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第6話 最強の倒し方

 その花が訪れたのは良いもののレベル上げを行うことは出来ない。

 このような森でレベル上げをする奴は多分弱い。何故ならこの森に出現するモンスターの種類で確定しているからだ。

 モンスターというのは、基本的に弱いやつが群れを組む。強いやつなんかは1人で居ても襲われないし、万が一襲われても勝てるという自信の現れからか集団で行動しない。

 その例としてはシブーだ。

 だからこそ集団意識の高いゴブリンが住み着いている時点でこの森はダンジョンレベルでいうと5ぐらいだ。


「ここら辺のモンスターって何レベルですか?」

「うーん確か5レベルだった気がするよ」


 レベルでいうと負けているが丁度いいくらいのレベル差で戦闘が捗る。


「でもここら辺は初心者専用の狩り場なのでキリには低いレベルだよ」


 先手を打たれてしまった。ここでのレベル上げが困難になった。他のところに行きたいという願望だけが増していく。


「じゃあどこでレベル上げたほうがいい?」


 単純な疑問と共に投げかけられた言葉にマールも一緒に考える。

 マールの想像しているレベルだと霧はこれからも100レベルのモンスターだけしか、つまりボス戦しか出来ない本番一発勝負男になってしまう。


「そうだな……この近くのジャンゴーの森には50レベル相当かそれ以上のモンスターしかいないよ」


 半分の力だとしても霧には荷が重い。レベルの低い霧にとってはその森にいる全てのモンスターがボス戦級で一体でもかなりの時間を有する。


「そこいくか」


 ノリで行ってしまう。どうせ100レベルは全員倒さなければならないのに50レベルごときで弱音を吐いてられないのが今の現状。

 こうしてこの空気が美味しく比較的に安全な森から地獄でほぼ即死級で警戒を解くことすらもままならない森に移動する。


「そういえばキリはどんな夢を叶えたいの?」


 100レベルを倒す者への疑問だ。100レベルという死を伴うことをしてまでも叶えたい夢を知りたい。自分にない価値観を知ろうとする質問なのだろう。


「お母さんに会いたいだけだよ」

「そうなんだ」


 重たい雰囲気を感じ取りなんとなくコミュニケーションが円滑にならない。

 気不味さでこの森は埋め尽くされ過ごしにくくなる。話題転換を木々が求めてくる。


「マールはこれから何がしたいの?」


 一緒に冒険したいだけではこれからの戦いでいつか死んでしまうか先に心が折れてしまうだろう。

 強い信念からくる心がこの次の戦いを制す。


「私は旅したいってのもあるけど……」


 別の理由がある。その理由はこの旅の目的においての最も重要なこと。

 それにより突き動かされた信念がここまで旅への足取りを強める。


「それよりも私はこの世界から百害を無くしたいんだよね」

「百害?」


 百害という聞き慣れない、いや聞いたこともない言葉にこの世界ならではの文化を感じる。

 

「シブーとかのこと。100レベルのモンスターを百害って総称で呼ばれているんだ。知らなかった?」


 百害とは害を人間に対してもたらした100匹の100レベルのモンスター。

 今は99害ではあるがそこを無しにすると確かに1体でも1つの国を崩壊させるくらいには強い害。

 そんな有名な言葉をも知らないとなると怪しまれるのも無理はない。


「知らなかった。俺の国はでは百強って呼ばれてたから」

「そういう国もあったよね。てことはこの国出身じゃなかったんだ」


 勿論そうである。この国どころか世界中どこを探しても出てこない。


「そうだよ。俺はこの国じゃないから文化も色々違うけど色々頑張っていこう」


 遅くなりましたが決意表明と自己紹介みたいな感じに進んでいた。


「名前は知ってるけど何歳なの?」


 マールからの質問。これからの立場の在り方をはっきりさせるために開催された自身暴露コーナーが自己紹介である。


「16歳」

「同じだねってことは学校も通ってるわけだ」


 通ってたって言うのが正しい日本語で今は世界からの脱却により通ってるとは言えない状況にある。


「いや俺は特に通ってはいなくて、ただ働いているだけ」

「授業受けてないのにそんなに強いんだ」


 授業には知識と技能があり、その技能を学び活かせるようにいわば冒険者に育てるのが学校側の仕事ということだろう。

 学校は勉強だけではなく、最近はそれ以外の冒険者としてのことを教えているようで学校によって特色は変わるらしいがメインは冒険者。

 魔法使いを育てる学校では魔法も教えるが軸は冒険者。

 そういった風にこの世界は冒険者をおすすめしている命を全国民にかけさせる以外にも他者に気を使わないタイプの世界。


「まあ実践しかやってないから基礎やなんやらはわからないけどね」


 嘘で塗り固めた言葉でこの場を乗り切る。この話をした時点で霧が嘘つかざるを得ないのが現実。


「それでも凄いよだって独学で百害を倒しちゃうんだもん」


 ジャングルを目指しながら進んでいるが初めての人との会話でも盛り上がりを見せる。

 周りの植物が徐々に変わっていき、普通の木からジメッとした木に多少変わっていた。


「意外に早く着きましたね」

「そうですね。このジャンゴーの森。懐かしいなぁ」


 昔レベル上げでもしたかのような空気をまとわせている。

 その空気おもジメッとさせ、圧倒的な重圧に押しつぶされそうになる。

 モンスターすら出てもいないのにこの森には霧にとってやばい死ぬという直感が作動している。


「ここが50レベルの敵がいる森か」


 怖気づき明らかに引き下がろうとする。一時前までいた森ではゴブリンごときの弱いモンスターしかいないがここは格が違う。

 全てのモンスターが完全に霧を捕食対象いわば弱肉強食のカーストでは最下位に面しているほど弱さを痛感する。


「ささ。入りましょう。こんな弱い森でさっさとレベル上げしましょう」


 マールは確定で強い。この世界ではどれが基準で水準なのかは知ったことはないがこの威圧感を耐え、余裕の面構えのマールはこの森の熟練者。

 ここらのモンスターなら楽々に倒せるという見た目や気からは想像できないほどの強者。能ある鷹は爪を隠すを体現したような人物である。


「まあ。行こうか」


 この強さに肩を貸して貰いレベル上げをサポートで進めようと誓う。そうでなければお陀仏になるのは手に取るようにわかる。

 森に入り、最初のうちは気配すら感じず何かに引き込まれるように淡々と進んでいった。

 森は別に特段怪しいところは無くどこを見ても一貫して縦長の木が生えているジャングルのような場所であるということ。

 これなら地球にもあったと安心感を覚える。


「まだモンスター出てこないんですね」

「まあここのモンスターは陰湿ですからね」


 軽々しく言うがとても大事な情報だ。陰湿つまり卑怯で不意打ちを得意とするモンスターが多いことを意味する。


「そろそろきますよ」


 不意を打たせるどころか事前申告制。もうここでのレベル上げには手慣れておりどの位置からモンスターが攻撃してくるかを完全に把握している。

 その熟練者を信じ、言葉に身を任せるが如く身構える。

 静けさだけをこの森に残す。どこからか虫が鳴いて来そうな雰囲気。


「とりあえず1つ言えることはここでの攻撃は結構避けたほうがいいよ」


 事前に忠告を挟む。草をかき分ける音をせずに近寄られてないかも見張る。

 辺りを何度もキョロキョロさせて警戒の一心。


「これ意外と長くかかるパターンのやつ?」


 今すぐにでも、いつ来てもおかしくない。

 その疑問を残して、辺りは暗転し包まれる。真っ暗闇だけを残して……

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