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第5話 旅の門出には付き者あり

 夕日に進むまでは良かった。行先も決めずに歩いたという選択ミスが響いている。

 マール兄妹に聞けばこんなことにならなかったと今更ながらの後悔はある。


「どこに行こうか」


 暗いなか歩くなんてことをすれば死ぬのは分かりきっている。索敵や野営は上級冒険者がやる者であろう。

 今の転生した初心者冒険者には徹夜すらも厳しく思える。


「あの宿屋に戻るか」


 この町への滞在が確定した。夕日が半分以上も消えかかる頃には宿屋につき、多少なりとも王国で貰ったお金でチェックインを済ませる。


「はい。銅貨5枚ね」


 貰った巾着を開き、中にある銀貨を手渡す。


「これでいいですか?」

「あっはい。大丈夫です……では銅貨15枚のお返しです」


 貨幣価値を理解するにはまだこの世界への知識が足りない。

 とりあえず銀貨は銅貨20枚とイコールの価値ではある。


「では101の鍵でございます。ごゆっくり」


 感謝の会釈で鍵を受け取る。カウンターの両端にある階段の右側を渡り、利き手で鍵を開けドアノブに手を掛けてその流れで入室。

 中の構造は朝見たときとは無変化。窓から差し込む光が薄暗いことぐらいが違いだと言える。


「いやー疲れた」


 ベッドに倒れ込む。顔を埋めて柔らかい感触のまま眠りについた。

 朝の前触れを感じ、目を覚ます。丁度窓から光がまた差し込んでいたのが目に入っていて眩しい。


「ふぁーあ」


 欠伸あくびをしながらベッドから起きて眠たい目をこすりながらも無意識的にポッケに手を入れていた。

 この世界に来てから新鮮なものばかりでその情報量が完結しないままいたので忘れていたがポッケには電子板がなかった。

 近代機器のメールやゲームやインターネットでの調べのも等々で役立つ便利アイテムがなかったのだ。

 言われて見れば当たり前のことではあるが時間を見ようとした時に不意に出てしまった行動だ。


「そういえばなかったか」


 ここでいう異世界の物は基本この世界に持って来ることは出来ていない。ただし服を除いてではあるが。


「これからどうしようかな」


 寝て頭がスッキリした結果別に考えることは変わらないがそれでも気持ちの変化がある。

 一刻も早く100レベルモンスターを討伐したいというのはあるが今回のシブーが一番弱かった可能性があるため調子に乗ることしない。

 何よりいまこの状態で挑んで遠距離の敵が来た場合に霧は死ぬことになるのは言うまでもない。


「だからレベル上げをするか」


 シブーを倒した今あの森には霧を倒せる敵はいない。そこであそこで多少のレベル上げをすることでかつ確率を上げる。


「よいしょっと」


 準備を始める。重たくなった体を無理に動かしてベッドメイキングを始める。

 使ったときよりキレイにが基本な霧はこの宿屋の部屋をゴミ1つなく掃除しベットを元あった状態に戻す。


「出ますか」


 鍵を持ってフロントへ返しにいく。


「ありがとうごさいました」

「またご利用ください」


 馴染みのある会話ではあった。ある世界なら誰だって聞く言葉達だったがこの世界では初体験。

 胸が踊りつつもレベル上げという作業ゲーへ足を運ぶ。

 森への道筋はマールに連れてきて貰ったのでわからないが大体町の奥へ進行して行けばそのうち着く。

 作業ゲーよりロールプレイングの戦闘派。レベル上げよりボス戦派。

 このように霧は全く持ってレベル上げをしたくない。実際問題しなくてもいいならしない。

 だがこの世界はあくまでも転生した世界の現実。仮想空間でもない限りは死んだら塵となるのが目に見えている。


「気乗りはしないけどやるしかないよね」


 森へついだろう。あの時の景色とは違うが恐らく霧のいた森である。

 確信することは出来ないがとりあえず散策も兼ねてのモンスター探しをする。

 エンカウントしたら逃げるコマンドは捨てて攻撃を選択。これが今自分に貸した掟だ。


「あんまり敵がいないな」


 シブーの縄張りだったのか倒された今でも敵がいなく、物音すらも感じない。

 四方を警戒しつつ散策してはいるがそれでもモンスターなんて影を見せない。


「なんて平和な世界なんだ」


 良いことなのだがこの状況においてはがっかりの一言に尽きる。

 警戒が薄れてきた頃。モンスター探しもこの森の景色も飽きて来ていて何ならもうレベル上げを諦めたいくらいには失望していた。

 ザザザ。

 どこかで草をかき分けて移動しているようなこの森では絶対に出るような音が鳴った。

 その音に霧は敏感に反応し、敵への遭遇だと好意すら思える。

 ザザザザザザ。段々と多く、近くなる音。

 ザザザザザザザザザザザザ。更に増していきそろそろお腹がいっぱいだ。


「なんか音多くないか?」

「「「「フギャー」」」」


 重複した鳴き声が鼓膜に入り次第状況を理解した。

 囲まれているのだと。

 高確率でそうなのだがここは別のモンスターの縄張りでここまで来るのを待っていただと思われる。

 目の前にいるモンスターはゴブリンと思わしき緑色の耳の長いモンスター。

 古びていて茶色い獣の皮の服にドガった爪で襲いかかってきている。

 防衛本能が発動して剣を引き抜こうとする。


「抜っっけっっなっっい」


 茶番みたいに剣は鞘から抜けず、やはり実力不足が仇となっている。

 もたついている間にもゴブリンは一斉攻撃は止まらない。

 とにかく死なないことを優先し、一体だけの攻撃を回避することに集中する。

 単調な攻撃は霧の顔面へのひっかき。感覚的に理解しかがむ。


「テーセラスティフィア」


 目の前のモンスターが火によって焼かれている。それどこらか先程までいた後ろのモンスターの喚き声までもが聞こえている。


「大丈夫だった?」


 喚き声とは別の聞き覚えのある優しい声。

 振り返るとそこにはマールがいた。


「ああ助かったよ」

「いやキリほど凄くはないけどね」


 マールは魔法使いのようだ。燃やす火、吹き飛ばす風、流れる水、私達が立っている土。

 この四元素を操る魔法使い。霧を襲っていたゴブリンも4つの元素を同時発動させて倒していたとのこと。


「全然凄いけどね。俺はたった今負けそうになっていたから」

「剣があるのに?」


 間違いない。強い者が抜ける剣を抜けない弱い者。バレてしまえば霧の弱さが露呈し今後何らかの不利益及び転生という面倒事がバレる可能性も増えてくる。

 何よりもこの剣を弱くて抜けないと分かればダサさ一直線。それでシブーよりもゴブリンに負けそうになっていたのが恥ずかしくて仕方がない。


「いやーまだ病み上がりだったから剣が抜けなくてね」

「よかった確かにあんなにも怪我してたもんね」


 霧にとっては何もよくない。ピンチのところを救って貰ってはいるが大ピンチになってしまった。


「でなんでここにいるの?」

「あー」


 静けさが到来し、気不味さも襲いかかってきた。

 少しの時が過ぎたところでやっと話してくれた。


「いっ一緒に旅がしたくて追いかけてきた」


 恥ずがりながらも話してくれた。


「でも俺達そこまで一緒に旅するほどの仲じゃないよね?だってまだあったばっかりじゃん」


 断りたかった。仲間が出来るのは心強いが霧の能力はあくまでも強い敵への補助的な役割。

 実際のところ弱い対弱いの場合にはスキルは発動出来ず身体能力などはそのままの一般人。

 弱さを隠しきれなくなる。


「私はキリと旅がしたいって思ったの……直感って言うのが答えじゃ駄目かな?」


 寂しげで儚げ。あまりの可愛さに前の世界ではなかった免疫により断ることは不可能になる。


「いいよ。仲間がいれば100レベルの討伐は楽にはならないけど倒せる可能性は上がるよね」


 了承してしまった。

 ここで1人仲間が追加され、このパーティに花が訪れた。

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