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【コミックス第1巻発売記念SS】相も変わらず

ご無沙汰しております。遅くなってしまいましたが、コミックス第1巻発売記念SSでございます~!

コミカライズと合わせてお楽しみいただけますと幸いです。


「とっても素敵でした!」


 チェルシーの輝く笑顔に、馬車の中の空気が一層柔らかくなる。「それはよかった」と笑う王太子殿下の計らいで、人気の歌劇を観た帰りのことだ。


 リリーも一緒のこの外出を、チェルシーはとても楽しみにしていた。予定が決まったその日から、あと何日と指折り数えていたし、珍しく着ていく服に迷うなど、そわそわと落ち着かなかった。観劇自体も初めての経験だそうで、マナーを心配したり、双眼鏡は必要かと悩んだりしていたが、さすがは殿下の手配した席。双眼鏡は必要なかった。


 物語は男女の恋愛を中心とした悲劇で、終盤は会場中からすすり泣く声が聞こえていた。隣に座るチェルシーも涙ぐんでいて、その姿越しにリリーと目が合ったときにはお互い「舞台に集中しろ」と思ったはずだが、一応はリリーも楽しんでいたらしい。「魔法演出が素敵だったわね」と言った声に、俺も頷いた。


「特に最後のシーンで雪が降る魔法がよかったな」

「ええ、主人公とヒロインだけに上手く降らせていて……舞台袖からやっているとすればかなり繊細な魔法の使い手よね」


 そんな会話に、チェルシーと殿下は目を瞬かせた。


「魔法が使えると、そういうところにも目が向くのか」

「ですね……わたし、物語を追うことだけに夢中でした」


 魔法が気になるのは職業病のようなものだ。俺とリリーがそう言って、純粋に物語を楽しめたならいいことだと答えると、殿下が不意に笑い声を漏らした。


「ふふ。チェルシー、君は物語以外にも夢中だったよね」


 えっ、と三人分の声が重なる。席の並びは、殿下、リリー、チェルシー、俺だった。暗い客席で隣り合ってもいないチェルシーのことが、どうして殿下にはわかるのか。チェルシー本人だけでなく、俺とリリーも不思議に思って殿下の顔を見た。


「主人公の友人役だね?」


 殿下の言葉に、チェルシーの頬がぱっと赤くなる。主人公の友人といえば、見た目は髪の長い優男で、終盤になると気弱な主人公の背中を押し励ます役どころだ。


 ああいう男がタイプなのか、それとも役者が気に入ったのかと、どことなく面白くない気持ちになる。殿下が気付いて自分が気付かなかったこともなんとなく気に食わないと思ってしまうのは、どうやらリリーも同じらしい。唇が少し、むっと歪んでいる。


 殿下が「わかりやすいよねえ」と言って笑った。チェルシーが赤い顔のまま肩を竦めて、気恥ずかしそうに俺とリリーに目を向ける。


「……だって」


 似ていたので、と呟く声。友人役の髪色を思い出して溜飲が下がるまで、ほんの数秒のことだった。


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