メモリー1「星の魔法使いリリィ」
第1話
2人の少女が出会う
眠い…ひたすらに眠い…ここは…あぁそうか、ここは。
私は…。
黒髪の女の子が機械に繋がれている。
その胸にはオレンジ色に輝くエネルギーがあった。
"これからも一緒だよ。"
流れ星が光り輝き、落ちて来る。
軌道エレベーターのすれすれを落ちる流れ星。
それは人だった。魔女のような帽子を被り、
まるで天球儀を小さくしたような杖を持ち、空から落ちてくる。
研究所内で、アラームが鳴り響く。
私は機械に拘束されており、身動きが取れない。
「緊急警報。緊急警報。サテライト内で神獣を確認。戦闘用アンドロイド、魔導師達は速やかに、現場へ急行せよ。神獣レベル特EX級。繰り返します。~…。」
神獣…だって…?しかも特EX級…?そんなのこの世の終わりじゃないか。
神獣がエネルギーの波状攻撃を行った。
施設のエネルギーがダウンし、私は身動きが取れずにいたが、
何故かアームが外され、逃げれるようになった。
超衛星都市サテライト
機械と魔導が発展したこの世界。
多くの歴史があり、多くの種族が生きている。
そんなサテライトに神獣が現れた。
鉄板の集合体のような竜巻のような、
蛇か龍か分からないような流動的な生き物が
都市で暴れ回っていた。
生き物のようで、生き物のようではない何か。
鉄板と鉄板が擦れあい震え、
機械の鳴き声のような声で鳴いている。
いや、泣き叫んでいると表現する方が正しいのかもしれない。
だってその声は泣いてるように聞こえるのだから。
アンドロイド達は必死に神獣と呼ばれる生き物と戦っている。
「も、もう…ダメだ…サテライトは終わる…。」
その時、空から白髪で青い目をした女の子が神獣の前に落ちて来た。
まるで、流れ星が落ちて来たかのように思えた。
「神獣からエネルギー反応!この都市…いえ、この惑星を消滅させるほどのエネルギーを検知!いや…それ以上です!」
軌道エレベーター兼対策本部ではアラームが鳴りやまない。
私はこの混乱の中なんとかして拘束から逃げ出し、外へと出た。
都市では神獣が超高密度のエネルギーを放とうとしていた。
その先に、魔女帽を被った青い杖を持った女の子が浮いている。
その女の子が”魔法陣”を生成。”魔法”を放とうとしていた。
「魔法…星の環…。ごめんね。痛いよね。」
神獣に巨大な光の鎖が絡みつき、動きを封じ込めた。
だが、神獣は強引に超高密度のエネルギーを放った。
ビルが消し飛び、海の一部が蒸発し、大爆発が起きた。
惑星の破壊は免れた。
「もっと強く縛っておくべきだったね…ごめんね。でも、こうするしかないの。」
白髪の女の子の周りに魔法陣が何重にも現れる。
そして杖を神獣へと向ける。
「魔法…虚光星。」
何枚にも重なった魔法陣から、超強力な魔法が放たれる。
音が消え、キーンと鳴り、周りのビルを巻き込み、
触れるものすべてを消滅させながら神獣へと放たれる。
その魔法は、神獣を消滅させ、そして、後ろに合った山脈をも消し飛ばした。
青く光り輝く結晶が飛び散る。
白髪の女の子は、力を使い果たしたのか、落ちてくる。
黒髪の女の子が、研究所から逃げ出し、白髪の女の子とぶつかる。
光の結晶が黒髪の女の子へ入っていく。
「いたっ!何かにぶつかった!?え、女の子!?」
白髪の女の子はすやすやと眠っていた。
黒髪の女の子はどうしていいか分からなかったため、その子を抱えて、
追っ手から、逃走した。都市は神獣が現れる前の状態に戻っていた。
まるで神獣は最初から居なかったかのように。
私はこの子を抱えながら、逃げた。
白髪の女の子は穏やかな顔で眠っている。
夜は明け、翌朝。
黒髪の女の子が困り果てていた。
「あの、そろそろ起きて。」
サテライトから追っ手が来ているかもしれない。
白髪の女の子がゆっくりと目を覚ます。
彼女の目は青く輝いていた。
「ここは…。私は…。」
整った顔に綺麗な白髪、そして青く輝く目。
彼女は周りを見渡している。
黒きアンドロイドが白髪の少女へ問う。
「あなた名前は?というか、魔導師だったのね。」
白髪の女の子は首を横に振った。
「魔導…?ううん、違うよ。魔法。私は…魔法使い。名前は…リリィ…。多分。」
彼女は魔導師ではなく、魔法使いだと言った。
他の世界から来たのだろうか。この世界に魔法というものは存在していない。
過去に魔法を扱う者が侵入してきたということはあったらしいが、
この世界で魔法を扱う者は存在しなかった。
「多分って…。リリィ、どこから来たの?」
リリィは頭をかしげていた。
「わかんない…。記憶喪失…なのかな…。私は何も分からない…。どうしてここに居るのかもわからない。でも、これだけは、私が魔法使いだということは分かる。」
黒髪の女の子は自己紹介をした。
「そっか…。あ、私の名前は…あーえっと、マキナ。アンドロイド。あなた、軌道エレベーターから落ちて来たんだってね。」
マキナと名乗った女の子は自身の事をアンドロイドだと言った。
リリィは、アンドロイドの事はなんとなくわかるらしく、
記憶喪失の部分は、記憶の部分に限定されているらしかった。
「軌道エレベーター…?えーっと、あの中央にある大きな時計台みたいな?私、空から落ちる感覚はあったけど、あんまり覚えてない…。」
何か勘違いをしているらしかったので、マキナは訂正した。
「時計台といえばそうかもしれない。全世界のワールドクロックの役目も果たしてるし…。でも違うよ。宇宙へと繋がっているエレベーター。軌道エレベーターだよ。エレベーターは分かる?」
リリィはエレベーターは分かるけど、軌道エレベーターについては分からない。と
はにかんで答えていた。
「うーん、簡単に言えば宇宙と繋がってるエレベーターの事だよ。」
マキナはリリィに軽く軌道エレベーターのことを説明した。
「それで、リリィ、あなたはこれからどうするの?どこか行く当てはあるの?」
リリィは少し悩んだのち、
「えっと…ごめん、わかんない。」
首を横に振りながら伝えていた。
マキナもまた少し悩んだのち、1人で行こうとしていた。
だが、マキナは記憶喪失の少女を
そのままにしておくことは出来なかった。
「なら、一緒にいる?」
彼女はしばらくリリィと行動を共にすることを決めた。
「うん…うん!一緒に居よう!マキナ、優しいんだね。」
はにかんで笑うリリィは今にも消えてしまいそうで、
それでいて、まるで宝石のような女の子だった。
「優しいって言うか…普通だよ。」
マキナは照れくさそうに言った。
次の日
「ん、これ、パン。買ってきた。食べる?」
マキナがリリィにサンドイッチを手渡す。
「あ、ありがと…。」
リリィはマキナに感謝を伝えて、一緒に食べていた。
サクサクでジューシーでとっても美味しい。
朝ごはんに2人で一緒にカツサンドを食べていた。
マキナはアンドロイドと言ったが、食べ物を食べれるのかと
リリィは頭の中で考えていた。
「もう、リリィってば口に付いてるよ。ほらこっち向いて?」
マキナがリリィの口元をハンカチで拭っていた。
「えへへ、ありがと。」
2人は会って間もないが、仲良くなっていた。
この世界では魔法使いという呼ばれ方はせず、魔導師が居て、
さらにはアンドロイドが居る世界だった。
リリィ
記憶喪失の謎の魔法使い。
童顔で髪色は白髪。目の色は青色。魔女帽を被っており、
紺色の長めのローブを羽織っている。
マキナ
謎のアンドロイド。
髪色は黒髪。ショートボブ。目の色は赤色。胸にオレンジ色の宝石が輝いている。
黒い長めのダボっとしたパーカーケープを着ている。
第1話、読んでいただきありがとうございます。