃうん?体調が一番やで」ってねぎらい言葉すら呪いになるんよ。病は気からって言うけど、それってあながち間違いやなくて、病気かもしれへんって思って生きてくと体調もどんどん悪なってくんねん。それで精神的に病んでく人もいれば、ほんまに病気になって入院する人もいんねん。そんでひどい人は死ぬ。俺が調べた人は明らかに狙ってやっとったね。健康診断の再検査を異常に心配し、ただの検査入院に「だから言ったやろ?具合悪いやないかって」と脅し、職場でわざわざ心配しにその人の席に行くねん。毎日。毎日。頭おかしなるやろ。その人が死んだ原因はそれ以外にあるかもしれへんけど、ソイツが毎日心配せんかったら今も普通に働いてたんやないかって思うんよな。
呪いって案外簡単やない?誰にでもできるやろ?
まあ、ほんまの呪いの儀式みたいなのの残骸も見たこともあるんやけどね。その呪いの儀式のやり方は今度教えたるわ。
そういや、奈良井さん、なんか顔白ない?体調悪いんちゃう?




